女性社員の戦力化は、企業の成長と競争力向上に欠かせない戦略です。少子化による人材不足が深刻化する中で、企業の存続を左右するテーマといっても大げさではありません。本記事では、女性活躍推進の現状や課題・具体的な取り組み・成功のポイントを解説し、効果的な施策をご紹介します。自社の女性社員の戦力化を推進するにあたっての参考にしてください。
女性社員の戦力化が求められる背景
女性社員の戦力化は、現代の企業経営において避けては通れない重要課題です。2016年に施行された女性活躍推進法とその後の改正、少子高齢化による労働力不足、そしてダイバーシティ経営の重要性の高まりなど、さまざまな要因が女性社員の戦力化を後押ししています。まずは、女性社員の戦力化がこれほどまでに求められるその背景から確認していきましょう。
日本における女性管理職比率の現状
日本の女性管理職比率は、近年徐々に上昇しているものの、国際的に見るとまだまだ低い水準にあります。
厚生労働省の「令和4年度雇用均等基本調査」を見ると、2022年度の課長相当職以上の女性管理職比率は、わずか12.7%でした。
前年度から0.4ポイント上昇し、調査開始以来最高値を更新しているものの、政府が掲げる「2020年代の可能な限り早期に30%程度」という目標には遠く及びません。
企業規模別では、従業員10〜29人の企業で21.3%ともっとも高く、1,000人以上の大企業では7〜8%台に留まっています。大企業ほど女性が管理職に登用されにくい現状が明らかとなりました。
女性社員の戦力化を阻む3つの要因
女性社員の活躍を阻む要因としては、主に三つ挙げられます。
まず、長時間労働の問題があります。育児や介護などの家庭責任を担うことが多い女性にとって、長時間労働は大きな障壁です。
次に、性別による役割分担意識の存在です。2022年に行われた「男女共同参画社会に関する世論調査」によると、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」との考え方に対し、男性39.5%、女性28.4%が賛成と回答しました。「男性は仕事、女性は家庭」という伝統的な考え方が、企業の人事評価や昇進の仕組みに影響を与え、女性のキャリア形成を阻害しています。
最後に、キャリアパスの不透明さがあります。多くの企業では、女性社員の長期的なキャリアパスが明確に示されておらず、特に結婚や出産後のキャリア継続に不安を感じる女性が多いのが現状です。
これらの要因を解消し、女性社員が安心して能力を発揮できる環境を整備することが、戦力化への第一歩となります。
参考:内閣府|男女共同参画社会に関する世論調査(令和4年11月調査) | 世論調査
女性社員を戦力化するメリット
女性社員の戦力化は、企業にとって多くのメリットをもたらします。中でも特に影響が大きいポイントを紹介します。
多様な視点によるイノベーション創出
女性社員の戦力化は、組織の多様性を高め、新たなアイディアや解決策を生み出す可能性を高めます。女性ならではの経験や価値観を企業の意思決定に加えることで、より多角的な視点が得られ、イノベーションの創出が期待できます。
具体例としては、女性の視点を取り入れた商品開発や、女性顧客のニーズをより深く理解したマーケティング戦略の立案が可能です。また、リスクに対する視点が広がることで、より高度なリスク管理が可能となります。
女性社員の戦力化は、企業の創造性と問題解決能力を高める重要な要素です。
優秀な人材の確保と定着率向上
女性社員の戦力化に積極的な企業は、採用市場での優位性を確保できます。
それは、女性が働きやすい環境が整っている企業は、一般的に男性にとっても働きやすいとされるからです。また、女性社員の活躍を推進することで、社内のロールモデルが増え、若手女性社員のキャリア意識の向上にもつながります。
優秀な人材の獲得と定着は、長期的な企業の成長と競争力強化につながる重要な要素です。女性社員の戦力化を通じ、他社との差別化を図ることで、企業全体の人材力を高めることができるのです。
企業イメージと投資家からの評価向上
ESG投資(環境・社会・ガバナンスに配慮した投資)の重要性が高まる中、女性社員の戦力化は重要な評価項目のひとつです。
内閣府の「ジェンダー投資に関する調査研究」(2021年)によると、約7割の機関投資家が投資判断において女性活躍情報を活用していることが分かります。
出典:内閣府男女共同参画局|ジェンダー投資に関する調査研究(令和4年度)
女性社員の戦力化に積極的に取り組む企業は、社会的責任を果たす企業として評価され、投資家からの注目も集めやすくなります。
このように、女性社員の戦力化は、企業の社会的評価を高め、ひいては企業価値の向上にもつながる重要な取り組みです。
関連記事:女性が働きやすい職場づくりで飛躍!効果的な取り組みや制度、事例を解説
女性社員戦力化の先進的な取り組み事例
女性社員の戦力化に成功している企業の取り組みは、多岐にわたります。
例えば、資生堂では、女性リーダー育成塾や選抜型の研修プログラムなど、女性活躍を推進するさまざまな施策を実施し、国内グループの女性管理職比率40.0%を達成しています。
また、りそなホールディングスではメンタリング制度や女性支店長トレーニー制度を導入し、2023年度の女性ライン管理職比率において、12年連続で上昇し、34.5%を実現しました。
東京海上日動火災保険では、異業種交流を通じた育成プログラムなど独自の施策を実施し、2023年時点で女性管理職比率24.8%を実現しています。
これらの事例から、女性社員の戦力化には、キャリア支援・能力開発・職場環境の整備など、多角的なアプローチが効果的であることが分かります。自社の状況に合わせて、これらの先進事例を参考にしながら、独自の取り組みを検討することが重要です。
参考:日経BP|2024年版「女性が活躍する会社BEST100」 総合ランキング1位、資生堂が3年連続
関連記事:2024年度版「女性が活躍する会社BEST100 」から学ぶ成功企業の戦略
女性社員の戦力化を成功させるには?
