運送会社の人手不足は他の業種と比べても深刻です。人手不足の理由はどこにあるのでしょうか?何も対策しないままでは、人手不足が原因で倒産することも起こり得ます。現状を把握した上で、有効な対策を実施しましょう。
運送会社の人手不足の現状
少子高齢化が進んでいるなか、人手不足は全業種で進行しています。総務省の「令和4年版高齢社会白書(全体版)」によると、生産年齢人口は減少が続く見込みで、2060年には5,000万人を下回るそうです。今後ますます人手不足が課題となる企業は増えるでしょう。
特に運送会社の人手不足が深刻なことは、厚生労働省の「労働経済動向調査(令和5年2月)の概況」からも分かります。同調査で明らかになった業種ごとの人手不足感は以下の通りです。
以下の数値は、労働者数が「不足」と回答した事業者の割合から「過剰」と回答した事業者の割合を差し引いた値で、数字が大きいほど正社員労働者の不足感が強いことを示します。運輸業・郵便業は産業全体より数値が高く、人手不足と感じている企業が多いのが現状です。
- 産業全体:46
- 医療・福祉:63
- 建設業:56
- 運輸業・郵便業:56
- 学術研究、専門・技術サービス業:50
- 情報通信業:49
- 情報業:46
- サービス業(他に分類されないもの):45
- 生活関連サービス業・娯楽業 :44
- 不動産業・物品賃貸業:41
- 宿泊業・飲食サービス業:35
- 卸売業・小売業:23
- 金融業・保険業:18
参考:総務省|令和4年版高齢社会白書(全体版)
参考:厚生労働省|労働経済動向調査(令和5年2月)の概況|結果の概要
運送会社の人手不足が厳しい理由
運送会社の人手不足が、他の業種よりも進行しているのには以下の理由があります。
- ドライバーの高齢化
- 需要の増加
- 厳しい労働環境
- 時間外割増賃金の引き上げ
それぞれの理由について詳しく見ていきましょう。
ドライバーの高齢化
国土交通省の「トラック運送業の現況について」によると、ドライバーの平均年齢は全職業平均と比べて高いのが分かります。全職業が42.2歳であるのに対し、ドライバーは大型トラックが47.5歳、中小型トラックが45.4歳です。
高年齢層の労働力に頼っていると、その年代が定年を迎えたときに人手不足が一気に加速します。従業員の平均年齢が高いということは、それだけ人手不足に陥りやすい状況です。
需要の増加
宅配便の需要が急激に増えたことも人手不足の理由です。「令和3年度 宅配便等取扱個数の調査及び集計方法」によると、宅配便の個数は年々増え続けています。2021年の取り扱い個数は48億8,200万個。このように取り扱う荷物が増えているにもかかわらず、ドライバーは不足しているため、人手不足感が他の業種より強く出ていると考えられます。
参考:国土交通省|令和3年度 宅配便等取扱個数の調査及び集計方法
厳しい労働環境
運送会社の労働環境の厳しさも人手不足につながっています。厚生労働省の「毎月勤労統計調査 令和5年8月分結果確報」で産業別月間実労働時間数を見ていきましょう。
業種 |
総実労働時間 |
所定内労働時間 |
所定外労働時間 |
勤務日数 |
調査産業計 |
131.8時間 |
122.5時間 |
9.3時間 |
17.1日 |
運輸業・郵送業 |
165.6時間 |
143.4時間 |
22.2時間 |
19.2日 |
調査産業計と比べ、運輸業・郵送業では労働時間も勤務日数も多いと分かります。
また「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、全産業の一般労働者の賃金が月31万1,800円であるのに対し、運輸業・郵便業の賃金は月28万5,400円です。
他の業種と比較して労働時間が多いにもかかわらず、賃金の水準は低いことが分かります。良い待遇が期待できなければ、求職者は集まりにくくなりますし、今いる従業員も転職を考え始めるかもしれません。
参考:厚生労働省|毎月勤労統計調査 令和5年8月分結果確報|第2表 月間実労働時間及び出勤日数
参考:厚生労働省|令和4年賃金構造基本統計調査
2024年問題で人手不足がより深刻に
2024年4月から「時間外労働の上限規制」により、トラックドライバーの時間外労働に明確な上限が設けられます。トラックドライバー1人あたりの労働時間が短くなることで、十分な輸送能力を供給できなくなる恐れがあるでしょう。
