2025年度の最低賃金は全国平均1,121円となり、全都道府県で初めて1,000円を突破しました。引き上げ額は平均66円で過去最大です。
今年度は発効日が都道府県で大きく異なり、最も早い栃木県が10月1日、最も遅い秋田県が2026年3月31日と半年近い開きがあります。人事担当者にとって、給与改定のスケジュール調整が必要な状況です。
本記事では、2025年度の最低賃金を都道府県別にランキング形式で紹介するとともに、企業への影響や対策を解説します。
2025年度最低賃金の全体像
全国平均が1,000円を上回り、全国規模で最低賃金引き上げが行われています。
全国平均は1,121円に到達
2025年度の地域別最低賃金は、厚生労働省の中央最低賃金審議会が示した目安を基に、各都道府県で決定されました。全国加重平均は1,121円で、前年度の1,055円から66円の引き上げとなります。
引き上げ率は6.3%で、目安制度導入以降で最大規模です。全47都道府県で1,000円を超えたのは初めてのことで、日本の賃金水準における転換点となりました。
最低賃金の目安制度と2025年度の結果
最低賃金の改定は、中央最低賃金審議会から示される「目安」を参考に、地方最低賃金審議会が地域の実情に応じて審議し、金額を決定します。
2025年度の目安は、都道府県を経済状況に応じて3ランクに分類して設定されました。
- Aランク:63円(埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪)
- Bランク:63円(北海道、宮城など28道府県)
- Cランク:64円(青森、岩手、秋田など13県)
ランクごとの加重平均は、Aランクは5.6%、Bランクは6.3%、Cランクは6.7%です。
この目安通りに引き上げた場合、全国加重平均は1,118円となる予定でした。しかし実際の決定額は1,121円となり、39道府県で目安を上回る引き上げが実施されています。特に地方部では大幅な引き上げとなった県が多く、地域間格差の縮小が進んでいます。
出典:厚生労働省|令和7年度地域別最低賃金額改定の目安について
【2025年度版】全国都道府県別最低賃金ランキング一覧
全国都道府県別の最低賃金を完全ランキング形式で紹介します。
| 順位 | 都道府県 | 最低賃金 | 引き上げ額 | 引き上げ率 | 発効日 |
| 1位 | 東京都 | 1,226円 | 63円 | 5.4% | 2025年10月3日 |
| 2位 | 神奈川県 | 1,225円 | 63円 | 5.4% | 2025年10月4日 |
| 3位 | 大阪府 | 1,177円 | 63円 | 5.7% | 2025年10月16日 |
| 4位 | 埼玉県 | 1,141円 | 63円 | 5.8% | 2025年11月1日 |
| 5位 | 千葉県 | 1,140円 | 64円 | 5.9% | 2025年10月3日 |
| 5位 | 愛知県 | 1,140円 | 63円 | 5.8% | 2025年10月18日 |
| 7位 | 京都府 | 1,122円 | 64円 | 6.0% | 2025年11月21日 |
| 8位 | 兵庫県 | 1,116円 | 64円 | 6.1% | 2025年10月4日 |
| 9位 | 静岡県 | 1,097円 | 63円 | 6.1% | 2025年11月1日 |
| 10位 | 三重県 | 1,087円 | 64円 | 6.3% | 2025年11月21日 |
| 11位 | 広島県 | 1,085円 | 65円 | 6.4% | 2025年11月1日 |
| 12位 | 滋賀県 | 1,080円 | 63円 | 6.2% | 2025年10月5日 |
| 13位 | 北海道 | 1,075円 | 65円 | 6.4% | 2025年10月4日 |
| 14位 | 茨城県 | 1,074円 | 69円 | 6.9% | 2025年10月12日 |
| 15位 | 栃木県 | 1,068円 | 64円 | 6.4% | 2025年10月1日 |
| 16位 | 岐阜県 | 1,065円 | 64円 | 6.4% | 2025年10月18日 |
| 17位 | 群馬県 | 1,063円 | 78円 | 7.9% | 2026年3月1日 |
| 18位 | 富山県 | 1,062円 | 64円 | 6.4% | 2025年10月12日 |
| 19位 | 長野県 | 1,061円 | 63円 | 6.3% | 2025年10月3日 |
| 20位 | 福岡県 | 1,057円 | 65円 | 6.6% | 2025年11月16日 |
| 21位 | 石川県 | 1,054円 | 70円 | 7.1% | 2025年10月8日 |
| 22位 | 福井県 | 1,053円 | 69円 | 7.0% | 2025年10月8日 |
| 23位 | 山梨県 | 1,052円 | 64円 | 6.5% | 2025年12月1日 |
| 24位 | 奈良県 | 1,051円 | 65円 | 6.6% | 2025年11月16日 |
| 25位 | 新潟県 | 1,050円 | 65円 | 6.6% | 2025年10月2日 |
