日本では、企業の働きがいを評価する代表的なランキングが2つあります。Great Place to Work®が実施する「働きがいのある会社」ランキングと、OpenWorkが発表する「働きがいのある企業ランキング」です。各ランキングで評価されている「働きやすさ」は、企業の採用力や従業員定着率、生産性向上にも大きな影響を与える重要な要素となっています。本記事では、各ランキングの評価基準と、高評価を得るための対応策を解説します。
働きがいのある企業とは
働きがいがある企業とは、様々な要素から成り立つ概念です。まずはどのような根拠を持って「働きがいがある企業」として評価されるのかを確認しましょう。
GPTWによる「働きがいのある企業」の定義
Great Place to Work® Institute Japan(以後、GPTW)が考える「働きがいのある企業」とは、立場、仕事、働く場所に関係なく、あらゆる従業員が経営者やリーダーを信頼し、自分の仕事に誇りを持ち、一緒に働いている人たちと連帯感を持てる企業のことです。
OpenWorkによる「働きがいのある企業」の定義
OpenWorkが考える「働きがいがある企業」は、匿名の従業員・元従業員からの評価が高い企業です。従業員目線の「働く環境に関する評価点」を集計し、高評価を得た企業を「働きがいのある企業」と評価します。
2つのランキングにおける評価基準の違い
2つのランキングでは、参加型、非参加型という大きな違いがあるため、アンケートの評価基準が異なります。
GPTWの評価基準
GPTWにおける働きがいの評価は、企業の自主的な参加を前提としています。「働く人へのアンケート」による従業員からの評価と、「企業アンケート」による制度面の評価という2つの視点から、企業の働きがいを総合的に評価します。
評価の特徴
従業員アンケートで一定の基準を超えた企業は「働きがいのある企業」として認定されます。さらに、両アンケートで特に高い評価を得た企業が、年に一度発表される「働きがいのある企業」として上位100社にランキングされます。全ての評価において回答者の匿名性が守られており、信頼性の高い結果が得られる仕組みです。
評価基準となる項目
「働く人へのアンケート」における評価基準は3つの柱から成り立ちます。1つ目は「信頼」です。経営陣と従業員の信頼関係や、従業員が公正に扱われているかを評価します。2つ目は「誇り」で、従業員が自分の仕事や企業に対して持つ誇りの度合いを測ります。3つ目は「連帯感」で、チームワークや職場への帰属意識の強さを評価します。
「企業アンケート」では、企業の基本情報から人事制度、企業文化、人材育成の取り組みまで、幅広い観点での評価が特徴です。評価は世界共通の基準に基づくもので、国際的な比較が実施されます。
OpenWorkの評価基準
OpenWorkでは、従業員・元従業員の実体験に基づいて働きがいを評価します。企業の公開情報だけでは見えない職場の実態を、当事者の視点から可視化することで、より現実的な評価を実現しています。
評価の特徴
OpenWorkでは、1年以上の在籍経験がある現従業員・元従業員からの評価レポートを集約し、「働きがいのある企業ランキング」として毎年発表しています。
評価データは、1年以上の在籍経験がある現従業員・元従業員からの会社評価レポートによって収集され、各レポートでは、500文字以上の具体的な自由回答と、8つの評価項目それぞれへの回答が必須です。
情報の信頼性を担保するため、投稿された評価レポートは機械と運営スタッフによる二重のチェックプロセスを経ます。ガイドラインに適合したレポートのみが実際の評価に反映されます。
評価基準となる項目
OpenWorkの評価は、職場環境を包括的に捉える8つの基準に基づいて行われます。以下の8項目を通じて、企業の働きがいを多面的に評価します。
- 待遇面の満足度
- 社員の士気
- 風通しの良さ
- 社員の相互尊重
- 20代成長環境
- 人材の長期育成
- 法令順守意識
- 人事評価の適正感
関連記事:働きがいのある会社とは何か-従業員がいきいきと輝く組織づくり
ランキング基準達成に向けてのアプローチ
それぞれの評価基準を達成するための具体的なアプローチを、実践例とともに紹介します。
GPTWにおける基準達成に向けた取り組み
GPTWの「働く人へのアンケート」では、「信頼関係の構築」「公平性の担保」「誇りの醸成」の3つの要素が特に重視されます。「企業アンケート」では、「制度整備」や「企業価値浸透」に向けた取り組みが評価対象です。
1.信頼関係の構築
経営陣と従業員の信頼関係は、働きがいのある企業の基盤となります。定期的な対話やフィードバックの仕組みを確立している企業が高い評価を得ています。
実践例:
中規模部門第2位のアトラエでは、毎月全員参加の対話を実施し、経営陣と従業員の信頼関係を着実に築いています。
2.公平性の担保
従業員の納得感を高めるには、評価や報酬制度における透明性を確保する必要があります。2025年のランキングでは、定期的な制度の見直しと明確な基準設定により、高評価を獲得している企業が見られました。
実践例:
大規模部門で2位のCiscoは、企業目標を明確に示し、人事制度や報酬の納得性を重視しています。
