中小企業が事業を継続する上で、人材確保は欠かせません。自社の人材確保に役立つよう、有効な取り組みとなった事例をチェックしましょう。人材確保の取り組みは採用管理、定着管理、就労条件、理念・価値観に分けて考えると、自社の課題が見えやすくなります。4種類の課題に対する具体的な取り組みも解説します。
中小企業が実施する人材確保の事例
中小企業では人材確保のためにどのような取り組みを行っているのでしょうか?具体的な事例を紹介します。
事例1:リクルートサイトでミスマッチを回避
<会社概要>
企業名:チューイチョーク株式会社
事業内容:内装業・菓子製造販売業
従業員数:45名
URL:https://chewi-choak.com/
チューイチョーク株式会社では採用後のミスマッチによる離職が続いていました。そこで自社サイトとは別にリクルートサイトを立ち上げ、業務内容・事業方針・従業員の働き方などを伝えると、応募者が増加しミスマッチによる離職が少なくなったそうです。
また採用した従業員が定着しやすいよう、ダブルワークや復帰時期が自由な産休育休制度なども導入しています。パート勤務から短時間正社員への登用も実施し、これまで不足しがちだったリーダー人材も確保できるようになりました。
参考:経済産業省 中小企業庁 ミラサポPlus|自社リクルートサイトを立ち上げ、採用後のミスマッチを解消。多様な勤務形態の導入でリーダー層の人材を確保。
事例2:待遇の改善でモチベーションアップ
<会社概要>
企業名:伊藤電子工業株式会社
事業内容:電子機器・電子部品のODM・OEM、半導体製品組立
従業員数:230名
URL:https://ito-denshi.co.jp/
電子機器や電子部品のODM・OEMや、全自動化ラインによる半導体製品組立を展開している伊藤電子工業株式会社は、業績が好調で増産の依頼もありますが、求人を出しても新規採用が難しく、従業員のモチベーションは長時間労働により低下していました。
これらの課題を解決するために行ったのは、福利厚生の充実度アップと賃上げです。待遇が改善することで、従業員のモチベーションが高まりました。
同時にベテラン従業員による若手従業員の人材育成に取り組み、個々のスキルアップを実施しています。人手が必要な生産ラインへ柔軟に人材を振り分けられるようになり、残業時間の削減につながったそうです。
参考:経済産業省 中小企業庁 ミラサポPlus|福利厚生の充実、賃上げでモチベーションアップ
事例3:ボトムアップの改善で定着率アップ
<会社概要>
企業名:鈴木ヘルスケアサービス株式会社
事業内容:在宅介護サービス
従業員数:-
URL:https://suzukihealthcare.co.jp/index.html
在宅介護サービスを展開している鈴木ヘルスケアサービス株式会社では、高い離職率が課題でした。従業員が離職する不満の原因を把握するため、まずはアンケートと面談を実施したそうです。
その結果、長時間労働や休暇の取りにくさ、子育てとの両立の難しさなどが不満につながっていると分かり、休暇を取得しやすい体制作りを実施しました。定時退社が当たり前という雰囲気作りや、時短勤務・子連れ出勤の制度を作ることで、結婚・出産による離職を減らすことに成功したそうです。
参考:経済産業省 中小企業庁 ミラサポPlus|鈴木ヘルスケアサービス株式会社
人材確保の課題は4分野11項目
厚生労働省の「人材確保に「効く」事例集」によると、人材確保の課題は以下の4分野11項目に分類できるそうです。
4分野 |
11項目 |
採用管理 |
募集 |
定着管理 |
配置・配属 |
就労条件 |
労働条件 |
理念・価値観 |
経営理念 |
4分野11項目のどこに自社の課題があるかを把握することで、人材確保に向けた効果的な取り組みを実施しやすくなります。ここでは自社の現状を把握するのに役立つよう、4分野11項目の特徴をそれぞれ見ていきましょう。
採用管理の課題
「求人を出しても応募がない」「応募はあるけれど求める人材像と合っていない」といった状況なら、採用管理に課題があるためと考えられます。
募集に課題がある場合には、求人の仕方や会社のアピールが不十分で、応募者がなかなか集まらないのかもしれません。
選考に課題があると、応募者が集まっていても採用につながりにくいでしょう。能力や人柄が求める人材像に合わず採用できないなら、採用方針が合っていない可能性があります。
定着管理の課題
必要なスキルがあり自社に合う人柄の人材を採用できても、定着管理がうまくいかなければ、早期離職につながるかもしれません。
「イメージと違った」という理由で従業員が離職するなら、配置・配属に課題があると考えられます。従業員の希望を考慮した配置や、適切なフォローが必要です。
「頑張っても評価されない」「将来のキャリアパスをイメージできない」などの理由でモチベーションが低下し、離職を選ぶ従業員が出ているなら、評価・処遇の課題を解消する必要があります。
「従業員のスキルの差が大きい」なら、教育訓練・能力開発が不十分な状態です。研修やセミナーの実施・マニュアルの整備などを見直すとよいでしょう。
就労条件の課題