| 26位 | 岡山県 | 1,047円 | 65円 | 6.6% | 2025年12月1日 |
| 27位 | 徳島県 | 1,046円 | 66円 | 6.7% | 2026年1月1日 |
| 28位 | 和歌山県 | 1,045円 | 65円 | 6.6% | 2025年11月1日 |
| 29位 | 山口県 | 1,043円 | 64円 | 6.5% | 2025年10月16日 |
| 30位 | 香川県 | 1,036円 | 66円 | 6.8% | 2025年10月18日 |
| 31位 | 大分県 | 1,035円 | 81円 | 8.5% | 2026年1月1日 |
| 32位 | 熊本県 | 1,034円 | 82円 | 8.6% | 2026年1月1日 |
| 33位 | 愛媛県 | 1,033円 | 77円 | 8.1% | 2025年12月1日 |
| 33位 | 島根県 | 1,033円 | 71円 | 7.4% | 2025年11月17日 |
| 33位 | 福島県 | 1,033円 | 78円 | 8.2% | 2026年1月1日 |
| 36位 | 山形県 | 1,032円 | 77円 | 8.1% | 2025年12月23日 |
| 37位 | 宮城県 | 1,038円 | 65円 | 6.7% | 2025年10月4日 |
| 38位 | 秋田県 | 1,031円 | 80円 | 8.4% | 2026年3月31日 |
| 38位 | 岩手県 | 1,031円 | 79円 | 8.3% | 2025年12月1日 |
| 38位 | 長崎県 | 1,031円 | 78円 | 8.2% | 2025年12月1日 |
| 41位 | 鳥取県 | 1,030円 | 73円 | 7.6% | 2025年10月4日 |
| 41位 | 佐賀県 | 1,030円 | 74円 | 7.7% | 2025年11月21日 |
| 43位 | 青森県 | 1,029円 | 76円 | 8.0% | 2025年11月21日 |
| 44位 | 鹿児島県 | 1,026円 | 73円 | 7.7% | 2025年11月1日 |
| 45位 | 高知県 | 1,023円 | 71円 | 7.5% | 2025年12月1日 |
| 45位 | 宮崎県 | 1,023円 | 71円 | 7.5% | 2025年11月16日 |
| 45位 | 沖縄県 | 1,023円 | 71円 | 7.5% | 2025年12月1日 |
| - | 全国加重平均 | 1,121円 | 66円 | 6.3% | - |
トップ10 最低賃金ランキング特徴:大都市圏が上位に
最低賃金ランキングの上位10位は、東京都(1,226円)、神奈川県(1,225円)、大阪府(1,177円)、埼玉県(1,141円)、千葉県・愛知県(1,140円)、京都府(1,122円)、兵庫県(1,116円)、静岡県(1,097円)、三重県(1,087円)となりました。
上位を占めたのは、首都圏、関西圏、東海圏といった大都市圏です。大企業が多く、高い生活費(物価・家賃など)をカバーし、働き手を確保するため賃金額が高く設定される傾向があります。
ワースト10 最低賃金ランキング特徴:地方部でも1,000円台に
最低賃金ランキングの下位10位は、高知県・宮崎県・沖縄県(1,023円)、鹿児島県(1,026円)、青森県(1,029円)、鳥取県・佐賀県(1,030円)、秋田県・岩手県・長崎県(1,031円)となりました。
最下位は高知県、宮崎県、沖縄県の3県が1,023円で並んでいます。最も高い東京都との差は203円です。前年度の212円から地域間格差は若干縮小しています。
2025年度 最低賃金引き上げの特徴
2025年は年をまたいだ発効日が設定された地域があり、従来と異なる対応となりました。
発効日の分散
従来、最低賃金の改定は10月1日前後に一斉に行われるのが通例でした。しかし2025年度は、過去最大の引き上げ幅となったことから、企業側に準備期間を確保する目的で、発効日が大きく分散しました。
発効時期別の都道府県数:
- 2025年10月:20都道府県
- 2025年11月:13府県
- 2025年12月:8県
- 2026年1月以降:6県(最も遅い秋田県は3月31日)
発効遅延による影響
どのような影響があるのか、秋田県を例に解説します。
<秋田県の例>
- 改定後の最低賃金:1,031円
- 発効日:2026年3月31日
- 発効までの最低賃金:951円
秋田県では2026年3月31日まで時給951円のままでも法令上問題ありません。10月1日から発効される地域と比べると、同じ労働時間でも約6か月分の賃金差が生まれる可能性があります。
企業は自社の事業所がある都道府県の発効日を確認し、年をまたぐ場合は給与改定のタイミングを必要に応じて前倒しすることが推奨されます。
2025年度 最低賃金引き上げが企業に与える影響
東京商工リサーチの調査(2025年10月実施)によれば、2025年度の最低賃金引き上げにより、約6割の企業が給与改定を実施しています。
給与改定の状況
「引き上げ後の最低賃金より低い時給での雇用がある」企業は27.1%で、これらの企業は給与改定が必須となっています。一方、「引き上げ後の最低賃金額より低い時給での雇用はなく、給与は変更しない」と回答した企業は43.2%でした。
