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【社労士監修】健康診断を福利厚生費として計上するには?条件と実務ポイントを解説

【社労士監修】健康診断を福利厚生費として計上するには?条件と実務ポイントを解説

2025.04.03

監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)

企業が従業員に対して負担する健康診断の費用は、一定の条件を満たすことで福利厚生費として経費計上できます。本記事では、健康診断について企業と従業員が負う義務から、福利厚生費として計上するための条件・対象となる従業員など、健康診断に関連して企業が知っておきたいポイントを分かりやすく解説します。

福利厚生費の基本|法定と法定外の違い

福利厚生費は、大きく「法定福利厚生費」と「法定外福利厚生費」の2つに分類されます。「法定福利厚生費」は、企業に対し法律で義務付けられている福利厚生の費用・「法定外福利厚生費」は、企業が任意で提供する福利厚生の費用です。

種類 主な内容(例) 備考
法定福利厚生費 健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、労災保険料、介護保険料、子ども・子育て拠出金 法律で義務付けられている
法定外福利厚生費 健康診断費、社員食堂・食事補助、社宅・住宅手当、慶弔見舞金、レクリエーション費、保養所・施設利用費 など 企業が任意で提供

健康診断費は企業が任意で提供する「法定外福利厚生費」のひとつです。一方で、企業には健康診断実施の法的義務があります(後述)。

つまり、健康診断は、提供が義務付けられていながらもその費用負担については法的な規定がないという、福利厚生としては特殊な位置づけとなっています。

関連記事:福利厚生で健康管理をサポート!在宅勤務でも導入できる福利厚生とは

健康診断は企業の義務、でも費用負担は?

健康診断は、単なる福利厚生ではなく、法律で定められた企業の義務でもあります。ここでは健康診断を実施する法的根拠と費用負担の考え方について解説します。

労働安全衛生法で定められた企業の義務

労働安全衛生法第66条」により、企業は常時使用する労働者に対し、1年以内ごとに1回、定期健康診断の実施が義務付けられています。この健康診断の項目や実施方法は厚生労働省令で細かく定められており、違反すると労働基準監督署からの是正勧告や、罰則の対象(50万円以下の罰金)になる可能性が否定できません。

健康診断の種類

出典:厚生労働省|労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう~労働者の健康確保のために~

また、同法では、労働者にも「健康診断を受ける義務」を定めています(第66条第5項)。ただし、企業が指定した医師以外で診断を受けたい場合は、その結果を書面で提出すればよいとされています。健康診断は、企業側だけでなく、企業・従業員双方の義務として明確化されている点がポイントです。

なお、本記事ではオーソドックスな雇入れ時と定期健康診断にフォーカスしていますが、健診の種類は定期健康診断以外にもあるため注意しましょう。

近年、従業員の健康管理を経営的視点から戦略的に実践する「健康経営」という考え方が広がっています。健康診断はその基盤となる重要な取り組みです。

参考:e-Gov 法令検索|労働安全衛生法|第66条
参考:ACTION!健康経営|ポータルサイト(健康経営優良法人認定制度) 

参考:厚生労働省|職場のあんぜんサイト:特殊健康診断[安全衛生キーワード]

関連記事:今すぐ!健康経営に取り組む3つのメリットと実践事例

誰が対象?正規雇用の従業員だけでなくパート・派遣も要注意

健康診断の対象となるのは「常時使用する労働者」であり、正規雇用の従業員に限られません。以下の要件を満たす労働者は、パートやアルバイトなどの雇用形態を問わず健康診断の対象となります。

  1. 契約期間に関する要件:契約期間の定めがない・契約期間が1年以上・契約更新により1年以上雇用される予定・実際に1年以上雇用されている
  2. 労働時間に関する要件:1週間の労働時間が「同種の業務に従事する通常の労働者(正規雇用の従業員など)の1週間の労働時間」の4分の3以上                              

