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【社労士監修】労使協定とは?基礎知識と福利厚生導入の事例をわかりやすく解説

【社労士監修】労使協定とは?基礎知識と福利厚生導入の事例をわかりやすく解説

2024.11.22

監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)

労使協定は、残業時間の管理から福利厚生まで関連するため、企業運営に欠かせません。「具体的に何のための制度なのか」「どのような種類があるのか」といった疑問を抱える企業の方も多いのではないでしょうか。本記事では、基礎知識から作成方法、福利厚生導入時のポイントまで、体系的に解説します。

労使協定とは?

労使協定は、労働者と使用者(企業)の間で取り交わす書面による取り決めです。残業や休日出勤、変形労働時間制の導入など、労働条件に関するさまざまな事項を定めた重要な文書となります。労働基準法や育児・介護休業法の原則的な規制の例外を認める場合は、締結が義務付けられています。

労使協定を締結する目的

労使協定の締結目的は、労働基準法で定められた基本原則を超える労働条件を設定する際に、雇用主と従業員の間で合意形成を図ることです。労働基準法は、労働者の尊厳ある生活を保障するため、雇用主が遵守すべき労働条件の最低基準を規定しています。しかし、現実には基準を超える労働が必要となるケースがあるでしょう。

法定基準を超える労働条件を設定する際には、労使協定の締結を義務付けることで、労働時間や休暇などの重要な労働条件を雇用主が単独で決定し、労働者の権利が侵害される恐れを払拭できます。労使協定は、労働者の保護と企業の柔軟な運営のバランスを取るための重要な仕組みです。

労使協定を締結する当事者

労使協定の締結にあたっての当事者は、事業場の労働者の過半数で組織する労働組合の有無によって異なります。

  • 事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合:その労働組合
  • 事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がない場合:労働者の過半数を代表する者

ほかの労働関係のルールとの違い

労使協定のほかにも、労働関係のルールは定められています。違いを確認しましょう。

労使協定と労働協約との違い

一見似ているように思える「労使協定」と「労働協約」ですが、その性質は大きく異なります。「労働協約」は労働組合と使用者の間で結ぶ包括的な合意文書です。賃金や労働時間といった基本的な労働条件を定めます。一方、「労使協定」は特定の事項について法律の例外を認めるために結ぶ個別の取り決めです。

対象とする労働者についても違いがあります。労使協定締結の当事者は、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合と、ない場合は労働者の過半数を代表する者と使用者です。労働組合に所属しているかどうかにかかわらず、その事業場で働く全ての労働者に適用されます。

労働協約締結の当事者は、労働組合と使用者です。そのため、組合に加入していない労働者には、労働協約の内容が適用されません。例外として、適用を受ける労働者数が事業場の4分の3以上となる場合には、残りの労働者にもその労働協約が適用されます。

労使協定と36協定との違い

よく混同されやすい36協定は、労使協定の一種です。労働基準法第36条に基づく時間外・休日労働の協定で、いわば残業や休日出勤を可能にするための特別な取り決めをします。通常の労使協定がさまざまな労働条件を対象とするのに対し、36協定は残業時間に特化した性格を持つのがポイントです。

労使協定と就業規則との違い

就業規則は企業が労働者の労働条件や服務規律を定めた企業内の規則集です。使用者側が一方的に定めるのが特徴で、作成後に労働者の意見を聴いた上で労働基準監督署に届け出ます。

労使協定は、特定の制度や取り扱いについて労使が「合意の上」で結ぶ文書であり、就業規則のように、企業が「一方的」に作成するものではありません。

なお、就業規則は労働者に不都合な内容とならないよう、法律に反している場合、法律で定められる基準が優先して適用されます。

労使協定の締結は義務?

労使協定の締結は、企業が導入を検討する制度によって必須となるケースがあります。典型的なのは時間外労働や休日労働の実施です。労使協定の代表例の一つである「時間外労働、休日労働に関する協定」(36協定)なしでは従業員に残業を命じられず、違反すれば罰則の対象となります。

また、変形労働時間制の導入やみなし労働時間制の適用などを道入する場合も、労使協定の締結が不可欠です。

労使協定の種類

労働基準法等に定められている主な労使協定の種類を一覧表にまとめます。

  労使協定の種類 届出義務 有効期間の定め 労働基準法等 様式
1 時間外及び休日労働(36協定) 必要 必要 36条 第9号
2 1週間単位の非定型的変形労働時間制 必要 不要 32条の5 第5号
3 1ヶ月単位の変形労働時間制(※1) 必要 必要 32条の2 第3号の2
4 1年単位の変形労働時間制 必要 必要 32条の4 第4号
5 事業場外のみなし労働時間制(※2) 必要 必要 38条の2 第12号
6 専門業務型裁量労働制 必要 必要 38条の3 第13号
7 任意貯蓄 必要 不要 18条 第1号
8 フレックスタイム制

(※3)