今活躍している従業員が、今後も変わらず働き続けられるとは限りません。就労条件によっては転職を検討し始めるかもしれませんし、家族や体調の変化に対応するために辞めざるを得ない可能性もあります。
例えば就業規則や給与規定などの労働条件に不備があるなら改善が必要です。雇用形態の柔軟性が低い、社内の設備が整っていないなど、労働環境の課題が人材確保を難しくしているかもしれません。
従業員同士のコミュニケーションが少なく、必要な人間関係を築けていないケースもあります。自然とコミュニケーションが発生するような仕組み作りを行うとよいでしょう。
福利厚生が不十分な場合にも、人材を確保しにくくなります。同業他社と仕事内容やその他の待遇が同程度であっても、福利厚生の充実度に差があれば、求職者が集まらないことや従業員が転職することがあるでしょう。
理念・価値観の課題
会社の理念やビジョンを十分伝えられていない場合や、組織の風土や文化に課題がある場合も、人材確保が難しくなる可能性があります。
経営理念が周知されていない場合には、求職者や従業員へのアピールが必要です。また組織文化として、業務に対する姿勢に問題があったり、経営層と従業員の間の意思疎通が取れていなかったりするケースでは、体制の見直しが必要です。
採用管理の課題を解消する取り組み
自社の状況を振り返ったとき、人材確保の難しさが採用管理の課題から発生しているものであれば、募集や選考に関する対策を行いましょう。
求人の仕方を工夫する
求人を出しても応募者が集まらない場合は、募集の方法を変える必要があります。
- 求人のアピールポイントを変更する
- 採用したい人材が多く利用している媒体へ求人を掲載する
- SNSや自社サイトでオフィスの様子や先輩社員の仕事などを紹介する
- 採用形態や求人条件が求職者のニーズに合うよう変更する
例えば求人掲載を行う際のアピールポイントを、「未経験でもチャレンジしやすい教育体制」から「充実した休暇制度と休暇取得のしやすさ」へと変更すると、応募者の反応や応募数は変化します。
採用したい人材像に合う人は、どのような求人内容やアピールポイントで、どのような媒体へ掲載すると反応しそうでしょうか?具体的な求職者を想定して考えると、応募者の集まる求人ができるかもしれません。
業務内容や労働条件について丁寧に説明する
応募があったとしても、適切に選考できていなければ、早期離職につながる可能性があります。選考時には業務内容や労働条件など、採用後の詳細について説明しましょう。
職場見学の機会を設け、実際の職場を体感できるようにするのも効果的です。
定着管理の課題を解消する取り組み
人材を採用できてもすぐに離職してしまう場合には、定着管理に課題があると考えられます。課題の解消には、従業員の定着率アップに向けた取り組みが必要です。
受け入れ体制を現場と一体になって作る
採用担当者が工夫して人材を採用しても、受け入れ体制が不十分で辞めてしまうケースもあります。
例えば入社した人材の教育が現場任せになっていると、忙しい現場では対応しきれないことも珍しくありません。出勤しても何も教えてもらえない日が続くことで、入社した人材は「職場の邪魔者になっている」と感じて、辞めてしまうこともあるでしょう。
このような早期離職を避けるには、採用担当者と現場の連携が欠かせません。入社時の研修プログラム作りや、先輩社員を教育担当者に指名する仕組みなどを作ることも検討するとよいでしょう。悩みや心配事を相談できる面談の機会を定期的に設けるのも有効です。
公平な人事制度を整える
人事制度が不公平で納得感のないものでは「仕事に頑張って取り組んでも評価されない」と感じて離職につながるかもしれません。すぐに離職につながらなくても、会社への信頼度が下がる可能性があります。
人事評価に関する課題があるときには、「頑張りが正当に評価される」と従業員が感じられるよう、公平な人事制度を整えましょう。何がどのように評価されるのかを明確にすることで、従業員が社内でどのような働きを求められているか理解することにもつながります。
成長を実感できる教育体制を整える
従業員への適切な教育も定着管理のポイントです。企業の提供する教育によって「成長している」と実感できれば、従業員の帰属意識が育まれるでしょう。
併せて、従業員の目指すキャリアの実現に役立つ教育の機会を設けるのもポイントです。
就労条件の課題を解消する取り組み
人材確保が難しいのは、就労条件が求職者の求める水準に達していない可能性もあるかもしれません。給与や雇用形態・福利厚生などを整えることで、採用や定着に役立ちます。
採用や定着に役立つ労働条件を設定する
スムーズな採用と定着率アップに向けた労働条件の見直しは、人材確保につながるポイントです。具体的に見直すとよい項目をチェックしましょう。
- 納得感のある給与
- 適切な労働時間
- 休暇を取得しやすい体制
- 退職金制度の導入
働きやすい労働環境を整える
採用や定着には労働環境の整備も重要です。現状を見直した上で、以下を参考に改善を目指しましょう。
- 従業員の負荷を軽減するための業務効率化の実施
- 多様な働き方から自分に最適な働き方を選べる制度の導入
- 性別やその他の属性を問わず働きやすい環境の整備
