監修者:舘野義和(税理士・1級ファイナンシャルプランニング技能士 舘野義和税理士事務所)
福利厚生は、要件をクリアすることで非課税での運用が可能です。非課税になるか課税対象となるかによって企業の負担は大きく変わるため、あらかじめしっかりと整理しておかなければなりません。
本記事では、福利厚生の基本的な仕組みから、非課税の福利厚生の具体例までをまとめて紹介しています。さらに、福利厚生の中でも近年特に人気の高い食事補助の詳細や、食事補助の福利厚生として日本一の実績を持つエデンレッドジャパンの「チケットレストラン」についても解説しているので、ぜひ参考にしてください。
福利厚生費と法人税の関係
法人税の課税所得金額は、益金(売上収入・売却収入など)から、損金(売上原価・販売費・損失費用など)を差し引いて求めます。損金が多ければ多いほど、課税所得金額は減少し、法人税も安くなります。
企業が福利厚生費として計上した費用は、損金として扱えます。つまり、企業が従業員へ福利厚生を提供することには、損金を増やして法人税を減税するという大きなメリットがあるのです。
福利厚生費と従業員の所得税の関係
福利厚生を利用することでメリットを享受できるのは企業側だけではありません。
福利厚生費として損金計上されるモノやサービスは、従業員の課税所得からも除外されます。福利厚生の形をとることで、従業員は所得税の負担なくモノやサービスの提供を受けることができるのです。
一方、提供された福利厚生が福利厚生費として損失計上できない場合、給与として扱われるため、所得税の課税対象となります。
福利厚生の種類と損金算入の可否
福利厚生とは、従業員の健康で安全な生活を支え、働きやすい環境を作ることを目的として企業が提供する給与以外の報酬のことで「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」の2種類に分かれます。ここでは、それぞれの詳細と、損金との関係について解説します。
【法定福利厚生(法定福利)】すべて損金算入可能
「法定福利厚生」は、提供することが法律や法令によって定められた福利厚生です。法定福利厚生を従業員へ提供することは企業の義務であり、企業側が提供する・しないを決めることはできません。
法律上の義務である法定福利厚生を提供しない企業は、罰則の対象となります。仮に、未提供が原因で従業員が損害を被った場合には、損害賠償請求の対象ともなり得ます。
以下、法定福利厚生の具体的な項目を紹介します。
- 健康保険
- 介護保険
- 厚生年金保険
- 雇用保険
- 子ども・子育て拠出金
- 労災保険
なお、一般社団法人日本経済団体連合会が公開した「2019 年度福利厚生費調査結果の概要」によると、2019年度に企業が負担した法定福利費は、従業員1人あたりの月額平均で8万4,392円となっています。
参考:経団連|第64回 福利厚生費調査結果報告 (2020-12-18)
法定福利厚生の提供にかかる法定福利費は、法人税を算出する際に損金扱いとなります。課税される所得が減るため、法人税額が下がります。
【法定外福利厚生(法定外福利)】要件を満たすと損金算入可能
「法定外福利厚生」は、法律や法令に縛られず、企業独自の判断で提供する福利厚生です。法定福利厚生とは異なり、企業側に提供の義務はありません。
提供する・しないはもちろんのこと、内容についても企業の判断に委ねられるため、企業独自のカラーが表れやすいのが特徴です。
以下、法定外福利厚生として提供されることの多い、一般的な項目を紹介します。
- 住宅手当
- 通勤手当
- 家族手当
- 特別休暇
- 慰安旅行
- 懇親会費
- 慶弔見舞金
- 財形貯蓄制度
- レジャー
- 宿泊施設利用費の補助
- 健康診断補助
- 保育手当
- 資格取得費用補助
- カフェテリアプラン
- 食事補助
なお「2019 年度福利厚生費調査結果の概要」によると、2019年度に企業が負担した法定外福利費は、従業員1人あたりの月額平均で24,125 円となっています。
法定外福利厚生の提供にかかる法定外福利費は、いくつかの要件を満たすことで損金計上できます。損金計上できる場合、法定福利厚生と同じく課税される所得が減るため、法人税額が下がります。
法定外福利費を損金計上するための要件
法定外福利費を損失計上するには、以下に挙げる四つの要件を満たす必要があります。順に見ていきましょう。
福利厚生の目的で支給すること
福利厚生費は「従業員の健康で安全な生活を支え、働きやすい環境を作ることを目的として、企業が提供する給与以外の報酬」です。福利厚生費として計上するのは、福利厚生だけを目的として提供されたモノやサービスでなければなりません。
福利厚生として提供しているモノやサービスを業務にも使用した場合、福利厚生費としては認められなくなるため注意が必要です。
全員を対象としていること
福利厚生は、すべての従業員を対象とする必要があります。
性別や役職等によって提供する・しないが決まるモノやサービスは、福利厚生費とは認められません。すべての従業員が利用する機会を平等に有していることが、福利厚生としての損金計上には必要不可欠です。
