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【税理士監修】年収の壁とは?6つの壁の仕組みと対策を徹底解説

【税理士監修】年収の壁とは?6つの壁の仕組みと対策を徹底解説

2024.04.30

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監修者:舘野義和(税理士・1級ファイナンシャルプランニング技能士 舘野義和税理士事務所)

「年収の壁」とは、一定の収入を超えることで税金や社会保険料の負担が増え、手取り収入がかえって減ってしまう境界線をいいます。この壁の存在が労働者は就業調整(働き控え)を招き、ひいては企業の人材不足にも拍車をかけている状況です。

本記事では、年収の壁の詳細や引き起こされる課題・政府の対策について詳しく解説しています。年収の壁を乗り越えるためにおすすめな企業向けの施策も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

年収の壁とは?6つの壁について詳しく解説

税金や社会保険料の負担が増え、手取り収入がかえって減ってしまう年収の境界線「年収の壁」は、税金の壁にあたる「100万円・103万円」・社会保険の壁にあたる「106万円・130万円」・配偶者控除の壁にあたる「150万円・201万円」と、大きく三つに分かれます。まずは、それぞれの詳細から整理していきましょう。

年収 住民税 所得税 社会
保険料
配偶者
控除
配偶者
特別控除
100万円以下 かからない 対象
100万円 かかる かからない
103万円 かかる かからない 対象
106万円 かかる場合あり
130万円 かかる
150万円
201万円 対象外

100万円・103万円の壁(税金の壁)

年収が100万円以上になると住民税が課されます(100万円の壁)。住民税は地方自治体が徴収し、所得税とは別に支払う必要があります。税率や控除額地域によって異なりますが、収入が増えるほど住民税も増加するのが一般的です。

さらに、年収が103万円以上になると所得税の負担が発生します(103万円の壁)。所得税は国税であり、収入や所得の内訳に基づいて計算されます。

106万円・130万円の壁(社会保険の壁)

年収が106万円以上になり、次の条件を満たす場合、健康保険や厚生年金など社会保険の加入が義務付けられ、保険料の負担が生じます(106万円の壁)。

  • 週あたりの労働時間が20時間以上
  • 2カ月以上の継続勤務
  • 1カ月の収入が8万8,000円(年収約106万円)以上
  • 学生ではない
  • 事業所の従業員数が101人以上(2024年10月以降は51人以上)

さらに、年収が130万円以上になると社会保険の扶養から外れます(130万円の壁)。国民健康保険や国民年金に個人で加入しなければなりません。

参考:厚生労働省|被用者保険の適用拡大

150万円・201万円の壁(配偶者控除の壁)

配偶者控除に関わる壁が、150万円と201万円の壁です。

自身の年収が103万円以上になると、税金面での配偶者控除から外れて配偶者特別控除の対象となります。さらに年収が150万円を超えた場合、配偶者特別控除の控除額は段階的に減少し、配偶者の所得税・住民税の負担が増加します(150万円の壁)。

なお、配偶者特別控除の対象となるのは年収200万円までです。自身の収入が201万円以上になると、配偶者特別控除の対象から外れ、控除額はゼロになります(201万円の壁)。

年収の壁が引き起こす問題と影響

年収の壁によって問題を抱えるのは労働者側だけではありません。労働者側に加え、企業側や社会全体に生じる問題や損失について解説します。

【労働者側の問題】手取り減を恐れた就業調整

年収の壁は、労働者にとって大きな悩みの種です。特に、106万円や130万円の壁は、超えることで社会保険料の負担が生じ、手取り収入が大幅に減ってしまいます。

そのため、多くのパートタイムやアルバイトなどの非正規雇用労働者が、年収の壁を意識して就業時間を調整せざるを得ない状況に陥っています。この就業調整(働き控え)によって、キャリア形成や将来の年金額に悪影響を及ぼしている労働者も少なくありません。

また、年収の壁は、非正規雇用労働者と正社員の格差をさらに助長する要因にもなっています。

就業時間の調整を余儀なくされる非正規雇用労働者に対し、正社員は長時間労働や残業が可能です。この就業形態の違いが、賃金や福利厚生などの処遇面での格差につながっています。

