【最新】働きやすい職場認証制度とは？申請方法も分かりやすく解説

「働きやすい職場認証制度」のわかりやすい概要

「働きやすい職場認証制度」は、運転者の労働環境改善を促進するために設立された評価制度です。職場環境の良好度を「星」の段階で可視化し、求職者や取引先に対して信頼性をアピールします。まずは、制度の基本的な仕組みや、認証の具体的な流れについて解説します。

「働きやすい職場認証制度」とは？

「働きやすい職場認証制度」は、2019年に国土交通省が創設し、「一般財団法人日本海事協会（ClassNK）」による認証によって運用されている認証制度です。「働きやすい職場認証制度」は通称であり、正式名称は「運転者職場環境良好度認証制度」です。

この制度では、企業が取り組む職場環境改善を評価し、星の数でその成果を示します。これにより、従業員にとって働きやすい職場が可視化され、業界への就労を促す一助となります。

以下は、認証段階ごとの概要です。

出典：国土交通省｜自動車：働きやすい職場認証制度（正式名称：「運転者職場環境良好度認証制度」） 

2024年4月に公表された2023年度の認証実績によると、以下の通り多くの事業者が認証を取得しています。

• 一つ星：628社
• 二つ星：206社
• 三つ星：44社

制度開始から現在までに、3,735社・11,028の営業所が認証を取得しています。

参考：認証実施団体について｜自動車運送事業者の働きやすい職場認証制度
参考：一般財団法人日本海事協会（ClassNK）｜2023年度「働きやすい職場認証」認証事業者を公表（2024年4月5日）

制度創設の目的

「働きやすい職場認証制度」は、運送業界における人手不足や厳しい労働環境の課題を解決するために創設された制度です。

具体的な目的は、主に以下の三つです。

1. 人手不足の解消
   長時間労働や低賃金といった負のイメージを改善し、業界への人材流入を促進する

2. 公平な競争環境の整備
   中小事業者も大手事業者と同じ評価基準で競争できる仕組みを構築する

3. 業界全体のイメージ向上
   職場環境の改善を通じ、業界の魅力を高めることで持続可能な人材確保を実現する

これらの目的に基づき、運送業界の課題を包括的に解決するための仕組みとして「働きやすい職場認証制度」が導入されました。

制度の対象

認証制度の対象となるのは、運送事業の事業許可日から3年以上経過している以下の自動車運送事業者です。

出典：一般財団法人日本海事協会（ClassNK）｜トラック・バス・タクシードライバーのための「働きやすい職場認証制度」

企業グループ再編等で要件を満たす場合には、3年未満でも申請可能です。

なお、複数事業を運営する場合は、事業ごとに個別の申請が必要です。多様な事業者が認証を受けることで、業界全体の信頼性向上が図られています。

取得するメリット

「働きやすい職場認証制度」の認証取得によるメリットは多岐にわたります。事業者にとって具体的な利点を以下に整理しました。

これらのメリットを活用することで、認証取得事業者は採用活動の円滑化や社会的信頼の向上を実現できます。

「働きやすい職場認証制度」創設の背景

「働きやすい職場認証制度」が創設された背景には、運送業界が抱える人手不足や労働環境にまつわる深刻な課題があります。ここでは、背景にある課題や創設に至る経緯を詳しく解説します。

深刻化する人手不足

出典：厚生労働省｜将来推計人口（令和５年推計）の概要

日本の少子高齢化は留まるところを知りません。

厚生労働省は「将来推計人口（令和5年推計）」の中で「2020年から2070年にかけて、日本の生産年齢人口（15歳以上65歳未満の人口）は7,509万人から4,535万人まで減少する」と試算しています。

高齢化率は28.6%から38.7%まで上昇しますが、これは国民の約2.6人に1人が高齢者となる計算です。

そもそもの人口が減少しつつある以上、企業の人手不足は今後ますます深刻度を増していくと考えてよいでしょう。

さらに、トラック・バス・タクシーに関連する運送業界では、以下のような運転業務へのネガティブなイメージが新規人材の採用を阻んでいます。

• 長時間労働が常態化している
• 低賃金で労働条件が厳しい
• 休暇が取りにくい環境である

この課題を受け、国土交通省は「働きやすい職場認証制度」を通じて職場環境の「見える化」を図り、優秀な人材を業界へ呼び込む施策を打ち出したのです。

参考：働きやすい職場認証制度について | 自動車運送事業者の働きやすい職場認証制度

業界を苦しめる人手不足倒産

人手不足は、企業の経営基盤そのものを揺るがす深刻な課題です。

帝国データバンクの「人手不足倒産の動向調査（2024年度上半期）」によると、2024年度上半期（4-9月）の人手不足倒産件数は163件に達しました。これは年度ベースで過去最多を記録した2023年度（313件）をさらに上回るペースです。