女性社員の戦力化には、組織全体の意識改革と、具体的な施策との両輪が必要です。長期的視点に立ち、企業文化の変革を伴う取り組みが求められます。以下、重要なポイントを詳しく解説します。
キャリア支援・育成プログラムを充実させる
キャリア支援・育成プログラムは、女性社員の潜在能力を引き出す鍵となります。
実施するにあたっては、従来の画一的なプログラムではなく、個々の適性や志向に合わせたカスタマイズド・アプローチが効果的です。
例えば、360度評価を活用して個人の強みを特定し、それを伸ばすための個別育成計画を策定するといった方法が挙げられます。また、部門横断的な短期プロジェクトへの参加機会を設け、多様な経験を積める環境を整備するのもひとつの方法です。
さらに、女性リーダー同士のピアメンタリングを導入し、互いの経験や課題を共有し、解決策を見出す場を提供することも有効です。
柔軟な働き方を推進する
柔軟な働き方を推進すると、女性は仕事と家庭を両立しやすくなり、戦力として活躍しやすくなります。ただし、柔軟な働き方の推進は、単に制度を整えるだけでなく、その活用を促進する組織文化の醸成が重要です。
例えば、管理職自身が率先して柔軟な働き方を実践し、ロールモデルとなることが効果的です。また、成果主義の評価制度を導入し、勤務時間ではなく実績で評価することで、柔軟な働き方への移行をスムーズにします。
さらに、ジョブシェアリングやワークシェアリングなど、新しい働き方の概念を積極的に取り入れ、多様な勤務形態を可能にすることも検討に値します。
アンコンシャスバイアス研修を実施する
アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)により、キャリアを諦めざるを得なかったり、不当な評価を下されたりする女性は少なくありません。
そこで推奨されるのが、アンコンシャスバイアス研修の実施です。研修は、単発のワークショップではなく、継続的な学習プロセスとして設計することが重要です。eラーニングと対面研修を組み合わせたブレンド型学習であれば、提供も受講もスムーズに進められます。
アンコンシャスバイアスへの理解が深まることで、公平で誰もが活躍できる企業風土を醸成できます。
数値目標の設定と進捗管理を徹底する
女性社員の戦力化に関する数値目標の設定と進捗管理は、単に数字を追求するではなく、質的な成長を伴うものでなければなりません。
例えば、女性管理職比率だけでなく、女性社員の離職率や昇進スピードなど、複数の指標を組み合わせた総合的な評価システムの構築が求められます。目標達成のプロセスを重視し、中間目標や小さな成功事例を積極的に可視化することで、組織全体でモチベーションを維持するのも効果的です。
このような取り組みにより、女性社員戦力化を組織的、かつ継続的に推進できます。
女性社員戦力化を支援する制度や施策
女性社員の戦力化を進めるにあたり、企業が活用できる公的支援や認定制度が存在します。これらの制度を積極的に活用することで、自社の取り組みをより効果的に推進することができます。詳しく見ていきましょう。
女性活躍推進法に基づく認定制度
女性活躍推進法に基づく認定制度として、「えるぼし認定」と「プラチナえるぼし認定」があります。
「えるぼし認定」は、女性の活躍推進に関する取り組みの実施状況が優良な企業を認定するもので、評価項目の達成状況に応じて1つ星から3つ星までの3段階があります。
「プラチナえるぼし認定」は、えるぼし認定を受けた企業のうち、より高い水準の取り組みを行っている企業が認定を受けられる制度です。認定を受けた企業は、認定マークを商品やホームページ、求人票などに表示することができ、企業イメージの向上につながります。
出典:職場情報総合サイト しょくばらぼ|職場情報開示に積極的な企業紹介女性活躍推進企業認定「えるぼし・プラチナえるぼし認定」
また、公共調達における加点評価や、日本政策金融公庫の低利融資を受けられるなど、さまざまなメリットがあります。これらの認定を目指すことで、自社の女性活躍推進の取り組みを体系的に整備し、継続的に改善していくことができます。
参考:職場情報総合サイト しょくばらぼ|職場情報開示に積極的な企業紹介女性活躍推進企業認定「えるぼし・プラチナえるぼし認定」
