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【社労士監修】キャリアアップ助成金正社員化コースが拡充!改正ポイントと注意点

【社労士監修】キャリアアップ助成金正社員化コースが拡充!改正ポイントと注意点

2024.04.19

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監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)

非正規雇用労働者の増加に伴い、雇用の不安定さや待遇格差などの課題が指摘される中、政府は処遇改善に向けた取り組みを推進しています。「キャリアアップ助成金 正社員化コース」は、まさにこの流れを後押しする制度です。非正規社員の正社員転換を実現する企業に対し、手厚い助成を行うことで、労働者のモチベーション向上と企業の人材確保・育成を同時に支援します。2023年11月から拡充された正社員化コースの概要と活用のポイントを解説します。

キャリアアップ助成金とは?非正規雇用労働者の待遇改善を支援する制度

キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するために、正社員化や処遇改善に取り組む事業主に対して支給される助成金です。非正規雇用労働者の雇用の安定・働きがいの向上・企業の生産性向上を主な目的としています。

具体的には、有期契約社員・パート・アルバイト・派遣社員といった非正規雇用労働者を正規雇用労働者に転換したり、賃金アップなどの処遇改善を行ったりした事業主に対し、助成金を支給する制度です。

キャリアアップ助成金には、正社員化を支援する「正社員化支援」と、賃金アップや諸手当の制度化など処遇改善を支援する「処遇改善支援」の大きく2つの柱があります。

中でも正社員化コースは、非正規社員の正社員転換を直接後押しする制度として広く活用されてきました。2023年11月からは、助成内容がさらに拡充され、より使いやすく効果的な制度として注目度を高めています。

関連記事:【社労士監修】賃上げで最大600万円の業務改善助成金とは?その他の支援制度も解説

「キャリアアップ助成金 正社員化コース」4つの変更点

2023年11月29日以降、キャリアアップ助成金の正社員化コースが大幅に拡充されました。助成金額や支給期間の見直し・対象労働者の要件緩和など、企業の正社員化を後押しする内容となっています。以下、4つの主な変更点を詳しく見ていきましょう。

1:助成金(1人当たり)の見直し

正社員化コースの助成金額と支給期間が大幅に拡充されました。

中小企業の場合、1人当たりの助成額が57万円から80万円に増額され、支給対象期間もこれまでの6ヶ月から12ヶ月に延長されています。

助成金の支給は2期(12ヶ月)に分けて行われ、1期(6ヶ月)当たりの支給額は40万円です。大企業の場合は30万円(2期合計60万円)となります。なお、これらの金額は有期雇用から正規雇用への転換の場合で、無期雇用から転換した場合の助成額は半額です。

キャリアアップ助成金正社員化コース 変更点1

出典:厚生労働省|キャリアアップ助成金「正社員化コース」を拡充しました!

2:対象となる有期雇用労働者の要件緩和

助成金の対象となる有期雇用労働者の要件が緩和されました。

今回の改正により、これまで雇用期間が「6ヶ月以上3年以内」に限定されていた対象労働者の要件が「6ヶ月以上」に緩和されました。これにより、3年を超える長期の有期雇用労働者も助成金の対象に含まれるようになっています。

ただし、有期雇用期間が通算5年を超える場合は、助成額が「無期雇用から正規雇用への転換」と同額になるため注意が必要です。

キャリアアップ助成金正社員化コース 変更点2

出典:厚生労働省|キャリアアップ助成金「正社員化コース」を拡充しました!

3:正社員転換制度の規定に関する加算措置

正社員転換制度を新たに導入する企業への支援として、新たな加算措置が設けられました。

就業規則などに正社員転換制度を規定し、その制度に基づいて有期雇用労働者等を正社員に転換した場合、1事業所につき20万円(大企業は15万円)が加算されます。この加算が適用されるのは、1事業所につき1回のみです。

なお、無期雇用労働者から正社員への転換制度を新たに導入した場合も、同様の加算措置を受けられます。

キャリアアップ助成金正社員化コース 変更点3

出典:厚生労働省|キャリアアップ助成金「正社員化コース」を拡充しました!

4:多様な正社員制度規定に関する加算措置

勤務地限定正社員・職務限定正社員・短時間正社員といった多様な正社員制度を新たに設け、有期雇用労働者等をその制度で正社員化した場合の加算措置が拡充されました。

1事業所当たりの加算額が、従来の9.5万円(大企業7.125万円)から40万円(同30万円)に増額され、多様で柔軟な働き方を実現する正社員制度の導入を後押しする内容となっています。この加算措置も、1事業所につき1回限りの適用です。

キャリアアップ助成金正社員化コース 変更点4

出典:厚生労働省|キャリアアップ助成金「正社員化コース」を拡充しました!