3.誇りの醸成
従業員が仕事に誇りを持てる環境づくりには、企業独自の価値創造と個々の成長支援が重要です。業界での独自性を追求しながら、従業員の成長をサポートする仕組みを整えることで、仕事への誇りを高められます。
実践例:
小規模部門で3位のKINGSMAN TOKYOは、「イケてるワークスタイル」という独自の取り組みを追求し、実力ある美容師の輩出を通じて仕事への誇りを醸成しています。
4.制度面の整備
働く環境の質を高めるには、従業員の声を反映した制度設計と充実した福利厚生が有効です。特に、従業員の意見を積極的に取り入れながら制度を改善している企業が高い評価を得ています。
実践例:
大規模部門1位のDHL Expressは、定期的な従業員サーベイを実施し、その結果を職場環境の改善に活用しています。福利厚生への満足度も高い水準を維持しています。
5.価値観の浸透
企業価値を実践的アプローチにつなげるには、具体的な制度や仕組みの整備が鍵となります。
実践例:
中規模部門のTaniumは、「do the right thing, win as a team, unstoppable」という3つの価値観に基づき、報酬パッケージと能力開発プログラムを展開しています。
OpenWorkにおける基準達成に向けた取り組み
OpenWorkの8つの評価基準は、従業員・元従業員の実体験に基づく評価であるため、表面的な施策だけでは評価向上は望めません。各評価基準に対して、本質的な課題解決に取り組む必要があります。
1.待遇面の満足度への対応
給与体系と福利厚生を整備し、従業員に分かりやすく伝えます。例えば、業界水準の給与体系を導入したり、福利厚生の活用例を従業員に説明することで、待遇面での満足度を向上させます。
2.従業員の士気向上への取り組み
従業員の士気向上には、やりがいや成長を実感できる機会を増やす仕組みを導入します。アイデアコンテスト開催などで、従業員が主体的に業務に取り組めるようになれば、やりがいを実感する機会が増えるでしょう。
3.風通しの良い職場づくり
風通しを良くするためには、役職や部署を超えて誰もが発言しやすい環境の整備に取り組みましょう。1on1ミーティングの導入、オンラインランチや懇親会などで、企業は風通しの良い職場環境を整え、従業員のモチベーションや生産性を向上させることができます。
4.従業員間の相互尊重の醸成
従業員の相互尊重を深めるには、部署の垣根を越えて助け合える関係づくりが大切です。お互いの考えや立場を認め合い、心理的安全性を確保し、のびのびと発言できる職場を目指します。具体的には、社内報での発信や、ジョブローテーション制度などがあります。
5.若手従業員の成長支援
20代の育成環境を重視し、若手従業員の期待値と現実とのギャップを1on1などで探り、希望する業務への転向機会を提供する方法があります。また、部署横断型プロジェクトやメンター制度で実践的なキャリア形成を支援できます。
6.長期的な人材育成の実現
中長期の人材育成に向けて、5年後、10年後のキャリアパスと必要なスキルを明確に示し、リーダーシップ研修のような体系的な研修プログラムを通じて着実な成長を促します。継続的な成長には、定期的なフィードバックも効果的です。
7.法令遵守体制の強化
法令順守の評価向上に向けて、全員参加型の研修やeラーニングを定期開催します。リスク管理委員会(※)による監視体制と組み合わせることで、高い意識レベルを維持できます。
※企業の信頼性や発展などを担保するために伴うリスクを管理する
8.公正な人事評価の実施
評価制度の透明性を重視し、評価基準を誰でも見られる場所で公開するとともに、定期的な1on1で具体的な成長のフィードバックを行います。どのようにして評価が行われたかを個別面談で伝えると、評価制度に対する信頼を高められます。
出典:Great Place to Work®|2025年版 日本における「働きがいのある会社」 ランキング
出典:OpenWork|AWARDS 働きがいのある企業ランキング2025
従業員の声を活かした働きがい向上策を
「働きがいのある企業」として評価を高めるには、両ランキングの評価基準を踏まえた的確なアプローチが必要です。従業員の声に耳を傾け、課題を把握し、改善すべき項目を特定しましょう。全社アンケートやヒアリングを通じて集めた声をもとに、弱い評価項目を見つけ出すことで、効果的なアプローチが見えてきます。
従業員の声から多く挙がる改善要望の一つが、福利厚生の充実です。特に、日常的に利用できる福利厚生は、従業員満足度に直接的な影響を与えます。例えば、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」のような、コンビニなど全国で利用可能な食事補助の福利厚生サービスは、従業員が確実に利用できるため効果的です。
従業員が日常的に福利厚生の恩恵を感じられれば、従業員満足度向上、帰属意識醸成、定着率向上など、働きがいのある企業を実現するための要素が自然と満たされていきます。
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