監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)
IT導入補助金は、主に中小企業や小規模事業者を対象に、ITツールやクラウドシステムの導入費用を国が支援する制度です。「申請の仕方がわからない」「どのようなITツールが対象なのか」といった疑問の声も少なくありません。本記事では、2025年度のIT導入補助金について、制度の全体像から申請の仕方までわかりやすく解説します。
※本記事は2025年度IT導入補助金の情報をもとに作成していますが、制度内容は変更される可能性があります。申請の際は必ずIT導入補助金の公式情報をご確認ください。また、補助金支給対象に該当するか否かのご相談については、公式サイトをご確認のうえ、IT導入補助金事務局(コールセンター)にお問い合わせください。
IT導入補助金とは何か?
「IT導入補助金」とは、経済産業省が実施する中小企業・小規模事業者向けのIT化支援制度です。自社の課題やニーズに合ったITツール(ソフトウェア・サービスなど)の導入にかかる経費の一部を補助し、業務効率化やDXをサポートします。
2025版 IT導入補助金の主な特徴
2025年度は、より使いやすい制度になりました。
- ITツール導入後の定着サポートも補助対象
- 最低賃金近傍の事業者は補助率を2/3に優遇
- セキュリティ対策支援の強化として小規模事業者の補助優遇
利用前に知っておきたいこと
ただし、利用にあたって以下の点は押さえておきましょう。
- 審査があるため、申請しても必ず受給できるわけではない
- 国が認定したITツールのみ対象
- IT導入支援事業者(ベンダー)との連携必須
- 効果報告を義務付け
ポイントを押さえて利用すれば、安価なITツールでも申請でき、比較的短期間で受給できるのが魅力です。
経済産業省が推進する理由
中小企業においてITツールの導入が進んでいない現状があり、デジタル化やDXの取り組みが課題となっています。政府は中小企業の生産性向上と競争力強化を図るため、2017年開始のIT導入補助金など、各種施策を通じ全国の中小企業におけるIT化を促進しています。
2023年や2025年の中小企業白書では、帝国データバンクの調査結果を引用する形で、非デジタル化企業(段階1)の割合が減少していることが示されました。

出典:中小企業庁|2025年版 中小企業白書・小規模企業白書の概要
IT導入補助金2025年度の4つの申請枠
2025年度のIT導入補助金は、大きく分けて4つの申請枠が用意されています。それぞれ補助率や補助限度額、対象となるITツールが異なるため、自社の状況に最適な枠を選択することが重要です。
通常枠
通常枠は、IT導入補助金の基本型となる申請枠です。さまざまな業務プロセスに対応できるITツールの導入と定着を支援します。
| 通常枠 | |
| 活用イメージ | 導入したITツールを活用し、生産性向上に取り組む。
|
| 補助対象経費 |
|
| 補助額上限 | ITツールの業務プロセス
|
| 補助率 | 中小企業:1/2
最低賃金近傍(※)の事業者:2/3 |
補助対象となるITツールについては、以下の業務プロセスに分類されます。通常枠では、1種以上の業務プロセスを保有するソフトウェアを申請できます。ただし、汎用プロセスのみは申請不可です。
インボイス枠(インボイス対応類型)
インボイス枠(インボイス対応類型)は、インボイス制度に対応した会計・受発注・決済機能を持つITツールの導入を支援する枠です。小規模事業者には高い補助率が設定されています。
| インボイス枠(インボイス対応類型) | |
| 活用イメージ | 導入したITツールやハードウェアを活用し、インボイス制度に対応し生産性向上に取り組む。
|
| 補助事業者 | 中小企業・小規模事業者等 |
| 補助対象経費 |
|
補助率と補助額は以下のとおりで、企業規模と対象とするIT機器により異なります。
出典:IT導入補助金2025|インボイス枠(インボイス対応類型)
上記表にあるように、ソフトウェア・クラウドサービスの使用に資するPCやタブレット等の購入費用も補助対象となるのがインボイス枠の特徴です。ただし、申請には以下の条件があります。
- 会計・受発注・決済ソフトと併せて購入する場合のみ(ハードウェアのみの申請は不可)
- IT導入支援事業者からの購入に限定
インボイス枠(電子取引類型)