不要 不要 32条の3 第3号の3
9 年次有給休暇の計画的付与 不要 不要 39条6項 なし
10 時間単位年休 不要 不要 39条4項 なし
11 休憩の一斉付与の除外 不要 不要 34条 なし
12 賃金の一部控除 不要 不要 24条 なし
13 育児・介護休暇等に関する協定 不要 必要 育児・介護休業法 なし
14 デジタルマネーによる賃金の支払い 不要 不要 24条 なし

参考:労務ブログ|労働基準法が定める「労使協定」15種類を整理して解説(届出義務・有効期間など)

上記表の補足事項
(※1)就業規則への記載に代えることも可
(※2)法定労働時間内で定める場合は不要
(※3)清算期間が1カ月を超える場合は必要

労働基準監督署への届出が必要な労使協定

労使協定には労働基準監督署への届出が必要なものと不要なものがあります。重要な労働条件に関わる協定では、届出を欠かせません。

時間外労働、休日労働に関する協定(36協定)

36(サブロク)協定の名で知られるこの協定は、最も一般的な労使協定の一つです。通常週40時間、1日8時間を超えての労働および法定休日に労働させる場合に必要となります。働き方改革関連法の施行により、時間外労働の上限規制が法律に組み込まれ、より厳格な運用が求められるようになっています。

出典:厚生労働省|36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針

1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する協定

小売業や飲食業など、日々の業務量が変動する業種で活用される制度です。1週間単位で労働時間を調整できますが、従業員30人未満の事業場に限られるなど、いくつかの要件があります。

1ヶ月単位の変形労働時間制に関する協定

月単位で業務の繁閑の差が生じる業態向けの制度です。1ヶ月以内の期間で労働時間を調整し、効率的な人員配置を実現します。ただし、就業規則への記載があれば労使協定の届出は不要となりますが、適切な労働時間管理が欠かせません。

1年単位の変形労働時間制に関する協定

季節により業務の繁閑が大きく異なる業態に適した制度です。1年以内の期間で労働時間を調整することで、繁忙期と閑散期に応じた柔軟な勤務体制を組めます。

事業場外労働のみなし労働時間制に関する協定

営業職など、事業場外での業務が中心となる従業員の労働時間管理に使用できます。実際の労働時間の算定が難しい場合、一定の時間働いたものとみなすことが可能です。

専門業務型裁量労働制に関する協定

研究開発やシステム設計など、専門的な業務に従事する際の裁量労働制を有効とする場合に必要な制度です。業務の遂行方法や時間配分を従業員の裁量に委ねる一方、健康管理面での配慮も欠かせません。

労働者貯蓄金管理に関する協定

従業員の財産形成支援として社内預金制度を設ける際に必要です。適切な管理体制の整備と、従業員の利益を最優先とした運用が求められます。

労働基準監督署への届出の必要がない労使協定

労働者に与える影響の程度が小さい場合、届出の必要はありません。不利益を被らないものについても、届出の必要がないケースが多いです。

フレックスタイム制に関する労使協定

働く時間を従業員が選択できる柔軟な勤務制度です。清算期間が1ヶ月以内なら届出は不要ですが、適切な労働時間管理と明確なルール作りが重要なポイントとなります。清算期間が1ヶ月を超える場合は必要で、清算期間は3ヶ月以内です。

年次有給休暇の計画的付与に関する協定

従業員の年休取得を計画的に進めるための制度です。年5日を超える部分について、計画的な付与が可能となり、職場全体の休暇取得促進にもつながります。

年次有給休暇の時間単位付与に関する協定

年休を柔軟に取得できる仕組みです。年5日分を限度として時間単位での取得を認めることで、従業員の多様な休暇ニーズに応えられます。

一斉休憩の適用除外に関する協定

交代制勤務など、業務の性質上、休憩時間を一斉に与えることが難しい職場で必要となります。従業員の休息確保と業務の継続性、双方に配慮した運用が求められます。

賃金控除に関する協定

社会保険料や税金以外の控除を給与から行う際に必要です。控除項目や方法を明確にし、従業員の利益を損なわない仕組み作りが求められます。

育児、介護休暇等に関する協定

育児・介護休業法の対象とならない従業員の範囲を定める協定です。パートタイム労働者や契約社員の処遇を定める際の基準となります。

参考:厚生労働省|就業規則への記載はもうお済みですか-育児・介護休業等に関する規則の規定例-

労使協定の作成と締結の流れ

労使協定の作成と締結は、まず労働者側の代表者決定から始まります。事業場の労働者の過半数を組織する労働組合がある場合は、その労働組合が代表となります。労働組合がない、または過半数組合でない場合は、従業員の過半数代表者を民主的な方法(投票や挙手など)で選出しなければなりません。ただし、管理監督者は代表になれないことに注意が必要です。

協定書の作成では、対象となる従業員の範囲、有効期間、具体的な取り決め事項を明確にします。とくに36協定では、時間外労働を必要とする理由や延長時間の限度など、詳細に定めなければなりません。