    ※労働時間が 2.に満たなくとも概ね2分の1以上であり、1.の要件にも該当する場合は、健康診断受診が推奨されています。

なお、派遣社員の場合、健康診断を実施・費用負担すべきは「派遣元の事業者(派遣会社)」です。派遣先企業が負担するものではないことに注意が必要です。

参考:厚生労働省|短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律の施行について

費用は誰が負担?企業が全額負担すべき理由

健康診断の費用を労使のどちらかが担うかは、労使間の協議で定めることができます。とはいえ、健康診断の実施は企業の義務であるため、原則として企業がその費用を全額負担すべきとされています。法的な規定こそないものの、労働者に費用負担を求めることは、実施義務の履行と矛盾する可能性があり、望ましくありません。

また、厚生労働省は、健康診断の受診時間についても「労働時間として扱うことが適当である」との見解を示しています。これらの点を踏まえ、企業には、受診費用・時間の両面から従業員を支援することが求められます。

参考:厚生労働省|健康診断Q&A

個人事業主の場合は福利厚生費として計上できない

個人事業主が自身の健康診断を受けた場合、その費用は福利厚生費として経費計上することはできません。

福利厚生費は、あくまでも「使用人に共通して供与されるもの」に限られるため、個人の健康維持のための支出は「事業主の私的支出」とみなされて経費対象外となります。

一方、法人の場合、要件を満たせば従業員だけでなく役員に対する健康診断も福利厚生費として計上可能です。つまり、法人化の有無により、健康診断費の会計処理は大きく異なることになります。

健康診断費を福利厚生費として非課税にするには

健康診断を実施しただけでは、必ずしも福利厚生費として経費計上できるとは限りません。実務で適切に処理するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。ここでは、その要件の詳細を解説します。

条件① 全従業員が対象であること

健康診断は「全従業員」を対象に実施する必要があります。特定の役職者や部署だけを対象とした健康診断は、「使用人全体に共通して供与されるもの」とはみなされず、福利厚生費ではなく「給与」として扱われる可能性があります。

ーNG例ー

  • 役員のみが高額な人間ドックを受診する
  • 一部の部署や職種だけを対象とする
  • 勤続年数で対象者を限定する

ただし、年齢層に応じて健診項目を追加するなど、健康上の合理的な理由による差異は認められます。たとえば「35歳以上の従業員には生活習慣病予防検診を追加する」などは問題ありません。

条件② 医療機関へ企業が直接支払うこと

健康診断費用は、企業が医療機関に直接支払う必要があります。これは、福利厚生の原則として「金銭の支給」ではなく「サービスの提供」であることが求められるためです。従業員に一時的に立て替えてもらい、後日精算する方式では、福利厚生費として認められません。

ーNG例ー

  • 従業員が健診費用を立て替え、後日企業が精算する
  • 健診費用相当額を従業員に現金支給する
  • 健診費用を給与に上乗せして支給する

これらのケースでは、給与所得として課税対象になります。健診機関との契約は企業名義で行い、請求・支払いも企業と健診機関の間で直接行うようにしましょう。

条件③ 常識的な範囲内の費用であること

健康診断費用が社会通念上妥当な範囲を超えている場合、それは福利厚生費とはみなされません。たとえば、宿泊付きの高額な人間ドックや、付加的な健康診断オプションを付けたプランは、必要以上の便益と判断され、賞与や給与とみなされる可能性があります。

一般的な定期健康診断の費用は、おおむね1万円〜1.5万円程度が相場です(地域や医療機関により異なる)。この範囲に収まる健診内容であることが、福利厚生費としての要件を満たす目安となります。

条件④ 法律に準じた健診項目であること

健康診断は、以下に示す「労働安全衛生規則第44条」で定められた項目を網羅する必要があります。次に挙げる項目を勝手に省略することはできません。

定期健康診断の必須項目(労働安全衛生規則第44条)

  1. 既往歴及び業務歴の調査
  2. 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
  3. 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
  4. 胸部エックス線検査及び喀痰検査
  5. 血圧の測定
  6. 貧血検査
  7. 肝機能検査
  8. 血中脂質検査
  9. 血糖検査
  10. 尿検査
  11. 心電図検査

