「ゆるブラック企業」の認知度が高まっています。一見ホワイト企業に見えながら、実は従業員の成長機会ややりがいを奪うゆるブラック企業の実態を知ることは、人材戦略を進める企業にとって重要なヒントになるでしょう。本記事では、特徴や課題、具体的な改善策など、ゆるブラック企業にまつわる知っておきたい情報をわかりやすく網羅しています。ぜひ参考にしてください。
「ゆるブラック企業」とは
働き方改革やパワハラ防止法の施行以降、企業の労務管理への意識は大きく変化しました。長時間労働の是正やハラスメント対策が進む一方で、一見ホワイトながら、ゆるすぎてブラックな環境に陥っている「ゆるブラック企業」という新たな概念が注目を集めています。まずは、ゆるブラック企業の特徴から解説します。
仕事が楽で残業がない
ゆるブラック企業の特徴として、まず挙げられるのが「負荷の軽さ」です。
ゆるブラック企業は、法令遵守の意識が高く、過剰な残業や業務負荷はありません。基本的に定時退社で、ノルマや目標設定も現実的な範囲で行われます。従業員が感じるプレッシャーは最小限で、業務に追われて神経をすり減らすようなこともありません。
ただし、負荷がなく働きやすいということは、裏を返すと成長機会がないということでもあります。長期的なキャリアプランを立て、スキルアップに励む従業員ほど、この環境に危機感を覚えます。「このままここにいては理想のキャリアは実現できない」と感じ、転職を模索するケースも少なくありません。
職場の雰囲気がとても良い
職場の人間関係が良好で、従業員同士で和気あいあいとした雰囲気を育んでいるのも、ゆるブラック企業の多くに共通して見られる特徴のひとつです。
ゆるブラック企業では、パワハラなどのハラスメントもありません。心理的な負担の少ない環境が整っているため、表面的には理想的な職場といってよいでしょう。
しかし、雰囲気が良すぎるからこそ生じる課題もあります。こうした企業では、空気を読み合う同調圧力が働き、建設的な意見をあげにくかったり、必要な指導ができていなかったりしがちです。従業員からの率直な意見や改善提案も出にくく、結果として組織の停滞を招くリスクがあるのです。
給料が上がりづらい
ゆるブラック企業では、業務上の負荷が軽いぶん従業員同士の差別化を図りにくく、頑張りが評価に反映されにくい傾向があります。昇給の機会が限られているのに加え、定時退社が基本なために、残業代による収入増も期待できません。
また、評価基準が不明確なケースも多く、年功序列的な運用に陥りがちです。結果として「努力が報われない」という不満が若手従業員を中心に蓄積されていき、モチベーション低下の大きな要因となります。
スキルが身につかない
定型的な業務が中心で新しいことにチャレンジできず、スキルが身につかないのも、ゆるブラック企業の大きな特徴です。
マニュアル化された仕事を繰り返すだけでは、キャリアの可能性を広げるような専門的なスキルは身につきません。業務の幅が狭いために、多様な経験を積むことも困難です。
特に若手従業員にとって、キャリアの成長が実感できない環境は深刻な課題です。「このままで経験やスキルが伸ばせるのだろうか」という不安は、優秀な人材の流出につながりかねません。
ゆるブラック化しやすい企業の傾向
ゆるブラック化のリスクが高い組織には、一定の傾向があります。自社の現状を客観的に評価するための参考にしてください。
急速な働き方改革の推進
残業の削減や休暇取得の推進など、働き方改革を急ぎすぎると、業務の質や従業員の成長機会が犠牲になることがあります。
特に、具体的な業務改善や効率化のプロセスを踏まずに「とにかく残業を減らす」という数値目標だけを追求した場合、本来必要な業務まで削減されるリスクがあります。結果として従業員の成長機会が失われ、モチベーションの低下につながりかねません。
マネジメント改革が不十分
パワハラ防止の意識が強すぎるあまり、必要な指導や育成まで控えめになってしまうケースもあります。
パワハラは論外ですが、人材を育成する上で適切なフィードバックや建設的な意見交換は必要不可欠です。
後輩や部下への指導にあたる従業員が過剰に萎縮してしまうことのないように、適切な研修や、新しいマネジメントスタイルの確立が求められます。
評価基準があいまい
成果や努力を適切に評価できない組織は、ゆるブラック化のリスクが高まります。明確な評価指標がないことで、年功序列的な運用に偏ったり、チャレンジを評価できない組織風土が形成されたりする可能性が高まるからです。
従業員の成長意欲を引き出すためにも、公平で納得性の高い評価制度を整備し、従業員へ周知することが必要です。
ゆるブラックな環境が生み出す3つの課題