協議は労使間で十分に行い、内容を合意形成します。必要に応じて団体交渉を行うなど、従業員の意見を広く聴取することが重要です。

締結後は、使用者側と労働者側の代表者が署名または記名押印し、必要な協定は労働基準監督署への届出を行います。締結した協定内容は従業員に周知し、定期的に実施状況を確認して、必要に応じて見直しを行います。

労使協定違反の罰則の種類

労使協定違反の罰則についても押さえておきましょう。

締結した労使協定に違反した場合

労使協定への違反は重大な法令違反に該当します。とりわけ36協定の場合、労働基準法違反として罰則の対象となり、6か⽉以下の懲役または30万円以下の罰⾦が課されるほか、是正勧告を受けることもあるため、慎重な運用が求められます。

出典:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署|時間外労働の上限規制 わかりやすい解説

労使協定の周知義務に違反した場合

協定を締結しても従業員への周知を怠れば法令違反となり、労働基準監督官による行政指導や刑事罰の対象となります。掲示や書面の交付など、適切な方法で内容を伝える必要があります。

福利厚生における労使協定の活用例

多様な福利厚生制度の普及に伴い、労使協定の重要性が高まっています。とくに給与からの控除を伴う制度では、適切な協定締結が欠かせません。

食事補助サービスなど賃金の一部を控除する場合

労働基準法第24条第1項では、賃金は全額を従業員に支払うことが原則とされており(賃金の全額払いの原則)、企業による恣意的な賃金の控除は禁止されています。ただし、社員食堂や代行型の食事補助サービスなどの「食事補助に関する費用」については、一定の条件下で賃金からの控除が認められています。以下、該当する法令の引用です。

(賃金の支払)

第二十四条

賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は命令で定める賃金について確実な支払の方法で命令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。

出典:e-GOV法令検索|労働基準法第3章賃金 賃金の支払第二十四条

食事補助分の金額を賃金から控除するためには、労使協定を締結する必要があります。賃金の一部控除についての労使協定は、任意の書面で作成可能です。前述のとおり、労働基準監督署への届出の必要もありません。ただし、従業員への周知を徹底し、控除金額の明細を給与明細等で明確に示すことが重要です。

出典:労務ブログ|労働基準法が定める「労使協定」15種類を整理して解説(届出義務・有効期間など)

賃金をデジタルマネーで支払う場合

賃金のデジタルマネー支払いは、2023年から新たに認められた制度です。従業員は受け取った賃金をそのままスマートフォン決済などで利用できるようになり、キャッシュレス時代に対応した賃金支払い方法として注目されています。

従来、労働基準法では賃金は「通貨」(現金)での支払いが原則でしたが、従業員の同意があれば銀行振込や証券総合口座への振込も可能でした。さらに、キャッシュレス決済の普及を踏まえ、一定の条件下でデジタルマネーによる支払いが可能になっています。

実施にあたっては、労使協定を締結する必要があります。協定書に記載する内容は以下のとおりです。

  • 対象となる労働者の範囲
  • 対象となる賃金の範囲とその金額
  • 取扱指定資金移動業者の範囲
  • 実施開始時期

あわせて就業規則、給与規程等の改定も必要に応じて行いましょう。

使用できるデジタルマネーは、内閣総理大臣の登録を受けた資金移動業者が発行するものに限られます。協定書は任意の形式で作成でき、労働基準監督署への届出は不要です。

出典:厚生労働省|賃金のデジタル払いが可能になります!
出典:厚生労働省|【使用主向け】賃金のデジタル払いを導入するにあたって必要な手続き

「チケットレストラン」導入前は労使協定の締結を

エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、全国15万人以上が利用している食事補助の福利厚生サービスです。従業員は全国25万店舗以上の加盟店で、一定の利用条件下であれば、従業員は、税制優遇を受けながら、ランチ代が実質半額で利用できるため人気があります。

サービスを導入する際には、賃金からの控除(給与天引き)を行うため、労働基準法に基づく労使協定の締結が必要です。

まず、中小企業で労働組合がない場合、企業と従業員の過半数代表者との間で労使協定を締結します。労働組合がある場合は労働組合が行います。協定書には控除する金額(多くのケースでは利用額の半額)と対象となる食事の範囲を明記しましょう。協定書は任意の形式で作成でき、労働基準監督署への届出は不要です。

協定締結後、エデンレッドジャパンとの契約手続きに入り、専用ICカードを発注します。カードは最短2週間で届き、従業員への配布後すぐに利用開始できます。運用開始後は月1回のチャージ手続きだけでよく、全国の加盟店ではiD決済で手軽に使えるため、従業員の利便性も抜群です。

労使協定の必要性を正しく理解しよう

労使協定は単なる法令遵守の手段ではありません。働きやすい職場作りの土台となる重要な仕組みといえます。時代の変化に応じて内容を見直し、より良い労使関係の構築につなげていくことが大切です。

食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」導入の際も、本記事で解説した手順で労使協定の締結が必要となります。賃金の一部控除についての労使協定は、労働基準監督署への届出は不要で比較的作成の負担がありません。ぜひ、従業員のために労使協定を締結して「チケットレストラン」を導入しませんか。

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