監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)
介護を理由に離職する従業員が増えています。政府の調査によると、年間約10万人もの方が介護離職しており、特に企業の中核を担う40代後半から50代の人材流出が課題となっています。
そこで活用できるのが両立支援等助成金の介護離職防止支援コースです。本記事では、2025年からの制度変更点を含む介護離職防止支援コースの種類と助成額、申請の流れについて詳しく解説します。
※本記事は2025年3月時点での情報を元に執筆しており、予算決定前の事前資料に基づいております。最新情報はご確認くださいますようお願い申し上げます。
介護離職防止支援コースとは
介護離職防止支援コースとは、両立支援等助成金のコースの一つで、仕事と介護の両立支援によって労働者の雇用安定を図るために制定された制度です。「介護支援プラン」に基づき円滑な介護休業の取得・復帰や介護のための柔軟な就労形態の制度利用を支援します。
対象となるのは、制度拡充が進みにくい中小企業事業主です。
関連記事:【社労士監修】2025年版|介護離職防止のための両立支援等助成金を解説
介護離職の実態
厚生労働省の「令和4年就業構造基本調査」によると、年間で介護を理由に離職した人は10万人以上に達しています。
出典:総務省統計局|令和4年就業構造基本調査
介護離職者数の推移(男女別)
年 | 総数 | 男性 | 女性 |
2017年 | 99,000人 | 24,000人 | 75,000人 |
2022年 | 106,000人 | 26,000人 | 80,000人 |
また、男女別の割合を見ると、女性の方が男性よりも多く、2022年では全体の約8割を女性が占めています。特に女性が介護と仕事を両立できる支援が求められていると言えそうです。
出典:総務省統計局|令和4年就業構造基本調査
2025年版 介護離職防止支援コースを理解するポイント
2025年4月1日から施行される育児・介護休業法の改正により、全企業は介護離職防止のための新たな義務を負うことになります。
- 介護両立支援制度を利用しやすい職場環境の整備
- 介護に直面した従業員への個別周知と意向確認
- 40歳など早い段階での情報提供
- 要介護家族のいる従業員へのテレワーク選択肢提供が事業主の努力義務
- 勤続6か月未満の従業員を介護休暇から除外する規定を廃止
これに伴い、両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)の内容も2025年4月から変更となります。
出典:厚生労働省|育児・介護休業法令和6年(2024年)改正内容の解説
関連記事:【社労士監修】育児介護休業法の改正をわかりやすく解説。2025年から何が変わる?
2025年版 介護離職防止支援コースの種類と助成額
介護離職防止支援コースの種類は大きく3つの制度に分かれており、さらに要件を満たせば加算があります。
- 介護休業支援(休業取得・職場復帰)
- 介護両立支援制度(柔軟な働き方支援)
- 業務代替支援(2025年4月から強化)
- 雇用環境整備加算
それぞれの内容と助成額について詳しく見ていきましょう。
介護休業支援
介護支援プランを作成し、プランに基づき介護休業を取得・復帰させた場合の支援です。
【2025年の助成額】
- 5日以上の介護休業を取得・復帰をセットで行った場合:40万円
- 15日以上の介護休業を取得・復帰をセットで行った場合:60万円
注意点として、改正前の2024年では、5日間の介護休業で取得時に30万円・復帰時に30万円、合計60万円となっていましたが、2025年からは短期間の介護休業の場合は減額となります。国はより長期の介護休業取得(15日以上)を促進する方針です。
出典:厚生労働省|持続的・構造的な賃上げに向けた三位一体の労働市場改革の推進と多様な人材の活躍推進
介護両立支援制度
介護支援プランを作成した上で、介護と仕事の両立を可能にする柔軟な就労形態の制度を導入した場合に支給されます。
【2025年の助成額】
- 制度を1つ導入し、対象者が制度を1つ利用した場合:20万円(60日以上利用した場合、30万円)
- 制度を2つ以上導入し、対象者が制度を1つ利用した場合:25万円(60日以上利用した場合、40万円)
2024年では、制度を「1つ以上」導入し、対象者が「20日間」利用した場合に30万円支給でした。2025年からは制度導入数が多く、利用日数が長い場合は助成が上乗せされます。
対象となる制度については、以下のとおりです。
- 所定外労働の制限制度
- 時差出勤制度
- 深夜業の制限制度
- 短時間勤務制度
- 介護のための在宅勤務制度
- (法を上回る)介護休暇制度
- 介護のためのフレックスタイム制度
- 介護サービス費用補助制度
出典:厚生労働省|持続的・構造的な賃上げに向けた三位一体の労働市場改革の推進と多様な人材の活躍推進
出典:両立支援等助成金 支給申請の手引き(2024(令和6)年度版)
業務代替支援
介護休業期間中に代替要員を新規雇用等で確保した場合、または周囲の従業員への手当支給により業務を代替させた場合に支給されます。
【2025年の助成額】
- 介護休業中の新規雇用等の確保:20万円(15日以上取得・利用は30万円)
- 介護休業中の手当支給等:5万円(15日以上取得・利用は10万円)
