2024年夏頃より、日本の主食である米の価格が急騰し、全国的に米が不足する事態が発生しています。本記事では、米の値上げの現状と理由、そして企業が取るべき対策について詳しく解説します。
数値で確認する「米の値上げ」の現状
まずは米の値上げの現状を3つの指標を元に確認します。
米価格の推移|前年同月比17%上昇
2024年、米の価格は前年比で大幅な上昇を見せています。農林水産省の調査によると、2024年8月の全銘柄平均相対取引価格(※)は、玄米60キロあたり1万6,133円、前年同月比で17%上昇しました。2006年の調査開始以来、8月としては最高値を記録しています。
※相対取引価格とは、出荷団体(主にJA全農)が卸売業者や小売業者に米を販売する際の契約価格です。これは農家への概算金に諸経費を加えた金額であり、米の市場価格の基準となります。米価が上昇すると、この相対取引価格に反映されます。
出典:農林水産省|令和5年産米の相対取引価格・数量(令和6年8月)(速報)
消費者物価指数への影響|前年同月比約30%の上昇
総務省が発表した2024年8月の消費者物価指数によると、生鮮食品を除いた指数が前年同月比2.8%上昇しました。とくに、コシヒカリを除く「うるち米」は29.9%と、大幅な上昇が見られます。
出典:総務省|2020年基準 消費者物価指数 全国 2024年(令和6年)8月分
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小売価格への影響|2024年7月8月から値上げが加速
身近なスーパーマーケットでも、米の値上げが顕著になっています。一部の店舗では品薄状態が報告されており、陳列棚がガラリと空いた状態を目にして不安になる消費者もいるでしょう。
総務省「小売物価統計調査」主要品目の東京都区部小売価格をみると、うるち米(単一原料米「コシヒカリ」以外)の1袋・5kgの価格は上昇傾向です。2023年9月と比較すると、約1.000円の値上がりで、価格上昇率は約44%となりました。とくに、2024年の7月、8月以降は加速的に値上がりが進む状況です。
時間軸(月) | 価格 |
2023年9月との比較 |
2023年9月との比較 |
2023年9月 | 2,188円 | - | - |
2023年10月 | 2,225円 | +38円 | 約1.7%上昇 |
2023年11月 | 2,279円 | +91円 | 約4.1%上昇 |
2023年12月 | 2,311円 | +123円 | 約5.6%上昇 |
2024年1月 | 2,283円 | +95円 | 約4.6%上昇 |
2024年2月 | 2,300円 | +112円 | 約5.1%上昇 |
2024年3月 | 2,306円 | +118円 | 約5.4%上昇 |
2024年4月 | 2,347円 | +159円 | 約7.3%上昇 |
2024年5月 | 2,403円 | +215円 | 約9.8%上昇 |
2024年6月 | 2,483円 | +295円 | 約13.5%上昇 |
2024年7月 | 2,602円 | +414円 | 約18.9%上昇 |
2024年8月 | 2,772円 | +584円 | 約26.7%上昇 |
2024年9月 | 3,152円 | +964円 | 約44.0%上昇 |
出典:総務省|小売物価統計調査(動向編)
米価格上昇の理由
令和の米騒動は複合的な要因が絡み合い、結果として米の価格が高騰しています。
1.天候不順による収穫量の減少
2023年の記録的猛暑と水不足により、主要な米産地の収穫量が大幅に減少しました。高温による品質低下も重なり、市場の白米流通量が減少しています。収穫量の減少は2024年における米価格上昇の主な要因です。
2.コロナ禍からの需要回復
新型コロナウイルス感染症の影響で落ち込んでいた外食需要が、2023年5月の5類移行後に急回復しました。さらに、訪日外国人観光客の増加も相まって、米の需要を伸ばしている可能性があります。2024年9月18日に公開された日本政府観光局の資料では、7か月連続で同月過去最高(約2,93万人、前年同月比36%増)を更新しました。
また、訪日訪日外国人からみた日本の“食”に関する調査では、滞在時に食べた日本の料理のうち、初めて食べたもの・最もおいしかったもの1 位は「寿司」(68.3%)、初めて食べた日本の料理は、1 位も「寿司」(26.5%)であり、寿司の人気ぶりも米の需要の高まりを後押ししているようです。
出典:日本政府環境局|訪日外客数(2024年8月推計値)
出典:農林中央金庫|~日本に滞在したことのある5カ国の 1200 人に聞く~訪日外国人からみた日本の“食”に関する調査
3.食料品全体の価格上昇との相対的な比較
