BPRとBPOは、ともに経営効率化の手法として注目を集める手法です。一方で、両者の違いや選び方を正確に理解している担当者は多くありません。本記事では、BPRとBPOそれぞれの特徴や違いを基本からわかりやすく解説。自社に最適な手法の選び方から、導入・運用のポイントまで、実践的な情報をお届けします。
BPR|業務改革の本質
近年、デジタル化の波とともに業務改革の重要性が高まる中で、注目を集めているのが「BPR」です。単なる業務効率化ではなく、企業の競争力強化につながる抜本的な改革手法として知られるBPRとは、いったいどのような手法なのでしょうか。
BPRとは
「BPR」は「Business Process Re-engineering」の略語で、企業の業務プロセスを根本から見直し、再設計する経営手法のことです。
既存の業務の改善ではなく「なぜこの業務が必要か」という本質的な問いから始まるのが特徴で、これまで当たり前のように行っていた承認プロセスや帳票管理の必要性を問い直し、デジタル技術も活用しながら、より効率的で価値の高い業務プロセスを構築していきます。
対象となる業務は、営業・製造・人事など企業活動全般に及びます。複数部門にまたがる視点で業務を見直すことで、より大きな効果を生み出すことができる手法です。
BPRが注目される背景と目的
BPRが注目される最大の背景は「2025年の崖」と呼ばれるデジタル化の課題です。
経済産業省は、2018年に公開した「DXレポート」の中で、既存システムの老朽化やブラックボックス化・IT人材の不足により、2025年以降、最大12兆円/年の経済的損失が生じる可能性を指摘しました。また、深刻化する人材不足や働き方改革への対応も、企業にとって急務となっています。
BPRは、こうした課題に対し、業務プロセスそのものの見直しによる抜本的な解決を目的として導入されている手法です。
参考:経済産業省|DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~
関連記事:【2025年問題】とは?企業に迫る危機と対策をかんたんに解説!
BPRで実現できること
BPRの導入により実現できることは以下の通りです。
- 業務プロセスの簡素化による大幅な工数削減
- 承認プロセスの見直しによる意思決定の迅速化
- 部門間連携の強化による組織全体の生産性向上
- 人的ミスの削減(デジタル技術の効果的な導入による)
- データに基づく経営判断の実現
BPR成功のための3ステップ
STEP1 | 業務プロセスの可視化 |
STEP2 | 理想的な業務プロセスの設計 |
STEP3 | 新プロセスの実装・効果測定と改善 |
BPR成功の鍵は、計画的な導入と全社的な取り組みにあります。
第1ステップでは、現状の業務プロセスを可視化し、課題を特定します。この際、単なる業務フローの把握だけでなく、各業務の必要性や付加価値を検証することが重要です。
第2ステップでは、理想的な業務プロセスを設計します。ここでは、デジタル技術の活用可能性も含めて、幅広い視点で検討を行いましょう。
第3ステップでは、新しいプロセスを実装し、効果測定と改善を継続的に行っていきます。特に初期段階では、影響範囲が限定的で効果が測定しやすい業務から着手し、成功体験を積み重ね、全社的な改革への推進力としていくことが大切です。
BPO|業務委託の新しいカタチ
企業の競争力強化には、コア業務(=企業の競争力の源泉となる主要な活動・ビジネスの中心を成す重要な業務)への経営資源の集中が不可欠です。「BPO」は、そのための有効な手段として注目を集めている新しいアウトソーシングの手法です。
BPOとは
BPOは「Business Process Outsourcing」の略語で、企業の業務プロセスの一部を、企画から運用まで一括して外部の専門業者に委託する手法です。
従来型のアウトソーシングが単純作業の外部委託が中心だったのに対し、BPOでは、業務の設計から改善提案まで含めた包括的なサービスを提供します。
対象となる業務は、人事・経理・総務などのバックオフィス業務から、カスタマーサポート・データ入力・ITシステムの運用管理まで多岐にわたります。
