人手不足が深刻化する今、企業における人材定着が重要な課題となっています。エン・ジャパン株式会社が実施した「本当の退職理由」調査(2024)は、この課題に対する貴重な洞察を提供するものです。この調査は、退職経験のある4,658名を対象として、2024年5月18日~7月12日行われ、表面上の退職理由と本当の退職理由の差異、そしてそれらが従業員エンゲージメントにどのような影響を与えているかを浮かび上がらせています。
本記事では、2024年7月31日に発表された「本当の退職理由」の調査結果(※)を元に、企業に求められる課題とその対策について考察していきます。
※「本当の退職理由」調査(2024)(https://corp.en-japan.com/newsrelease/2024/38267.html)
退職理由の実態:表面上の理由と本音の乖離
エン・ジャパンの調査結果によると、実に54%の回答者が「退職時に企業に伝えなかった本当の退職理由がある」と回答しました。半数以上の従業員が真意とは異なる退職理由を企業に伝えたということであり、多くの企業が従業員の真の声を聞き逃している可能性が示されています。
伝えなかった理由のトップは「話しても理解してもらえないと思ったから」(46%)でした。次いで「円満退社したかったから」(45%)、「言う必要がないと思ったから」(33%)と続きます。これらの結果は、企業と従業員の間に深刻なコミュニケーションギャップが存在していることを示すものです。
出典:エン・ジャパン|「本当の退職理由」調査(2024)
調査結果によると、20代の女性は「退職以前の面談で、会社に対する不満を言ったことがあったが聞いてもらえなかったため」と回答しています。また、30代の男性は「有給取得を申請したところ、理由をしつこく聞かれたり、威圧的な態度で迫られた経験があり、退職時も同様の態度を取られることに懸念があった」とコメントしました。
これらの声は、日常的なコミュニケーションの中で従業員の声に耳を傾ける機会を逃している企業の実態を浮き彫りにしています。離職率に大きく関わる要素の一つに、従業員エンゲージメントがあります。そして、従業員エンゲージメントを高めるためには、オープンで信頼できる対話の場を設けることが不可欠です。しかし、回答が示唆する企業の姿は、従業員エンゲージメントの低下を招くような姿勢と言わざるを得ません。
具体的なエピソードから見る従業員の本音
調査では、退職理由を伝えなかった具体的なエピソードも収集されています。企業が見逃しがちな従業員の本音として重要な声であるため、以下に紹介します。
- 20代男性:「何も変わらないと思っていたし、辞める決心がついていたため伝える意味がないと思った。」
- 30代女性:「パワハラを容認している職場なので、伝えても理解されないと判断した。」
- 40代男性:「取引先企業からスカウトされての退職であったため、企業間で問題になる恐れもあり伝えられなかった。」
- 40代女性:「会社がパワハラを認識していたが、対応していなかったため。」
上記のようなエピソードから、多くの従業員が職場環境の改善に対して、諦めの気持ちを抱いていることがわかります。とくに、パワハラなどの深刻な問題に対して、企業側の対応が不十分だと感じている従業員が多いことは注目に値し、今一度自社の状況を確認する必要があるかもしれません。
退職理由を伝えないことによる企業への悪影響
退職理由を正直に伝えないことは、短期的には円満退社につながるかもしれません。しかし、長期的に見れば、企業にとって重要な改善の機会を逃すことになります。
具体的には、組織内の本質的な課題点が放置され続ける可能性が高くなります。その結果、同様の理由で退職する従業員が後を絶たず、人材の流出を加速させてしまうかもしれません。さらに、退職した従業員の口コミによって企業の評判が低下し、新たな優秀な人材の獲得が困難になるという悪循環に陥る可能性もあります。退職が続く状況を不安に感じる従業員も多いです。従業員のエンゲージメントの低下にもつながり、組織全体の生産性に悪影響を及ぼすことが懸念されます。
このように、退職理由を隠すことは、表面的には問題ないように思われますが、企業の長期的な成長と健全性を脅かす要因となり得るのです。
表面上の退職理由と本当の退職理由の乖離
調査では、会社に伝えた退職理由と本当の退職理由の間に大きな乖離があることも明らかになりました。会社に伝えた退職理由は以下のとおりです。
【会社に伝えた退職理由】
- 別の職種にチャレンジしたい(22%)
- 人間関係が悪い(21%)
- 家庭の事情(21%)
- 自身の病気・怪我(19%)
- 給与が低い(16%)
- 別の業界にチャレンジしたい(13%)
- 社風・風土が合わない(12%)
- 会社の将来性に不安を感じた(12%)
- 成⾧の実感がなかった(11%)
- 評価・人事制度に不満があった(9%)
- 残業・休日出勤が多かった(9%)
- 福利厚生他、待遇が悪い(5%)