米の値ごろ感も、米価格上昇と関連があると考えられます。農林水産省「米の需給状況の現状について」でも、食料品全体の価格上昇が続く中、米の価格の上昇は相対的に緩やかで、米の需要が伸びている要因として指摘されています。
出典:農林水産省|米の需給状況の現状について
4.米粒の大きさ問題
米の物理的な大きさも、米の価格を上げる要因です。米は、玄米の時点での大きさで、主食用(大きいもの)・外食用(中米)・加工用(小粒米)に分けられそれぞれ用途が異なります。2023年は高温の影響を受け、例年より粒の大きな米の割合が多くなりました。その結果、加工用の小粒米が不足し、中粒米が加工用に回されるなど、実需バランスが乱れている可能性があります。
令和6年6⽉農林水産省「⽶をめぐる状況について」によると、外食用のふるい下(中米)、加工用のふるい下(小粒米)が例年と比較し、かなり少ないことがわかります。
出典:農林水産省|令和6年6⽉ ⽶をめぐる状況について
出典:NHK NEWS WEB|コメの値上がりの理由は。背景には“粒の大きさ”も!?(2024/6/27)
出典:農林水産省|令和6年6⽉ ⽶をめぐる状況について
5.スポット取引の高騰
スポット市場での米価格が、2024年5月時点で前年比7〜8割増と急騰しています。主な要因は2023年産米の供給不足であり、業者間で米の取り合いが起きていると考えられます。加えて、売り惜しみや仲介業者の思惑も加わり、品薄感と価格高騰に拍車がかかっている状況です。
株式会社クリスタルライフのスポット市場での取引価格の推移では、2024年5月以降の急激な値上がりがわかります。
【令和5年産 関東 銘柄米】
3月上期 | 4月上期 | 5月下旬 | 6月下旬 | 7月下旬 | |
取引価格 | 16,946円 | 18,324円 | 25,103円 | 23,095円 | 24,906円 |
出典:株式会社クリスタルライフ|㈱クリスタルライス取引価格
出典:日本農業新聞|米スポット取引価格 高騰なぜ(2024年6月9日)
出典:株式会社クリスタルライフ|㈱クリスタルライス取引価格
米の価格高騰に対する政府の反応
米の価格高騰に対し、政府はどのような反応を示したのでしょうか。坂本農林水産大臣のコメントを通して見ていきます。
備蓄米の放出はしない
2024年の8月ごろ、政府は米価格の安定化に向けて、備蓄米の放出についての判断を迫られていました。備蓄米とは、後ほど紹介する「平成の米騒動」をきっかけに制度化された国の緊急時用の米の蓄えのことです。
2024年10月1日の坂本元農林水産大臣の退任記者会見では、「備蓄米を放出していたら、5年産米、備蓄米、6年産の新米が折り重なってだぶつく状況となり、混乱を与えていたのではないだろうかと思います。」と述べており、放出しない方向で整理されました。
出典:農林水産省|坂本農林水産大臣退任記者会見概要
新米は作況好調、高止まりに歯止めがかかると予測
政府は米価格の高止まりについて、今年の米の作況が非常に好調であることを根拠に、長期化しないとの見方を示しています。米の値上げに対しての積極的な政策は2024年10月現在「実施されていない」状況です。
出典:農林水産省|坂本農林水産大臣退任記者会見概要
過去の米価格値上げとの比較
過去にも米の値上がりが深刻化したことがあります。今回の米価格値上げとの違いについて、確認していきましょう。
平成の米騒動
1993年、冷夏による米の大凶作で「平成の米騒動」が発生しました。この時は、米の緊急輸入や代替食品の推奨など、政府による緊急対策が取られました。この米の大凶作による米不足を経験として、1995年より政府による米の備蓄を制度化した「備蓄米制度」が始まっています。
出典:農林水産省|備蓄米制度(びちくまいせいど)について教えてください。
「令和の米騒動」との違い
2024年の米の需要増加による品薄や値上げを「令和の米騒動」とよぶこともあります。生産量の減少に加え、需要の急激な回復や国際情勢の変化など、複雑な要因が絡み合って起こった値上げです。
農林水産省による米の作物統計調査(収穫量類年統計)でも平成の米騒動との原因の違いを確認できます。米の出来具合を示す指標「作況指数」では、2024年は101(平年並み)となっていますが、1993年は、74(不良)を記録しており、2024年の米の値上がりが単純な収穫不足が原因ではないことが読み取れます。
作況指数は良(106以上)、やや良(105〜102)、平年並み (101〜99)、やや不良 (98〜95)、不良(94以下)の5区分です。「74」という1993年の大凶作の程度はかなりのものであり、「101」という2024年との違いを理解できます。
出典:農林水産省|米の作物統計調査(収穫量類年統計)(2023年調査)
出典:ごはん彩彩|作況指数って何ですか?