これにより今までのようなスムーズな配送ができなくなったり、配送料金の値上げが行われたりすることを2024年問題といいます。
関連記事:【2024年問題】解説まとめ|背景と課題・企業に必要な対策とは
時間外労働の上限規制とは
時間外労働の上限規制は、働き方改革の一環として導入が決まった制度です。労働者が個々の事情に合わせ、多様で柔軟な働き方ができるよう推進されています。他の業種には既に適用されており、以下の規制を守らなければいけません。
- 時間外労働が年720時間以内
- 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
- 時間外労働と休日労働の合計が、2カ月平均・3カ月平均・4カ月平均・5カ月平均・6カ月平均の全てで1カ月あたり80時間以内
- 時間外労働が月45時間を超えられるのは1年に6カ月まで
加えて規制に違反した場合には、6カ月以下の懲役か30万円以下の罰金が科される恐れがあります。
自動車運転の業務・建設事業・医師・鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業は、適用による影響が大きいことから、5年間の猶予期間が設けられました。これにより時間外労働の上限規制は2024年4月から適用されます。
運送業に適用されるのは、上記より緩やかな以下の規定です。
- 時間外労働が年960時間以内
- 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満とする規定は適用されない
- 時間外労働と休日労働の合計が、2カ月平均・3カ月平均・4カ月平均・5カ月平均・6カ月平均の全てで1カ月あたり80時間以内とする規定は適用されない
- 時間外労働が月45時間を超えられるのは1年に6カ月までとする規定は適用されない
他の業種より緩やかな規定ですが、長時間労働が常態化している運送業では、規定に合わせた運用で人手不足がさらに進行する見込みです。
参考:厚⽣労働省・都道府県労働局・労働基準監督署|時間外労働の上限規制
運送会社の人手不足倒産が増加中
帝国データバンクの「全国企業倒産集計2023年上半期報 別紙号外リポート:人手不足倒産」によると、2023年上半期の人手不足倒産は過去最多ペースの110件です。
運輸・通信業の人手不足倒産は、2022年上半期の9件から2.2倍の20件に増加しており、人手不足の影響が大きくなっているのが分かります。
このまま何もしなければ、ますます人手不足倒産が増えかねません。運送会社は人手不足への対策が必要です。
参考:帝国データバンク|全国企業倒産集計2023年上半期報 別紙号外リポート:人手不足倒産
運送会社が取り組むべき人手不足対策
運送会社はどのような対策をすれば人手不足を解消できるのでしょうか?代表的な対策として、「労働環境の改善」「女性ドライバーの採用」「教育体制の整備」について解説します。
労働環境の改善
運送会社は長い勤務時間に対して賃金が低く、労働環境についてネガティブなイメージを抱いている人もいます。このままの状況では、求人を出しても応募者が集まりにくいですし、今いる従業員の離職にもつながるかもしれません。
求職者や従業員にとって、できるだけ魅力的な労働環境を整えられるよう、労働時間・賃金・取得しやすい休暇制度などを整備するとよいでしょう。従業員の意見を取り入れながら制度を作ることで、現場の悩みを解消できます。
家賃補助や食事補助など、福利厚生の充実度アップも労働環境改善の一環です。ドライバー向けの福利厚生を手厚くするには、社外で利用しやすい制度を取り入れるとよいでしょう。
採用活動の見直し
採用活動の方法を見直すことも、人手不足対策に役立ちます。求人を出しても期待したほどの反応がない場合には、他の方法で取り組んだほうがよいかもしれません。
例えば自社のリクルートサイトを作り、仕事内容や先輩従業員のインタビューを掲載する方法があります。またSNSで発信し採用を目指す、ソーシャルリクルーティングを取り入れるのもよいでしょう。
また従業員といった自社の業務や社風をよく知る人の紹介で採用活動を行う、リファラル採用に取り組むのもよい方法です。