発注者が受注者にITツール(受発注ソフト)の導入として、無償アカウントを提供する特殊な枠で、該当するITツール導入のための経費を一部補助します。中小企業・小規模事業者等の生産性向上およびインボイス制度への対応を促進する目的で利用できます。
| インボイス枠(電子取引類型) | |
| 活用イメージ | 発注者主導でITツールを受注者に共有し、取引先のインボイス制度対応に取り組む。 |
| 補助事業者 | 中小企業・小規模事業者等に限らず大企業も可 |
| 補助対象経費 | ITツールの導入費用(クラウド利用料最大2年分) |
| 補助額 | 350万円以下 |
| 補助率 | 中小企業・小規模事業者等が申請する場合:2/3以内
大企業等が申請する場合:1/2以内 |
インボイス枠(電子取引類型)は、大企業の申請も可能です。その場合、中小企業等(2/3)よりも補助率1/2と低くなります。
セキュリティ対策推進枠
サイバー攻撃の増加に対応し、セキュリティ対策の強化を支援する枠です。
| セキュリティ対策推進枠 | |
| 活用イメージ | 導入したサービスを活用して、サイバーセキュリティ対策を進める。 |
| 補助事業者 | 中小企業・小規模事業者等 |
| 補助対象経費 | ITツールの導入費用(サービス利用料の最大2年分) |
| 補助額 | 5万円以上~150万円以下 |
| 補助率 | 中小企業:1/2
小規模事業者:2/3 |
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公表している「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているサービスのうち、IT導入支援事業者が提供し、事務局に事前登録されたサービスが対象です。
▼サイバーセキュリティお助け隊サービスリストは以下リンクから確認できます。
https://www.ipa.go.jp/security/otasuketai-pr/index.html
複数社連携IT導入枠
複数の中小企業が連携してITツールを導入する枠です。商工団体やコンソーシアム(※)が申請主体となり、地域全体のDX化を推進します。募集スケジュールや申請方法が他の枠と異なります。
※コンソーシアムとは、複数の企業や団体が共通の目的を達成するために協力して結成する共同事業体です。IT導入補助金では、以下のような構成で申請を行います。
・幹事社(1社):申請の取りまとめ役(ITツールを開発する大手企業等)
・構成員:IT導入補助金の恩恵を受ける中小企業等
| 複数社連携IT導入枠 | |
| 活用イメージ | 商店街など、複数の中小・小規模事業者で連携してITツール等を導入し、地域DXの実現や、生産性の向上に取り組む。 |
| 補助事業者 |
|
| 補助対象経費 |
|
補助額・補助率は以下のとおりです。
通常枠より高い補助率(3/4〜4/5)であり、補助額は最大3,000万円となります。また、その他経費としてコーディネート費や専門家謝金も対象です。
IT導入補助金の補助対象となる中小企業・小規模事業者
IT導入補助金を申請できるのは、主として中小企業・小規模事業者です。個人事業主も申請可能ですが、規模による条件があります。なお、インボイス枠(電子取引類型)では、大企業も申請できます。
補助の対象となる中小企業の一覧:
補助の対象となる小規模事業者の一覧:
ただし、上記2つの表に該当がある場合でも、以下①〜⑥いずれかに該当する事業者は、申請できません。
出典:IT導入補助金2025|IT導入補助金2025公募要領 (通常枠)
IT導入補助金の申請の流れ
IT導入補助金の申請は複数のステップに分かれており、適切な準備と手順が成功の鍵となります。ここでは、申請から交付までの全工程を解説します。
申請前に必須の準備
補助金申請の要件を満たすため「GビズIDプライム」アカウントの取得、および「SECURITY ACTION」宣言を実施します。
GビズIDプライムの取得
IT導入補助金の申請には「GビズIDプライム(ID・パスワード)」が必要です。
- GビズIDのホームページにアクセス
- アカウント申請手続きを実施
- 約2週間後、発行
アカウント発行までに約2週間程度かかるため、補助金の申請を考えたタイミングで早めに手続きしておきましょう。
申請サイト:GビズID
SECURITY ACTIONの宣言
情報セキュリティ対策への取り組みを自己宣言する「SECURITY ACTION宣言」も必須です。IT導入補助金を申請するときに、宣言済みのアカウントIDの入力が必要となります。