参考:厚生労働省|女性活躍推進法に基づくえるぼし認定・プラチナえるぼし認定のご案内
関連記事:えるぼしとくるみんの違いを徹底解説!認定基準やメリットを比較
両立支援等助成金の活用
厚生労働省が提供する「両立支援等助成金」は、仕事と家庭の両立支援に取り組む事業主を支援するための制度で、目的に応じて6つのコースが用意されています。
例えば「柔軟な働き方選択制度等支援コース」では、フレックスタイム制度や時短勤務制度などを2つ以上導入し、プランを作成して労働者に利用させるなど、一定の要件を満たした中小企業事業主を助成する制度です。1事業主あたり1年度5人まで、20〜25万円の助成金が支給されます。
これらの助成金を活用することで、企業は女性社員の戦力化に向けた取り組みをより積極的に進めることができます。
女性社員戦力化を後押しする福利厚生の重要性
女性社員の戦力化を推進する上で、福利厚生の充実は非常に重要な役割を果たします。ここでは、福利厚生充実がもたらす効果と、特に注目されている食事補助サービスについて解説します。
福利厚生の充実がもたらす効果
充実した福利厚生は、女性社員の戦力化に多面的な効果をもたらします。主な福利厚生には、次のようなものが挙げられます。
分類 | 福利厚生の種類 | 得られる効果・目的 |
育児サポート 介護サポート |
・保育手当 ・介護休暇など |
・仕事と私生活の両立をサポートする ・女性社員の長期的なキャリア形成を目指す |
柔軟な勤務制度 | ・フレックスタイム制度 ・時短勤務制度 ・在宅勤務制度など |
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健康面のサポート | ・人間ドック補助 ・病気休暇制度 ・病気休職制度など |
・従業員の長期的な健康維持をサポートする ・従業員が病気になることで生じるコストの削減 |
自己啓発 キャリアサポート |
・セミナー受講費補助 ・資格手当など |
・スキルアップとキャリア形成支援 ・女性社員の管理職志向を高める |
経済面のサポート | ・住宅手当 ・通勤手当 ・食事補助など |
・生活の質を高める ・経済的な安定により、女性社員のキャリアへの集中をサポートする |
これらの福利厚生を提供することで、女性社員は安心して長期的なキャリアを築くことができ、管理職を目指す意欲の向上にもつながるのです。
注目の食の福利厚生「チケットレストラン」
近年、多くの企業から注目を集めている福利厚生のひとつが、エデンレッドジャパンが提供する食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」です。
「チケットレストラン」は、全国25万店舗以上の加盟店で利用できる食事補助の福利厚生サービスです。
専用のICカードに、従業員と企業が半額ずつチャージすることで、従業員は実質半額で食事を楽しめます。加盟店のジャンルは幅広く、勤務時間や場所に縛られず利用できるため、ランチはもちろん、おやつや休憩時のドリンク等の購入も可能です。また、Uber Eatsを通じて、スターバックスやマクドナルドのような人気チェーン店も利用できます。
このサービスの導入により、従業員の健康維持・増進や、モチベーション向上が期待できます。特に、仕事と家庭の両立に奮闘する女性社員にとって、日々の食事のサポートは大きな支えです。
「チケットレストラン」のような食事補助の福利厚生サービスは、女性社員の戦力化を後押しする有効な手段のひとつといえます。
関連記事:チケットレストランの評判が知りたい!導入企業の生の声をチェック
女性社員戦力化で企業の未来を拓く
女性社員の戦力化は、企業の持続的成長と競争力向上に不可欠な戦略です。女性社員の能力を最大限に引き出し、活用することで、多様な視点によるイノベーションの創出・優秀な人材の確保と定着率の向上・企業イメージと投資家からの評価向上など、さまざまな面で企業価値を高めることができます。
また、公的支援や認定制度、福利厚生の充実など、さまざまな施策を活用することで、より効果的に女性社員の戦力化を推進できます。女性社員の戦力化を重要な経営戦略として位置づけ、自社の未来を切り拓いていきましょう。