特に定型的で標準化しやすい業務との相性が良く、専門業者のノウハウの活用による業務品質の向上も見込める手法です。
BPOが注目される背景と目的
BPOが注目を集める背景にあるのが、深刻化する人材不足の課題です。
近年、少子高齢化により、労働人口の減少が深刻化しています。これに伴い、専門性の高い人材の確保が困難になっていることから、外部リソースを活用する企業が増えているのが実情です。
さらに、働き方改革への対応や、コストの変動費化によるリスク管理の観点からも、即戦力となる人材確保の重要性が高まっています。
こうした課題を背景に、業務の効率化・コスト削減・専門性の活用による品質向上を目的として導入されているのが「BPO」です。
BPOで実現できること
BPOの導入により実現できることは以下の通りです。
- コスト構造の改善(固定費の変動費化)
- 人材の採用・教育コストの削減
- 業務の繁閑に応じた柔軟な対応
- 専門業者のノウハウ活用による業務品質の向上
- コア業務への人材集中による競争力強化
BPO成功のための4ステップ
STEP1 | 委託対象業務の選定・切り出し |
STEP2 | ベンダー選定 |
STEP3 | 業務の移管 |
STEP4 | 運用管理・効果測定と改善 |
BPOを成功に導くためには、計画的な導入が不可欠です。
第1ステップでは、委託対象業務の選定と切り出しを行います。この際、業務の標準化レベルや、社内に残すべき機能の見極めが重要です。
第2ステップでは、適切なベンダーの選定を行います。このとき、単なるコストだけでなく、実績やセキュリティ体制、企業文化との親和性なども考慮します。
第3・第4ステップは、業務の移管と運用管理です。まずは定型的な業務の一部委託からスタートし、段階的に進めることで、リスクを最小限に抑えることができます。効果測定は定量・定性両面から行い、従業員満足度などの指標も重視することが大切です。
KPI(=重要業績評価指標)に基づく定期的な効果測定と改善のサイクルを確立することにより、持続的な成果が得られます。
BPRとBPOの違いを徹底比較
業務効率化を実現する手法として、BPRとBPOはどちらも有効な選択肢です。しかし、その本質と目的は大きく異なります。自社の課題に応じて最適な手法を選択するため、両者の違いを整理していきましょう。
比較項目 | BPR(業務改革) | BPO(業務改善) |
---|---|---|
目的 | 業務プロセス全体を根本から見直し、効率的な仕組みを再構築する | 既存の業務プロセスを外部業者に委託して効率化・コスト削減を図る |
アプローチ | 社内リソースを活用した全社的な取り組み | 外部リソースを活用し、特定業務の部分最適化を図る |
対象業務 | 全社的な業務プロセス(例:営業・製造・人事など) | 特定の定型業務(例:給与計算・人事管理・IT運用など) |
実施期間 | 通常1年以上の長期間を要する | 比較的短期間で導入可能 |
初期投資 | 高額(システム導入や業務改革のための大規模な投資が必要) | 低額(委託業務範囲を段階的に拡大可能) |
継続費用 | 基本的に発生しない(ただし、維持費や改善費用は発生する場合あり) | 委託費用として継続的に発生 |
主なメリット | 組織全体の効率化と競争力向上 | 業務品質の向上・柔軟なリソース活用・コスト削減 |
主なデメリット | 導入までに時間とコストがかかる | 委託先への依存度が高まり、情報漏洩リスクの懸念がある |
目的とアプローチの違い
BPRとBPOでは、その目的とアプローチが根本的に異なります。
BPRは業務プロセス全体を根本から見直し、より効率的な仕組みを再構築することを目的としています。一方、BPOは既存の業務プロセスを外部の専門業者に委託することで、効率化とコスト削減を図る手法です。
つまり、BPRは「業務改革」・BPOは「業務改善」と位置付けることができます。アプローチの面では、BPRが社内リソースを活用した全社的な取り組みであるのに対し、BPOは外部リソースの活用による部分最適化を図る手法といえます。
