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薬剤師の賃上げ|勤務先による違いと2024診療報酬改定との関係性も紹介

薬剤師の賃上げ|勤務先による違いと2024診療報酬改定との関係性も紹介

2025.01.15

薬剤師、看護師など、医療従事者の賃上げが注目を集めています。特に薬剤師の待遇改善は、2024年度(令和6年度)の診療報酬改定の重要ポイントです。本記事では、薬剤師の賃上げについて、勤務先の違いや診療報酬改定との関係、具体的な2024年薬剤師の賃上げ事例を解説します。

薬剤師勤務先の違いと賃上げとの関係を確認

薬剤師の勤務先は、「調剤薬局」「ドラッグストア」「病院」の3つに大別されます。勤務先によって賃上げの過程が異なるため、まずは勤務先の違いを押さえましょう。

調剤薬局

調剤薬局で働く薬剤師の主な業務は、処方箋に基づく調剤と服薬指導です。業務では、患者さんの健康状態や生活習慣を理解し、適切な服薬指導を行うことが重要となり、地域の健康を支えています。

また、処方内容に疑問がある場合は医師への確認(疑義照会)を行うなど、医療安全の最後の砦としても機能します。多くの調剤薬局は小規模で運営されており、スタッフ間の協力が不可欠です。

調剤薬局の薬剤師の賃金は、主に診療報酬をベースとしています。そのため、診療報酬が見直されれば、比例して賃金に反映されます。

病院勤務の薬剤師

病院薬剤師は、外来・入院患者への処方薬調剤に加え、注射薬や点滴の調整・管理を担当し、チーム医療の重要な担い手として活躍しています。

調剤薬局と同様に、病院勤務の薬剤師の賃金についても、診療報酬をベースとしています。2年ごとに変更される診療報酬改定で加算が増えれば、その分について病院薬剤師への賃上げの原資となるのです。

ドラッグストアの薬剤師

ドラッグストア薬剤師は、処方箋調剤とOTC医薬品販売(医師の処方箋がなくても購入できる「要指導医薬品」と「一般用医薬品」)を主軸に、在庫管理や店舗運営全般を担当します。特に患者の体質や症状を考慮したOTC医薬品の選定と服薬指導は、副作用防止の観点から重要な責務です。

2024年度診療報酬改定では、調剤基本料の見直しや対人業務の評価強化が実施され、薬剤師全体の処遇改善が図られています。ただし、診療報酬改定では調剤薬局や病院薬剤師を対象としています。調剤を併設しないケースもあることを考えると、ドラッグストア薬剤師に対する診療報酬改定の影響は限定的と言えるでしょう。

公務員薬剤師

国家公務員と地方公務員として、様々な行政機関で専門性を活かした業務を担うのが公務員薬剤師です。国家公務員の場合、厚生労働省や国立病院機構などで医薬品の審査・許認可や政策立案に携わり、地方公務員は保健所や公立病院などで地域医療や公衆衛生の向上に貢献します。

賃金改定は、人事院(国家公務員)や各地方自治体の人事委員会による給与勧告に基づいて実施されます。民間給与との格差是正を目的として、月例給と期末・勤勉手当の引き上げが実施されるため、いわゆる一般的な「賃上げ」とは異なる点を押さえましょう。

診療報酬改定による薬剤師の処遇改善は、民間給与水準の変化として人事院勧告に反映され、結果として公務員薬剤師の給与にも影響を及ぼす仕組みです。

2024年診療報酬改定による薬剤師賃上げの内容

2024年診療報酬改定について、内容を詳しくみていきましょう。

2024年度の改定のポイント

2024年度診療報酬改定の大きな特徴は、医療従事者の人材確保に向けた特例的な処遇改善である点です。継続的な物価高騰による生活費の上昇に対応するため、ベースアップ(基本給または毎月の手当の引き上げ)を実施し、実質的な賃金の維持・向上を図ります。

薬剤師については、医療の安全性確保や患者さんへの丁寧な薬の説明・指導を行うための人材として、処遇改善に重点が置かれました。今回の改定では主に調剤基本料の引き上げにより、持続可能な医療提供体制の構築を目指します。

