女性活躍推進が叫ばれる中、日本の女性管理職比率は依然として低水準です。本記事では、女性管理職が少ない理由を新たな視点から分析し、効果的な解決策を提案します。女性管理職の登用推進にあたっての参考にしてください。
数字でみる日本の女性管理職の現状
日本の女性管理職比率は、近年徐々に上昇しているものの、国際的に見ると依然として低い水準にあります。まずは、日本の女性管理職の現状を詳しく見ていきましょう。
日本の女性管理職比率
厚生労働省の「令和4年度雇用均等基本調査」によると、2022年度に課長相当職以上の管理職を担った人のうち、女性が占める割合はわずか12.7%でした。
前年度から0.4ポイント上昇し、調査開始以来最高値を更新してはいるものの、政府の目標である「2020年代の可能な限り早期に30%程度」には依然として遠く及びません。
過去10年間の推移を見ても、上昇ペースは緩やかであり、抜本的な対策が必要な状況です。
参考:厚生労働省|令和4年度雇用均等基本調査
参考:内閣府男女共同参画局|第5次男女共同参画基本計画~すべての女性が輝く令和の社会へ~(令和2年12月25日閣議決定)
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業界ごとの女性管理職比率の違い
女性管理職比率は、業界によって大きく異なります。
同じく「令和4年度雇用均等基本調査」によると、医療・福祉分野が53.0%ともっとも高く、生活関連サービス・娯楽業(24.6%)、宿泊業・飲食サービス業(17.5%)と続きます。一方で、低水準なのが、建設業(8.7%)、製造業(8.0%)、電気・ガス・熱供給・水道業(4.1%)です。
この差は、各業界の特性や歴史的背景、さらには顧客層の違いなどが影響していると考えられます。例えば、医療・福祉分野では従来女性の就業率が高く、キャリアパスも確立されていることが高比率の要因と推測されます。
企業規模と女性管理職比率の関係
企業規模と女性管理職比率にも一定の相関関係が見られます。
同調査(「令和4年度雇用均等基本調査」)によると、女性管理職の比率は従業員10〜29人の企業で21.3%ともっとも高く、1,000人以上の大企業では7〜8%台に留まっています。つまり、大企業ほど女性管理職比率が低い傾向があるのです。
この傾向には、大企業特有の組織構造や昇進システム、長年培われてきた企業文化などが影響していると考えられます。
一方で中小企業の場合、組織の柔軟性が高く、個人の能力や実績がより直接的に評価されやすい環境にあることが、比較的高い女性管理職比率につながっているのかもしれません。
女性管理職が少ない6つの意外な理由
厚生労働省が2024年6月に公開した「女性活躍に関する調査」によると、女性従業員の管理職への登用課題として、もっとも多い38.8%の企業が「女性自身が昇進を望んでいない」と回答しました。
出典:厚生労働省|「女性活躍に関する調査」の報告書を公表します
女性が管理職を望まない理由としては、「長時間労働」や「育児・介護との両立の難しさ」などがよく挙げられますが、それら以外にも重要な要因が存在します。
ここでは、一般的にあまり言及されない六つの意外な理由について詳しく解説します。
昇進をためらう「自信不足」の問題
多くの女性従業員が、能力があるにもかかわらず自己評価が低い傾向にあります。これは「インポスター症候群」と呼ばれる心理状態で、自分の成功や能力を過小評価するあまり「自分は詐欺師(インポスター)だ」と感じてしまう心理現象です。
特に女性に多く見られるこの傾向は、昇進や新たな挑戦をためらわせる大きな要因となっています。この「自信不足」を解消することが、女性管理職を増やす上で重要なポイントとなるでしょう。
新しいことに消極的な企業の雰囲気
多くの日本企業に見られる「リスク回避型」の企業文化が、女性の昇進を阻害している可能性があります。
従来のやり方を重視し、新しい取り組みや変化を避ける傾向がある組織では「これまでと異なる」存在である女性管理職は歓迎されません。
この課題を解決するためには、組織全体の風土改革が必要不可欠です。
指導・助言プログラムの不足
効果的な指導や助言の仕組みが不足していることも、女性のキャリア形成を妨げる大きな要因のひとつです。
特に、メンター制度をはじめとする同性の先輩管理職からの指導は、女性従業員にとって非常に重要です。しかし、女性管理職の絶対数が少ない現状では、メンタリングの機会が限られてしまいます。
メンタリングはスキル向上だけでなく、キャリアパスの形成や自信の獲得、ネットワーク構築にも貢献します。女性管理職の育成には、効果的なメンタリングプログラムの導入が重要です。
人脈作りの機会の差
女性が組織内における重要なネットワークから取り残されがちな現状も、大きな課題です。
多くの企業では、重要な情報交換や人脈形成が、業務時間外の飲み会やゴルフなどの就業時間外の場で行われることがあります。しかし、育児や家事の負担が大きい女性従業員は、こうした場に参加しにくい状況にあります。
