UAゼンゼンは2025年春闘に向けて、生活向上を実感できる賃上げの定着を目的とした要求を行っています。具体的にどのような要求が行われているのでしょうか?UAゼンゼンの組織について把握した上で、賃上げ要求について見ていきましょう。
UAゼンゼンの組織概要
UAゼンゼンとは日本労働組合総連合会に加盟する、産業別労働組合です。2024年9月時点の組合員数は189万8,966人と、産業別労働組合の中でも大きな存在感を放っています。他の産業別労働組合とは異なる、UAゼンゼンならではの特徴を見ていきましょう。
関連記事:UAゼンセン賃上げ|2025年春闘方針は正規組合員6%・パート組合員7%
規模の小さな組合の割合が高い
UAゼンゼンの組合員数規模割合を見ると、加盟しているのは、規模の小さな組合が多いと分かります。全体の69.8%が、組合員数300人に満たない組合です。
組合員数 |
組合数 |
割合 |
1~99人 |
1,081 |
49.9 |
100~299人 |
431 |
19.9 |
300~999人 |
331 |
15.3 |
1,000~2,999人 |
194 |
9.0 |
3,000人~ |
129 |
6.0 |
短時間組合員が61.1%
パートといった短時間勤務の組合員が多いのも特徴です。
人数 |
割合 |
|
短時間組合員 |
116万1,112人 |
61.1% |
正社員組合員 |
73万7,837人 |
38.9% |
非正規で働く労働者数は2022年には26万人、2023年には23万人、前年より増えています。増加している非正規労働者の組織化が進んだことで、正社員の賃上げをメインに据える他の労働組合との差別化につながったといえるでしょう。
参考:統計局|労働力調査(詳細集計)2023年(令和5年)平均結果の概要
女性組合員が63.2%
女性組合員が63.2%と過半数となっているのもUAゼンゼンの特徴です。
人数 |
割合 |
|
女性組合員 |
120万575人 |
63.2% |
男性組合員 |
69万8,391人 |
36.8% |
UAゼンゼンの示す2025年春闘の賃上げ要求
2025年1月16日に行われたUAゼンゼンの中央委員会で「2025年労働条件闘争方針」が可決されました。基本方針として提示しているのは、以下の5点です。
1.実質賃金の上昇を定着させ日本経済を持続的な成長軌道に乗せる
2.中小組合の賃金水準を底上げし格差拡大に歯止めをかける取り組みを強化する
3.短時間組合員の労働条件改善を加速させる
4.働き方改革と人材投資に労使で取り組み生産性向上をはかる
5.すべての加盟組合の共闘への参加を促進し、闘争への個別的な支援を強化する出典:労働政策研究・研修機構|賃金体系維持分を含めて6%基準、格差是正に向けて額では1万7,000要求をめざす/UAゼンセンの中央委員会
加えて賃上げの方針としては、以下の4点を提示しました。
1.生活向上を実感できる実質賃金の上昇を定着させる
2.規模間格差是正へ向けた具体的取り組みを進める
3.すべての組合員が安心して暮らせるような短時間組合員の賃上げを目ざす
4.全組合員への物価上昇分以上の配分を基本とする出典:労働政策研究・研修機構|賃金体系維持分を含めて6%基準、格差是正に向けて額では1万7,000要求をめざす/UAゼンセンの中央委員会
UAゼンゼンが2025年春闘で要求していく内容について、可決された内容をもとに見ていきましょう。
企業規模による格差是正が基本姿勢
「2025年労働条件闘争方針」で中心になっているのは、企業規模による格差是正です。2024年は歴史的な賃上げが行われましたが、連合によると全体平均を上回る賃上げ率となったのは、従業員数1,000人以上の企業のみでした。
年 |
平均賃上げ率 |
従業員数1,000人以上の平均賃上げ率 |
従業員数300~999人の平均賃上げ率 |
従業員数100~299人の平均賃上げ率 |
従業員数~99人の平均賃上げ率 |
2022年 |
2.07% |
2.12% |
2.00% |
1.98% |
1.96% |
2023年 |
3.58% |
3.69% |
3.44% |
3.32% |
2.94% |
2024年 |
5.10% |
5.24% |
4.98% |
4.62% |
3.98% |
中小企業では賃上げが難しいケースも多く、賃上げが進んだ大企業との間の格差が拡大しています。UAゼンゼンではこの格差の拡大を止める取り組みの強化を行う方針です。
