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大企業向け賃上げ促進税制を分かりやすく解説!中小企業向けとの違いも

大企業向け賃上げ促進税制を分かりやすく解説!中小企業向けとの違いも

2024.01.03

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大企業向け賃上げ促進税制は、賃上げを進める企業の税額控除を通じ、賃上げの促進を図る政府の施策です。本記事では「大企業向け」と「中小企業向け」に分かれた賃上げ促進税制のうち、大企業向けに焦点をあて、その概要や旧制度との違いなどを詳しく解説します。

賃上げ促進税制とは

賃上げ促進税制は、企業の賃上げや人材育成を推進するため、一定条件下での賃上げを行った企業に対し、増加額の一部を法人税や所得税から控除する制度です。

令和4年度税制改正を通じ、旧制度の「人材確保等促進税制」が「大企業向け賃上げ促進税制」に、同じく旧制度の「所得拡大促進税制」が「中小企業向け賃上げ促進税制」へと再整備されました。

中小企業向け賃上げ促進税制は、特定の要件を満たす青色申告事業者に限られます。一方で、大企業向け賃上げ促進税制は、青色申告事業者であれば誰でも適用されます。

物価高による実質的な賃金の低下や、少子高齢化にともなう人材不足など、国として抱える喫緊の課題への対策として、重要な役割を担う制度です。

参考: METI/経済産業省関東経済産業局|賃上げ税制について(賃上げ促進税制/所得拡大促進税制)
参考:中小企業庁:中小企業向け「賃上げ促進税制」※旧、中小企業向け「所得拡大促進税制」

大企業向け賃上げ促進税制の概要

大企業受け賃上げ促進税制は、旧人材確保等促進税制の後継として、令和4年4月1日に施行された税制控除制度です。

まずは、大企業向け賃上げ促進税制がどのような制度なのか、その詳しい内容を確認していきましょう。

適用対象

  • 青色申告書を提出する全企業

適用期間

  • 令和4年4月1日〜令和6年3月31日までの間に開始する各事業年度

適用要件

大企業向け賃上げ促進税制には、通常要件と2種類の上乗せ要件があり、いずれが適用されるかによって税額控除額が変わります。以下、適用要件と税額控除額の詳細を示します。

通常要件

  • 継続雇用者給与等支給額(※)が、前事業年度より3%以上増えていること

ただし、資本金10億円以上、かつ従業員数1,000人以上の企業については、上記の要件に加えて下記①と②の要件もともに満たす必要があります。

  • ①:マルチステークホルダー方針(給与等の支給額の引き上げの方針・下請事業者その他の取引先との適切な関係の構築の方針・その他の事業上の関係者との関係の構築の方針に関する一定の事項)をWebサイト等に公開すること
  • ②:①のマルチステークホルダー方針を公表していることについて、経済産業大臣に届出があったことを証明する書類の写しを確定申告書等に添付していること

(※)継続雇用者=前事業年度及び適用事業年度の全月分の給与等の支給を受けた国内雇用者

上乗せ要件①

  • 継続雇用者給与等支給額が、前事業年度より4%以上増えていること

上乗せ要件②

  • 教育訓練費の額が、前事業年度より20%以上増えていること

税額控除額

適用要件 税額控除額
通常要件 控除対象雇用者給与等支給増加額の15%を法人税額または所得税額から控除
上乗せ要件① 税額控除率を10%上乗せ
上乗せ要件② 税額控除率を5%上乗せ

※上乗せ要件は、①②のうち一方のみ・①②の併用、いずれも可能です。つまり、最大30%の税額控除が可能です
※税額控除額の上限は、法人税額または所得税額の20%です

参考:国税庁|No.5927 給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除(大企業向け賃上げ促進税制)
参考:経済産業省|大企業向け「賃上げ促進税制」御利用ガイドブック

中小企業向け賃上げ促進税制との違い

大企業向け賃上げ促進税制は、青色申告をしているすべての企業を対象にした制度です。一方、中小企業向け賃上げ促進税制の適用対象に該当する企業は、中小企業向けでの申請ができます。

大企業向け賃上げ促進税制と中小企業向け賃上げ促進税制の違いについて、簡単に解説します。

対象は青色申告書を提出する中小企業

中小企業向け賃上げ促進税制の適用対象となるのは、以下のいずれかに該当する企業です。

  • 資本金または出資金の額が1億円以下の法人
  • 資本または出資を有しない法人のうち、常時使用する従業員数が1,000人以下の法人
  • 常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主
  • 協同組合等(中小企業等協同組合、出資組合である商工組合等)

ただし、前3事業年度の所得金額の平均額が15億円を超える法人は制度の対象外です。

なお、中小企業向け賃上げ促進税制の適用要件と税額控除額は以下のとおりです。

  適用要件 税額控除額
通常要件 雇用者給与等支給額が前年度と比べて1.5%以上増加していること 控除対象雇用者給与等支給増加額の15%を法人税額または所得税額から控除
上乗せ要件① 雇用者給与等支給額が前年度と比べて2.5%以上増加 税額控除率を15%上乗せ
上乗せ要件② 教育訓練費の額が前年度と比べて10%以上増加 税額控除率を10%上乗せ

