メンタルヘルスに関する福利厚生は、従業員を守るのはもちろん企業の存続にも関わります。心身が健康でなければ仕事に対する意欲や能率が低下し、業績に影響を与えかねません。企業には従業員のメンタルヘルスを守る義務もあります。具体的な施策として役立つ福利厚生を見ていきましょう。
従業員のメンタルヘルス
メンタルヘルスは心の健康状態のことです。心が健康であれば心は軽く、やる気がわいてきますし、穏やかな気持でいられるでしょう。
体の健康に問題がなくても、過度のストレスで心の健康が損なわれれば、気分の落ち込みを感じるものです。うつや適応障害など、明確な病名がつかない状態でも、悩みや不安な気持ちが続くならメンタルヘルス不調を抱えた状態といえます。
従業員のメンタルヘルス不調は働く環境によるものであるケースも少なくありません。従業員が心身ともに健康で、意欲的に仕事に取り組める状況を作るためにも、企業はメンタルヘルスケアに取り組む必要があります。
メンタルヘルスケアは企業の義務
労働安全衛生法第一条によると、従業員のメンタルヘルスケアは企業の義務とされています。
この法律は、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)と相まつて、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。
法律に記載されている「労働者の安全と健康」は、体の健康と心の健康の両方をさしています。企業が十分なメンタルヘルスケアを実施していない場合、安全配慮義務違反にあたり労災認定されることもあるでしょう。
心のバランスを崩さないような予防措置や、メンタルヘルス不調に陥った従業員のサポートなど、企業の取り組みが求められています。
従業員のメンタルヘルスに役立つ福利厚生
企業が従業員のメンタルヘルスを良好に保つよう、サポートするときに役立つのが福利厚生です。福利厚生を活用することで、メンタルヘルス不調の予防や早期発見・回復などに役立てられます。
ストレスチェック
従業員50人以上の事業所には、労働安全衛生法により年1回のストレスチェックの実施が義務付けられています。従業員が回答した質問票を集計・分析・評価し、どの程度ストレスをためこんでいるか確認する調査です。
ストレスチェックを受けることで、従業員は気付かないうちにためこんでいるストレスを自覚できます。さらに、高ストレスと判断された従業員は、希望により医師の面接指導も受けられます。
メンタルヘルス不調の状態に陥る前に医療を受診でき、不調の早期発見にもつながりやすくなる仕組みです。明確な不調がなくそれほどストレスが大きくない場合も、自分の状態を客観的に把握できるよい機会です。健康診断を受けるときに体重や体脂肪率を気にするのと同じように、心の状態に注意する意識が芽生えやすくなります。
実施を義務付けられていない規模の企業でも、ストレスチェックの実施によりメンタルヘルス不調の予防に役立つでしょう。
ストレスマネジメントについての研修
仕事や日常生活の中でストレスをゼロにするのは現実的とはいえません。ただし受けたストレスをそのままにしていたのでは、メンタルヘルス不調につながります。有効なのは受けたストレスを効果的に解消するストレスマネジメントです。
福利厚生としてストレスマネジメントに関する研修を実施すれば、従業員はストレスによる影響を詳しく知ることができますし、対処もしやすくなるでしょう。メンタルヘルス不調を予防する働きも期待できます。
従業員一人ひとりがストレスマネジメントの知識を身に付けることで、職場全体の雰囲気や従業員同士の関係性が改善していくかもしれません。
人間ドック
健康に関する不安から落ち込みがちになるケースもあります。このような事態を回避するには、福利厚生として人間ドックを導入するとよいでしょう。法律で定められている健康診断の実施より、より詳細に体の調子を検査できます。
病気を早期発見できれば、仕事を続けながら治療できるかもしれませんし、入院が必要な場合も短期間で済むかもしれません。健康への不安をクリアにすることで、メンタルヘルス不調を回避できる福利厚生です。
病気休暇制度、病気休職制度