「キャリアアップ助成金 正社員化コース」活用までの流れ

実際に「キャリアアップ助成金 正社員化コース」を活用するにあたっては、どのような手続きが必要なのでしょうか。基本的な流れを解説します。

ステップ1:キャリアアップ計画の提出

正社員化コースを活用するには、まず「キャリアアップ計画」を策定する必要があります。これは、非正規社員のキャリアアップに向けた取り組みの全体像を示す計画書となるものです。

具体的な項目としては、キャリアアップ管理者・対象労働者・目標・実施期間・具体的な施策などがあります。計画は3年以上5年以内の期間で設定し、労働者代表の意見を聴いた上で作成します。

ステップ2:就業規則などの整備

キャリアアップ計画の策定と並行して、就業規則などの社内規程の整備も進めましょう。助成金の申請には、正社員転換の制度や基準を明文化しておく必要があります。

就業規則や労働協約その他これに準するものに、転換の時期や選考方法・要件、その他明示が求められている事項などを具体的に記載します。既存の規程を改定する場合は、変更内容を労働者に周知し、労働基準監督署への届け出を忘れず行わなければなりません。規程整備は正社員化の実効性を高め、社内の理解を得る上でも重要なプロセスです。

ステップ3:正社員転換の実施と助成金申請

就業規則等に基づいて、有期契約社員やパート・アルバイトから正社員への切り替えを行い、6カ月間の雇用を継続します。この間の賃金は、転換前と比べて3%以上の増額が必要です。

転換から6ヶ月が経過した時点で、助成金の支給申請を行います。申請期限は、6ヶ月分の賃金支払いを終えた翌日から2ヶ月以内です。必要書類を揃えて期日までに申請を完了させましょう。さらに6カ月雇用を継続したら、前回と同様に同様に賃金を支払った上で2回目の申請を行います。スケジュール管理を徹底し、着実に申請を進めることが大切です。

「キャリアアップ助成金 正社員化コース」活用のポイント

正社員化コースをより効果的に活用するには、次に挙げるいくつかのポイントを押さえておく必要があります。

  • 計画的に取り組む:性急な正社員化は、労働者の納得感を得られず、定着率の低下にもつながりかねません。キャリアアップ計画をロードマップに、ステップを踏みながら着実に進めましょう
  • 労使間のコミュニケーションをとる:正社員化の基準や処遇を労働者と十分に話し合い、納得感のある制度設計を心掛けましょう。転換のインセンティブを高め、意欲的に業務に取り組んでもらえる環境を整備することが大切です
  • 社内の理解を深める:管理職を含む社内の理解を得ることも重要です。助成金の趣旨や正社員化のメリットを丁寧に説明し、協力体制を築いていきましょう

「キャリアアップ助成金 正社員化コース」活用時の注意点

「キャリアアップ助成金 正社員化コース」を活用する際の主な注意点としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 不正受給について:申請内容に虚偽があった場合、助成金の返還だけでなく、不正受給として厳しいペナルティを課されます。提出書類の誤りや記載漏れにも細心の注意が必要です
  • 書類の管理について:申請書類はもちろん、賃金台帳など関連書類の管理も徹底しましょう。助成金に関わる書類は5年間の保存が義務付けられています
  • 対象者の立場について:対象者が事業主や取締役の3親等以内の親族である場合、助成対象外となります
  • 対象者の年齢について:対象者に年齢制限を設けている場合、支給対象になりません。また、対象者が定年を超えていたり、定年までの期間が短い(定年まで1年をきっている)場合も同様です

    参考:厚生労働省|キャリアアップ助成金のご利用にあたって、特にご注意いただきたい事項について

社員の満足度を高める福利厚生制度も検討を

非正規雇用労働者に対する処遇改善の手段として、正社員化は非常に効果的な方法です。昨今の人手不足を踏まえ「処遇改善策で企業としての魅力を高め、人手不足を解消したい」と考える企業も少なくありません。

とはいえ、すべての企業が非正規雇用労働者の正社員化を進められるわけではありません。

従業員を正社員化するにあたっては、一定のコスト増が必須であり、それを補填するための「キャリアアップ助成金 正社員化コース」もあくまで期間限定の措置だからです。

これらの事実を前提として、近年、「非正規雇用労働者の処遇改善を最小限のコストで行いたい」と考える企業の選択肢として注目されているのが、福利厚生による処遇改善策です。

福利厚生であれば、必要なコストは経費として計上できます。企業の法人税の負担は軽減され、従業員側の所得税や住民税の負担も増えません。つまり、最小限のコストで、非正規雇用労働者をはじめとする従業員の実質的な手取り収入を増やせるのです。

例えば、エデンレッドジャパンが提供する食事補助の福利厚生「チケットレストラン」は、従業員の食事代を半額負担することで、従業員の生活を直接的にサポートできるサービスです。

加盟店は全国に25万店舗以上、勤務時間内であれば使用するタイミングは自由で、場所も選ばないといった自由度の高さが評価され、採用力の強化を目指す中小企業を中心に、2,000以上の企業から選ばれています。

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「キャリアアップ助成金 正社員化コース」を活用して非正規社員の処遇改善と定着を図ろう

キャリアアップ助成金の正社員化コースは、非正規雇用労働者の正社員転換を後押しする有効な制度です。2023年11月の拡充により、助成内容がさらに充実し、企業の活用しやすさが増しました。

正社員化の実現は、労働者のモチベーション向上と雇用の安定につながります。ただし、中には非正規雇用労働者の速やかな正社員化が現実的ではない企業も存在します。助成金を活用した正社員化だけでなく、福利厚生の充実など、自社の実情に合わせて最適な施策を選択することが大切です。

制度の活用も選択肢に加えつつ、従業員のエンゲージメントと採用力の向上を目的とした、人材マネジメントの見直しを進めてはいかがでしょうか。

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