従業員本人は働き続けることを希望していても、長時間労働が常態化している職場や、1日8時間かつ週5日勤務を求められる職場では、退職せざるを得ないタイミングもあります。従業員のライフステージや暮らしの変化に合わせ、働き方を柔軟に変えられる制度を整えるとよいでしょう。
コミュニケーションが生まれやすい職場作り
従業員同士のコミュニケーションが活発な職場では、悩みや困ったことがあるとすぐに相談できるものです。そうすれば、問題が小さなうちに解決できるでしょうし、従業員同士に信頼関係が生まれ、業務もスムーズに進行しやすくなるでしょう。
コミュニケーションのきっかけになるようなイベントを設けたり、休憩スペースを作り従業員が集まりやすい環境を作ったりすると効果的です。
また、ハラスメントが発生しないように教育の機会も設定しましょう。
福利厚生を充実させる
住宅手当・食事補助・家族手当・社員旅行・慶弔見舞金などの福利厚生の充実も人材確保に役立ちます。従業員全員が公平に利用できる制度を整えましょう。
また、制度を導入するだけでなく、実際に利用できるよう周知し、利用を促すことも重要です。
理念・価値観の課題を解消する取り組み
職場の働きやすさや働きがいを作るのは、企業の経営理念や組織文化です。人材確保への取り組みを実施するときには、制度の改善とともに理念・価値観についても見直す必要があります。
経営理念を従業員と共有する
経営理念は社内に十分浸透しているでしょうか?従業員が仕事をする上で、経営理念が行動指針になるよう、その意味をより具体的に伝えるとよいでしょう。経営陣が率先して実務の中で経営理念を実践することも効果的です。
従業員が前向きになれる組織文化を醸成する
職場は複数の従業員で構成されており、その中で独自の組織文化が生まれます。現時点ではどのような組織文化が育まれているでしょうか?従業員同士に信頼関係があり、仕事に意欲的に取り組めるような、前向きになれる組織文化は、人材確保につながりやすいでしょう。
例えば、上司から部下に日々の業務のよい点を伝える習慣を作ることで、信頼関係の構築にプラスに働きます。組織をまとめるリーダーを任命することも、組織文化の改善に効果的です。
「チケットレストラン」で就労条件の課題を解消した事例
エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、従業員に食事手当を提供できる福利厚生サービスです。全国にある25万店舗以上の加盟店で食事を購入できるため、雇用形態や働く環境にかかわらず、公平に利用できます。
福利厚生の充実は人材確保のポイントです。実際に「チケットレストラン」の導入で就労条件の課題を解消し、人材確保につながった事例をチェックしましょう。
事例1:採用時にアピールして他社との差別化を図る
<会社概要>
企業名:株式会社ESES
事業内容:SES事業・IT研修事業・IT人材の紹介事業
従業員数:100名(2023年9月時点)※正社員のみ
URL:https://eses-inc.jp/company/
株式会社ESESの担う「SES事業」は、他社との差別化が難しい業態です。業界全体でエンジニアが不足している中、人材を確保するには、採用時にアピールできる何かが必要と考えていました。
その何かとして導入したのが「チケットレストラン」です。「納得感のある報酬」をコンセプトのひとつに掲げていることから、福利厚生の充実感をより感じてほしいという思いがあったのも、導入の理由でした。
「チケットレストラン」により待遇面の差別化ができたことで、優秀なエンジニアの採用と離職防止のためのアピールポイントになったそうです。
関連記事:株式会社ESES
事例2:社内の雰囲気改善で定着率アップに期待
<会社概要>
企業名:MIRAI station株式会社
事業内容:訪問看護ステーション
従業員数:27名(2023年5月時点)
URL:https://mirai-st.jp/
都内で訪問看護ステーションを展開するMIRAI station株式会社では、以前より人材確保のために従業員同士のコミュニケーションを大切にしていました。ただしコロナ禍をきっかけに交流の機会が減ったことで、コミュニケーション作りが難しくなっていたそうです。
「チケットレストラン」を導入すると、食事補助により実質半額で食事できることや、使用期限があることから、従業員同士で気軽に誘い合って食事をするようになりました。これをきっかけに職場の雰囲気が改善されたことが、定着率アップにもつながるのではないかと期待されています。
関連記事:MIRAI station株式会社
「チケットレストラン」を人材確保に役立てよう
生産年齢人口が減っている中、人材確保は中小企業にとって事業継続に影響するポイントです。
人材確保がうまくいっていないと感じているなら、採用管理、定着管理、就労条件、理念・価値観のどこに課題があるのかを明確にしましょう。その上で事例を参考に対策に取り組むことで、スムーズな採用や定着率アップを目指せます。
就労条件に課題があるなら、福利厚生の充実度アップも対策のひとつです。食事補助を提供できるエデンレッドジャパンの「チケットレストラン」の導入が、採用や定着につながった事例もあります。従業員にとって魅力的な福利厚生の整備に向け「チケットレストラン」を検討してみませんか。