監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)
中小企業の事業をより高いステップへと成長させるのが設備投資です。しかし、多くの場合、投資資金が足りないという悩みも持ちあわせています。そういった課題を解決するのが設備投資に使える補助金です。本記事では、2025年に活用できる設備投資に活用できる補助金をわかりやすく解説します。
設備投資に活用できる補助金とは
設備投資や環境整備に対し、国や地方自治体等が中小企業・個人事業主等を支援する各種制度があります。機械設備、ITシステムなど事業に必要な設備に対する返済不要の資金により、事業の成長を後押しする仕組みです。
設備投資で導入できるもの
設備投資の対象は、事業運営に必要な有形・無形のあらゆる資産です。生産設備を新しく導入したり、古くなったシステムを最新のタイプに更新したりすることを指します。
事業改善のために導入するものは、基本的にすべて設備投資と捉えることができます。実際の補助金制度でも、この考え方に基づいて幅広い用途での活用が可能です。
2025年設備投資に活用できる補助金一覧
設備投資に使える補助金を一覧で紹介します。2025年の最新情報を踏まえ、経済産業省の主要な補助金を中心にまとめました。
出典:経済産業省 中小企業庁|ミラサポplus 人気の補助金
ものづくり補助金【高付加価値化】
中小企業や個人事業主が「新製品・新サービス開発」「海外進出」「設備投資」などに使える国の補助金です。設備やシステム導入の費用を一部サポートしてくれます。
| 項目 | 内容 |
| 補助上限額 | 製品・サービス高付加価値化枠:
グローバル枠: 3,000万円(従業員規模により3,100万円~4,000万円) ※()は賃上げを行う場合の上乗せ |
| 補助率 | 製品・サービス高付加価値化枠:
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| 対象者 | 中小企業 小規模事業者 個人事業主 特定非営利活動法人・社会福祉法人 |
| 主な要件 | 以下を満たす3~5年の事業計画策定と実行
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| 対象経費 | 機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費 グローバル枠では、海外旅費、通訳・翻訳費、広告宣伝・販売促進費も対象。 |
| 参考サイト | ものづくり補助事業公式ホームページ|ものづくり補助金 ものづくり補助事業公式ホームページ|ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領 (第 21 次公募) |
2025年8月時点では、第21次公募として2025年7月25日(金)〜10月24日(金)17:00での応募が可能です。
中堅・中小成長投資補助金【売上拡大】
「省力化や成長につながる大規模投資」を行う際に、国が投資費用の一部を支援します。特に地方における持続的賃上げ実現を目指す事業者に向けた補助金です。
| 項目 | 内容 |
| 補助額 | 上限50億円 |
| 補助率 | 1/3以下 |
| 主な対象者 | 日本国内の中堅・中小企業(従業員数2,000人以下の企業等) |
| 主な要件 |
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| 対象経費 | 建築費、機械装置費、ソフトウェア費、外注費、専門家費 |
| 参考サイト | 経済産業省|中堅・中小成長投資補助金 |
2025年8月8日(金)17:00に4次公募が終了となります。5次公募の実施については現時点(2025年8月)で未発表です。
中小企業成長加速化補助金【売上拡大】(2025年新設)
将来の売上高100億円を目指して、大胆な投資を進める中小企業者を支援する補助金です。賃金水準が高く、日本経済に大きな影響力を持つ企業の成長を国が後押しし、中小企業全体の生産性と稼ぐ力を引上げることが目的です。
| 項目 | 内容 |
| 補助額 | 最大5億円 |
| 補助率 | 1/2以内 |
| 対象者 | 中小企業 |
| 主な要件 |
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| 対象経費 | 建物費、機械装置費、ソフトウェア費、外注費、専門家経費 |