- 異動・転勤の内示(4%)
- 退職理由を伝えなかった(7%)
- その他(13%)
一方、本当の退職理由は以下のようになっています。
【本当の退職理由】
- 人間関係が悪い(46%)
- 給与が低い(34%)
- 会社の将来性に不安を感じた(23%)
- 評価・人事制度に不満があった(22%)
- 社風・風土が合わない(21%)
- 残業・休日出勤が多かった(16%)
- 福利厚生他、待遇が悪い(15%)
- 成⾧の実感がなかった(13%)
- 別の職種にチャレンジしたい(6%)
- 自身の病気・怪我(5%)
- 別の業界にチャレンジしたい(6%)
- 家庭の事情(3%)
- 異動・転勤の内示(2%)
- その他(18%)
出典:エン・ジャパン|「本当の退職理由」調査(2024)
特筆すべきは、会社に伝えた退職理由で1位だった「別の職種にチャレンジしたい」(22%)が、本当の退職理由では9位(6%)まで下がっていることです。また、「家庭の事情」(21%)も伝えた理由では2位でしたが、本当の理由では12位(3%)にまで落ち込んでいます。
この結果からわかるのは、多くの従業員が本音を隠して退職している、ということです。また、本当の退職理由の1位が、「人間関係が悪い」という理由であることは、職場環境の改善が急務であることを示唆しています。
従業員エンゲージメントと離職率の関係性
本当の退職理由についての調査結果は、従業員エンゲージメントと離職率の間に密接な関係があることを示しています。本当の退職理由として挙げられている「人間関係が悪い」「給与が低い」「会社の将来性に不安を感じた」といった要因は、いずれも従業員エンゲージメントを低下させる主要な原因となるからです。
低いエンゲージメントは、生産性の低下や職場の雰囲気の悪化につながり、最終的には高い離職率を招くことになります。逆に言えば、これらの要因を改善することで、従業員エンゲージメントを高め、離職率を下げられるのです。
退職代行サービスの利用実態
近年注目を集めている退職代行サービスについても、本調査では興味深い結果が得られています。実は退職代行サービスの認知度は74%と高く、多くの人がその存在を知っていることがわかりました。しかし、実際の利用経験者は3%にとどまっています。利用意向については以下のような結果となりました。
- 使ったことがあり、今後も使いたい:1%
- 使ったことがあるが、今後使いたいと思わない:2%
- 使ったことは無いが、今後使ってみたい:22%
- 使ったことが無く、今後も使ってみたいと思わない:75%
上記の結果によると、多くの人は退職代行サービスの利用に対して慎重です。利用経験者の声を見ると、「ストレスなく退職できる」というメリットはあるものの、「お金がかかる」というデメリットも挙げられています。
また、利用に否定的な意見として「業務引継ぎをせずに退職することは自分には考えられない」「自分で伝えて退職したい」といった声もありました。多くの従業員が責任感を持って退職というプロセスに臨もうとしていることがわかります。
退職代行サービスの普及が抱える課題と対策
退職代行サービスの認知度が74%にも達していることは、現代の労働環境における一つの課題でしょう。なぜなら、多くの従業員が直接対話による退職に困難を感じていることの表れとも考えられるからです。
企業が従業員の円滑な退職プロセスを支援するには、いくつかの重要な対策が考えられます。まず、オープンなコミュニケーション文化を醸成し、従業員が自由に意見や懸念を表明できる環境を整えることが大切です。潜在的な問題を早期に把握し、対応ができる環境を作ります。次に、ハラスメント対策を強化し、厳格な防止策と迅速な対応体制を整えることで、従業員が安心して働ける職場環境を確保します。
退職手続きやスケジュールを明確に定めた円滑な退職プロセスを確立し、従業員に周知することで不安を軽減するのも効果的です。退職面談の質を向上させ、面談担当者のスキルを磨くことで、建設的な対話を通じて組織改善のヒントを得るよう、促すことも重要です。
これらの施策によって、従業員が安心して退職の意思を表明できる環境が整えば、突然の退職や無断欠勤のリスクが減少します。また、退職後も良好な関係を維持することで、企業の評判向上や将来的な再雇用の可能性にもつながるでしょう。
「本当の退職理由」(2022年)の主な退職理由との比較
エン・ジャパンでは2022年にも本当の退職理由についてのアンケート調査(対象者は『エン転職』を利用するユーザー10,432名、期間は2022年8月29日〜9月27日)を実施しています。2022年は、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、働き方が大きく見直されるとともに、インフレ・物価上昇が顕著になっていく年です。この2年間を経て「本当の退職理由」がどのように変化したかについても確認し、人材定着における企業の喫緊の課題をより強く認識しましょう。
本当の退職理由(2022年)