参考:
日本労働組合総連合会|多くの組合が賃金改善分獲得、なかでも中小組合が健闘~2022 春季生活闘争 第7回(最終)回答集計結果について~
日本労働組合総連合会|「未来につながる転換点」となり得る高水準の回答
~2023 春季生活闘争 第7回(最終)回答集計結果について~
日本労働組合総連合会|33 年ぶりの 5%超え!~2024 春季生活闘争 第7回(最終)回答集計結果について~
関連記事:【2024春闘】賃上げ率5.10%を達成!持続可能な賃上げ戦略とは
正社員は総額1万7,000円の賃上げを要求
正社員の賃上げは、定期昇給といった賃金体系が確立されている組合と、賃金体系が確立されていない組合とで、以下のように要求しています。
賃上げ率 |
賃上げ額 |
|
賃金体系が確立されている |
賃金体系維持+4% |
賃金体系維持+1万2,500円 |
賃金体系が確立されていない |
6% |
1万7,000円 |
またUAゼンゼンで基本賃金として設定しているミニマム水準「高卒35歳・勤続17年:25万円」「大卒30歳・勤続8年:25万円」を超えている組合では、同様の賃上げ率を基準として、各部会や業種の現状に合わせて要求水準を設定することとしています。
パートは7%の賃上げを要求
パートの賃上げでは、制度昇給分が明確になっているかなっていないかで、以下のように要求する賃上げ率・賃上げ額を提示しています。
賃上げ率 |
賃上げ額 |
|
制度昇給分が明確 |
制度昇給分+5% |
制度昇給分+60円 |
制度昇給分が不明確 |
7% |
80円(制度昇給分含む) |
最低賃金の全国平均1,500円の早期実現も意識
短時間組合員が多いUAゼンゼンでは、最低賃金の全国平均1,500円を意識した取り組みも行っています。2025年春闘では、時給1,180円・月額19万5,000円を基準として、消費者物価の地域差を考慮の上で設定した金額以上とすることを要求しました。
期末一時金は5カ月を基準として要求
賞与・ボーナス・期末手当などにあたる期末一時金についての要求も行っています。正社員の要求基準は年間5カ月、パートは年間2カ月以上です。
UAゼンゼンの部門別要求水準
UAゼンゼンには、大会・中央委員会・中央執行委員会・常任中央執行委員会の下に、製造産業部門・流通部門・総合サービス部門の3つの部門があります。これら3つの部門が示した、部門別の要求水準についても見ていきましょう。
製造産業部門
製造産業部門は、繊維素材部会、繊維加工部会、総合製造部会、医療・スポーツ部会、化学部会、医療・化粧品部会からなり、885組合・18万6,931人の組合員がいます。
2025年春闘で製造産業部門は、UAゼンゼンの本部方針とほぼ同様の水準で要求することを決定しました。
賃上げ率 |
|
賃金体系が確立されている |
4%基準+格差是正 |
賃金体系が確立されていない |
6%基準+格差是正 |
流通部門
流通部門には、スーパーマーケット部会・GMS部会・住生活関連部会・百貨店部会・ドラッグ関連部会・専門店部会・家電関連部会があり、508組合・115万4,210人の組合員が加盟しています。
基準は全体方針である、制度昇給が明確な場合に制度昇給+5%・不明な場合に7%です。これに加えて、ミニマム水準に達していない場合には、制度昇給分とベースアップを含めて平均1万7,000円以上を要求しています。
また雇用形態による格差是正に向けて、パートの賃金水準が正社員同等となる賃上げも要求するそうです。
総合サービス部門
総合サービス部門は、フード部会、フードサービス部会、インフラサービス部会、生活サービス部会、ホテル・レジャー部会、パチンコ関連部会、医療・介護・福祉部会、人材サービス部会からなり、773組合・55万7,808人の組合員がいます。
中小組合では規模の大きな組合と比べて、2023・2024年に賃上げが進んでいない状況を受け、UAゼンゼン本部の要求水準より1%高い、賃金体系維持+5%の賃上げを基準とするそうです。
また賃金水準がミニマム水準に達していない場合や、水準が不明の場合には、賃金体系維持相当分の4,500円+5%、もしくは7%を基準として賃上げを要求します。
パートといった短時間組合員の賃上げに関しては、UAゼンゼン本部の要求水準と同等です。
UAゼンゼン加盟組合の賃上げ動向