業種別の分析では、建設業が55件・物流業が19件と、この2業種で全体の45.4%を占めています。

物流業界では、EC市場の拡大による需要増加に人材確保が追いつかず、配送効率の低下や人件費の上昇が経営を圧迫しています。さらに、人材の確保や定着が困難な中、賃上げ要請や最低賃金の引き上げなど、人件費負担が増加していることも事業継続の大きな障壁となってるのが現状です。

画像出典元：参考：株式会社 帝国データバンク[TDB]｜人手不足倒産の動向調査（2024年度上半期）｜（2024年10月4日）

「2024年問題」の影響

建設業と物流業で人手不足倒産が多発している背景には、2024年4月に完全施行された時間外労働の上限規制適用、いわゆる「2024年問題」があります。

2024年問題では、時間外労働の上限規制が建設・物流業にも完全適用され、年間960時間を超える時間外労働が認められなくなりました。これによって従業員の離職が進み、人手不足がより深刻化している企業も少なくありません。

「働きやすい職場認証制度」は、こうした課題解決の一助として期待されています。

参考：厚生労働省｜時間外労働の上限規制 わかりやすい解説

関連記事：2024年問題で労働時間はどう変わる？解決策をわかりやすく解説

「働きやすい職場認証制度」申請の手引き

「働きやすい職場認証制度」を活用するためには、申請プロセスや必要な情報を正確に把握することが大切です。ここでは、申請スケジュールや必要書類・審査プロセス・費用など、申請について知っておきたい情報を詳しく解説します。

申請スケジュール

申請は毎年一定のスケジュールに沿って行われます。2024年度のスケジュールは以下の通りです。

出典：自動車運送事業者の働きやすい職場認証制度 | 「運転者職場環境良好度認証制度」

申請は電子申請が推奨されていますが、郵送でも可能です。詳細なスケジュールや必要書類は公式ウェブサイトで随時更新されるため、最新情報の確認を忘れないようにしましょう。

新規取得の手順

「働きやすい職場認証制度」へ初めて申請する際は「一つ星」への申請となります。以下、初めて申請する事業者向けに、「一つ星」への申請手続きの流れを簡潔にまとめました。

参考：一般財団法人日本海事協会（ClassNK）｜トラック・バス・タクシードライバーのための「働きやすい職場認証制度」

1.申請に必要な書類を準備する

申請には、「審査申込書」「営業所情報」「自認書」が必要です。合わせて、以下の六つの書類の写しを提出しなければなりません。

• 就業規則（10 人未満の営業所は労働基準監督署の受付印不要）
• 36 協定
• 労働条件通知書
• 安全衛生委員会等関連書類
• 定期健康診断結果報告書（労働安全衛生規則 第52条関係 様式第6号｜50 人以上の営業所のみ対象）
• 事業改善報告書等（行政処分の違反点数を受けている事業者のみ対象）

2.書類を提出する

「電子申請」「紙による申請（郵送）」のどちらかを選択肢、申請します。

どちらを選択するかは事業者の自由ですが、公式に推奨されているのは電子申請です。電子申請を選択した場合、紙による申請に比べて手続きがスムーズかつ、申請料が20,000円割引されるメリットがあります。

なお、電子申請は、事前にアカウントの作成が必要になるため注意が必要です。

参考：「申請案内書＜「二つ星」新規・継続申請、「一つ星」新規・継続申請＞」

3.審査を受ける

「働きやすい職場認証制度」に関連する審査は「事前スクリーニング及び書面審査」「対面審査」と、登録証書発行後に行われる「巡回チェック」の三つです。

それぞれの役割を以下にまとめました。

4.登録証書が発行される

審査に合格すると、結果通知書が発行されます。認定基準を満たしている場合には、併せて登録料が請求されます。

登録料が納付されると認証登録が完了し、登録証書が発行されますが、納付されない場合には登録されません。

審査の要件

「働きやすい職場認証制度」の審査は、以下の6つの分野に基づいて行われます。

なお、「三つ星」の取得には、労働環境改善を測るPDCA（計画・実行・評価・改善）サイクルの運用も求められます。

申請にまつわる費用

出典：新規取得の方へ | 自動車運送事業者の働きやすい職場認証制度

申請にかかる費用は認証段階や営業所数に応じて異なります。また、継続申請にはさらに優遇措置が設けられています。

登録証書の発行

出典：新規取得の方へ | 自動車運送事業者の働きやすい職場認証制度

審査に合格した事業者には登録証書が発行されます。有効期間は原則2年間です。この期間内に継続申請を行うことで、認証を維持することが可能です。また、認証事業者の情報は公式ウェブサイトで公表されます。