関連記事:[社労士監修]福利厚生費は課税される?要件や事例をわかりやすく解説
福利厚生費として内容や金額が妥当であること
福利厚生の目的を踏まえると、福利厚生として妥当ではない内容のモノやサービスを福利厚生として提供することはできません。同時に、福利厚生費として妥当な金額であることも、損金計上するために必要なポイントです。
例えば、社内の親睦会に高級ホテルで1人5万円のコース料理を提供するといった極端に豪華なプランは、親睦や慰安の目的を逸脱しているために福利厚生費としては認められません。あくまでも、常識の範囲内で提供する必要があります。
関連記事:意外と間違いやすい!福利厚生費として経費計上できる・できないの境界線
現物支給である(換金性がない)こと
現金や換金性の高いもの(商品券など)を支給した場合、福利厚生費ではなく給与として課税対象となります。
例えば、福利厚生として従業員に健康診断を受けさせる場合、企業が直接施設へ費用を支払っていれば福利厚生費となりますが、従業員へ費用を渡して受けさせた場合は現金の支給となり、福利厚生の要件から外れます。福利厚生は、現物支給が基本と考えるのが正解です。
福利厚生費として認められないものを損金算入した場合
本来、福利厚生費として損金算入できないものを算入して確定申告をしてしまった場合、間違いに気付いた時点でただちに修正申告が必要になります。
税務署の調査を受けた後で修正申告をした場合や、税務署から申告税額の更正を受けた場合、新たに納める税金に加えて過少申告加算税を納めなければなりません。
また、申告内容を意図的にごまかしたと判断された場合、脱税のペナルティとして重加算税を課される可能性もあります。
損金算入の判断ミスは、企業にとって大きなリスクといえます。
参考:国税庁|No.2026 確定申告を間違えたとき
参考:国税庁|法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)
福利厚生費として認められないケースの具体例
福利厚生費として損金計上しようと考えていても、費用や支給の仕方によっては課税されるケースがあります。福利厚生費として認められないケースの具体例について、福利厚生の種類ごとに紹介します。
高額な通勤手当
自宅から職場までの電車代やバス代を企業が福利厚生(通勤手当)として負担する場合、1カ月あたりの上限額は15万円です。15万円を超える通勤手当を支給する場合、超過分の交通費は課税対象となります。
自動車や自転車で通勤する従業員へ支給する通勤手当の非課税上限額は、片道の通勤距離で以下のように決まっています。この金額を超えて通勤手当を支給した場合、企業は福利厚生費として損金計上できず、従業員も所得税が課税されます。
片道の通勤距離 |
1カ月あたりの非課税上限額 |
2km未満 |
全額課税 |
2km以上10km未満 |
4,200円 |
10km以上15km未満 |
7,100円 |
15km以上25km未満 |
1万2,900円 |
25km以上35km未満 |
1万8,700円 |
35km以上45km未満 |
2万4,400円 |
45km以上55km未満 |
2万8,000円 |
55km以上 |
3万1,600円 |
なお、電車やバスと自動車・自転車を併用して通勤している場合の通勤手当は、公共交通機関の通勤定期券の金額と、自動車や自転車で通勤する片道の距離で定められている非課税限度額を足して計算します。1カ月あたり15万円までであれば、税金はかかりません。
参考:国税庁|No.2582 電車・バス通勤者の通勤手当
参考:国税庁|No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当
家賃の安すぎる社宅や寮
社宅や寮を福利厚生として用意する場合、企業が賃料相当額以上の家賃を毎月従業員から受け取っていれば、費用を福利厚生費にできます。
ここでいう「賃料相当額」とは、以下の合計金額にあたります。
- その年度の建物の固定資産税の課税標準額×0.2%
- 12円×(建物の総床面積/3.3平方m)
- その年度の敷地の固定資産税の課税標準×0.22%
家賃を受け取っていても、3つの合計金額より安い金額の場合や、家賃を受け取らずに無償で提供している場合には、給与とみなされて課税対象となります。
例えば、賃料相当額が1万5,000円の社宅を用意するとき、従業員が1万5,000円以上の家賃を負担していれば非課税です。しかし従業員の負担が1万円であれば、賃料相当額との差額5,000円が給与となり課税されます。
なお、現金で支給する住宅手当は、福利厚生費としては認められません。給与として扱われ、課税対象となります。
参考:国税庁|No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき
条件を満たさない従業員レクリエーション旅行