同一労働同一賃金の観点からも、年収の壁は、非正規雇用労働者と正社員の公平性を阻む大きな障壁となっているといえます。

参考:厚生労働省|同一労働同一賃金特集ページ 

【企業側の問題】深刻化する人手不足

就業調整が行われると、企業側は業務に必要な労働力の確保が難しくなります。これにより、人手不足や生産性の低下が生じるリスクが高まってしまいます。

特に、昨今の少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少を考えると、年収の壁による就業調整は企業の成長を阻む深刻な問題です。人材の定着や生産性の向上のためにも、年収の壁への対策が急務となっています。

【社会的な問題】経済活動の停滞

年収の壁による就業調整は、労働者と企業だけでなく、社会全体にとっても大きな損失となっています。

パートタイム労働者やアルバイトの就業時間が抑制されるということは、本来活用できるはずの労働力を十分に活用できないということです。これは、日本経済の成長を阻む一因にもなりかねません。

また、就業調整により労働者の所得が抑えられることで、消費の減退や税収の減少も懸念されます。経済活動の停滞はもちろんのこと、社会保障や公共サービスの財源を圧迫する要因ともなり得るでしょう。

年収の壁の解消は、社会全体で取り組むべき重要な課題なのです。

【年収の壁対策】政府の支援策

年収の壁がもたらす課題や損失を克服するため、政府はさまざまな対策を打ち出しています。中でも注目の対策について解説します。

2023年10月~「年収の壁・支援強化パッケージ」

政府は、年収の壁問題に対処すべく、2023年10月から「年収の壁・支援強化パッケージ」を開始しました。このパッケージは、パートタイム労働者やアルバイトが年収の壁を意識せずに働ける環境を整備することを目的としています。

具体的には、106万円の壁への対策として、社会保険料の負担増を手当などで補填する企業に対し、最大で労働者一人当たり50万円の助成金を支給します。

また、130万円の壁への対策としては、一時的な収入増で130万円を超えた場合でも、事業主の証明により、引き続き被扶養者のままでいられる仕組みを導入しました。この制度により、130万円の壁を意識した就業調整の必要性が大幅に減ると期待されています。

ただし、この仕組みはあくまでも一時的な収入増の場合に限られます。恒常的に130万円を超える場合は、被扶養者から外れることになるため注意が必要です。

年収の壁

出典:厚生労働省|年収の壁・支援強化パッケージ

キャリアアップ助成金による支援

年収の壁対策の一環として、キャリアアップ助成金も拡充されました。このキャリアアップ助成金は、非正規労働者のキャリアアップ促進を目的に、非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善に取り組む企業を支援する制度です。

正社員化を支援する「正社員化支援」と、賃金アップや諸手当の制度化など処遇改善を支援する「処遇改善支援」の大きく2つの柱によって運用され、非正規雇用労働者を正社員に転換したり、労働時間を延長したりした企業に対し、一定の助成金が支給されます。

助成金を活用することで、企業は年収の壁を意識せずに労働者の処遇改善に取り組めるようになります。

キャリアアップ助成金の活用には、計画書の提出や支給申請など、一定の手続きが必要です。

参考:厚生労働省|キャリアアップ助成金

関連記事:【社労士監修】賃上げで最大600万円の業務改善助成金とは?その他の支援制度も解説

【年収の壁対策】個人としてできる対策

年収の壁には、労働者自身で行える対策もあります。具体的な対策を知り、必要に応じて企業側からサポートすることにより、企業が抱える問題(人材不足や生産性の低下)の解消も期待できるでしょう。

スキルアップで市場価値を高める

年収の壁を乗り越えるためには、労働者自身の市場価値を高めることも重要です。自己投資として、資格取得や専門知識の習得などに取り組み、スキルや知識の向上を図ることで、労働市場における価値を高められます。

例えば、ITスキルやマーケティングスキルなど、企業のニーズが高い分野の知識を身に付ければ、年収アップのチャンスが広がります。負担する税金や社会保険料以上の収入アップを実現できれば、事実上、年収の壁はないも同然です。