「働きやすい職場認証制度」認証事業者の取り組み事例

「働きやすい職場認証制度」の認証を取得した事業者は、どのような目的で認証を取得し、どのようなメリットを得られているのでしょうか。ここでは、公開されている取り組み事例をもとに、制度の効果や成功のポイントを紹介します。

参考：一般財団法人日本海事協会（ClassNK）｜認定事業者取り組み事例

運転者の健康管理を強化したタクシー事業者の成功例

運転者の健康管理に取り組む岐阜県のタクシー事業者は「働きやすい職場認証制度」を活用し、健康管理アプリを導入しました。

このアプリを使うことで、運転者が自分の健康診断結果をスマートフォンで確認できるようになり、健康維持への意識が向上しています。

また、定期的な健康診断の実施を徹底することで、疾病の早期発見が可能となり、結果として従業員の健康改善に寄与しました。同時に、企業全体の職場環境の改善が評価されています。

働き方改革で事故削減を実現したバス事業者

神奈川県のバス事業者は、安全性向上と運転者の定着率向上を目指し、眠気感知センサーやデジタルタコグラフ（デジタコ）を導入しました。

これにより、運行中の事故リスクを大幅に削減しました。さらに、年2回の健康診断や脳ドックの実施を徹底し、運転者の健康管理を強化しています。

これらの取り組みによって、ドライバーの働きやすさが向上し、定着率が増加するとともに、企業全体の安全性と業績が向上しました。

働き方改革で生産性向上を実現したトラック事業者

栃木県のトラック事業者は、長時間労働の解消と運転者の健康管理を目的に「働きやすい職場認証制度」を活用しました。

運行管理システムを導入し、輸送効率を向上させることで、運転者の拘束時間を短縮しています。さらに、休憩スペースの整備や運転者向け健康セミナーを開催し、従業員の健康意識を高めました。

この取り組みにより、業務の効率化と従業員の定着率向上を同時に実現しています。

人手不足が自動車運送業界に与える影響

自動車運送業界における人手不足は、企業経営全体に深刻な影響を及ぼしています。ここでは、人手不足がもたらすリスクについて、三つの主な課題に焦点を当てて解説します。

業務効率の低下

自動車運送業界において、人手不足は業務効率の低下を直接引き起こします。特に小規模な運送事業者では、以下のような影響が顕著です。

• 運行スケジュールの遅延：運転者不足により、予定通りの運行が困難になる
• 配送品質の低下：遅配や誤配の増加により、取引先からの信頼が低下する
• 業務の属人化：限られた従業員に業務が集中し、突発的な欠員に対応しづらくなる

これにより、配送サービス全体の競争力が低下し、顧客からの信頼を失う可能性があります。また、デジタル化やITツールの導入による業務効率化を試みる企業もありますが、コストや導入スピードの観点から、中小企業では十分な効果を得られない場合が多いのが実情です。

従業員のモチベーション低下

人手不足による従業員一人当たりの負担増加は、モチベーションの低下を招きやすくなります。特に、次のような影響が指摘されています。

• 長時間労働の増加：休暇取得が困難になり、従業員の健康を損なうリスクが高まる
• 業務負荷の不公平感：同僚との業務負担の偏りが不満を生む
• キャリア形成の停滞：日々の業務に追われてスキルアップの機会を失う

結果として、離職率が上昇し、さらに人手不足が悪化するという悪循環に陥るリスクがあります。これを防ぐためには、従業員の健康やワークライフバランスを意識した取り組みが不可欠です。

事業の縮小・停滞リスク

人手不足の長期化は、企業の成長にとって致命的な影響をもたらします。特に以下のリスクが挙げられます。

• 受注の減少：従業員不足により新規案件を受け入れられない
• 新規顧客の獲得難航：現場の対応力低下により、新規取引を断念せざるを得ない
• 運営コストの増加：人材確保のために賃金を引き上げる必要がある
• サービス品質の低下：人手不足により、配送遅延や顧客満足度の低下が発生する
• 事業継続の危機：離職や高齢化による技能継承の欠如により、事業そのものが維持困難になる