2024〜2025年までの賃上げ率目標

物価高に負けずに賃上げを実現するために、以下の賃上げ目標が設定されました。

  • 2024年度:ベースアップ+2.5%
  • 2025年度:ベースアップ+2.0%

2024年と2025年の2年間合計で、合計+4.5%の賃上げを目指します。

賃上げの方法

具体的な賃上げのために政府が推奨するのは、以下3つの組み合わせによる対応方法です。

  • 医療機関や事業所の過去の実績をベースとした対応
  • 2024診療報酬改定による上乗せの活用
  • 賃上げ促進税制の活用

それぞれの内容を説明します。

薬剤師 賃上げ01出典:厚生労働省|令和6年度診療報酬改定と賃上げについて~ 今考えていただきたいこと(薬局)~

医療機関や事業所の過去の実績をベースとした対応

これまでの経営状況や収支実績を基に、安定的に実施できる賃上げ額を設定します。持続可能な賃上げ計画を立てるため、過去の昇給実績や賞与支給実績も参考にします。

2024診療報酬改定による上乗せの活用

2024年度の診療報酬改定で新設された加算や引き上げられた点数を賃上げに活用します。例えば、調剤基本料の引き上げ分や、地域支援体制による加算、医療DXに対応したことによる収入増加分を、薬剤師の給与に反映させることが可能です。

賃上げ促進税制の活用

賃上げ促進税制とは、事業者が一定率以上の賃上げをした場合に、賃上げ額の一部について法人税控除ができる制度です。全企業向け、中堅企業向け、中小企業向けの3種類があり、企業規模や適用要件から自社に最適な支援を受けられます。

薬剤師 賃上げ02

出典:経済産業省|賃上げ促進税制
出典:経済産業省|「賃上げ促進税制」御利用ガイドブック(令和6年8月5日公表版)

賃上げ対象

賃上げの対象となるのは、「40歳未満の薬局の勤務薬剤師」と「病院薬剤師」です。

40歳未満の薬局の勤務薬剤師

2024年診療報酬改定では、40歳未満の薬局薬剤師に対して+0.28%の報酬改定が行われました。調剤基本料の引き上げをベースとして賃上げします。

出典:厚生労働省|令和6年度診療報酬改定と賃上げについて~ 今考えていただきたいこと(薬局)~

病院薬剤師

2024年診療報酬改定では、病院薬剤師に対して+0.61%の報酬改定が行われました。医療従事者の賃上げのための新しい評価であるベースアップ評価料をベースとして、病院薬剤師の賃上げを行います。

出典:厚生労働省|令和6年度診療報酬改定【全体概要版】

報酬改定内容

具体的な報酬改定の内容について、調剤薬局の場合と病院の場合で説明します。

調剤薬局の薬剤師賃上げに関係する報酬改定

主な改定内容である調剤基本料について、以下にまとめます。

区分 対応する薬局 変更前 変更後 増加点数
調剤基本料1 街中にある小さな個人経営の薬局 42点 45点 +3点
調剤基本料2 病院前にある門前薬局 26点 29点 +3点
調剤基本料3イ チェーン薬局 21点 24点 +3点
調剤基本料3ロ チェーン薬局 16点 19点 +3点
調剤基本料3ハ チェーン薬局 32点 35点 +3点
特別調剤基本料A 病院と同じ敷地内にある薬局 7点 5点 -2点
特別調剤基本料B 調剤基本料に係る届出を行っていない薬局 7点 3点 -4点

調剤基本料の引き上げにより、薬局は職員の賃上げに必要な原資を確保します。例えば、月1,000枚の処方箋に対応する薬局のケースです。調剤報酬点数は1点で10円となり、3点の引き上げの場合、3万円の増収となります。

一方で、特別調剤基本料については引き下げが行われます。2024年診療報酬改定には、医療機関との適切な距離感の確保や、標準的な薬局業務体制の整備を促す狙いがあり、同一敷地内薬局や必要な届出を行っていない薬局に対してより厳格な評価となりました。

