企業の新卒採用は年々難易度を増しています。特に2026年卒採用では、企業の多くが初任給を引き上げながらも応募数に苦戦しており、従来型の施策が限界を迎えつつある実態が明らかとなりました。学生が本当に重視するものは何なのか、採用力と定着率を高めるポイントとともに分かりやすく解説します。
2026年卒・新卒採用の最新動向
いま、新卒採用の現場では何が起こっているのでしょうか。まずは株式会社マイナビの調査をもとに、2026年卒の新卒採用市場の最新動向を整理していきましょう。
初任給を引き上げた企業は88.8%

出典:マイナビキャリアリサーチLab|マイナビ2026年卒企業新卒採用活動調査
「株式会社マイナビ(以降|マイナビ)」が、2025年6月に行った企業向けの調査(有効回答数3,068社)によると、2026年卒採用に向けて、全体の88.8%の企業が「初任給を引き上げた」と回答しました。
これは、少子化や人材不足の深刻化に伴い、待遇改善を打ち出すことで応募者を呼び込もうとする人材戦略の一環です。
引き上げ額を見てみると、もっとも多かったのは「1万円~2万円未満」(35.7%)で、上場企業では前年より減少したものの非上場企業では増加しました。非上場企業の人手不足がますます深刻化している現状を表す結果となっています。
参考:マイナビキャリアリサーチLab|マイナビ2026年卒企業新卒採用活動調査
インターンシップ実施率は61.9%で過去最高
同じくマイナビの調査によると、インターンシップや仕事体験を実施する企業は61.9%に達し、過去最高を更新しました。
これは採用広報が年々早期化していることを示すもので、学生との接点を増やすために多くの企業が力を入れていることが分かります。
インターンは学生にとって企業理解を深める場であり、応募動機を高める重要なきっかけとなる制度です。「他者よりも一歩先へいきたい」と考える企業の多さ、裏を返すと、他者との差別化に苦心する企業の本音がうかがえる結果といえそうです。
関連記事:新卒採用|インターンシップ・キャリア形成支援成功事例!最新状況や新定義も解説
企業が直面する新卒採用の3大課題
新卒採用をめぐる環境は年々変化し、企業はさまざまな壁に直面しています。ここでは、その三つの課題を整理します。
応募数の不足
マイナビの調査では、「採用活動における現時点での問題点」についても質問しています。その結果、もっとも多くの企業が課題として挙げたのは「母集団(エントリー数)の不足」で、全体の68.8%に上りました。
少子高齢化によって学生数が減少し、採用の売り手市場が続く中、大手を中心とする一部企業へ志望が集中しています。多くの企業は、待遇改善やインターンシップの拡充を行っても十分な応募者を確保できません。
応募数が減れば選考の幅も狭まり、結果的に内定辞退や早期離職のリスクも高まってしまいます。
内定辞退や早期離職の増加
厚生労働省の調査によると、令和3年3月に卒業した大卒者のうち、就職後3年以内に離職した割合は34.9%でした。これは、3人に1人以上が3年以内に離職していることを意味します。
業種別で見ると「宿泊業・飲食サービス業」「生活関連サービス業・娯楽業」「教育・学習支援業」などの離職率が特に高く、業界ごとの差も大きいことが明らかになっています。
また、マイナビが公開している「マイナビ 2025年卒 企業新卒内定状況調査」によると、2024年に入社した新卒従業員のうち、半年後の調査時点(9月~10月)で退職者がいた企業の割合は28.1%でした。さらに、2021年に入社した新卒従業員については、66.8%の企業が「退職者がいた」と回答しています。
つまり、入社から半年で約3割の新卒従業員が退職し、4年が経つと、約7割の企業で新卒従業員の退職が発生しているのです。
参考:厚生労働省|新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)を公表します
参考:マイナビキャリアリサーチLab|マイナビ 2025年卒 企業新卒内定状況調査
「初任給引き上げ」の意外な落とし穴
人手不足への切り札として、初任給の引き上げに踏み切る企業が増えています。一見、非常に有効な手段であり、実際に効果も出ていますが、同時にいくつかの副作用も発生しているのが現状です。ここでは、賃上げ施策のリスクを2つの視点から解説します。
給与アップは一時的なアピール効果にとどまる
