春闘2025年は2023年・2024年に引き続き、賃上げが行われると予想されています。連合(日本労働組合総連合会)や、業界ごとの労働組合では、どのような方針を発表しているのでしょうか?企業別の賃上げ予想と併せて見ていきましょう。
連合が示す2025年春闘の基本スタンス
連合(日本労働組合総連合会)は2024年10月18日に「2025 春季生活闘争基本構想」を発表しました。33年ぶりに大幅な賃上げを達成した2024年春闘に続く2025年春闘に、どのような姿勢で臨むのでしょうか?
関連記事:【2024春闘】賃上げ率5.10%を達成!持続可能な賃上げ戦略とは
生活向上の実感を目指す
これまで国内の賃上げ率は2%前後で推移してきましたが、2023年には3.58%、2024年には5.10%と順調に上がっています。賃上げ率が5%を超えたのは33年ぶりです。
ただし物価高により、実質賃金は伸びておらず低いままとどまっています。「毎月勤労統計調査令和5年分結果速報の解説」によると、国内の実質賃金は減少しています。
名目賃金が上がっていても、実質賃金が下がっていれば、労働者は「生活が苦しくなった」と感じるでしょう。
実際にエデンレッドジャパンの実施した「ビジネスパーソンのランチ実態調査2024」では、歴史的な賃上げが行われたにもかかわらず、約8割のビジネスパーソンが「家計が苦しい」と回答しました。
労働者が生活向上を実感できるよう、連合では2025年春闘でも「人への投資」の積極的な推進に向けて取り組むこととしています。
併せて企業規模間・雇用形態間・男女間にある賃金格差や、世代間による差が表れている賃上げの配分についても、協議が必要と考えているようです。
参考:
日本労働組合総連合会|「未来につながる転換点」となり得る高水準の回答~2023 春季生活闘争 第7回(最終)回答集計結果について~
日本労働組合総連合会|33 年ぶりの 5%超え!~2024 春季生活闘争 第7回(最終)回答集計結果について~
関連記事:歴史的賃上げでも…8割以上が「お小遣いが増えていない」!「ビジネスパーソンのランチ実態調査2024」
5%以上の賃上げを目指す
連合は「2025 春季生活闘争基本構想」内で、賃金の底上げに向けた「上げ幅の指標」と、格差是正や賃金の底支えを目的とした「水準の指標」として、目安を示しています。
上げ幅の指標は、賃上げ分3%です。定期昇給と合わせて5%以上の賃上げ実現を目指しています。33年ぶりの高水準での賃上げを実現した、2024年と同等以上の賃上げ実現に向けて取り組む意向です。
併せて中小労組に向けては6%の賃上げを要求していく考えを示しています。賃上げの動きが中小企業へ広がった2024年と比べても、さらに幅広く実施されると期待できるでしょう。
また企業規模間の格差を是正するための最低到達目標水準を下記の通り定めています。
中位数 |
第1四分位 |
|
35歳 |
30万3,000円 |
27万9,000円 |
30歳 |
25万2,000円 |
23万8,000円 |
雇用形態間格差の是正に向けては、正規雇用の従業員と同等の能力を持つ非正規雇用で働く従業員の賃金引き上げを目指します。具体的には経験年数5年以上で時給1,400円以上が目安です。
併せて底支えのために、全従業員を対象として、時給1,250円以上の締結水準を目指す方針を打ち出しています。
UAゼンゼンが示す2025年春闘の要求方針
流通・外食・繊維などの労働組合が加盟しているUAゼンゼンは、2025年春闘の方針として、正社員6%・パート7%の賃上げ率を要求方針の目安として示しました。
中小企業の労働組合が全体の約70%、パートの組合員が約60%のUAゼンゼンでは、法定最低賃金1,500円を見据えた賃上げの呼びかけを実施していくそうです。
自動車総連が示す2025年春闘の要求方針
自動車メーカーや販売会社の労働組合が加盟している自動車総連は、2025年も賃上げを要求する見込みです。具体的な要求水準に関しては、これから発表されるでしょう。
併せて自動車メーカーで共通する年間休日数を、121日から126日へ増やす方針も明らかにしています。
金属労協が示す2025年春闘の要求方針
鉄鋼・自動車・電機などの金属産業を担う企業の労働組合が加盟している金属労協(全日本金属産業労働組合協議会)の議長は「慢性的な人手不足の中、賃上げの流れを止める理由が見当たらない」と発言しています。
2025年も引き続き賃上げを求めていくことが予想されるでしょう。
2025年の企業別賃上げ予想
2025年の賃上げを表明している企業もあります。各社の賃上げ予想をチェックしましょう。
サントリーホールディングス
サントリーホールディングスは、2025年も2024年と同程度となる約7%の賃上げを目指すことを表明しています。他社と比べて早いタイミングで賃上げの意向を示し、人材確保につなげる意向もあるようです。
星野リゾート
宿泊業はインバウンド需要の回復により、全体的に人手不足感が強く出ている業界です。星野リゾートでは慢性的な人手不足の解消に向けて、2025年1月から平均で5.5%の賃上げを行うことを発表しました。
人材確保に向けて積極的な取り組みを行っている同社は、大学1年生へ内定を出す早期採用でも注目されています。
ノジマ
家電量販店のノジマは、全従業員を対象に2025年1月から月1万円のベースアップ実施を発表しています。加えて現場で勤務する従業員約2,600人には、2025年4月から最大2万5,000円の現場手当の支給を実施するそうです。
今回の賃上げに伴い、2025年度新入社員(大卒)の初任給が業界最高水準の30万円となります。
参考:ノジマ|3年連続1万円のベースアップ、初任給は業界最高水準の30万円へ
実質的な手取り額アップに福利厚生を
賃上げを行うと、給与が増えるため、従業員の負担する税金や社会保険料が上がる可能性があります。賃上げを行っているにもかかわらず、従業員が賃上げの実感をそれほど感じられない事態も起こり得るでしょう。
このようなときに役立つのが、福利厚生を活用する方法です。福利厚生の中には、要件を満たすと従業員の税負担を増やすことなく支給できるものがあります。例えば食事補助や社宅などです。
これらの福利厚生を導入すれば、同額の賃上げよりも従業員は手取り額アップを実感しやすくなります。賃上げと併せて実施することで、従業員の生活向上をサポートしやすくなるでしょう。
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2025年春闘の方針をチェックして自社の賃上げに役立てよう
歴史的な賃上げが行われた2024年春闘に引き続き、2025年春闘でも賃上げの流れは止まらないと考えられます。連合は5%以上の賃上げを目指して取り組む意向を示していますし、UAゼンゼン・自動車総連・金属労協も賃上げの要求に前向きです。
現段階で2025年の賃上げを表明している企業も複数出てきています。実質賃金アップに向けて、賃上げの動きはさらに広まるといえるでしょう。
従業員が賃上げを実感しやすくするには、福利厚生による実質的な手取り額アップも有効です。
例えばエデンレッドジャパンの提供している食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」なら、一定の要件を満たしていれば、従業員の税負担を増やさずに支給できます。賃上げと併せて導入を検討してみてはいかがでしょうか。