出典:厚生労働省|令和6年度診療報酬改定と賃上げについて~ 今考えていただきたいこと(薬局)~

病院薬剤師の賃上げに関する報酬改定

新しい評価制度である「ベースアップ評価料」「薬剤業務向上加算」「がん薬物療法体制充実加算」などが新設され、加算内容も見直されました。コロナ禍を経て、医療機関で働く薬剤師の重要性が再評価されながら、他の業界と比較して賃金水準が低いという課題へ対応します。

出典:日本病院薬剤師会|令和6年度診療報酬改定における主要改定項目(病院・診療所薬剤師関係)

実施時期

2024年の診療報酬改定は、2024年6月1日から実施されています。

出典:厚生労働省|令和6年度診療報酬改定と賃上げについて~ 今考えていただきたいこと(薬局)~

2024年薬剤師の賃上げ事例

2024年に薬剤師の賃上げが実現した事例も見ていきましょう。

調剤薬局薬剤師の賃上げ

調剤薬局大手の多くでは、診療報酬改定に対応するため、また、2024年度春闘妥結として高水準の賃上げが達成されました。その結果、40歳未満だけではなく、40歳以上やパート薬剤師の賃上げも実現しています。

アインホールディングス

調剤薬局のアインホールディングスは、厚生労働省からの要請に応え、2024年度に正規従業員の給与水準を定期昇給などで平均6%引き上げました。初任給も月額2万円増です。人的投資の拡大に積極的に取り組み、従業員エンゲージメント向上や優秀な人材の確保による持続的な企業価値の向上を目指します。

出典:アインホールディングス|給与水準の引き上げについて

日本調剤

全国47都道府県で調剤薬局を展開している日本調剤では、2024年4月以降、正社員、準社員、契約社員(60歳未満)、パート社員を対象に平均5.5%の賃上げを実施しました。正社員および準社員について、定期昇給分平均2.0%と、ベースアップ分平均3.5%での賃上げです。

20代の若手への配分を高めるために、水準引き上げのタイミングで新人事制度への移行に伴う報酬改定も実施しました。

出典:日本調剤|給与水準の引き上げについて

ドラッグストア薬剤師の賃上げ

2024年度は、春闘の高水準での賃上げを受ける形で、ドラッグストア業界でも賃上げが実現しています。

ウエルシア薬局

ドラッグストア業界大手のウエルシア薬局では、薬剤師の在宅訪問サービスや薬剤師によるオンライン服薬指導サービスを提供しています。2024年度春闘においては、正規雇用の従業員に総額2万555円(6.07%)、パート従業員に時給88.1円(7.95%)の賃上げを行いました。

ウエルシアユニオンは、パート従業員の割合が多いUAゼンセンに所属しています。UAゼンセンでは、2025年の賃上げ目標を6%基準、パート従業員は7%目標を軸にすることを表明しており、2025年はパートを含めた薬剤師の賃上げが期待されます。

出典:流通ニュース|賃上げ2024/ウエルシア、スギともに正社員満額で妥結

スギ薬局

UAゼンセンに属するスギ薬局でも、2024年春闘での賃上げが実現しています。正規雇用では満額で平均賃上げ総額は1万5,982円(4.89%)、パート従業員は時給79.4円(6.93%)です。

出典:流通ニュース|賃上げ2024/ウエルシア、スギともに正社員満額で妥結

病院薬剤師の賃上げ

2024年6月、日本病院薬剤師会(病院、診療所、介護保険施設等に勤務する薬剤師で組織されている一般社団法人)による全国3,441医療施設の調査によると、病院薬剤師の賃上げは、診療報酬改定で期待されている結果に至っていないことが明らかとなりました。

診療報酬改定が実施された6月の調査において、約2割の施設が「賃上げ予定なし」と回答し、賃上げを実施する施設でも、その多くが2%以上3%未満(「2%以上3%未満」36.3%、「1%以上2%未満」18.2%、「3%以上4%未満」6.7%)に留まりました。

武田泰生会長が「病院薬剤師が特出しされて賃上げを行うとしたのに算定しないのは問題だ」と強い懸念を示しているように、目標である2024年2025年合計+4.5%に到達するのは厳しい状況かもしれません。