※上乗せ要件は、①②のうち一方のみ・①②の併用、いずれも可能です。つまり、最大40%の税額控除が可能です
※税額控除額の上限は、法人税額または所得税額の20%です

参考:経済産業省|中小企業向け賃上げ促進税制ご利用ガイドブック
参考:国税庁|No.5927-2 給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除(中小企業者等における賃上げ促進税制)

違いは「雇用者給与等支給額」と「継続雇用者給与等支給額」

中小企業向け賃上げ促進税制では、判定の対象となるのが「雇用者給与等支給額」です。「雇用者給与等支給額」とは、適用年度のすべての国内雇用者に対する給与等(基本給・賞与・残業代など)の総額のことで、この数字が前年度よりも1.5%増えていれば、通常要件を満たすことになります。

つまり、中小企業向け賃上げ促進税制の場合、新たに雇用者を雇い入れて総支給額を増やせば、雇用者一人ひとりの給与を増やす必要はありません。

一方、大企業向け賃上げ促進税制の場合、判定の対象となるのは「継続雇用者給与等支給額」です。「継続雇用者給与等支給額」とは、適用年度とその前年度のすべての期間において、給与等の支給を受けている国内雇用者に支給した給与等の総額をいいます。

つまり、大企業向け賃上げ促進税制の要件を満たすには、継続雇用者の給与を引き上げる必要があります。

要約すると、雇用促進に貢献するのが中小企業向け賃上げ促進税制・賃金アップに貢献するのが大企業向け賃上げ促進税制といえます。

適用対象であれば「大企業向け」「中小企業向け」どちらも選択可

中小企業向け賃上げ促進税制は、適用対象に縛りがあるため、大企業は利用できません。しかし大企業向け賃上げ促進税制の場合、青色申告をしているすべての企業が対象となるため、要件を満たせば中小企業でも利用できます。

なお、ともに適用対象となった場合の併用はできません。どちらか一方を任意で選択する必要があります。

旧制度「人材確保等促進税制」との違い

大企業向け賃上げ促進税制は「人材確保等促進税制」の後継制度です。両者の違いを解説します。

通常要件

変更点

  • 旧「人材確保等促進税制」:新規雇用者給与等支給額が前事業年度よりも2%以上増えていること
  • 新「大企業向け賃上げ促進税制」:継続雇用者給与等支給額が前事業年度よりも3%以上増えていること

新規追加項目

  • 資本金10億円以上、かつ従業員数1,000人以上の企業については、マルチステークホルダー方針(賃金引き上げ・教育訓練等の実施・取引先との適切な関係の構築等の方針)を公表していること

上乗せ要件

変更点

  • 旧「人材確保等促進税制」:教育訓練費の算出の根拠となる明細書の提出義務
  • 新「大企業向け賃上げ促進税制」:教育訓練費の算出の根拠となる明細書の保存義務

新規追加項目

  • 継続雇用者給与等支給額が前事業年度より4%以上増えていること

税額控除額

変更点

  • 旧「人材確保等促進税制」:控除対象新規雇用者給与等支給額の15%または20%
  • 新「大企業向け賃上げ促進税制」:控除対象雇用者給与等支給増加額の15%・20%・25%または30%

参考:経済産業省|大企業向け「賃上げ促進税制」御利用ガイドブック

大企業向け賃上げ促進税制を利用するメリット

企業が大企業向け賃上げ促進税制を利用することで得られるメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。主なメリットを紹介します。

賃金アップ

大企業向け賃上げ促進税制は、継続雇用者の賃金を引き上げて初めて要件を満たす制度です。

つまり、大企業向け賃上げ促進税制が適用された企業では、従業員の賃金がアップします。賃金がアップした従業員は、消費活動や余暇の過ごし方が変わり、日常生活をより楽しめるようになるでしょう。

賃金アップのメリットは、従業員だけにもたらされるものではありません。賃金がアップした従業員は、業務に対するモチベーションとともに、企業に対する帰属意識や貢献意欲も高まります。自然とパフォーマンスが向上することから、結果として企業の業績アップも期待できるのです。

賃金アップの負担軽減

近年の物価高や人材不足を背景に、賃金アップを検討しつつも、資金不足から実現できずにいる企業は少なくありません。そんな企業にとって、政府からの支援のもと賃金アップが行えるのは、この上なく大きなメリットです。

また、税額控除の上乗せ要件となっている従業員への教育訓練は、将来的な企業の競争力維持や更なる発展に欠かせないものでもあります。

従業員への教育訓練を行うことで、税額控除額が増加する大企業向け賃上げ促進税制は、長期的な視野で自社の運営を考える経営層にとって非常に魅力的な制度です。

大企業向け賃上げ促進税制をじょうずに利用しよう

大企業向け賃上げ促進税制は、継続的に雇用している従業員の賃金を引き上げることを通常要件とし、税額控除を行う政府の施策です。

青色申告を行うすべての企業が対象でありながら、税額控除を受けて賃上げや教育訓練を行える非常に魅力的な制度のため、ぜひ利用を検討してみましょう。

なお、企業が行える従業員への貢献としては、賃上げのほか、福利厚生を充実させる方法もあります。

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