前回調査(2024年8月)では59.6%の企業が「給与は変更しない」と回答していましたが、今回は16.4ポイント減少しており、2025年度の引き上げ幅の大きさが影響しているとみられます。(2025年度の引き上げ幅は過去最大の66円で、前年度の51円から15円増加)
参考:最低賃金の推移
| 改定後最低賃金 | 2025年度 | 2024年度 | 2023年度 | 2022年度 |
| 全国加重平均 | 1,121円 | 1,055円 | 1,004円 | 961円 |
人件費増加への対応策
人件費増加への対応として、企業が実施・検討している対策は以下の通りです。
- 商品やサービスの価格に転嫁する:39.1%
- 設備投資を実施して生産性を向上させる:20.1%
- 募集人数を抑制する:15.9%
- できる対策はない:14.0%
- 従業員の雇用形態を変更する:13.9%
価格転嫁や設備投資を予定する企業がある一方で、「できる対策はない」と回答した企業も14.0%に達しており、対応に苦慮している状況がうかがえます。
なお、大企業では30.3%、中小企業では23.5%が「最低賃金上昇の影響はない」と回答しました。中小企業の方が影響を受けている割合が高いことがわかります。
時給1,500円への対応
政府が掲げる「2020年代に時給1,500円」の目標については、49.2%の企業が「不可能」と回答しました。対応を可能にするために必要な施策として、以下が挙げられました。
- 賃上げ促進税制の拡充:46.7%
- 生産性向上に向けた投資への助成・税制優遇:44.2%
政府支援の拡充を求める声が目立ちます。
出典:東京商工リサーチ|最低賃金の改定、企業の約6割が「給与を変更」 2020年代の1,500円は「対応不可能」が半数
2025年度の最低賃金ランキングにまつわる質問
2025年度の最低賃金について、よくある質問を紹介します。
Q1. 最低賃金が一番低い県はどこですか?
2025年度の最低賃金が最も低いのは、高知県・宮崎県・沖縄県の3県で、いずれも1,023円です。これらの県は前年度から71円引き上げられ、引き上げ率は7.5%となっています。
Q2. 最低賃金1500円の目標はどうなっていますか?
石破首相は「2020年代に全国平均1,500円」という目標を掲げていましたが、高市首相は2025年11月の国会答弁で具体的な時期や金額の言及を避けています。現在の1,121円から1,500円に到達するには、年平均7.6%程度の上昇が必要です。
出典:毎日新聞|最低賃金1500円目標 高市首相、達成時期の明言避ける
Q3. 日本で1番高い最低賃金はいくらですか?
2025年度の最低賃金が最も高いのは東京都の1,226円です。神奈川県が1,225円、大阪府が1,177円と続きます。
Q4. 最低賃金の対象は?
最低賃金は雇用形態にかかわらず、すべての労働者に適用されます。正規従業員、パート、アルバイト、契約社員など、すべての従業員が対象です。
Q5. 年収の壁と最低賃金の関係は?
最低賃金が上がると、同じ労働時間でも年収が増えます。扶養範囲内で働きたいパート、アルバイト従業員は、就業調整を行う可能性があり、企業側は働き方に対して配慮が必要です。
Q6. 企業が最低賃金に対応するための支援制度は?
業務改善助成金、働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)など、賃上げを支援する制度があります。政府や自治体のホームページを検索すると、最新情報を確認できます。
参考:厚生労働省|最低賃金引上げに向けた中小企業・小規模事業者への支援事業
参考:経済産業省|最低賃金引上げに対応する中小企業・小規模事業者への支援策を公表します
関連記事:【社労士監修】2025年中小企業が使える支援金(補助金・助成金等)
非課税を活用して手取りアップ
2025年度の最低賃金は全国平均1,121円となり、全都道府県で初めて1,000円を突破しました。東京都が1,226円で最高、高知県・宮崎県・沖縄県が1,023円で最も低い水準です。
最低賃金の引き上げに伴い人件費が増加する中、給与以外の方法で従業員の手取りを増やす選択肢として、食事補助の福利厚生があります。
食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」は、一定の利用条件を満たすと月額3,500円まで非課税で提供できます。現在、この非課税枠を7,500円へ引き上げることが政府で検討されており、実現すれば約40年ぶりの改定となる見込みです。
コンビニなど全国25万店舗以上の加盟店で利用でき、3,000社以上の導入実績があります。従業員の手取りを増やしながら、企業は福利厚生費として経費計上できる制度です。
出典:日本経済新|社食補助の非課税枠、月3500円→7500円 物価高で約40年ぶり引き上げ
出典:エデンレッドジャパン|「食事補助」非課税上限の引き上げに向け、 政府へ要望書を提出
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