業務と関係しない病気があると分かり仕事を休まなければいけない場合、労災の制度は使えません。このようなとき企業に病気休暇制度や病気休職制度があると、従業員は治療と仕事を両立しやすくなります。
制度がなければ治療に専念するために仕事を辞めなければいけないこともあり、従業員の精神的な負担はより重くなるでしょう。企業にとっても人材を失うことになりダメージは大きなものです。
従業員にとっても企業にとっても、プラスに働く制度といえます。
事業所内保育所
生活と仕事を両立しやすくするための支援も、従業員のメンタルヘルスに影響を与えます。子育てとの両立をサポートするなら、事業所内保育所の設置を検討するのがおすすめです。
育児休暇から復帰したいけれど保育所が見つからないからと、仕方なく離職を選ぶ従業員を減らせます。職場に保育所があれば、通勤と一緒に送り迎えができ手間を減らせますし、子どもの急な体調不良にも対応しやすくなるでしょう。
生活の負担が軽減されることで、メンタルヘルス不調につながるストレスが軽くなることも期待できます。
介護に備えた団体保険への加入
介護と仕事を両立したいけれど、十分な貯金がなく自宅で介護に専念しなければいけないという人もいます。介護と仕事を両立している場合でも、常に時間に追われ十分な休息を取れていない人もいるかもしれません。
福利厚生として企業が介護に備えた団体保険へ加入していれば、従業員の家族に介護が必要になったとき、各種サービスの利用にかかる費用をサポートできます。介護サービスを活用しつつ、仕事を続けやすくなる仕組みです。
特別休暇
プライベートの充実は日ごろのストレス解消に役立ちます。旅行に出かけたり、趣味に没頭したり、家族とゆっくり過ごしたりする中で、リラックスした気持ちになれるでしょう。
リフレッシュ休暇を始めとする特別休暇を使い連休を取れる制度も、従業員のメンタルヘルスへプラスに働きます。
食事補助
バランスのよい食事を規則正しく食べると心身の健康に役立つことが指摘されています。従業員のメンタルヘルスを考慮する制度として、食事補助を取り入れるのもおすすめです。
手間をかけることなく食事補助を導入するなら「チケットレストラン」を検討してみませんか。全国にある対象の25万店舗を利用できます。
従業員は普段どおり注文や買い物をするだけで、企業から食事代の補助を受けられる仕組みです。補助があれば不足しがちな野菜の副菜をプラスしやすくなり、食事のバランス改善が期待できます。資料請求はこちらから。
メンタルヘルスケアは健康経営に欠かせない
従業員の健康管理を経営課題の1つと考え、健康の維持・増進に役立つ取り組みを実行することを健康経営といいます。健康経営を実践するときには、体の健康と合わせ心の健康をサポートするメンタルヘルスケアが欠かせません。
メンタルヘルスの不調は仕事に影響する
メンタルヘルス不調に陥ると、気分が落ち込みがちで何事にもやる気が起きにくくなります。仕事に対する意欲も同様で、自発的に取り組む働き方ができなくなることもあるでしょう。一緒に働く同僚や先輩に迷惑をかけているという思いから、さらに仕事に取り組みにくくなるかもしれません。
仕事に対する意欲が低下するため、これまでより成果が出にくくなり、「今までできていたことができなくなってしまった……」と自信を失うこともあります。
職場の雰囲気悪化にも
心の健康状態が悪化し仕事に対する意欲が出ない状態は、周りからやる気のない人に見えてしまいます。協力して成果を出そうと仕事に取り組んでいる職場で、意欲的に仕事に取り組めていない人がいると、職場の雰囲気が悪化しかねません。
業績低下につながる恐れも
個人の仕事の能率が落ち、職場の雰囲気も悪くなると、企業全体の業績にも影響が出始める可能性があります。例えば営業を担当する従業員がメンタルヘルス不調の状態だと、取引先へ訪問するときに必要な資料を忘れてしまうかもしれません。
積極的に商品やサービスのメリットをアピールできれないことも考えられます。その結果十分なプレゼンができず成約に至らない状態が続けば、企業全体の業績も落ちていくでしょう。
メンタルヘルス不調を抱ええている従業員がどんな業務を担当していたとしても、これまでより成果が出にくくなります。
メンタルヘルス不調の原因は?
