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【社労士監修】同一労働同一賃金とは?企業が知っておくべき基本と取り組み手順

【社労士監修】同一労働同一賃金とは?企業が知っておくべき基本と取り組み手順

2024.05.24

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監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)

2021年4月から中小企業にも適用された「同一労働同一賃金」。正社員と非正規雇用の従業員の間にある不合理な待遇差の解消を目指す、働き方改革の重要な柱です。本記事では、「同一労働同一賃金」への対応=企業の生産性向上と優秀な人材の獲得・定着をうながすチャンスとの考え方のもと、企業が知っておきたい概要と対応手順を分かりやすく解説します。

「同一労働同一賃金」とは

「同一労働同一賃金」とは、正社員と非正規社員(パートタイム労働者・有期雇用労働・派遣労働者)の間にある不合理な待遇差を解消することを目的とした考え方です。

2020年4月に施行された「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム・有期雇用労働法)」により大企業に適用されたのち、2021年4月からは中小企業にも適用されました。同法律の主なポイントは、次の三つです。

  • 不合理な待遇差の禁止
  • 労働者の待遇に対する説明義務の強化
  • 行政による事業主への助言・指導や裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備

同一労働同一賃金については、厚生労働省が「同一労働同一賃金ガイドライン」を策定し、不合理な待遇差の解消に向けた指針を示しています。ガイドラインに沿った対応を怠った場合、行政による助言や指導、勧告の対象となり、最終的には企業名公表という措置が取られる可能性があります。ただし、罰則規定は設けられていません。

参考:厚生労働省|パートタイム・有期雇用労働法が施行されます
参考:厚生労働省|同一労働同一賃金ガイドライン

関連記事:【社労士監修】働き方改革関連法とは?改正のポイントと企業が取るべき対策

なぜ「同一労働同一賃金」が必要なのか

総務省統計局が公表した「労働力調査(詳細集計) 2023年(令和5年)平均結果」によると、2023年の非正規雇用の割合は全体の37.1%に達しています。

一方、厚生労働省の資料では、2020年における非正規雇用の労働者の賃金は、正社員の約7割前後にとどまっており、待遇面での格差は明らかです。

同一労働同一賃金は、こうした不合理な待遇差を是正し、働き方に関わらず公正な処遇を確保することで、労働者のモチベーションと企業の生産性向上につなげることを目的としています。

参考:総務省統計局|労働力調査(詳細集計) 年平均結果

「不合理とみなされる待遇差」とは

「同一労働同一賃金」の考え方では、職務内容の違いをはじめとする合理的な理由に基づく待遇差は問題になりません。一方で、雇用形態の違いのみを理由とした待遇差は、「不合理」とみなされます。

以下、「同一労働同一賃金ガイドライン」をもとに「基本給」「賞与」「各種手当」「福利厚生・教育訓練」の4点から、「不合理とみなされる待遇差」の詳細を解説します。

基本給

基本給は、通常、各従業員の「能力や経験」「業績」「勤続年数」をもとに算出されます。それぞれの趣旨を踏まえ、同等の評価が成されるのであれば、同等の基本給を支給しなければなりません。雇用形態のみを理由に待遇差をつけることは不合理とみなされます。

具体例としては、正社員とパートタイム労働者が同一の職務内容であるにもかかわらず、パートタイム労働者の基本給が低く設定されている場合などが挙げられます。

昇給についても同様で、各労働者の能力の向上が同程度であれば、雇用形態に関わらず同程度の昇給を行わなければなりません。

賞与

賞与についても、企業の業績等への貢献に応じて支給されるものである場合、同一の貢献には同一の支給を行わなければ不合理とみなされます。

なお、貢献度に差がある場合は、その差に応じた支給が必要です。

各種手当

役職手当のように、役職の内容に対して支給される手当では、同一の役職内容には同一の支給が求められます。

そのほか、次に挙げる手当についても、支給要件に該当する従業員については雇用形態を問わず同一の対応をする必要があります。

  • 特殊作業手当
  • 精皆勤手当
  • 食事手当
  • 単身赴任手当
  • 地域手当
  • 通勤手当
  • 出張旅費
  • 時間外労働の割増率
  • 深夜・休日労働手当の割増率

なお、指針内では触れられていないものの、退職手当・住宅手当・家族手当等などの手当についても同一労働同一賃金の考え方のもと、不合理な対応の改善が求められています。

参考:厚生労働省|短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針|厚生労働省告示第 430 号

福利厚生・教育訓練

食堂・休憩室・更衣室といった福利厚生施設については、正社員と同一の利用機会の提供が必要です。また、転勤の際の転勤者用住宅や慶弔休暇についても、雇用形態によって待遇差がある場合は不合理と判断されます。