| 参考サイト | jGrants|中小企業成長加速化補助金 中小企業庁|中小企業成長加速化補助金 |
申請では、「100億宣言」の公表が必要となります。申請については、2025年6月9日に一次公募終了となりました。2025年8月時点で次の公募は未発表です。申請を希望の場合は公式サイトの定期的な確認をおすすめします。
事業承継・M&A補助金(事業承継促進枠)【売上拡大】
中小企業や小規模事業者が事業承継やM&Aを契機に、新たな取り組みや事業再編を進める際に、設備投資などの費用の一部を国が補助します。特に経営資源の引継ぎ後に生産性向上や売上拡大につながる取り組みに活用できます。
| 項目 | 内容 |
| 補助額 | 100万円〜800万円(1,000万円)
※()一定額以上の賃上げを実施する場合 |
| 補助率 | 小規模企業者:
小規模企業者以外: |
| 対象者 | 事業承継・M&Aを行う中小企業・小規模事業者等 |
| 主な要件 |
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| 対象経費 | 設備費、外注費、産業財産権等関連経費、謝金、委託費、旅費
※契約・発注が交付決定日以降かつ、補助事業期内に完了、検収・支払も期間内に完了する必要あり |
| 参考サイト | 事業承継・M&A補助金 中小企業生産性革命推進事業 事業承継・ M&A補助金12次公募のご案内 |
2025年8月時点においては12次公募として、2025年8月22日(金)〜2025年9月19日(金) 17:00までの間に申請できます。
小規模事業者持続化補助金(一般型・通常枠)【売上拡大&高付加価値化】
小規模事業者が経営計画を作成し、その計画に基づく販路開拓の取り組みを行う際にかかる経費の一部を国が補助します。働き方改革、被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス制度導入といった制度変更に対応できるよう支援を行います。
| 項目 | 内容 |
| 補助額 | 50万円(特例※による上乗せあり) ※特例 |
| 補助率 | 2/3(賃金引上げ特例選択の赤字事業者は3/4) |
| 対象者 | 小規模事業者(従業員数の業種別上限あり詳細は公式サイト参照) |
| 主な要件 |
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| 対象経費 | 機械装置等費、広報費、ウェブサイト関連費、展示会出展費(オンライン含む)、旅費、新商品開発費、借料、委託・外注費 |
| 参考サイト | 中小企業庁|小規模事業者持続化補助金について 全国商工会連合会|小規模事業者持続化補助金 小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠> 第 18 回公募 公募要領 |
2025年8月時点では、第18回公募として申請開始2025年10月3日(金)〜申請受付締切2025年11月28日(金)17:00での応募が可能です。
中小企業省力化投資補助金【省力化・デジタル化】
人手不足に直面する中小企業が、売上向上や生産性向上のために省力化・デジタル化設備に投資する際、投資費用の一部を国が補助します。中小企業の付加価値額や労働生産性を高め、賃上げにつなげることを目指している制度です。
製品を一覧から選ぶ「カタログ注文型」とオーダーメイドに対応する「一般型」があり、投資規模に応じて設備の選択が可能です。
| 項目 | 内容 |
| 補助額 | カタログ注文型:
一般型:
※()は賃上げを行う場合の上乗せ |
| 補助率 |
カタログ注文型:1/2以下 一般型の中小企業:
一般型の小規模企業者・小規模事業者、再生事業者:
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| 主な対象者 | 中小企業・小規模事業者等(資本金や従業員数など業種ごとに要件あり、詳細は公式サイト参照) |
| 主な要件 | カタログ注文型: 以下すべての要件を満たすこと
一般型:
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| 対象経費 | カタログ注文型:
カタログに登録された省力化製品の購入・導入費 一般型:
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| 参考サイト | 独立行政法人中小企業基盤整備機構|中小企業省力化投資補助金 |