また、男性中心の職場では、女性従業員が自然と疎外されてしまうケースも少なくありません。このような非公式なネットワークからの排除は、昇進に必要な情報や機会の損失につながる可能性があります。
評価基準のかたより
多くの企業で、無意識のうちに男性に有利な評価基準が使われている可能性があります。
例えば、長時間労働を美徳とする風潮や、積極的な自己主張を評価する傾向などは、家庭との両立を図る女性や、控えめな態度を美徳とする文化で育った女性にとっては不利に働くものです。
また「管理職=男性」という固定観念が、評価者の判断に無意識のバイアスをかけていることも考えられます。こうした現状を打開するには、公平で透明性の高い評価システムの構築と評価者への多様性教育に加え、多様な働き方や貢献の仕方を正当に評価できる基準の導入が必要です。
ロールモデルの不在
身近にロールモデルとなる女性管理職が少ないことも、女性管理職の登用を妨げる大きな課題です。
「なりたい自分」のイメージが持てないことで、キャリアアップへの意欲が削がれてしまうケースが少なくありません。ロールモデルの存在は、具体的なキャリアパスのイメージ形成だけでなく「自分にもできるかもしれない」という自信の醸成にも大きく寄与するからです。
また、同じ立場を経験した先輩からのアドバイスは、キャリア形成における具体的な障壁を乗り越える上で非常に有益です。ロールモデルの可視化に加え、若手女性従業員との交流機会を設けることが求められます。
女性管理職を増やすメリット
女性管理職の登用推進は、単なる社会的責任や法令遵守の問題ではありません。企業の競争力強化や業績向上にもつながる重要な経営戦略です。
ここでは、女性管理職増加がもたらす意外なメリットについて詳しく見ていきましょう。
新しいアイデアと革新的な取り組みの増加
女性管理職の増加は、組織の多様性を高め、新たな発想や革新的なアイデアの創出につながります。
異なる背景や経験を持つ人材が意思決定に参加することで、多角的な視点が生まれ、従来とは異なるアプローチや解決策が提案される可能性が高まるからです。
多様性がもたらす創造性の向上は、急速に変化する現代のビジネス環境において、非常に重要な競争優位性となるでしょう。
リスクへの対応力の向上
女性管理職の視点が加わることで、組織全体のリスク管理能力が向上する可能性があります。
一般的に、女性はリスクに対してより慎重な傾向があるとされています。この特性は、過度なリスクテイクを抑制し、バランスの取れた意思決定をかなえるものです。
また、多様な視点が加わることで、これまで見過ごされていたリスクを早期に発見し、対処できるようになります。不確実性の高い現代のビジネス環境において、このようなリスク管理能力の向上は、企業の持続可能性を高める重要な要素となるでしょう。
顧客ニーズの理解深化と売上拡大
女性管理職の増加は、顧客ニーズのより深い理解につながり、結果として売上拡大をもたらす可能性があります。
特に、消費者向け製品やサービスを提供する企業にとって、この効果は見逃せません。女性が主要な購買決定者である市場において、女性の視点を経営に取り入れることは非常に重要だからです。
B2B企業においても同様で、取引先企業の女性意思決定者が増加している現状を考えると、女性の視点を持つことの重要性は高まっています。
顧客ニーズへの深い理解は、製品開発やマーケティング戦略の効果を高め、結果として売上拡大や市場シェアの向上につながります。
新しい取り組み|女性管理職を増やす5つの方法
女性管理職を増やすためには、従来の方法だけでなく、新しい視点からの取り組みも必要です。以下、これまでとは異なる革新的なアプローチを五つ紹介します。
若手から学ぶ「逆方向の指導」の導入
「逆メンタリング(リバースメンタリング)」と呼ばれるこの取り組みは、若手従業員が上級管理職に助言を行うという、従来とは逆方向の指導方法です。この手法により、若手の視点や最新のトレンドを経営に取り入れつつ、若手従業員のリーダーシップスキルを向上させることができます。
若手女性従業員から上級管理職への逆メンタリングは、世代間のギャップを埋めるだけでなく、若手女性従業員の自信向上にも大きく貢献します。また、メンタリング対象が男性上級管理職の場合、男性上級管理職が女性の視点や考え方を直接理解する機会となり、組織全体の意識改革にもつながるでしょう。
公平な評価を支援する技術の活用
人工知能(AI)や機械学習などの新技術を活用し、評価プロセスからさまざまなバイアスを排除する取り組みが注目されています。これらの技術は、人間の判断に潜在する無意識のバイアスを最小限に抑え、より客観的で公平な評価を可能にします。
また、言語解析技術を用いて、評価コメントに含まれるジェンダーバイアスを検出し、評価者にフィードバックを行うのもひとつの方法です。これらの技術の導入は、評価の透明性と公平性を高め、純粋な実力主義の人事評価を実現する強力なツールとなるでしょう。