なお、勤続期間に応じて付与される有給休暇等も、勤続期間が同じであれば、同一の条件下で付与しなければなりません。

教育訓練についても同様で、現在の職務に必要な技能や知識を習得するためのものは、非正規社員にも正社員と同一の訓練機会を提供する必要があります。

「同一労働同一賃金」への取り組み手順

「同一労働同一賃金」への対応において、企業の人事労務担当者や経営層に求められるのが、自社の雇用形態ごとの待遇差の点検と見直しです。厚生労働省が公開している「パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書」では、具体的な手順が示されています。以下、その手順に沿って、企業が取り組むべきポイントを解説します。

1:従業員の雇用形態と待遇の確認

待遇差の点検・見直しを行う上にあたって、まず行わなければならないのが、取り組みに該当する非正規従業員の有無と、待遇の現状の確認です。

職務の分析と評価を行い、基本給や福利厚生等について、正社員と非正規従業員との間に待遇差がないかどうかを洗い出しましょう。

なお、厚生労働省が公開している「職務評価を用いた基本給の点検・検討マニュアル」では、職務分析の手法や評価項目の設定方法などが詳しく解説されています。自社の実情に合わせて、適切な職務分析を行うことが求められます。

2:待遇差の合理性を検証し、説明できるようにする

正社員と非正規従業員との間に待遇差がある場合、以下の手順で合理性を検証します。

1:職務内容や職務変更の範囲などの違いを整理する
2:整理した違いに基づき、待遇差の合理性を検証する
3:不合理な差があれば是正し、合理的な差については労働者に説明できるよう整理する

不合理な差があれば是正が必要ですが、合理的な理由がある場合には、労働者からの問い合わせに備えて明快な説明ができるよう準備が必要です。

3:不合理な待遇差へ速やかに対応する

正社員と非正規従業員との待遇差に不合理な点がある場合、速やかに改善へ向けた対策を練り、実行しなければなりません。

仮に、明らかに「不合理」とされる待遇差は見られなかったとしても、「同一労働同一賃金」の考え方に基づき、改善できる点がないかどうかを定期的に検討します。

「同一労働同一賃金」に取り組むメリット

同一労働同一賃金への対応は、企業にとって単なるコスト増ではなく、持続的な発展のために必要な投資です。

というのも、「同一労働同一賃金」に取り組むことで、企業は次のようなメリットを享受できるからです。

  • 非正規従業員のモチベーションが高まる
  • 優秀な人材の獲得・定着・離職防止効果が得られる
  • 教育訓練の機会が平等化されることにより、非正規従業員のスキルが高まる

 中でも注目されているのが、人材の獲得・定着・離職防止効果です。

生産年齢人口の減少にともなう人手不足から、非正規従業員を即戦力として活用する企業は少なくありません。「同一労働同一賃金」の取り組みを実行し、非正規従業員にとって魅力的な企業となることは、人手不足解消の大きな一手といえます。

福利厚生を活用する取り組みも

さらなる人手不足解消の一手として、正社員・非正規従業員が平等に活用できる福利厚生を導入する企業も増えています。

例えばエデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、雇用形態を問わず利用できる食事補助の福利厚生として、すでに2000社以上の企業に導入されているサービスです。

チケットレストラン」を利用する企業の従業員は、全国25万店舗以上の加盟店での食事代の半額が勤務先企業から補助されます。勤務時間内であれば、利用する時間帯や場所も自由なため、職種や勤務形態を問わず平等に活用できるのが大きな魅力です。

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関連記事:【社労士監修】非正規雇用の賃上げは課題だが年収の壁問題も!福利厚生が救世主に

関連記事:「チケットレストラン」の仕組みを分かりやすく解説!選ばれる理由も

「同一労働同一賃金」の実践は企業の持続的な発展のために不可欠

「同一労働同一賃金」への対応は、単なるコンプライアンス上の義務ではありません。不合理な待遇差の解消は、非正規従業員のモチベーション向上や優秀な人材の獲得・定着につながり、ひいては企業の生産性向上と持続的な発展に寄与するものです。

本記事では、「同一労働同一賃金」の概要から企業が取り組むべき具体的な手順、そして実践によるメリットまで解説しました。人手不足が深刻化する中、「同一労働同一賃金」への積極的な取り組みは、あらゆる企業にとって経営戦略上の重要テーマです。

チケットレストラン」のような新たな福利厚生の導入も含め、人事労務管理の見直しを通じ、多様な人材が活躍できる魅力ある職場づくりを進めていくことが求められます。

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