一見働きやすい環境に見えるゆるブラック企業ですが、長期的には企業の成長を妨げる深刻な課題を引き起こします。ここでは、早急な対策が必要な3つの課題について解説します。
優秀な人材の早期離職
転職や独立など、終身雇用以外の選択肢が広がりつつある近年、獲得した従業員が長期的に定着する保証はありません。
特に、成長意欲が強い人材や優秀な人材ほど、キャリアの先行きに不安を感じ、活躍の場を求めて離職を選択する可能性があります。
優秀な人材の早期離職は企業にとって大きな損失です。現在の貴重な戦力を失うのはもちろんのこと、企業としての成長にも深刻な影響を与えかねません。長期的な視点で見ると、企業を支える人材的な基盤の弱体化が懸念されます。
採用における競争力低下
「ゆるブラック企業」という評判は、新卒採用にも大きな影響を及ぼします。
近年の若手人材は、単なる「働きやすさ」だけでなく「成長の機会」や「個人としてのキャリア形成」を重視する傾向が強まっています。
その点、成長機会の乏しい企業は、これらの若手人材が重視するポイントを満たすことができません。そのため、採用市場での競争力が著しく低下します。優秀な人材の獲得が困難になり、人材の質の低下が企業競争力の低下を招く負のスパイラルに陥るリスクがあります。
組織全体の生産性低下
ゆるすぎる環境は、従業員のモチベーション低下を招き、組織全体の生産性を低下させます。成長や積極性が求められないだけにチャレンジ精神や向上心が育まれにくく、「現状維持」が当たり前の組織文化が形成されてしまうからです。
こうした環境では、イノベーションが起きにくく、市場環境の変化への対応も遅れがちです。組織としての停滞を目の当たりにし「このままで大丈夫だろうか」という不安を抱える経営者も少なくありません。
人材に選ばれる企業に共通する特徴とは
ゆるブラック企業とは対照的に、若手人材から選ばれ続ける企業も多数存在します。それらの企業に共通する特徴とはどのようなものなのでしょうか。
適度な成長機会がある
従業員の成長をうまくサポートしている企業では、実践を通じた学びの機会を積極的に提供しています。
たとえば、新しい業務へのチャレンジや、部署を超えたプロジェクトへの参加機会が設けられているため、さまざまな役割に挑戦し、多様なスキルを身につけることが可能です。さらに、異なる部門との協力を通じて新たな視点を得られるため、課題解決能力やリーダーシップといった汎用性の高いスキルも磨かれます。
また「頑張ればステップアップできる」という実感を持てる仕組みづくりも重要です。研修制度や実践の場を多く提供することで、従業員は自分自身の成長を実感でき、さらなるモチベーションにつながります。
キャリアパスが明確で、次のステージが見えている環境は、従業員のモチベーション維持にも効果的です。
従業員同士が活発にコミュニケーションをとれる
組織における良好な人間関係は、単なる「仲の良さ」とイコールではありません。求められるのは、必要な相談や報告を漏らさず、かつ気軽に行える先輩後輩の健全な関係性です。そうした環境では、実践的なOJTも自然と機能します。
たとえば、従業員同士のコミュニケーションが活発な企業では、休憩時間や食事の時間が部署を超えた情報共有の場としても機能しています。
リラックスした雰囲気の中で行われる情報交換や相談は、従業員同士の横のつながりの形成とともに、組織の活性化に大きく貢献するものです。
頑張りが評価に反映される
選ばれる企業では、明確な評価基準のもと、従業員の努力が適切に評価されています。単なる成果だけでなく、プロセスや挑戦する姿勢も評価対象とすることで、従業員の成長意欲を後押ししているのが特徴です。
評価は給与だけでなく、新しい仕事への挑戦機会という形でも還元されます。こうした好循環が、従業員の「この会社で頑張りたい」という気持ちを育み、企業の生産性にも寄与します。
オンオフのメリハリがある
働きやすさと成長機会のバランスが取れているのも、選ばれる企業の特徴です。適度な業務負荷がある一方で、休暇取得や福利厚生も充実し、メリハリのある働き方が可能な環境が整っています。
特に、共働きが主流となった近年では、自由度の高い働き方を実現できる企業の評価が高まっています。リモートワークや時短勤務・フレックス制度などはもちろんのこと、育児・介護休暇といった、従業員のライフステージに寄り添う制度が提供されている企業も高く評価される傾向です。
成長を支える福利厚生の重要性
人材の獲得や定着において、福利厚生の果たす役割は想像以上に大きいものです。ここでは、企業が福利厚生を充実させるメリットと、中でも特に従業員へのアピール度が高い魅力的な福利厚生について解説します。
そもそも福利厚生とは?
