外国人介護人材の受け入れは、介護業界の深刻な人手不足問題を解消する重要な選択肢のひとつです。本記事では、外国人介護人材の受け入れについて、その背景や4つの制度、メリットと課題など、事業主が知っておきたい情報を分かりやすく解説しています。さらに、外国人介護人材の長期的な定着を目指すヒントとして、彼らが日本で長く活躍するための効果的な支援策も紹介しています。ぜひ参考にしてください。
外国人介護人材の受け入れが注目されるのはなぜ?
日本の高齢化率は、2025年には30%を超えることが予想されています。介護サービスの需要は更なる増加が見込まれる一方、少子化による人手不足や待遇などが原因で、需要に対し供給が追いついていないのが現状です。
「厚生労働省の推計」では、2025年には約34万人の介護人材が不足すると予測されており、この深刻な人材不足への対策が急務となっています。
こうした状況を打開するための効果的な対策として、近年増加傾向にあるのが「外国人介護人材の受け入れ」です。特に、介護職員の確保が困難な地方都市の施設や、将来を見据えた人材戦略を進める大規模施設では、外国人介護人材の積極的な受け入れが行われています。
少子高齢化に歯止めがかからない現状を踏まえると、外国人介護人材の重要度は今後ますます高まっていくと考えられます。
参考:厚生労働省|今後の高齢者人口の見通しについて
参考:厚生労働省|2025年に向けた介護人材にかかる需給推計(確定値)について |報道発表資料
外国人介護人材を受け入れるための4つの制度
2025年1月現在、介護事業者が外国人介護人材を受け入れるための制度には【EPA(経済連携協定)】【在留資格「介護」】【技能実習】【特定技能】の4種類があります。ここでは、それぞれの詳細を解説します。
EPA(経済連携協定)
【EPA(経済連携協定)】は、日本と海外の国々との経済連携を強化するための制度です。介護分野では、インドネシア(2008年度開始)・フィリピン(2009年度開始)・ベトナム(2014年度開始)の3カ国から介護福祉士候補者を受け入れています。
制度の対象となるのは、母国で看護師・介護士などの資格や実務経験を持つ人材です。介護福祉士候補者として入国し、来日後の日本語研修を経て、介護施設で就労しながら介護福祉士の国家資格取得を目指します。
最長4年の期間内に国家試験に合格すれば、以降、在留期間の更新制限なく働き続けることができます。万が一不合格だった場合でも、一定の条件をクリアしていれば、1年間の在留期間延長が可能です。国家試験に合格できずに在留期間が満了した場合は帰国しなければなりません。
参考:厚生労働省|インドネシア、フィリピン及びベトナムからの外国人看護師・介護福祉士候補者の受入れについて
参考:厚生労働省|経済連携協定に基づく受入れの枠組
在留資格「介護」
【在留資格「介護」】は、介護福祉士の国家資格を持つ外国人材に与えられる在留資格です。取得方法は以下の2つです。
- 外国人留学生として入国し、日本の介護福祉士養成施設を卒業して介護福祉士試験に合格する
- 技能実習生として入国し、実務経験を経て介護福祉士試験に合格する
【在留資格「介護」】の大きな特徴は、在留期間の更新に制限がないこと、また、配偶者や子どもなど家族の帯同が認められることです。介護施設での就労に加えて介護の指導的立場に就くことも可能で、キャリアアップの道も開かれています。
参考:厚生労働省|介護福祉士資格を取得した外国人の方に対する在留資格「介護」の付与について
参考:厚生労働省|在留資格「介護」
技能実習
技能実習制度は、開発途上国への技能移転による国際貢献を目的とした制度です。介護職種では、入国後の講習を経て、介護事業所での実習を行います。
段階的に技能を習得した実習生は、入国後1年・3年のタイミングで技能評価試験を受検しなければなりません。合格するとそれぞれ2年ずつ実習を延長でき、最長で5年間の在留が可能です。
技能実習生を受け入れる事業所には、技能実習生受け入れの基本要件に加え、以下の要件も求められます。
- 開設後3年以上経過していること
- 訪問系サービス事業所ではないこと
- 技能実習指導員を配置すること(技能実習生5名につき1名以上)
- 技能実習指導員のうち少なくとも1名は介護福祉士資格、または同等以上の専門知識・技術を持つ者であること
- 技能実習を行う事業所における技能実習生の数が一定数を超えないこと
- 入国後講習として、日本語学習(240時間、N3程度取得者は80時間)と介護導入講習(42時間)を実施し、講師に一定の要件を設けること
- 夜勤業務等を行わせる場合は、利用者の安全確保のための必要な措置を講じること(技能実習生以外の介護職員を同時に配置するなど)
なお、実習期間中に介護福祉士の国家資格を取得した場合には【在留資格「介護」】へ変更し、更新の制限のない在留資格を取得することも可能です。
参考:厚生労働省|介護職種の技能実習制度について
参考:厚生労働省|技能実習「介護」における固有要件について
特定技能1号
特定技能制度は、2019年4月に始まった比較的新しい在留資格制度です。介護分野では、技能と日本語能力の両方が求められ、介護技能評価試験と日本語能力試験(N4程度以上)の合格が要件となっています。
在留期間は最長5年間で、その間、施設間の転職も可能です。また、家族の帯同は認められていないものの、技能実習からの移行時には試験が免除されるなど、柔軟な運用がなされています。
即戦力となる人材の確保を目指す事業所に適した制度です。