女性ドライバーの採用
女性ドライバーを増やす取り組みも、人手不足対策として有効です。2022年の「労働力調査」をもとに、就業者と運輸業・郵便業の男女の割合を計算すると、運輸業・郵便業では女性従業員の割合が低いのが分かります。
|
男性 |
女性 |
運輸・郵便業 |
約78% |
約22% |
就業者 |
約55% |
約45% |
人手不足対策を目的に、国土交通省でも「トラガール促進プロジェクト」で、女性ドライバーの雇用を促進中です。
女性ドライバーの雇用に向け、社内の体制を整えるときには、助成金を利用できるかもしれません。例えば育児休暇を取得しやすいよう、両立支援を整備するときには、両立支援等助成金が役立ちます。
制度をうまく活用することで、負担を抑えながら女性ドライバーの雇用を進められるでしょう。
参考:総務省統計局|労働力調査(基本集計)2022年(令和4年)|第1表 就業状態別15歳以上人口、産業別就業者数、求職理由別完全失業者数
教育体制の整備
教育体制の整備も人手不足対策の1つです。未経験者を社内で教育し、企業負担で免許取得を目指せるようにすれば、未経験者を採用しドライバーに育てられます。
一方採用後、すぐに即戦力として働ける優秀な経験者は、どの運送会社でも好待遇で迎え入れられます。教育の手間はかかりませんが、採用するには他社より好条件を提示する必要があり、ハードルが高いこともあるでしょう。
他社と競合しにくい方法で人材確保を目指すなら、教育体制を整えて未経験者を採用するのがおすすめです。
関連記事:【2024年問題】人材不足にどう対応する?想定されるリスクと対策
待遇改善に役立つ「チケットレストラン」
運送会社の人手不足対策として、従業員の待遇改善に取り組むなら、エデンレッドジャパンの食事補助サービス「チケットレストラン」を検討してみませんか。従業員にも企業にもメリットのある福利厚生サービスです。
全国で使えてドライバーに便利
ドライバーはトラックを運転し荷物を運ぶため、1日中オフィスにいることはなかなかありません。オフィスでの利用がメインの福利厚生では、導入しても活用しきれないでしょう。
エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、全国にある25万店舗以上の加盟店で使えるサービスです。コンビニやファミレスなどで食事を買えるため、ドライバーが休憩中に利用しやすいでしょう。
インフレ手当として待遇改善にも効果的
エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」を導入すると、従業員の食事代をサポートできます。物価高が続く中、これまでと同じように生活をするのが難しく、出費を抑えるために日々節約に取り組んでいる人も少なくありません。
「チケットレストラン」で食事補助を提供すれば、その分食事を充実させたり、浮いた食費を他のことに使うお金に充てたりできます。従業員の生活の質が高まり、満足度アップや企業へ貢献したいという思いにつながるでしょう。
非課税枠を活用可能
エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は一定の条件を満たして導入すると、かかった費用を福利厚生費として計上できます。
福利厚生費は法人税の計算をするときに、損金として所得から差し引ける費用です。所得を減らせる分、税額を抑えられるため、企業にもメリットのあるサービスといえます。
「チケットレストラン」で運送会社の人手不足対策に
運送会社の人手不足は深刻な状況です。ドライバーが高齢化していることや、需要が高まっていること、労働環境が厳しいことに加え、2024年問題の影響もあります。時間外労働の上限が明確に決まったことで、従業員1人あたりの労働時間が短くなり、人手不足は加速するでしょう。
十分な人材を確保するには、労働環境の改善や教育体制の整備などの対策が必要です。待遇の改善に取り組むなら、食事補助を提供できるエデンレッドジャパンの「チケットレストラン」が役立ちます。
全国の加盟店で使えるためドライバーの働き方に合っていますし、企業にも非課税枠を活用できるメリットがあるサービスです。人手不足対策の一環として、導入を検討してみませんか。