従業員同士の親睦を深めるための従業員レクリエーション旅行も、一定の条件を満たせば福利厚生になります。以下、具体的な条件を挙げます。
- 4泊5日以内の旅行であること
- 社員旅行を実施する職場の50%以上の従業員が参加していること
4泊5日以内の旅行でも、参加者が従業員20人中9人だと、50%を下回っているため福利厚生費にはできません。また、20人中15人が参加する旅行でも、5泊6日の日程の場合には課税対象です。
また「不参加の従業員には現金1万円を支給」というように、旅行に参加するか現金を受け取るかを選べるケースは、従業員レクリエーション旅行に該当しないため課税対象となります。
このほかにも、旅行へ行くのが役員のみであったり、実質的に私的な旅行であったりする場合、福利厚生には該当しません。
参考:国税庁|No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行
高額すぎる健康診断や人間ドック
健康診断や人間ドックも、福利厚生として提供可能です。ただし、社会通念上、妥当な金額の範囲内でなければなりません。一般的な目安は、健康診断で1万円前後・人間ドックで3万~7万円となります。
健康診断にかかる費用の精算は、企業が医療機関へと直接行います。従業員が立て替え払いをした場合、給与扱いとなり福利厚生としては認められません。
加えて、全従業員が平等に受診できる制度にする必要があります。雇用形態や役職等で受診できる人を限定したり、受診できるコースを分けたりした場合、福利厚生とは認められず課税対象となります。ただし「人間ドックは35歳以上が対象」というように、年齢で分けるケースは問題ありません。
短期間に支給される永年勤続者への記念品や旅行など
長期にわたり自社に貢献する永年勤続者に対し、記念品や旅行などを支給する場合、以下の要件を満たしていると非課税になります。
- 勤続年数や地位相応で、一般的に妥当な金額以内であること
- 勤続年数はおおむね10年以上経過していること
- 2回以上表彰するときには、前回の表彰からおおむね5年以上経過していること
例えば、前回の支給から2年のタイミングで2回目の支給を行った場合、非課税にはなりません。記念品として商品券を支給する場合や、複数の選択肢から記念品を選ぶ形式の場合も、課税の対象です。
参考:国税庁|No.2591 創業記念品や永年勤続表彰記念品の支給をしたとき
自社以外でも使える物品の支給
従業員へ制服を支給する場合、その大半が福利厚生費として扱えます。ただし、同じように仕事で着用する衣類でも、スーツやシャツなど、自社以外でも使える物品は課税対象の給与として扱われます。スーツやバッグ・靴などの購入費用として、現金や金券を支給した場合も同様です。
ただし、提供するスーツやシャツなどに企業ロゴ等が入っている場合、自社以外では使えないと判断されるため、非課税の福利厚生費として計上できます。
付与されるポイントが従業員ごとに異なるカフェテリアプラン
カフェテリアプランは、従業員へポイントを付与し、その範囲内で用意されたメニューの中から従業員が各自で利用するサービスを選べる福利厚生です。
カフェテリアプランにかかる費用を福利厚生費として計上するには、全従業員に同じポイント数を付与しなければいけません。役職によって付与するポイント数が異なる場合、費用は課税対象となります。
また、ポイントを現金や金券類へ交換できるタイプのカフェテリアプランも課税対象です。
参考:国税庁|カフェテリアプランによるポイントの付与を受けた場合
新たな福利厚生として人気の「食事補助」
数ある法定外福利厚生の中でも、近年特に注目されているのが「食事補助」です。その背景や、食事補助を福利厚生費として損金計上するための条件について解説します。
物価高を背景とした従業員の生活サポート
近年、世界的なインフレや円安の影響により、労働者の実質賃金は減少の一途をたどっています。食事にかけるお金を削減することで、生活費の節約に励む人も少なくありません。
記録的な値上げラッシュを背景に、エデンレッドジャパンが一般社員300名を対象に行った調査によると、2023年6月の値上げの影響で節約を意識している人の割合は、全体の実に9割を占めています。また、具体的な節約項目として、もっとも多くの回答を集めたのが「食費」でした。
出典:エデンレッドジャパン|6月の値上げで9割が節約を意識 「ビジネスパーソンのランチ実態調査2023」
福利厚生を通じた食事補助は、実質的に目減りした賃金を補い、従業員の生活を支える役割を担うものです。自社の財産である従業員へ直接的に貢献できる福利厚生として、食事補助を検討する企業が多いのは、ごく自然なことといえるでしょう。
食事補助が福利厚生になる条件
では、食事補助が福利厚生として認められる条件とはどのようなものなのでしょうか。
国税庁は、以下の2つの要件を満たしている場合に限り、従業員へ食事の支給をしても課税対象とはならない(=福利厚生として認められる)と定めています。
(1)役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担していること。