スキルアップによる市場価値の向上は、年収の壁を乗り越えるための有効な手段のひとつといえます。自己投資を惜しまず、自分の可能性を広げていくことが大切です。

教育訓練給付制度キャリアコンサルティングなど、政府による支援策も用意されているため、上手に活用しましょう。

参考:リカレント教育|厚生労働省

副業・兼業で収入源を多様化する

年収の壁に直面している労働者にとって、副業・兼業による収入源の多様化も有効な対策です。本業だけでは年収の壁を超えられない場合でも、副業で収入を補うことで、手取り額を増やせます。

近年、政府も副業・兼業を推進しており、企業の副業解禁も進んでいます。自分のスキルを活かせる分野での副業を探すことで、本業とはまた別の収入を得られるでしょう。

ただし、副業・兼業を始める際は、本業への影響や税務面での注意点などを十分に確認しなければなりません。また、本業の雇用契約で副業が禁止されていないか、確認が必要です。

副業・兼業は、年収の壁を乗り越えるための選択肢の一つです。本業と副業のバランスを取りながら、収入源の多様化を図ることで、年収の壁に立ち向かうことができます。

参考:厚生労働省|副業・兼業

【年収の壁対策】企業としてできる対策

従業員が年収の壁を気にせずに働ける環境を整えるため、企業ができることにはどのようなものがあるのでしょうか。具体的な対策を紹介します。

従業員の長期的なキャリア形成を支援する

年収の壁は、従業員の長期的なキャリア形成の妨げにもなります。特に、結婚・妊娠出産・介護など、ライフイベントの影響を受けやすい女性にとって、年収の壁は大きな障壁となりがちです。

企業は、従業員の長期的なキャリア形成を支援することで、年収の壁の影響を緩和できます。具体的には、育児休業や介護休業の取得を促進し、休業期間中のキャリア形成支援を行うことが重要です。

また、従業員のキャリアプランに合わせた能力開発の機会を提供することも効果的です。年収の壁を意識せずに、自身のキャリアを築いていけるよう、企業が後押しすることが求められます。

さらに、シニア層の活躍を推進することも重要です。定年延長や再雇用制度を充実させることで、働きたい意欲のある人が迷わず働ける環境を整備できます。

企業が従業員の長期的なキャリア形成を支援することで、年収の壁の影響を最小限に抑え、多様な人材が活躍できる組織づくりを実現できるでしょう。

従業員の満足度を高める「福利厚生」

充実した福利厚生は、従業員を大切にする企業スタンスの表明であり、採用力の強化に役立ちます。魅力的な福利厚生を提供することは、企業にとって人手不足解消を図る定番の施策といっても大げさではありません。

福利厚生は、企業の法人税の軽減や従業員の手取り額増加にもつながります。例えば、福利厚生の提供によって必要経費が計上可能であり、企業の税負担が軽減されます。また、従業員側の所得税や住民税の負担も増えません。

つまり、福利厚生を活用することで、年収の壁に影響することなく従業員の実質的な手取り額を増やせるのです。

この仕組みを利用して、福利厚生を定期昇給とベースアップに続く「第3の賃上げ」と位置づけ、活用を推奨する「第3の賃上げアクション」プロジェクトも注目を集めています。

賃上げ_5_04

出典:“福利厚生”で実質手取りアップと高いエンゲージメントの実現を「#第3の賃上げアクション」プロジェクト

【年収の壁対策に】食事補助の福利厚生「チケットレストラン」

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関連記事:【社労士監修】非正規雇用の賃上げは課題だが年収の壁問題も!福利厚生が救世主に

年収の壁を乗り越えるために

年収の壁は、労働者の就業調整を招き企業の人材不足を深刻化させるなど、さまざまな問題を引き起こす社会的な課題です。この問題に対処するため、政府は支援策として「年収の壁・支援強化パッケージ」を打ち出しました。加えて、個人や企業レベルでも対策が求められています。

労働者個人は、スキルアップや副業・複業を通じ、収入増や収入源の多様化を図ることが重要です。また、企業は、従業員の長期的なキャリア形成支援や、魅力的な福利厚生の提供により、年収の壁の影響を緩和できます。

年収の壁は、労働者・企業・社会全体で取り組むべき課題です。それぞれが対策を講じることで、年収の壁を乗り越え、より働きやすい社会の実現につなげていくことが期待されています。

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