2022年の本当の退職理由(全体の平均)は以下のようになっています。
【本当の退職理由(2022年)】
- 職場の人間関係が悪い(35%)
- 給与が低い(34%)
- 会社の将来性に不安を感じた(28%)
- 社風・風土が合わない(24%)
- 評価・人事制度に不満があった(22%)
- 仕事内容が合わない(18%)
- 残業・休日出勤が多かった(17%)
- 福利厚生他、待遇が悪い(16%)
- 新しい職種にチャレンジしたい(8%)
- 異動・転勤の内示(4%)
- 結婚など家庭の事情(3%)
- その他(7%)
出典:エン・ジャパン|『エン転職』1万人アンケート(2022年10月)「本当の退職理由」実態調査
2022年と2024年「本当の退職理由」データの比較・分析
2022年と2024年のデータを比較・分析すると、以下のような興味深い傾向が見られます。
1.人間関係の悪化が深刻化
「職場の人間関係が悪い」という理由が35%から46%に大幅に増加しています。これは最も顕著な変化で、職場環境の重要性が一層高まっていることを示唆しています。
2.給与に関する不満は横ばい
「給与が低い」という理由は34%で変わっていません。給与水準に対する不満が継続的な課題であることを示しています。
3.将来性への不安が減少
「会社の将来性に不安を感じた」という理由が28%から23%に減少しています。経済状況の改善や企業の努力により、従業員の将来に対する不安が若干緩和された可能性を示しています。
4.評価・人事制度への不満が横ばい
「評価・人事制度に不満があった」という理由は22%で変わっていません。多くの企業で人事制度の改善の余地があることを示していると考えられます。
5.社風・風土の不一致が減少
「社風・風土が合わない」という理由が24%から21%に若干減少しています。企業文化の多様性が進んでいる可能性を示唆しています。
6.新たな理由の出現
2024年のデータでは「成長の実感がなかった(13%)」という新しい理由が登場しました。従業員のキャリア開発への関心が高まっていることを示すと考えられます。
7.残業・休日出勤の問題は依然として存在
「残業・休日出勤が多かった」という理由は16-17%で大きな変化がありません。働き方改革の継続的な必要性を示しています。
8.その他の理由の増加
「その他」の理由が7%から18%に増加しています。退職理由が多様化しているからだと考えられそうです。
結論として、この2年間で職場の人間関係がより重要になり、個人の成長や多様な理由が退職の決め手になってきていることがわかります。しかしながら、給与や評価制度、労働時間に関する課題は依然として存在しており、企業は評価制度や労働時間の見直しにも継続的に取り組まなければなりません。
出典:エン・ジャパン|『エン転職』1万人アンケート(2022年10月)「本当の退職理由」実態調査
出典:エン・ジャパン|「本当の退職理由」調査(2024)
関連記事:離職率が高い原因は?離職率低下に効果的な施策を解説
人材定着に貢献!食の福利厚生による離職防止
最後に、近年注目を集めている「食の福利厚生」による離職防止策について紹介します。
食事は日々の生活に欠かせないものであり、従業員の健康と満足度に直結することから、重視すべきことです。企業が従業員に対して福利厚生として、質の高い食事を提供することで、以下のような効果が期待できます。
- 健康増進:栄養バランスの取れた食事を提供することで、従業員の健康状態が改善され、病気による欠勤が減少する可能性があります。
- コミュニケーションの活性化:社員食堂などによる共有スペースでの食事時間は、部署を超えたコミュニケーションの機会を創出します。「人間関係が悪い」という離職理由の改善にも寄与するでしょう。
- 経済的支援:食事補助は、実質的な給与アップと同様の効果があります。「給与が低い」という不満の緩和につながる可能性があります。
- 職場環境の改善:質の高い食事を提供することで、職場環境の快適性が向上します。「社風・風土が合わない」という理由での離職を防ぐ一助となるでしょう。
- 企業に対する帰属意識の向上:食を通じた福利厚生は、企業が従業員を大切にしているという姿勢の表れです。従業員エンゲージメントが高まる可能性があります。
快適な職場環境を目指せ、離職防止にも効果が期待でき、しかも健康経営にもつながるなど、食の福利厚生の導入は企業にとって多くのメリットがあります。一方で、その効果ゆえに食の福利厚生には多様なサービスが存在し、選択に迷うことも多いでしょう。
次章では、各種メディアでも紹介されている注目の福利厚生サービス、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」を紹介します。人気の理由を見ていきましょう。
関連記事:NHK「ニュース7」でエデンレッドジャパンが紹介されました
関連記事:毎日新聞電子版でチケットレストランの記事が掲載されました
「チケットレストラン」とは?
エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、全国にある25万店舗以上の加盟店で利用できる食事補助の福利厚生サービスです。専用のICカードを従業員に配布し、勤務時の食事代をそのICカードで支払う形で提供できるサービスであるため、食事代の支払いが簡単で日常使いしやすいことが魅力として挙げられます。
食の福利厚生には、社員食堂や置き型社食といったサービスもありますが、勤務地・勤務時間の関係でサービスを利用できない従業員が生じるという課題がありました。なかには、せっかく導入したものの利用率の低さを理由にサービスを解約するといったことも聞かれます。その点、全国にあるコンビニで利用できる「チケットレストラン」は、さまざまな場所・時間帯で活躍する従業員に日常使いしやすい形で食事を補助できます。
これまでに全国で3,000社の導入実績があり、「使い勝手のよさ」を実感できることから、導入企業における利用率98%・継続率99%・従業員満足度93%です。
また、物価上昇が続く中、賃上げとともに実施し、実質的な手取り額を高める方法としても注目されています。食事代を給与として上乗せすると、所得税の課税対象が増えることになりますが、食事補助(チケットレストラン)の非課税枠を利用することで、所得税の課税対象が増えません。そのため、実質的な手取りアップの効果が得られます。扶養を外れたくないパート・アルバイト・契約社員の離職防止策としてもおすすめです。
関連記事:“福利厚生”で実質手取りアップと高いエンゲージメントの実現を「#第3の賃上げアクション」プロジェクト
関連記事:パート・アルバイト・契約社員 にも「第3の賃上げ」を!ラウンドテーブルを開催~“年収の壁”を抱える非正規雇用にも、福利厚生で実質手取りアップを実現~
離職防止に「チケットレストラン」が役立った導入事例を紹介
「チケットレストラン」の導入が、従業員エンゲージメント向上や離職率低下などに貢献した企業の事例を紹介します。
関西エアポートオペレーションサービス株式会社の事例
空港運用に関するサービスを提供する関西エアポートオペレーションサービス株式会社では、勤務体系が異なる従業員に提供できること、人手不足の解決策にもなることから、「チケットレストラン」を導入しています。その理由には、空港での業務は肉体的に大変なことも多く、シフト勤務もあることから、「規則正しい食事は非常に大切だ」という企業の考えもありました。
「チケットレストラン」は、いつでもどこでも利用できるのが魅力です。正規・非正規雇用など雇用形態を問わず提供できる点も、従業員に喜ばれました。同社では、定期的な賃上げと「チケットレストラン」による支援の充実とを組み合わせています。相乗効果もあり、従業員満足度向上と人材定着に貢献したと実感されているそうです。
参考: http://www.ops.kansai-airports.co.jp/
導入事例:関西エアポートオペレーションサービス株式会社様
日本ナレッジスペース株式会社
各種システム開発など、ITソリューションとサービスを提供している日本ナレッジスペース株式会社では、物価上昇のあおりを受けて従業員の食事の品質が下がりがちでした。そこで3大牛丼チェーン店などでも利用できる「チケットレストラン」を導入し、食事の改善を目指します。
その結果、食生活をおろそかにする従業員の割合が減少し、自然に健康経営のさらなる推奨にも繋がりました。IT業界では人材不足が課題ですが、魅力的な福利厚生がある「従業員を大切にする企業」としての存在感を高められたことも導入による嬉しい効果でした。求職者からの企業イメージがアップし、人材確保・離職防止にも役立っているそうです。
参考:https://www.jpn-ks.co.jp/
導入事例:日本ナレッジスペース株式会社様
従業員エンゲージメント向上・離職率低下に取り組むのが課題
「本当の退職理由」調査(2024)は、多くの従業員が本音を隠して退職している現状を明らかにしました。本当の退職理由を伝えられる企業・職場であるためには、「従業員エンゲージメントを高め、離職率を下げる」ことへの企業側の積極的な取り組みが不可欠です。
オープンなコミュニケーション、公平な評価・報酬制度、キャリア開発支援、働き方改革の推進など、多面的なアプローチが必要となります。さらに、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」のように直接的な生活支援となる食事補助の福利厚生を導入することで、従業員の満足度向上と離職防止を目指せます。
企業は、取り組む施策を通じて従業員との信頼関係を構築し、働きやすい環境を整備することで、人材の定着率を高め、組織の持続的な成長につながるでしょう。ぜひ、「チケットレストラン」の導入を検討してみませんか。