初任給の引き上げは、学生の注目を集め、応募数の増加につながりやすい施策です。同調査でも36.8%の企業が「他企業との待遇の差を縮めたり、差をつけることができた」と回答しているほか、21.1%の企業が「求職者に対して効果的なアピールに成功した」と回答しています。
一方で、初任給の引き上げがもたらす効果は恒久的なものではありません。競合他社が同様に引き上げれば優位性は失われ、むしろ人件費負担だけが残ります。また、初任給だけを引き上げても、キャリア全体を通じた収入面で優位性がない場合、将来的な離職のリスクが否定できません。
既存従業員との給与バランスが新たな不満を生む
初任給を大きく引き上げることで、大きな課題となるのが、新しい従業員と既存従業員との給与のバランスです。
すでに数年勤務している若手従業員と新卒従業員とを比較して、それぞれの給与水準に差がない場合、または新卒従業員のほうが高水準の給与を得る場合、既存従業員の不公平感やモチベーション低下を招くことは避けられません。
これは組織全体の士気に影響し、離職の増加やパフォーマンス低下にも直結します。場合によっては、人間関係に軋轢を生み、コミュニケーション欠如による重大なトラブルを招く可能性もあります。
人件費全体の調整を伴わずに初任給だけを引き上げることは、組織の内部バランスを崩すリスクの高い施策なのです。
関連記事:【2025年最新】初任給を引き上げた企業の業界別一覧|30万円超えも
新卒者が求めるのは給与より「働きやすさ」と「安心感」
企業が新卒採用を成功させるには、新卒者にとって魅力的な企業である必要があります。では、新卒者が企業に求める条件とはどのようなものなのでしょうか。ここでは、新卒者の中心となるZ世代の就職観と、企業に求めるポイントについて解説します。
新卒者(Z世代)の就職観の変化
新卒者の多くを占めるZ世代は、多様性や社会的意義を重視する価値観を持ち、企業選びでも「やりがい」や「社会への貢献度」を重要視する傾向があります。
働き方においては柔軟性を求め、リモートワークや副業解禁といった制度を自然に受け入れます。キャリアアップを目的とした転職にも抵抗がなく、入社の時点で将来的な転職を視野に入れているケースも少なくありません。また、心理的安全性を大切にし、意見を言いやすい環境やフラットな人間関係を好むのも特徴です。
経済的な安定も重視する現実的な側面があり、給与や福利厚生の充実度も重視します。一方で同時に従来の世代に比べて「仕事はあくまでも生活の一部」という捉え方が強く、個人のライフスタイルと両立できる職場環境を求める傾向があります。
重視されるのは「給与」と「福利厚生」
マイナビが行った「マイナビ2025年卒年活動実態調査(4月)」によると、新卒者が大手企業の選考に参加する際の決め手として、最多となったのは「福利厚生が手厚い」(51.5%)でした。「給与が高い」(42.6%)は次点で、新卒者の福利厚生への関心の高さが改めて示される結果となっています。
この結果から分かるのは、「給与を含めたパッケージとしての待遇の重要性」です。これは応募の段階で新卒者を引き付ける要素であるとともに、定着率向上に直結する要素でもあります。
大幅な初任給アップが難しい中小企業はなおのこと、いかに福利厚生を充実させるかが新卒採用を成功させる鍵といえそうです。
参考:マイナビキャリアリサーチLab|マイナビ 2025年卒 大学生 活動実態調査 (4月)
福利厚生はどう充実させる?基本をチェック
福利厚生は、採用時のアピールと定着率向上の両方に効果を発揮する重要な施策です。ここでは、企業が福利厚生の充実を図る際に知っておきたいポイントを、おすすめの福利厚生とともに紹介します。
福利厚生は「コスト」ではなく「人材投資」
福利厚生を単なる経費として捉える企業は少なくありません。しかし、実際は人材確保と定着を支える重要な投資です。給与だけを頼りにした採用戦略が難しい中で、新卒者に「従業員を大切にする企業姿勢」をアピールできるのは大きなメリットです。
税制面から見ても、福利厚生には大きなメリットがあります。一定の条件を満たした福利厚生費は非課税枠を利用できるため、同額を給与として支給するよりも従業員の実質的な所得を増やすことができます。
併せて、企業側の法人税の削減効果もあることから、企業はコストを最小限に抑えながら他社との差別化を図ることができるのです。
関連記事:【社労士監修】福利厚生の見直しはどう進める?ポイントを徹底解説!
