近年、日本の中小企業において「防衛的賃上げ」が注目を集めています。業績改善が見込めないなかでも、人材確保のために賃上げを行う企業が増加しているのです。この記事では、防衛的賃上げの現状と課題、そして解決策について詳しく解説します。
防衛的賃上げとは?
防衛的賃上げとは、企業の業績改善が見込めない状況下でも、従業員の流出を防ぎ、新たな人材を確保するために実施する賃金引き上げのことを指します。
中小企業を対象にした日本商工会議所の調査によると、2024年に賃上げ実施予定(予定を含む)の企業は74.3%と7割を超えました。そのうち「業績の改善がみられないが賃上げを実施予定」と回答した企業は59.1%にも上ります。
参考:日本経済新聞社|中小企業、業績改善なき賃上げ6割 人材つなぎとめ重視
3つの調査結果から見る「防衛的賃上げ」の実態
防衛的賃上げの実態をより深く理解するために、3つの調査結果を詳しく見ていきましょう。
1. 2024年度中小企業の業種別「防衛的賃上げ」
業種によって防衛的賃上げの実施状況に差が見られます。とくに注目すべきは運輸業です。2024年6月の日本商工会議所の中小企業における賃金改善についての調査では、運輸業における7割以上の企業が防衛的賃上げを実施しています。これには、2024年問題によるドライバー不足が大きな要因となっています。
出典:2024年6月5日日本商工会議所|「中小企業の賃金改定に関する調査」集計結果
関連記事:物流・運送業界が直面する「2024年問題」|要点と対策を解説!
2. 2024年度の企業規模別「防衛的賃上げ」
企業規模が小さいほど、防衛的賃上げを実施する傾向が強いです。同じく2024年6月の日本商工会議所の調査では、中小企業のなかでも従業員20人以下の企業において、防衛的賃上げを行う割合が64.1%にまで上昇していることが示されました。規模が小さい企業ほど人材の確保と維持に苦心していることを物語っています。
出典:2024年6月5日日本商工会議所|「中小企業の賃金改定に関する調査」集計結果
3. 2024年中小企業・正規従業員の賃上げ状況
業種によって賃上げ率に大きな差があることも、商工会議所の調査で明らかになっています。運輸業と医療・介護・看護業では、賃上げ率が2%代にとどまっており、他の業種と比べて明らかに低い水準です。
出典:2024年6月5日日本商工会議所|「中小企業の賃金改定に関する調査」集計結果
背景にあるのは、これらの業界が直面している構造的な問題です。運輸業では前述の2024年問題に加え、燃料費の高騰や取引条件の厳しさなどが経営を圧迫しています。一方、医療・介護・看護業では、高齢化社会の進展に伴う人手不足が深刻化する一方で、診療報酬や介護報酬の改定が十分でないことなどが要因となり賃上げに結びついていません。
防衛的賃上げの理由は人材確保・採用強化
防衛的賃上げを行う最大の理由は、「人材の確保・採用」です。日本商工会議所が2024年1月に実施した賃上げ理由についての調査では、その割合は76.7%にも達しています。
この背景には、少子高齢化による労働人口の減少に加え、景気回復に伴う求人増加により、多くの業種で人手不足が深刻化していることが挙げられます。とくに中小企業では喫緊の課題です。
また、「物価上昇への対応」も61.0%と高い割合を示しています。近年の原材料価格の高騰やエネルギーコストの上昇を受け、従業員の生活を守るための賃上げも2024春闘の勢いのとおり重要です。
一方で、賃上げを見送る企業も存在し、その理由として「売上の低迷」(55.9%)や「原材料費等のコスト負担増」(43.2%)が挙げられました。企業としては、賃上げの必要性は認識しつつも、経営状況の悪化により実施できないという厳しい状況です。
出典:2024年2月14日日本商工会議所|「中小企業の人手不足、賃金・最低賃金に関する調査」集計結果
【参考】春闘2024の集計結果
2024年の春季労使交渉(春闘)では、大企業を中心とした賃上げの動きが特徴的でした。日本労働組合総連合による6月5日公表の集計結果では、大手企業の賃上げ率は5.08%と33年ぶりの高水準です。しかし、従業員数300人未満の中小企業では4.45%となるなど、企業規模による差は依然として大きいです。この格差をどう埋めていくかが今後の課題となっています。
内容 | 結果 | 補足 |
集計 | 4,938組合 | 2024年6月3日までに回答の第5回回答集計 |
賃上げ率(平均) | 5.08% | 33年ぶりの高水準 |
賃上げ率(300人未満の企業) | 4.45% | 企業規模による差 |
出典:日本労働組合総連合|粘り強い交渉で定昇除く賃上げ分 3%超えが続く!~2024 春季生活闘争 第 6 回回答集計結果について~
中小企業の人材確保・採用強化に「チケットレストラン」が有効