2025年8月時点において、一般型では第3回公募である2025年6月27日(金)〜2025年8月29日(金)が申請可能です。
IT導入補助金(通常枠)【省力化・デジタル化】
中小企業や小規模事業者が業務効率化やDX(デジタルトランスフォーメーション)推進のためにITツール(ソフト・サービスなど)を導入する際の費用を国が一部補助します。
補助金申請では、IT導入補助金事務局に登録された「IT導入支援事業者」とパートナーシップを組んで申請する形式をとります。また、「SECURITY ACTION」宣言も必要です。
| 項目 | 内容 |
| 補助額 | ITツールの業務プロセスが1~3つまで:5万円〜150万円
4つ以上:150万円〜450万円 |
| 補助率 | 中小企業:1/2
最低賃金近傍の事業者:2/3 |
| 対象者 | 中小企業または小規模事業者(資本金や従業員数など業種ごとに要件あり、詳細は公式サイト参照) |
| 主な要件 |
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| 対象経費 | ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)、導入関連費、 |
| 参考サイト |
2025年8月時点で、第5次申請締切日は9月22日です。
中小企業新事業進出補助金【新規事業挑戦】(2025年新設)
中小企業が新しい市場や高付加価値の事業に進出して挑戦することを国が支援し、それを通じて賃金の引上げや企業の成長を促進するための補助金です。
例として、「医療機器製造技術を活かし蒸留所を建設、ウイスキー製造業に進出」など、新規事業の多様な挑戦が対象です。
| 項目 | 内容 |
| 補助額 |
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| 補助率 | 1/2 |
| 主な対象者 | 企業の成長・拡大に向けた新規事業への挑戦を行う中小企業等 |
| 主な要件 |
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| 対象経費 | 機械装置・システム構築費、建物費、運搬費、技術導入費、知的財産権等関連経費、外注費、専門家経費、クラウドサービス利用費、広告宣伝・販売促進費 |
| 参考サイト | 中小企業庁|中小企業新事業進出補助金リーフレット 中小企業新事業進出補助金|応募申請ガイド |
2025年8月時点においては、第1回公募の応募申請期間が2025年7月15日で終了したタイミングです。次期募集については未定のため、最新情報は公式サイトでご確認ください。
設備投資に使える補助金申請の流れ
申請の大まかな流れは以下で共通しています。
- 補助金への理解
- GビズIDプライム取得
- 計画策定、書類の準備
- 電子申請
- 審査後、採択・交付決定
- 事業実施
- 実績報告
- 確定検査・補助金交付
GビズIDプライムとは、行政サービスにログインできるサービスのことで、補助金申請には必須です。必要書類の準備期間も含めると取得までに2週間程度の期間がかかるため、補助金の検討を始めた段階で早めに取得しておくと、いざ申請する際にスムーズに進められるでしょう。
また、補助金ごとに「100億宣言」「SECURITY ACTION宣言」「次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画」といった特有のプロセス、提出書類、要件があります。
地方自治体による補助金
東京都や大阪府など、地方自治体ごとにも補助金・助成金を実施しています。国の補助金よりも条件がよいものが見つかる可能性もあるため、定期的なチェックを推奨します。
参考として、これまでの地域別補助金は以下のとおりです。
- 東京都:躍進的な事業推進のための設備投資支援事業
- 大阪府:新事業展開テイクオフ支援事業
- 京都府:京都市中小事業者の高効率機器導入促進事業補助金
- 愛知県:中小企業デジタル化・DX支援補助金
設備投資で利用可能な税額控除
設備投資に取り組む中小企業が利用できる税額控除制度として主に「中小企業経営強化税制」や「中小企業投資促進税制」があります。補助金と合わせて活用することで実質的な投資コスト削減が可能です。
中小企業投資促進税制
機械装置等の取得時に特別償却または税額控除ができます。
| 項目 | 内容 |
| 対象設備 | 機械装置(160万円以上)、車両運搬具(120万円以上)、一定のソフトウェア(70万円以上)等 |