UAゼンゼンに加盟している組合の中で、2025年春闘での賃上げを表明している組合について、賃上げ動向を見ていきましょう。
イオングループ
イオングループはパートの時給を2023年春闘で7%以上、2024年春闘で7.02%引き上げています。2025年春闘では平均7%以上の時給アップを実施する方向で調整を行っているそうです。
グループの平均時給は1,170円のため、約82円の賃上げとなる見込みとされています。
ニトリホールディングス
ニトリホールディングスは2025年春闘でも2024年並みの賃上げを実施することを表明しました。2024年春闘では、総合職社員の月給は平均2万2,389円、パート・アルバイト社員の時給は平均67.3円の賃上げが行われているため、同程度の賃上げとなる見込みです。
ビックカメラ
家電量販店のビックカメラは、2025年春闘に先駆けて2024年12月に賃上げを実施しました。ベースアップ4%と定期昇給を合わせて約6%の賃上げを早期に行い、人材確保や人材定着を目指しています。
中小企業の賃上げでは第3の賃上げも活用を
エデンレッドジャパンでは、定期昇給を「第1の賃上げ」、ベースアップを「第2の賃上げ」、福利厚生サービスを活用した賃上げを「第3の賃上げ」と定義しました。定期昇給やベースアップと組み合わせて「第3の賃上げ」に取り組むことで、従業員の実質的な手取り額を上げられます。
ここでは「第3の賃上げ」の仕組みや特徴に加えて、「第3の賃上げ」におすすめの福利厚生サービスを見ていきましょう。
関連記事:“福利厚生”で実質手取りアップと高いエンゲージメントの実現を「#第3の賃上げアクション」プロジェクト
第3の賃上げで実質的な手取りアップ
現金で支給する定期昇給やベースアップを実施すると、従業員の税額や社会保険料額に影響します。
一方、エデンレッドジャパンの提唱する「第3の賃上げ」は、福利厚生の支給で実質的な手取りアップを行う仕組みです。非課税枠を利用できるため、従業員の税負担を増やすことなく支給できます。
借り上げ社宅制度の「freee福利厚生」
freee福利厚生はコストを増やすことなく、従業員の手取り額を上げられる福利厚生サービスです。給与の一部を借り上げ社宅として従業員へ現物支給することで、従業員は可処分所得を1年間に10~50万円増やすことができ、企業は社会保険料負担を軽減できます。
運用もすべてfreee福利厚生へ任せられるため、手間を増やすことなく制度を充実させられる点もメリットです。
食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」
エデンレッドジャパンの提供する食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」は、全国にある25万店舗以上の加盟店で利用できます。一定の条件下で提供することで、非課税枠を利用できるため、従業員の税負担を増やすことなく実質的な手取り額アップにつながる仕組みです。
UAゼンゼンの2025年春闘をチェック
UAゼンゼンは2025年春闘において、生活向上を実感できる賃上げや、格差是正を掲げて要求していく方針を固めています。各部門もUAゼンゼン本部の掲げる賃上げの基準をベースにした要求を行うそうです。
また加盟している組合の中には、既に賃上げを表明している企業もあります。今後の動向と併せてチェックしていきましょう。
中小企業が賃上げに取り組むときには、定期昇給やベースアップとともに、福利厚生の支給を活用するのも1つの方法です。借り上げ社宅や食事補助の活用によって、従業員の実質的な手取り額を上げられます。
福利厚生の支給による待遇改善には、食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」がおすすめです。賃上げとともに導入を検討してみませんか。
参考記事:「#第3の賃上げアクション2025」始動、ベアーズが新たに参画~中小企業にこそ“福利厚生”による賃上げを! “福利厚生”で、より働きやすく、暮らしやすい社会へ~
「賃上げ実態調査2025」を公開~歴史的賃上げだった2024年も“家計負担が軽減していない”は7割以上!
新キャンペーンのお知らせ:従業員の生活支援に!「第3の賃上げ」導入応援キャンペーン開始 ~食事補助サービス「チケットレストラン」で“手取りアップ”を実現~
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