特に地方に根差した運送業者では、人材不足により事業そのものを縮小せざるを得ないケースも少なくありません。このような状況を防ぐためには、業務効率化や福利厚生の充実による従業員定着率の向上が求められます。

人手不足解消に向けた具体策

自動車運送業界が抱える人手不足を解決するには、複合的なアプローチが必要です。このセクションでは、業界特有の課題に対応するための具体的な解決策を解説します。

多様な働き方の推進

運転者不足を解消するには、働き方の柔軟性を高めることが重要です。自動車運送業界では、運転スケジュールを柔軟化することで、従業員がライフスタイルに合わせた働き方を選べる環境を整えることが求められます。

たとえば、家庭の事情に配慮した短時間勤務制度の導入や、夜勤を希望する人材向けの特別シフトを組むことで、運転者の負担の軽減が可能です。

近年は、デジタルタコグラフや運行管理システムを活用し、労働時間の適正化を図る取り組みも進んでいます。これにより、運転者一人あたりの負担を分散させるだけでなく、業務効率の向上も期待できます。

従業員が働きやすい環境を整備することで、業界全体の人材流動性を向上させる可能性も広がるでしょう。

外部人材の活用

即戦力の確保には、外部人材を積極的に採用することが効果的です。特に、シニア世代の再雇用は即戦力として大きな期待が寄せられています。退職後も運転技術を保持している人材を活用することで、新規雇用にかかる教育コストを削減できます。

また、外国人労働者を受け入れる技能実習制度の利用も有効です。ただしこの場合、文化的な背景や言語の壁を考慮した教育体制の整備が必要不可欠になります。

一時的な需要に対応するためには、フリーランスや契約ドライバーを活用するのも良い選択肢です。こうした取り組みは、業務の柔軟性を高め、企業全体の競争力を強化することにつながります。

福利厚生の充実

人材の採用・定着において、福利厚生の充実は重要な差別化要因です。

福利厚生には、健康保険や厚生年金保険のように、提供が義務付けられている「法定福利厚生」と、社宅の提供や食事補助・慶弔見舞金など、企業が独自で提供する「法定外福利厚生」の2種類があります。このうち「法定外福利厚生」は、提供が義務ではないだけに、充実させることで「従業員を大切にする企業」としての強力なアピールになります。

企業から大切にされていると感じられる従業員は、そうでない従業員に比べ、満足度やエンゲージメントが向上し、積極的に取り組むのが一般的です。働きやすい環境が整うことにより、人手不足の解消も期待できます。

なお、近年、内定辞退の予防策として、既存の従業員だけでなく内定者にも福利厚生を提供する企業が増えています。人材確保において、福利厚生の重要性がよくわかるエピソードといえそうです。

参考：NHK｜就活｜福利厚生を内定者などにも拡大 人材確保の競争激化で

日本一の実績を持つ食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」

法定外福利厚生の中でも、従業員の暮らしを直接サポートできる施策として人気を集めているのが「食事補助」です。

たとえば、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、一定の条件下で食事代が半額になる食事補助の福利厚生サービスです。コンビニやファミレス・三大牛丼チェーン店など、全国25万店舗以上の加盟店で利用可能で、勤務時間内であれば、場所や時間の制限もありません。

支払いは専用のICカードで行えるほか、アプリの利用で残高の確認や近隣の加盟店検索も可能です。条件を満たすことで経費として計上できるため、コストを抑えた運用ができるのも魅力です。

これらの利便性が高く評価され「チケットレストラン」は食事補助の福利厚生として日本一の実績を持つサービスとなっています。

関連記事：「チケットレストラン」の仕組みを分かりやすく解説！選ばれる理由も

「働きやすい職場認証制度」で未来を切り開く

自動車運送業界の抱える人手不足や労働環境の課題は、企業経営に深刻な影響を与えています。「働きやすい職場認証制度」は、こうし課題に対する解決策として、業界全体の労働環境改善を目指し創設されました。

また、人手不足解消に向けた取り組みとして、多様な働き方の推進や、外部人材の活用・福利厚生の充実も効果的です。特に「チケットレストラン」のような食事補助サービスは、従業員の生活を直接支援し、企業の魅力を高める重要な施策です。

これからの時代、働きやすい環境を整備することは、優秀な人材の確保・定着だけでなく、企業の成長や競争力を維持するための必須条件といっても大げさではありません。

ぜひ今回の記事を参考に、自社の取り組みを見直してみてはいかがでしょうか。

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