米の値上げ今後の価格見通し
2024年の新米が出回るまでは高値傾向が続くと考えられ、先ほど紹介した総務省「小売物価統計調査」では、東京都区部の2024年9月の米の小売価格は 3,152円と高値でした。
しかし、9月末ごろには生産量の多い銘柄が出荷され、米の品薄感は和らぐと見られています。
また、令和6年7月30日に開催された食料・農業・農村政策審議会食糧部会では、令和6年産の作付は増加傾向と指摘されており、令和7年にかけて米価格は徐々に落ち着いていくと予測できます。
ただし、政府としては、過去に需要が増えた3回において、すべて翌年は需要減少があったことを懸念しているようです。そのため、令和6/7年主食用米等需要量、令和7年6月末民間在庫量ともに令和5/6年よりも減少を見込むなど、需要減に備えたい考えです。しばらく高止まりは続く可能性が高いでしょう。
主食である米の価格の高止まりが予想される中、企業が従業員の暮らしをサポートする対策をスピード感を持って実施することは、従業員からの信頼獲得や、魅力的な企業としての価値向上につながります。ここからは具体的な対策の一つとして、食事補助について紹介します。
出典:総務省|小売物価統計調査(動向編)
出典:農林水産省|食料・農業・農村政策審議会食糧部会 議事録(令和6年7月30日開催)
出典:農林水産省|米の基本指針(案)のポイント 参考資料1
出典:NHK首都圏ナビ|コメいつまで品薄 生産者や通販は?新潟県産コシヒカリが県外出荷本格化 新米や価格は?(2021/9/13)
食事補助で米の値上げに対策
値上げは米だけにとどまりません。帝国データバンクの調査によると、2024年10月に値上げする食品は2,911品目にのぼるそうです。
このような状況の中、エデンレッドジャパンの「ビジネスパーソンのランチ実態調査2024」では、家計が苦しいと回答した割合が8割に達しています。ランチ代の平均価格は昨年比24円アップ、4人に1人は勤務日にランチを食べないことが分かりました。米の値上げでランチで定番のおにぎりなども値上がりし、物価高に苦しむ状況が見えてきます。
また、ランチを食べないことで「やる気・集中力の低下」や「イライラやストレスの増加」など、仕事へ何らかの悪影響が出ている人は半数以上に上りました。
優れたパフォーマンスで業務を遂行するには、食事での栄養摂取が欠かせません。従業員がバランスのよいランチを毎回食べられるようにサポートするなら、食事補助の導入がおすすめです。
食事補助は一定の要件を満たすことで、従業員の税負担を増やすことなく支給できます。同額の賃上げを実施するより、税負担が増えない分、手取り額が上がったことを実感しやすいでしょう。
出典:エデンレッドジャパン|歴史的賃上げでも…8割以上が「お小遣いが増えていない」!「ビジネスパーソンのランチ実態調査2024」
出典:帝国データバンク|「食品主要 195 社」価格改定動向調査―2024 年10月
「チケットレストラン」の概要
エデンレッドジャパンが提供する「チケットレストラン」は、一定の利用条件を満たすと、従業員が実質半額でランチを楽しめる食事補助の福利厚生サービスです。全国25万店舗以上の豊富な加盟店には、コンビニやファミレスなどがあります。「 Uber Eats 」でも利用可能です。毎日使える利便性の高さから、導入企業全体で利用率98%、従業員満足度93%、継続率99%という数字が出ています。
また、導入や運用における負荷も少ないので、通常なら契約から約1か月、最短2週間でスピーディーな導入も可能です。福利厚生による新たな賃上げの選択肢「第3の賃上げ」の代表例としてもテレビやインターネットメディアなどから注目されています。
関連記事:“福利厚生”で実質手取りアップと高いエンゲージメントの実現を「#第3の賃上げアクション」プロジェクト
いつまで続くの?米価格高騰に「チケットレストラン」で対策
米価格の上昇は、主食が米である日本人の食生活と国の経済に大きな影響を与えます。現在、米以外にも身の回りのさまざまなモノの価格が上がっています。ランチの欠食が見られる状況もある中で、従業員が十分パフォーマンスを発揮して仕事に臨めるよう、企業においては従業員の生活サポートにつながる対策が重要です。
たとえば食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」を導入すれば、企業のサポートにより従業員はバランスのよい食事をとりやすくなります。実際に導入した企業では、従業員の食生活の改善が見られた事例もありました。
米やその他の食品などの値上げで家計が苦しいと感じている人が8割を超えている今、食の福利厚生サービス「チケットレストラン」の導入を検討してみませんか。