注目されるのは「従業員のQOLを高める制度」
一般的に、新卒者や若手社員は「給与を含めたパッケージとしての待遇」を求めます。これを踏まえ、注目されるのが従業員の生活の質(QOL)を高める制度です。
制度としては存在していても、従業員から興味を持たれないようではやはり意味がありません。では、実際に従業員からの認知度が高く、利用率・満足度も高い福利厚生にはどのようなものがあるのでしょうか。以下、特に注目度の高い福利厚生制度を3つ紹介します。
例1:食事補助(生活コスト・健康支援)
食費の負担を軽減する食事補助は、従業員にとって日々の生活コストを支える実感の強い制度です。
食生活のサポートをすることで、従業員一人ひとりの健康支援はもちろんのこと、企業としての生産性向上にも寄与します。
新卒者にとっては「働き始めてから生活を支えてくれる制度がある」という安心材料になり、応募意欲を高める効果が期待できます。採用広報でも訴求しやすい即効性のある施策です。
▼3,000社以上の導入実績「チケットレストラン」
食事補助の福利厚生の中でも、近年特に人気を集めているサービスに、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」があります。
「チケットレストラン」は、企業と従業員との折半により、全国25万店舗を超える加盟店での食事を実質半額で利用できる食事補助の福利厚生サービスです。
加盟店のジャンルは、コンビニ・ファミレス・三大牛丼チェーン店・カフェなど幅広く、利用する人の年代や嗜好を問いません。
内勤の従業員はもちろんのこと、出張中やリモートワークの従業員も平等に利用できるため、柔軟な働き方を重視する新卒者へのアピール度も高い施策です。
「チケットレストラン」の詳細は「こちら」からお問い合わせください。
関連記事:チケットレストランの魅力を徹底解説!ランチ費用の負担軽減◎賃上げ支援も
例2:学び直し・リスキリング支援
キャリア形成やスキルアップを後押しする学び直し支援は、Z世代の価値観にフィットする福利厚生のひとつです。
働きながら新しい知識やスキルを習得できる仕組みは、成長意欲の高い新卒者にとって大きな魅力であり、応募段階から強い動機付けになります。さらに、入社後のスキル向上は企業にとっても生産性や競争力の強化につながり、人材の定着効果も期待できます。
制度設計次第でコストを抑えつつ高い効果を発揮でき、採用と人材育成の一体化が可能な投資です。
例3:リモートワーク環境の整備
コロナ禍を経て一般化したリモートワークは、Z世代にとって「柔軟な働き方」を象徴する要素です。
快適に働ける通信環境や在宅勤務手当、周辺機器の購入補助などは、新卒者にとって魅力的な制度であり、入社後の働きやすさを判断する重要な指標になります。
リモートワークは移動負担を軽減し、ワークライフバランスを改善する効果も大きいため、採用段階で強調すれば応募増加も期待できます。これからの時代の柔軟な働き方を支える仕組みとして、広く注目される制度です。
新卒採用の成功は給与と福利厚生の両輪で
新卒採用をめぐる調査からは、人材確保の施策として初任給の引き上げが進んでいる事実とともに、応募不足や早期離職といった課題も浮き彫りになっています。
さらに、Z世代が中心の新卒者は、給与だけでなく、安心して働ける環境や福利厚生を重視している事実も明らかとなりました。
少子化による人材不足の中、安定した人材確保と定着を実現する企業であり続けるためには、給与施策と福利厚生とを両輪で強化することが求められます。次の時代を担う人材を不足なく獲得するための一歩として、積極的な人材投資を進めてみてはいかがでしょうか。
参考記事:「#第3の賃上げアクション2025」始動、ベアーズが新たに参画~中小企業にこそ“福利厚生”による賃上げを! “福利厚生”で、より働きやすく、暮らしやすい社会へ~
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エデンレッドジャパンブログ編集部
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