| 優遇内容 | 個人事業主と資本金3,000万円以下の中小企業者等:特別償却30%、または税額控除7%
資本金資本金3,000万円超の中小企業:30%特別償却 |
| 適用期間 | 2027年3月31日まで |
| 参考サイト | 中小企業庁|中小企業投資促進税制 |
中小企業経営強化税制
経営力向上計画の認定を受けた設備投資に対しての優遇措置です。
| 項目 | 内容 |
| 対象設備 | 生産性向上設備、収益力強化設備 |
| 優遇内容 | 即時償却または税額控除10%
※資本金の額等が3,000万円超の法人は7% |
| 適用期間 | 2027年3月31日まで |
| 参考サイト | 中小企業庁|中小企業経営強化税制 |
設備投資において補助金を活用するメリット
資金確保など、設備投資において補助金を活用によるメリットを見ていきましょう。
1. 資金調達リスクの軽減
設備投資には多額の資金が必要です。補助金を活用することで借入れや自己資金の負担を大幅に削減できます。特に中小企業にとって、返済不要の補助金は資金繰りの改善に直結します。
2. 競争力の向上
最新設備の導入により、品質の向上・納期の短縮・コストの削減を同時に実現できます。これにより、付加価値の高いサービスの提供が可能になります。
3. 労働生産性の改善
人手不足が深刻化する中、設備の効率化や自動化による生産性向上は企業存続の要となります。補助金を活用した設備投資により、現在よりも少ない人員でより多くの成果を生み出す地盤作りが可能です。
4. 経営戦略の選択肢拡大
設備投資における資金面の負担が軽減されれば、人材の採用・マーケティング・研究開発など他の重要分野への投資するための余力が生まれます。バランスの取れた経営戦略を実現しやすくなります。
5. 新市場・新技術への参入機会
「中小企業新事業進出促進補助金」では、高額な最新設備も補助金により導入しやすくなります。これまで参入が困難だった市場や技術分野への挑戦可能性が高まり、新たな事業領域の拡大が収益源を増やすことになるでしょう。
設備投資において補助金を活用よるデメリット
設備投資に関する補助金の活用を検討する際は、メリットだけでなくデメリットも理解した上で判断することが重要です。
1. 申請作業の負担
補助金申請は「書類を出すだけ」という簡単なものではありません。事業計画の練り直しや、申請に必要な数値の整理、関係書類の収集など煩雑で時間を要する作業が発生します。特に初回申請では、慣れない作業に時間を要することも珍しくありません。
2. 設備の選択制限
補助金には補助対象となる設備が細かく指定されており、すべての設備が補助対象となるわけではありません。補助金の対象となる設備は事前に必ず確認しましょう。
3. 入金タイミング「後払い」の影響
補助金は「後払い」が原則です。設備導入時には、全額を自社で立て替える必要があります。特に高額設備の場合、一時的とはいえ資金繰りに影響を与える可能性があります。
4. 効果が出るまでの期間
新設備導入直後は、従業員の習熟不足や運用ルールの未整備により、期待した効果がすぐには現れません。むしろ一時的に生産性が低下することもあり、長期的な収益改善を期待する方針で事業を継続することになります。
設備投資には補助金を賢く活用
設備投資に使える補助金は、中小企業や個人事業主の成長に直結する制度です。2025年も多くの補助金が用意されており、補助金により設備投資だけでなく付加価値向上や新規事業展開など企業の成長戦略の幅が広がります。
企業の設備への投資に並行して、人への投資も大切な取り組みです。人的な投資の代名詞とも言える福利厚生は、企業の生産性を高める地盤強化への効果が期待できます。
福利厚生の一環として、企業の負担を抑えつつ従業員に食事補助を提供できる「チケットレストラン」は従業員の満足度や生産性を上げる効果が期待できる食の福利厚生サービスです。税務面の経費計上のメリットとともに、一定の利用条件下において従業員は所得税の非課税枠活用が可能です。
設備投資と並行して、このような人的付加価値向上に資する福利厚生を導入することで、さらなる成長性の向上が期待できます。
※本記事は2025年8月時点のものです。最新の情報は、各制度の公式ホームページでご確認ください。また、補助金支給対象に該当するか否かのご相談については、事業所がある自治体窓口等にお問い合わせください。
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