福利厚生は、企業が従業員へ提供する給与以外の報酬をいいます。福利厚生には、健康保険・介護保険・厚生年金などの法律で提供が定められた「法定福利厚生」と、通勤手当・食事補助・慶弔見舞金のような、企業が独自に提供する「法定外福利厚生」の2種類があります。
法定福利厚生とは異なり、法定外福利厚生の提供は企業の義務ではありません。それだけに、企業の従業員へ対する貢献心や、健全な企業体制の指標として評価される傾向にあります。
実際に、福利厚生の充実度は、求職者が企業を見極める重要な要素のひとつとなっています。
福利厚生を充実させるメリット
福利厚生の充実は、企業に以下のような多くのメリットをもたらします。
- 採用市場での他社との差別化ができる
- 従業員のモチベーションとパフォーマンスが向上する
- 従業員満足度が高まる
- ESG投資における企業価値の向上が期待できる
- 離職率の低下によって人材を安定的に確保できる
「従業員を大切にし、還元する企業」という評価は、優秀な人材の獲得・定着に大きく貢献するのみならず、企業イメージや企業価値の向上にもつながります。
参考:ESG経営とは?採用力強化と企業価値向上をかなえる新時代の経営戦略
食の福利厚生で企業と従業員を支える
数ある食事補助の福利厚生の中でも、近年ますます導入企業を増やしているのが、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」です。
「チケットレストラン」は、一定の条件下で利用することにより、全国25万店舗以上かつ幅広いジャンルの加盟店での食事が半額になる福利厚生の食事補助サービスです。加盟店のジャンルはさまざまで、コンビニ・ファミレス・カフェ・三大牛丼チェーン店など、利用者の嗜好を問わず、健康面での制限にも対応できます。
また、勤務時間内であれば使用する時間や場所は自由なサービスです。リモートワークや出張中など、利用状況を問いません。
日常的に使用する食事を福利厚生として提供することにより、従業員の企業に対するエンゲージメントとモチベーションを効果的に高める効果が期待できます。ゆるブラック企業化を防ぎ、活力ある組織づくりを目指す企業にとって、効果的な施策のひとつといえるでしょう。
関連記事:「チケットレストラン」の仕組みを分かりやすく解説!選ばれる理由も
ゆるブラック企業は卒業!選ばれる企業になるためのポイント
「ゆるブラック企業」は、多くの企業が直面している現代的な課題です。働き方改革後の新たなステージとして、「働きやすさ」と「成長機会」のバランスが、これまで以上に重要になっています。
企業の成長には、適度なチャレンジ機会の提供や明確な評価制度の構築、そして福利厚生の充実など、複合的なアプローチが必要です。特に、「チケットレストラン」のような食事補助の福利厚生は、従業員の満足度向上とコミュニケーション活性化の両面で効果を発揮します。
ゆるブラック企業を卒業し、企業と従業員がともに成長できる、真に選ばれる組織づくりを目指しましょう。