(2)次の金額が1か月当たり3,500円(消費税および地方消費税の額を除きます。)以下であること。
(食事の価額)-(役員や使用人が負担している金額)
例えば、ある従業員の1カ月分の食事代6,000円のうち、3,000円を従業員自身が負担している場合、企業側の負担額は3,000円です。このケースでは、国税庁が定める条件の(1)(2)をともに満たすため、福利厚生費として扱えます。
一方、1カ月の食事代6,000円のうち、従業員の自己負担額が2,500円だった場合、(2)の要件は満たしますが(1)は満たしません。この場合、福利厚生費にはできず、給与の支給として課税対象になります。
なお、一部例外として認められているのが、深夜勤務者への食事補助です。深夜勤務者に対しては、1食あたり300円を上限に非課税での現金支給が認められています。また、残業や宿日直時に現物支給された食事は課税対象外となり、全額を福利厚生費として損金計上が可能です。
福利厚生費にできる「チケットレストラン」
新たな福利厚生として、食事補助の導入を検討する企業から、ひときわ多くの注目を集めているサービスにエデンレッドジャパンの「チケットレストラン」があります。
「チケットレストラン」とはどのようなサービスなのか、多くの企業から選ばれる理由とともに紹介します。
日本一の実績を誇る福利厚生の食事補助サービス
「チケットレストラン」は、専用のICカードを使って利用する福利厚生の食事補助サービスです。
サービスを導入した企業の従業員は、専用のICカードで支払いをすることで、加盟店での食事代金が半額になります。
「チケットレストラン」の加盟店舗数は、ファミレス・コンビニ・カフェ・有名チェーン店など、全国に約25万店舗にものぼります。店舗のジャンルが幅広いため、利用する人の年代や嗜好を問いません。
また、勤務時間内であればいつでも利用できるのも、「チケットレストラン」ならではの大きな魅力です。利用するタイミングが自由なので、ランチはもちろんのこと、休憩時におやつを購入したり、お弁当にサラダなど1品追加したりといった活用の仕方もできます。
こうした数々のメリットが評価され「チケットレストラン」は、食の福利厚生として日本一の実績を持つサービスとなっています。
最小限の手間で非課税枠を活用できる
エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、導入も維持管理も手間がかかりません。
契約から利用開始までは通常1カ月程度・お急ぎの場合には、契約締結より最短2週間で利用を開始できます。また、利用開始後は、月に1度のチャージ作業だけで運用できるため、担当者の負担もありません。
加えて、かかった費用を損金算入できる福利厚生費として扱うために、必要な要件を満たしているのもポイントです。
利用する従業員にとっても、管理する担当者にとってもメリットが大きい「チケットレストラン」は、導入企業様において利用率98%・継続率99%・従業員満足度93%との高い評価を得ています。
インフレ手当や賃上げ代わりに導入できる
物価高が続く中、独自にインフレ手当を支給する企業も増えています。しかし、インフレ手当としてベースアップや一時金を支給した場合、従業員の負担する所得税も上がってしまいます。従業員の生活をサポートするための手当にもかかわらず、支給することで負担する所得税を増やしてしまうというジレンマがありました。
しかし「チケットレストラン」であれば、福利厚生として非課税で運用できるため、従業員の所得税には影響を与えません。所得税のかからないインフレ手当・賃上げとしても有効なサービスです。
全従業員が公平に使える
同じ食事補助でも、お弁当や社食サービスは、出社している人のみが利用できるサービスです。ランチタイムに外回りに出ていたり、リモートワークをしていたりする人は利用できません。
その点、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、全国約25万店舗以上の加盟店を自由に利用できます。働く場所や時間を問わないため、全従業員が平等に食事補助を利用できます。
非課税の福利厚生を有効活用しよう
福利厚生として提供されることの多いサービスの中には、交通費・社宅・従業員レクリエーション旅行など、基本的には福利厚生として損金算入できるものの、一定の基準を超えてしまうと算入できないものがあります。
過少申告加算税や重加算税を課されるリスクを回避するためにも、福利厚生の導入時には対象のモノやサービスが損金参入可能なものなのかどうかを正確に見極めなけれなりません。
そんな、損金算入できるかどうかの判断に迷うことなく安心して利用できる福利厚生として、多くの企業から選ばれているのがエデンレッドジャパンの「チケットレストラン」です。
福利厚生として損金算入でき、また、従業員の生活を直接サポートするサービスとして「チケットレストラン」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。