部門を超えた幅広い経験を積む育成プログラム
ひとつの部署だけでなく、複数の部署で経験を積む育成プログラムは、より幅広い視野を持つ女性リーダーの育成に効果的です。
このプログラムでは、参加者が定期的に異なる部門を経験することで、組織全体の理解を深め、多角的な視点を養います。
このような経験は、将来の経営幹部として必要な総合的な判断力や、部門を超えた協働能力の向上にもつながります。また、さまざまな部門の人々とのネットワーク構築にも役立ち、組織全体のコミュニケーションの活性化にも寄与するでしょう。
多様な昇進の道筋の設計
女性管理職の登用推進には、従来の画一的なキャリアパスではなく、個人のライフスタイルや志向に合わせた多様な昇進の道筋を設計することが重要です。
具体的には、管理職への昇進を一時的に見送り専門性を深める「エキスパートコース」と、早期に管理職を目指す「マネジメントコース」とを設け、柔軟なキャリア選択を可能にするといった方法が挙げられます。
また、時短勤務でも管理職になれる制度や、一度辞めた従業員の復職を支援する「カムバック制度」なども、女性のキャリア継続を支援する有効な方法です。多様なキャリアパスの提供は、個人の事情や志向に合わせたキャリア形成を可能にし、結果として優秀な人材の確保と育成につながります。
意見を言いやすい組織づくり
女性が意見を言いやすい組織の雰囲気づくりは、女性管理職の育成と活躍に不可欠です。
具体的には、定期的な少人数でのディスカッションの機会を設けたり、匿名での意見提出システムを導入したりするなどの取り組みが挙げられます。
また、管理職向けに「傾聴スキル」研修を実施し、部下の意見を適切に聞き取り、フィードバックする能力を向上させることも重要です。心理的安全性が確保された組織では、女性従業員がより積極的に意見を述べ、リーダーシップを発揮しやすくなります。
女性管理職の登用推進を支える福利厚生
女性管理職の登用推進が求められる中で、福利厚生の重要度が再注目されています。その理由と、特に人気を集めている福利厚生サービスを紹介します。
女性管理職の登用推進に福利厚生が効果的な理由
福利厚生制度が整備された企業は、ワークライフバランスが実現しやすいことから、女性従業員のキャリアも継続しやすい傾向にあります。
例えば、柔軟な勤務制度や充実した育児支援は、管理職としての業務遂行と家庭生活の両立に貢献するものです。また、自己啓発支援などの福利厚生は、女性従業員のスキルアップとキャリア意識の向上に寄与します。加えて、健康支援や食事補助などの日常的な福利厚生は、女性従業員の心身の健康を維持し、長期的なキャリア形成を支えます。
このような充実した福利厚生は、女性従業員の管理職への意欲を高め、実際の登用を促進するものです。企業の魅力向上にも貢献するため、優秀な女性人材の獲得と定着も期待できます。
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注目の福利厚生サービス「チケットレストラン」
福利厚生の充実を進める企業の中でも特に注目されているサービスに、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」があります。
「チケットレストラン」は、専用のICカードで提供される食事補助の福利厚生サービスです。サービスの利用者は、専用カードで支払いをすることにより、全国25万店舗以上の加盟店での食事を実質半額で利用できます。
加盟店のジャンルは幅広く、勤務時間や場所に縛られず利用できるため、ランチはもちろんのこと、おやつや休憩時のドリンク等の購入も可能です。
また、アプリ内のUber Eatsを通じ、スターバックスやマクドナルドのような有名チェーン店も利用できます。
「チケットレストラン」は、従業員の健康支援と柔軟な働き方の両立を可能にし、結果として女性の管理職登用推進にも貢献する可能性のある、革新的な福利厚生サービスなのです。
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女性管理職の登用推進で他社との差別化を実現
女性管理職が少ない大きな理由として挙げられるのが「女性本人が昇進を希望していない」事実です。
この背景には「管理職に必須の長時間労働ができない」「自信がない」「ロールモデルがいない」など、女性特有のさまざまな要因があります。企業が女性管理職の登用を推進するには、従来の画一的な対策ではなく、こうした要因を理解した上での適切な対策を講じなければなりません。
なお、女性活躍推進の取り組みは、企業の社会的評価を高め、優秀な人材の獲得にもつながるものです。「チケットレストラン」のような従業員に人気の食事補助の福利厚生サービスの導入など、他社との差別化を図ることで、今後ますます深刻化する人手不足への対策も可能となります。
女性活躍推進を企業の競争力強化と持続的成長のための重要な経営戦略としてとらえ、自社のさらなる発展とブランディング強化を目指してはいかがでしょうか。