参考:厚生労働省|介護分野における特定技能外国人の受入れについて
参考:出入国在留管理庁|制度説明資料等|(Explanatory materials for "Specified Skilled Worker",etc)
外国人介護人材受け入れのメリットと課題
外国人介護人材の受け入れは、介護現場に多くのメリットもたらします。一方で、いくつかの課題も抱えています。それぞれの側面について詳しく見ていきましょう。
外国人材がもたらすメリット
介護現場で外国人材を受け入れることで、介護事業所が得られるメリットには、以下のようなものがあります。
- 慢性的な人材不足を解消できる
- 若い世代の人材を確保できる
- 異なる視点からの業務改善提案による職場の活性化ができる
- 多様な価値観の導入によって組織文化が向上する
- スタッフ間のコミュニケーションの機会や質が向上する
- 将来的な管理職候補の育成が可能(【EPA】や【在留資格「介護」】を活用した場合)
- 日本人の応募が集まりにくい地方の勤務地でも採用しやすい
特に人材確保に悩む施設にとって、これらは非常に魅力的なメリットです。外国人材が職場にもたらす価値は、単に人手不足を解消するだけでなく、組織全体の成長を促す可能性を秘めています。
関連記事:人手不足対策に外国人労働者を!受け入れメリット・デメリット 成功事例も紹介
受け入れ時の課題
外国人介護人材の受け入れには、以下のような課題があります。
- 日本語でのコミュニケーションが難しい(専門用語や方言の理解)
- 介護記録や申し送りの正確性に欠けやすい
- 日本特有の介護文化や高齢者への接し方への理解に時間がかかる
- 利用者やその家族とのコミュニケーションが難しい
- 食事や礼儀作法・生活習慣の違いへの対応が必要
- 宗教的な配慮(礼拝時間や食事制限など)が必要
- 給与や待遇について折り合いがつかない可能性がある
これらの課題は、介護事業所運営における不安要素です。課題解決には、適切な支援体制や教育プログラムの導入が求められます。
外国人介護人材に長く活躍してもらうための支援体制
外国人介護人材に長く活躍してもらうためには、職場環境や生活面でのサポート体制を充実させることが大切です。ここでは、具体的な支援策を紹介します。
職場環境の整備
言語や文化の違いを克服するための職場環境の整備は、外国人介護人材の定着に欠かせません。具体的には、以下のような施策が効果的です。
- 通訳の配置:日本語に不安を感じる外国人スタッフのサポートとして、通訳を常駐または必要時に手配します
- 翻訳機器の導入:日常的な業務で使用する翻訳アプリやデバイスを導入し、コミュニケーションの円滑化を図ります
- 多言語対応の社内標識の設置:施設内の案内標識や指示書を多言語で表記することで、外国人スタッフが迷うことなく業務を遂行できます
これらの取り組みを通じて、言語の壁を取り除き、職場でのストレスを軽減することが可能です。
福利厚生を通じたサポート
外国人介護人材が日本での生活を快適に過ごすためには、福利厚生を通じた生活面のサポートも効果的です。具体的には、以下のような施策が挙げられます。
- 住宅支援:安定した住居を提供することで、外国人スタッフが生活の基盤を築きやすくなります。借り上げ社宅の提供や住居費補助が代表的な例です
- 相談窓口の設置:業務や生活上の悩みを相談できる窓口を設置することで、問題が深刻化する前に解決できます
- 食事補助:慣れない土地での食生活を支えるために、バラエティ豊かな食事を安価で提供できる食事補助制度が役立ちます。主な食事補助には、社員食堂・置き型社食・宅配弁当・食事補助券などがあります
これらのサポートを通じ、外国人介護人材に生活面での安心感を提供するとともに、職場への帰属意識を高める効果も期待できます。
関連記事:福利厚生をまとめてチェック!導入メリットから課税についてまで網羅
チケットレストランを外国人従業員に支給している企業様例:日免オートシステム株式会社様
使いやすさが魅力「チケットレストラン」
数ある食事補助の福利厚生の中でも、近年特に人気を集めているサービスに、エデンレッドジャパンが提供する「チケットレストラン」があります。
「チケットレストラン」は、食事補助券型の食事補助サービスで、一定の条件下で利用することにより、全国25万店以上の加盟店での食事を半額で利用可能です。
コンビニやファミレス・カフェなど選択肢が幅広いため、どんな食文化を持つ従業員にも対応できます。多様な文化的背景を持つ外国人介護人材を雇用する企業にとって、非常に魅力的なサービスです。
参考記事:チケットレストランの加盟店は全国25万店舗以上!使えるお店を確認
外国人介護人材から選ばれる事業所を目指して
外国人介護人材の受け入れは、制度の理解から始まり、言語や文化の違いへの対応など、さまざまな準備と支援が必要です。適切な受け入れ体制を整えることで、人材不足の解消だけでなく、職場の活性化という大きな効果が期待できます。
なかでも、「チケットレストラン」のような福利厚生の充実は、多様な文化的背景を持つスタッフのニーズに応えやすく、働きやすい職場づくりの強力なツールとして外国人材の定着に効果的です。
人材の確保と定着が重要な課題となるなか、充実した福利厚生を通じ、すべてのスタッフが活躍できる魅力的な施設づくりを目指してはいかがでしょうか。
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