実施期間とコストの違い
導入から効果実現までの期間とコストも、両者で大きく異なります。
BPRは業務プロセス全体の見直しを伴うため、通常1年以上の期間を要し、初期投資も比較的大きくなります。一方、BPOは委託する業務範囲を段階的に拡大できるため、比較的短期間での導入が可能で、初期投資も抑えることが可能です。
ただし、BPOには継続的な委託費用が発生します。この点を踏まえ、中長期的な費用対効果の検討が必要です。
BPRとBPOの相互関係
BPRとBPOは、単に別々の手法というだけでなく、相互に補完し合う関係です。BPRを実施した後にBPOを導入することで、より大きな効果が期待できます。
具体的には、以下のようなプロセスが考えられます。
- BPRによる業務プロセスの最適化:BPRを通じて既存の業務プロセスを根本から見直し、効率化を図る
- 最適化された業務の外部委託:BPRで最適化された業務のうち、外部委託に適したものをBPOで外部専門業者に委託する
- 相乗効果の創出:BPRで最適化された業務をBPOで委託することで、自社のコア業務への集中と専門業者のノウハウ活用という二重の効果を得る
このように、BPRとBPOを戦略的に組み合わせることで、業務改革の効果を最大化し、企業の競争力をさらに高めることが可能となります。
自社に最適な手法の選び方
BPRとBPOのどちらを選択するか、あるいは両者をどのように組み合わせるかは、企業の状況や課題に応じて慎重に判断する必要があります。ここでは、選択の際の具体的な判断基準を解説します。
業務特性からみる選択基準
コア業務や競争力に直結する業務については、BPRによる抜本的な改革が効果的です。具体的には、商品開発プロセスや営業プロセスの改革などが該当します。
一方、定型的で標準化が可能な業務、特に経理や人事・総務などのバックオフィス業務は、BPOとの相性が良いといえます。また、業務の専門性や社内のリソース状況も重要な判断基準です。
組織規模と予算からの判断
企業の規模や予算に応じた現実的な判断も重要です。
大規模な組織では、全社的なBPRによる効果が大きく、投資対効果も期待できます。一方、中小規模の組織では、必要な業務からBPOを導入し、段階的に範囲を広げていく方法が現実的です。
予算面では、BPRは初期投資は大きいものの、長期的な効果が期待できます。BPOは初期投資を抑えられますが、継続的なコストが発生することを考慮する必要があります。
働き方改革における活用のポイント
BPRとBPOは、ともに働き方改革の推進に大きく貢献します。特に重要なのは、業務効率化による従業員の負担軽減と、それに伴う従業員満足度の向上です。
BPRやBPOを導入することで業務効率化が進み、従業員の負担が軽減されます。これにより従業員満足度が向上し、採用市場での競争力強化や離職防止につながります。
具体的には、BPRによって無駄な作業が削減され、より働きやすい環境が整備されます。また、BPOの活用により、従業員の作業量に余裕ができ、残業削減やリフレッシュ時間の確保が可能になります。
効果的に従業員満足度を高める方法としては、BPRやBPOの導入に加え、賃上げや福利厚生の充実なども効果的です。これらの取り組みにより、長期的な企業の競争力強化が期待できます。
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関連記事:「チケットレストラン」の仕組みを分かりやすく解説!選ばれる理由も
BPRとBPO|成功の鍵は段階的な導入と継続的な改善
業務効率化に向けたBPRとBPOの選択は、企業の将来を左右する重要な経営判断です。両者はアプローチこそ異なりますが、いずれも企業の競争力強化と従業員満足度の向上に大きく貢献します。
導入に際しては、自社の課題や状況を正確に把握し、段階的なアプローチで進めることが重要です。また、業務効率化の取り組みと併せて、食事補助などの福利厚生の充実を図ることで、より大きな効果を期待することができます。ぜひ自社に最適な手法を選択し、企業としての持続的な成長を目指しましょう。