防衛的賃上げの手段の一つとして、魅力的な福利厚生を提供することで人材確保・定着を図る方法が注目されています。食事補助の福利厚生サービスを提供するエデンレッドジャパンの「チケットレストラン」がその代表例です。
「チケットレストラン」は、全国25万店舗以上のコンビニ、ファミレス、カフェチェーンなどで気軽に食事を購入できるサービスです。企業が従業員のランチ代を食事補助として負担するため、従業員は食事を実質半額で食べられます。特徴や魅力を詳しく見ていきましょう。
高い利用率と満足度
「チケットレストラン」は、使いやすさから利用率は98%、満足度は93%という高い評価を得ています。日々の生活に直結するサービスであるため、従業員が魅力を実感しやすい実用的な食事補助の福利厚生サービスです。
人材確保・定着に貢献
「チケットレストラン」を活用することで、直接的な賃上げが困難な中小企業でも、従業員の満足度向上や人材確保に繋げられます。また、賃上げと組み合わせることで、より魅力的な待遇として打ち出すことも可能です。「チケットレストラン」のような食事補助の福利厚生サービスは、中小企業が限られた原資のなかで効果的に従業員の待遇を改善し、人材確保・定着を図る上で有効な施策となり得ます。
正規・非正規従業員に公平に提供可能
正規の従業員だけでなく、パートタイマーやアルバイトなどの非正規雇用者にも同様に提供できる「チケットレストラン」は雇用形態による待遇の差を広げません。中小企業で活躍する全従業員に、サービスを提供できます。また、内勤や外勤など、勤務環境を問わない点も公平性の高さにつながっています。
所得税や年収の壁に影響しない
「チケットレストラン」は、一定の要件を満たせば非課税として扱われます。そのため、給与を上げた場合と異なり、所得税など税負担増を避けることが可能です。パートタイマーなどの非正規雇用者にとっては、年収の壁を気にせずに実質的な待遇改善を受けられるメリットがあります。
関連記事:「チケットレストラン」の仕組みを分かりやすく解説!選ばれる理由も
「チケットレストラン」2つの導入事例をチェック
賃上げが厳しい状況である介護業界と、防衛的賃上げをせざるを得ない従業員数20名以下の企業における、チケットレストランの導入事例とその効果を紹介します。
事例1. 介護業界での人材採用差別化に「チケットレストラン」が寄与
<企業概要>
事業内容:薬局事業・居宅介護支援事業など
従業員数:281人 ※2023年7月時点
URL:http://www.heartco.jp/
株式会社ハートコーポレーションは、人手不足が深刻な介護業界に所属しており、人材採用・定着でほかの企業と差別化できる福利厚生を探していました。介護報酬には上限があり、給与で職員に還元することは難しいという特性があります。福利厚生で職員に還元できれば、人材採用にも好影響が期待できると考え「チケットレストラン」を導入しました。
勤務中に外食できない介護職と「チケットレストラン」は親和性があり、導入後の継続率も100%と高い評価を得ています。人材定着における差別化に寄与している実感もあるそうです。
株式会社ハートコーポレーションの事例のように、「チケットレストラン」を導入して介護職員の定着率向上に成功する介護事業者は、ほかにもあるのではないでしょうか。
導入事例:株式会社ハートコーポレーション
事例2. 従業員数が少ない企業での定着率アップに「チケットレストラン」が貢献
<企業概要>
事業内容:土木工事業
従業員数:17人 ※2023年10月時点
URL: https://douro-s.co.jp/
道路サービス株式会社(従業員数17名)は、「チケットレストラン」による実質手取りアップに魅力を感じ、サービスを導入しました。
この選択は、防衛的賃上げの新たなスタイルと言えます。直接的な給与増加ではなく、実質的な収入増と生活の質の向上を同時に実現できるからです。全国にある25万店舗以上で利用可能なサービスであることが、全国で業務に従事する従業員のニーズに合致し、食生活の改善や生産性向上にもつながりました。さらに、ほかの企業との差別化にもなるため、人材の確保・定着にも寄与しています。
道路サービス株式会社の事例は、従業員数が少なく直接的な賃上げが困難な企業でも、工夫により従業員の実質的な待遇を改善し、競争力を維持できることを示しています。「チケットレストラン」は、防衛的賃上げの新たな選択肢として、中小企業の人材戦略となるのではないでしょうか。
導入事例:道路サービス株式会社
中小企業の待遇改善・定着率アップに福利厚生を活用
防衛的賃上げは、中小企業にとって人材確保のための重要な手段となっています。しかし、業績改善を伴わない賃上げは長期的には持続が難しく、生産性向上や価格転嫁の実現など、根本的な改善が求められているのも事実です。
一方で、直接的な賃上げが難しい場合は、「チケットレストラン」のような食事補助の福利厚生サービスの導入も効果的な選択肢となります。新たな防衛的賃上げの選択肢として、「チケットレストラン」を検討してみませんか。