なぜメンタルヘルス不調は起こるのでしょうか?健康経営の実現へ向け従業員のメンタルヘルスケアに取り組むなら、不調の原因を把握しておきましょう。
ハラスメント
相手が嫌がっているにもかかわらず、尊厳を傷つけるような言動を行うのがハラスメントです。繰り返しハラスメントを受けることで自尊心が傷つけられ、メンタルヘルス不調につながりやすくなります。
厚生労働省が2020年に行った「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、ハラスメントの件数は減少傾向です。ただし全くないというわけではなく、31.4%がパワハラを、10.2%がセクハラを受けたことがあると回答しています。
また勤務先がハラスメントの予防に取り組んでいると回答した人は、ハラスメントを経験した割合が少ないという結果も出ています。企業の取り組み次第で、ハラスメントによるメンタルヘルス不調は減らせる可能性があるといえるでしょう。
運動不足
軽いランニングやウォーキング・サイクリングなどは、ネガティブな気分の発散に役立つといわれています。仕事が忙しく運動不足になっていると、メンタルヘルスへ影響を及ぼすかもしれません。
運動のために時間を作るのが難しいなら、通勤のときに一駅分歩いてみる、エレベーターやエスカレーターではなく階段を使うというだけでも違ってきます。
睡眠不足
長時間労働が続くと睡眠時間を削らなければいけない事態も起こります。東京医科大学の行った長時間労働とメンタルヘルスの関係についての調査によると、長時間労働により睡眠時間が短くなると、メンタルヘルスに悪影響を及ぼしやすいという結果が出たそうです。
出典:東京医科大学 精神医学分野 産業精神医学支援プロジェクト|残業それ自体ではなく、長時間労働による睡眠不足と食事の不規則さがメンタルヘルスに害を与える
従業員が十分な睡眠時間を取れるよう睡眠の重要性を伝えたり、休憩時間を利用し仮眠できるよう設備をスペースを設けたりすると、睡眠不足によるメンタルヘルス不調を避けやすくなるかもしれません。
バランスの悪い食事
厚生労働省のホームページには「適度な運動や、バランスのとれた栄養・食生活は身体だけでなくこころの健康においても重要な基礎となるものである。」と記されています。バランスの悪い食事はメンタルヘルスにも悪い影響が出るかもしれません。
従業員にバランスの取れた食事を提供するには、食事補助が役立ちます。全国25万店舗が対象の「チケットレストラン」を導入すれば、手軽に食事補助を提供可能です。資料請求はこちらから
メンタルヘルスケアを実施する手順
メンタルヘルスケアを実施するときには以下の手順で進めます。
- 職場環境の整備
- メンタルヘルス不調の早期発見
- 休職者への支援
それぞれどのような取り組みを行うべきなのでしょうか?
1. 職場環境の整備
まず行うのはメンタルヘルス不調の起きにくい環境作りです。予防できる環境作りが不十分では、他の制度を整えたとしても、メンタルヘルス不調に陥る従業員が減りません。
業務量の見直しで一部の従業員へ負担が偏らないようにしたり、ストレスチェックの実施で心の状態の把握を促したり、メンタルヘルスに関する研修を実施したりします。
2. メンタルヘルス不調の早期発見
メンタルヘルス不調を見逃さず、対象の従業員を早いタイミングで適切な医療へつなげるのも重要です。気軽に相談できる窓口を設置すると、不調を発見しやすくなります。
専門家との連携もポイントです。産業医と面談できる体制の整備や、メンタルヘルスケア専門の外部相談窓口のサービスを利用してもよいでしょう。
3. 休職者への支援
メンタルヘルス不調から休職する従業員もいます。長期にわたる休職による仕事に対する不安や焦りをやわらげ、安心して復帰できるようサポートが必要です。
専門家へ復帰に向けたプログラムの作成や、トレーニングを依頼することで、復帰後の定着率を高められます。
企業が行うメンタルヘルスケアの事例
実際に企業が行っているメンタルヘルスケアの事例も見ていきましょう。チェックするのは「チケットレストラン」の導入で、従業員の心身の健康改善を目指したエステー株式会社の事例です。
エステー株式会社の食事によるサポート
消臭芳香剤や脱臭剤・除湿剤などを展開しているエステー株式会社の課題は、従業員が心身ともに健康で明るく元気にいられる環境作りでした。食事補助によって従業員の健康をサポートしようと考えましたが、拠点や職種ごとのランチ事情の違いから、どのような制度にすべきか決めかねていたそうです。
従業員が個々の都合に合わせ食事を取れるサービスを検討し、全国にある25万の対象店舗で食事を購入できる「チケットレストラン」を導入しました。
企業の半額サポートで食事を購入できる仕組みにより、従業員の中にはこれまでは買わなかったサラダを追加購入する人もいるそうです。バランスのよい食事で、従業員の心身の健康をサポートしています。
導入事例はこちら
手間なく食事補助を導入できる「チケットレストラン」とは
「チケットレストラン」は従業員へ食事補助を提供できるサービスです。対象となっている全国のコンビニや飲食店を利用したり、「Uber Eats」を注文したりできます。
国税庁の確認を受けながら運営しているサービスのため、以下の要件を満たしていれば、かかった費用は福利厚生費として計上も可能です。
- 従業員1人につき上限は月3,500円(税別)
- 支給額のうち半額以上を従業員が負担すること
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従業員のメンタルヘルスを福利厚生でサポート
従業員の健康は企業の存続に関わる問題です。健康をサポートするときには、体はもちろんメンタルヘルスとよばれる心の健康も考慮しましょう。福利厚生で適切にメンタルヘルスをサポートできれば、不調に陥りにくい環境作りにつながります。
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