- IPAの公式サイトから「自己宣言申し込みフォーム」にアクセス
- 取り組み目標(「★一つ星」または「★★二つ星」を選択)を決める
- 必要事項を記入し申請完了
- 約1週間後、ID取得
自己宣言ID取得までには1週間程度かかるため、早めの申請が大切です。
申請サイト:SECURITY ACTION セキュリティ対策自己宣言
申請の流れ9ステップ
IT導入補助金2025の新規申請・手続きフロー詳細を参考に、申請手順を説明します。
申請手続きが他の枠と異なる複数社連携IT導入枠については、こちらを参照してください。
ステップ1:IT導入補助金事業への理解
以下のリンク先などの各種資料等を参考に、事業を理解します。併せて、自社の課題の整理としてどの業務フローを改善したいのか、解決したい課題は何かを知ることも大切です。適切な申請枠を見極める際に重要となります。
ステップ2:GビズIDの取得・SECURITY ACTION宣言実施
GビズIDとSECURITY ACTION宣言済アカウントを用意します。まだ取得していない場合、前述「IT導入補助金の申請の流れ」にある「申請前に必須の準備」を参考に準備を進めましょう。
ステップ3:IT導入支援事業者・ITツール選定
補助金の申請を行うにあたり、まず自社の業種、事業規模、経営課題に合ったIT導入支援事業者とITツールを選びましょう。以下のリンクからITツールやIT導入支援事業者の情報をチェックできます。
参考:IT導入補助金2025|ITツール・IT導入支援事業者検索(コンソーシアム含む)
ステップ4:交付申請
交付申請は、IT導入支援事業者との共同作業で進めます。
- IT導入支援事業者との商談で、交付申請の事業計画を策定
- IT導入支援事業者から「申請マイページ」の招待を受けたら、ログインする
- 必要情報を入力し書類を添付
- IT導入事業者が導入するITツール情報、事業計画値を入力
- 申請マイページ上で内容確認のうえ、申請完了
ステップ5:交付決定
審査完了後は、交付決定通知が届きます。通知を受けた申請者は補助事業者となり、補助事業を開始できます。
残念ながら交付決定とならない可能性もあり、採択の状況は以下の申請数・交付決定数を参考にしてください。
申請数および交付決定数(2025年7月24日):
ステップ6:ITツールの発注・契約・支払い
交付申請が完了し、事務局から「交付決定」を受けたらITツールの発注・契約・支払い等ができます。逆に、交付決定前に発注・契約・支払い等をすると補助金が支給されません。
また、補助金交付は事業完了後となり、導入費用は一時的に全額自己負担となります。
ステップ7:事業実績報告
補助事業の完了後は、事業実績報告として実際にITツールの発注・契約、納品、支払い等がわかる書類を提出します。IT導入支援事業者とオンライン上で協力して申請します。
- 補助事業者(中小企業等)が「申請マイページ」にて各種証憑を添付し作成
- IT導入支援事業者が内容確認し必要情報を入力
- 補助事業者(中小企業等)が実績報告書を提出
補助金を受け取るには、適正に事業が行われ、かつ、実績報告期間中の申請が不可欠です。実績報告完了までにすべてのITツールで「事業」が完了し、ITツールの利用・運用が開始されていることも審査のチェックポイントとなります。
なお、補助事業の実施から実績報告の提出まで、交付決定日から6か月間程度の期間内に完了する必要があるため、計画的なスケジュール管理が大切です。
実績報告に必要な主な書類:
| 書類名 | 内容 |
| 請求書・請求明細書 | IT導入支援事業者から発行された請求書類 |
| 支払証憑 | 振込明細やクレジットカード利用明細(一括払いのみ) |
| 補助金交付用の口座情報 | 通帳表紙・裏面またはネットバンキング画面等 |
| 導入証明 | ITツールの画面キャプチャ(ソフト名が確認できるもの) |
ステップ8:補助金交付
補助事業者は「申請マイページ」で確定検査の結果・補助金交付決定額を確認します。内容に相違がなければ承認(SNS認証)を行い、承認後に補助金が交付されます。
締切日当日の17:00は、IT事業者ポータルへのアクセスが集中するため事前の申請が安心です。
入金時期は、事業実績報告から1〜2か月後が目安です。
ステップ9:事業実施効果報告