出典:薬読|「賃上げ予定なし」約2割~病院薬剤部調査で判明 日本病院薬剤師会

公務員薬剤師の賃上げ

人事院は、2024年度の民間賃上げ結果を反映し、若年層に特に重点を置きつつ、全職員を対象に全俸給表の引き上げ改定をしています。月例給(基本給)を2.76%増、ボーナスを0.10月分引き上げました。公務員薬剤師の初任給は、24万4,400円となり、昨年に比べて2万1,700円の大幅増です。

出典:薬事日報|【人事院】公務員薬剤師、初任給2万1700円増‐民間賃上げ反映し大幅増

2025年の薬剤師賃上げ予測

2024年の実例からは、調剤薬局やドラッグストア業界での積極的な賃上げが見られる一方、病院薬剤師の賃上げには課題が残る結果となりました。この状況を踏まえ、2025年はどのような賃上げが予測されるのでしょうか。2025春闘方針から、今後の動向を見ていきましょう。

春闘方針はその年の賃上げ動向を決める重要な指標です。2025年度は「賃上げがあたり前の社会」を目指すために、以下の要求概要が示されています。

  • 全体の賃上げ目安は3%以上
  • 賃金カーブ維持のための定昇相当分を含めて5%以上、中小企業は6%以上
  • 中小企業では価格是正を行う
  • 賃金実態が把握できない中小企業は価格是正分を含め1万8,000円以上、6%以上が目安
  • 持続的賃上げ、価格是正に向け適切な価格転嫁・適正取引を強化

2024年では、33年ぶりに賃上げ率5%以上を達成しており、2025年では、この流れをさらに強める形の要求方針となりました。

賃上げ予測として、産経新聞社が2024年11月中旬から12月上旬にかけて実施した賃金改善のアンケートがあります。賃金改善を「実施したい(17.1%)」、「検討している(28.8%)」となり、賃上げに前向きな企業が約半数(45.9%)に上りました。

主要企業へのアンケートに加えて、大幅な賃上げを「定着」させることについて、経団連側からの春闘指針にも盛り込まれる予定です。賃金改善が企業の責務となることから、引き続き賃上げの勢いは継続すると予測できます。

出典:連合|2025 春季生活闘争方針について
出典:産経新聞|2025年春闘、賃金改善に前向き姿勢は45% 採用は平年並み55%

福利厚生による薬剤師の処遇改善・賃上げ事例

薬剤師の確保が全国的な課題となっています。国家資格を持つ薬剤師は、その専門性が活かせる職場が全国にあるため、より良い条件を求めて転職するケースが少なくありません。薬剤師不足だと業務そのものが成り立たないことから、全国の調剤薬局やドラッグストアなどでは、薬剤師の採用と定着率の向上に積極的です。

大阪府に6店舗の調剤薬局「くれよん薬局」を店舗展開するM's ファーマ株式会社では、あるユニークなアプローチに取り組みました。食の福利厚生サービス「チケットレストラン」の導入です。「チケットレストラン」は全国25万店舗以上の加盟店で利用でき、なかには大手コンビニも含まれます。毎日使える「手軽さ」と勤務地にも勤務時間にも依存しない「公平さ」を兼ね備えており、府内どの店舗に勤める薬剤師も同じように利用できます。

さらに、食事補助の非課税枠を活用できるという制度上のメリットも魅力です。企業は経費として処理ができ、薬剤師が受け取る企業補助分には所得税がかからないため、双方にとって利点があります。導入実績3,000社以上、継続率99%、利用率98%、満足率93%のサービスを活用し、薬剤師の賃上げと定着率アップに成功しました。

企業ホームページ:https://crayon-p.com/company
導入事例ページ:M's ファーマ株式会社様

薬剤師の賃上げと定着に向け対策を

2024年度は大手調剤薬局やドラッグストアチェーンが次々と賃上げに踏み切り、この動きは2025年も続く見通しです。

そんな中、ぜひ注目したいのが食の福利厚生サービス「チケットレストラン」です。コンビニで使える手軽さが特徴で、勤務地に関係なく全ての拠点の薬剤師が活用できます。賃上げと組み合わせることで、より魅力的な職場環境の実現も可能になるでしょう。人材獲得競争が激化する今、ぜひ「チケットレストラン」導入を検討してみませんか。

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