ただし、医師が必要でないと認めた場合は、一部の項目(身長・腹囲・胸部エックス線検査など)を省略できます。

参考:e-Gov 法令検索|労働安全衛生規則|第44条
参考:厚生労働省|労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう~労働者の健康確保のために~

実務で役立つ健康診断Q&A

ここでは、人事総務担当者からよく寄せられる健康診断(一般健康診断)に関する実務上の疑問にQ&A形式で回答します。法的な根拠や行政の見解に基づき、判断に迷いやすいポイントをまとめました。

参考:厚生労働省|健康診断Q&A
参考:e-Gov 法令検索|労働安全衛生法
参考:e-Gov 法令検索|労働安全衛生規則

人間ドックを受けた従業員にも健診が必要?

従業員が自主的に人間ドックを受診した場合、その結果を企業に提出すれば、改めて企業の健康診断を受ける必要はありません。

ただし、提出された健診結果に法定項目が含まれていない場合は、不足項目のみ追加で受診してもらう必要があります。市町村の特定健診なども同様の扱いとなります。

健診を拒否する従業員にはどう対応すべきか?

労働者には、健康診断を受ける義務があります(労働安全衛生法第66条第5項)。したがって、正当な理由なく受診を拒否した場合、企業は下記に示すような労務管理上の措置を検討する必要があります。

  1. 健康診断の法的義務と重要性を説明
  2. 拒否理由のヒアリング(医療機関への不信感、プライバシー懸念など)
  3. 代替手段の提案(他の医療機関での受診など)
  4. それでも拒否する場合は就業規則に基づく懲戒処分も検討

労使関係への悪影響を防ぐため、社内規定を整備し、段階的な対応(口頭注意→書面による警告→懲戒処分)を行うことが大切です。

従業員が有所見と診断されたら?

健診結果に「有所見」があった場合、企業には追加対応の義務があります。「労働安全衛生法第66条の4」により、企業は医師の意見を聴取し、必要に応じて就業場所の変更や労働時間の短縮などの措置を講じなければなりません。

また、その対応内容は記録として保管する必要があります。健康診断の実施は単なる形式的な義務ではなく、結果に基づくフォローアップが求められる業務である点に留意しましょう。

特に生活習慣病のリスクが高い従業員には、食事や運動など生活習慣の改善支援が効果的です。企業の食事補助サービスなどと連携した健康支援プログラムも注目されています。

参考:e-Gov 法令検索|労働安全衛生法|第66条の4
参考:e-Gov 法令検索|労働安全衛生規則|第51条の2

関連記事:【税理士監修】食事補助は非課税?福利厚生の仕組みと注意点を解説!

健康診断の結果は本人に通知するべき?

企業は、実施した健康診断の結果について、労働者本人に通知する義務があります(労働安全衛生法第66条の6)。この通知は、口頭ではなく書面で行うことが原則です。

通知すべき内容には、診断結果だけでなく、就業に支障があるか否かの判断や、医師からの意見も含まれます。通知のタイミングに法的な明確な期限はないものの、できるだけ速やかに伝えることが望ましいとされています。

健康診断を福利厚生費として戦略的に活用を

健康診断は企業の法的義務であると同時に、従業員の健康維持・増進のための重要な取り組みです。適切に実施し、福利厚生費として処理することで、コストを抑えつつ従業員の健康をサポートし、健康経営の推進、ひいては医療費の削減も期待できます。

従業員の健康をサポートする福利厚生は、健康診断だけではありません。食事補助もまた、一定の条件を満たすことで経費として計上可能です。

たとえば、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、全国に25万店舗以上の加盟店での食事代を半額補助することで、従業員の食生活から健康をサポートできる食の福利厚生です。

じょうずに福利厚生を組み合わせながら、従業員が健やかに働ける職場づくりを進めましょう。

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