最後に「申請マイページ」に必要な情報を入力し、ITツールの導入効果を報告する「事業実施効果報告」を作成します。IT導入支援事業者の確認を経て、事業実施効果報告を提出します。
報告期限内の報告が必須です。報告内容は申請枠によって異なりますが、「最低賃金近傍の事業者の補助率を増加」を利用する場合は、数値での報告が必要となります。導入したITツールの解約・利用停止や廃業・倒産等で事業を取りやめた場合も、「辞退届」の提出が必要です。
出典:IT導入補助金2025|新規申請・手続きフロー詳細
出典:IT導入補助金2025|交付決定後に必要な手続き
出典:サービス等生産性向上IT導入支援事業事務局|事業実施効果報告の手引き
出典:サービス等生産性向上IT導入支援事業事務局|後年手続きの手引き
2025年度申請スケジュール
2025年度のIT導入補助金は、複数回の締切が設定されています。
通常枠・インボイス枠(インボイス対応類型、電子取引類型)・セキュリティ対策推進枠
2025年8月以降のスケジュールです。
| 項目 | 日時 | |
| 第4次申請締切日 | 締切日 | 2025年8月20日(水)17:00 |
| 交付決定日 | 2025年9月30日(火)(予定) | |
| 第5次申請締切日 | 締切日 | 2025年9月22日(月)17:00 |
| 交付決定日 | 2025年10月31日(金)(予定) | |
| 第6次申請締切日 | 締切日 | 2025年10月31日(金)17:00 |
| 交付決定日 | 2025年12月11日(木)(予定) | |
| 第7次申請締切日 | 締切日 | 2025年12月2日(火)17:00 |
| 交付決定日 | 2026年1月20日(火)(予定) |
複数社連携IT導入枠
複数社連携IT導入枠は他の枠とはスケジュールが異なります。
| 項目 | 日時 | |
| 第2次申請締切日 | 締切日 | 2025年8月20日(水)17:00 |
| 交付決定日 | 2025年9月30日(火)(予定) | |
| 第3次申請締切日 | 締切日 | 2025年10月31日(金)17:00 |
| 交付決定日 | 2025年12月11日(木)(予定) |
IT導入補助金申請時の注意点
IT導入補助金の申請では、ルールを正しく理解していないと不採択や補助金返還のリスクがあります。
交付決定前のITツールの契約・支払い
前述した内容の補足になりますが、交付決定前に、申請したITツールの発注・契約・支払いを行ってしまうと、補助金は交付されません。以下のようなケースには注意が必要です。
- 交付決定通知前のITツール契約
- 提案段階でのコンサルティング費用
- 仮発注での作業
既存システム追加・カスタマイズは対応不可
自社で導入しているITツールに対して追加のカスタマイズ、ライセンス購入などを行うケースは補助対象外です。既存システムの大幅改修も対象ではありません。ベンダーやITツールは定められたリスト内から選択できます。
過去申請者は採択から12か月間申請できない
2023・2024年度交付決定者は、過去の交付決定日から12か月以内は申請不可です。加えて、過去に申請したものと同じ機能のツールについても申請できません。
IT導入補助金は申請の枠が年度により異なります。過去申請済みの申請枠がある場合は、利用の可否をIT導入支援事業者へ確認してみましょう。
IT導入補助金を活用して事業成長を実現
IT導入補助金の申請を検討されている事業者は、自社の課題を整理し、信頼できるIT導入支援事業者を見つけていくステップが大切です。書類やIDなど必要な準備をしっかり行い、適正な申請で確実な採択を目指してください。インボイス枠(インボイス対応類型)や通常枠などで多くの事業者が補助金を利用しています。
また、IT導入補助金で業務効率化を進めるなら、従業員の福利厚生充実もあわせて検討することをおすすめします。エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、食事補助の福利厚生として日本一の実績を持つサービスです。オフィスでも自宅でも、勤務時間中は専用のICカードチャージ分の支払いで食事代が実質半額です。福利厚生拡充により、働きやすい環境づくりをサポートできます。
<出典>
IT導入補助金2025 公式サイト(IT導入支援事業)
中小企業庁|サービス等生産性向上IT導入支援事業 『IT導入補助金2025』の概要
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