- 短時間勤務中の手当支給等:3万円(※15日以上利用の場合のみ)
2025年から介護休業支援が独立した支援制度として拡充され、金額・内容ともに充実します。企業は介護休業取得者の業務代替体制を柔軟に整備できるようになり、従業員が安心して介護に専念できる環境づくりが進みやすくなります。
出典:厚生労働省|持続的・構造的な賃上げに向けた三位一体の労働市場改革の推進と多様な人材の活躍推進
雇用環境整備加算
2025年の制度では、雇用環境整備措置を4つ全て実施した場合のみ、環境整備加算として10万円が加算されます。
【雇用環境整備措置の4項目(全て実施する必要あり)】
- 介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
- 介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
- 自社の労働者への介護休業・介護両立支援制度等の取得事例の収集・提供
- 自社の労働者への介護休業・介護両立支援制度等の取得促進に関する方針の周知
2024年では「個別周知・環境整備加算」として15万円が支給されていましたが、2025年からは金額が減額され、要件も厳格化されています。
出典:厚生労働省|持続的・構造的な賃上げに向けた三位一体の労働市場改革の推進と多様な人材の活躍推進
出典:厚生労働省|育児・介護休業法令和6年(2024年)改正内容の解説
介護離職防止支援コースの申請の流れ
介護離職防止支援コースの申請手順を説明します。
申請前の準備
制度について、次の手順で従業員へ周知します。
- 就業規則への明文化: 制度を就業規則に明記し、労働基準監督署に届け出る。
- 制度の周知: 企業内で制度を周知する
- 介護支援プランの作成: 対象労働者・上司で面談を実施し「面談シート兼介護支援プラン」を作成する。
申請から支給までの流れ
労働局へ期限内に申請書を提出し、審査後に支給決定通知が届きます。2025年からは介護休業の取得・復帰がセットで申請可能となります。2025年の詳細な申請期限は、2025年3月時点でまだ公表されていません。
詳しくは、厚生労働省のサイトにある「両立支援等助成金 支給申請の手引き」の更新をご確認ください。
参考として、2024年の申請期限を紹介します。
- 介護休業取得時:休業日数5日経過後の翌日から2か月以内
- 介護休業復帰時:終了日から3か月経過後の翌日から2か月以内
- 介護両立支援制度:利用実績20日経過翌日から1か月後の翌日から2か月以内(法定超の制度は6か月経過後起算)
出典:厚生労働省|両立支援等助成金 支給申請の手引き(2024(令和6)年度版)
介護離職防止支援コースに関するよくある質問
助成金の申請では、確認事項が多いため、「要件を満たしているか」、「書類は整っているのか」、などさまざまな不安や疑問が浮かびます。よくある質問を確認し、内容理解を深めましょう。
Q1: 介護離職防止支援コースの対象となる企業規模は?
A:中小企業事業主のみが対象です。なお、業種ごとの資本金または常時雇用する労働者数は以下のようになります。
出典:厚生労働省|両立支援等助成金 支給申請の手引き(2024(令和6)年度版)
Q2: チェックリストはありますか?
A:厚生労働省作成のパンフレット「両立支援助成金の支給申請の手引き」に各申請の必要書類を一覧化したチェックリストがあります。2025版については、厚生労働省のサイトの更新をご確認ください。
参考:厚生労働省|事業主の方への給付金のご案内
Q3: 介護離職防止支援コースの対象となる家族の範囲はどこまでですか?
A: 介護離職防止支援コースの対象となる「要介護状態の対象家族」は、育児・介護休業法で定められた範囲と同一です。対象家族の範囲は以下のとおりです。
- 配偶者(事実婚を含む)
- 父母
- 子
- 配偶者の父母
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 孫
出典:厚生労働省|育児・介護休業法令和6年(2024年)改正内容の解説
制度を活用して法対応を実現
2025年からの制度変更では、長期間の介護休業取得や複数の両立支援制度の導入、業務代替支援の拡充など、より実効性の高い介護離職防止策に対する支援が強化されています。
介護離職防止に向けた取り組みは、助成金を受けられるだけではなく、貴重な人材の流出を防ぎ、働きやすい職場環境を整備することで、企業の持続的な成長につながる戦略なのです。
また、介護と仕事の両立を支援する食事補助などの福利厚生サービスを併用することで、従業員の日常的な負担軽減にも役立てることができるでしょう。エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」も、両立支援への取り組みをサポートできます。
参考記事:「#第3の賃上げアクション2025」始動、ベアーズが新たに参画~中小企業にこそ“福利厚生”による賃上げを! “福利厚生”で、より働きやすく、暮らしやすい社会へ~
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※助成金支給対象に該当するか否かのご相談については事業所がある自治体窓口までお問い合わせください
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