賃上げを表明した企業は、何を目的にどのくらいの賃上げを実施・計画しているのでしょうか?2024年・2025年の賃上げを表明した企業一覧を見ていきましょう。併せて2025年の春闘や賃上げの動向についても解説します。
2024年の賃上げを表明した企業一覧
まずは2024年の賃上げを表明・実施した企業の一覧をチェックしましょう。
- サントリーホールディングス
- キリンホールディングス
- ビックカメラ
- 日本生命
- 第一生命ホールディングス
- 明治安田生命
- 住友生命
- イオン
- 伊藤忠商事
- みずほフィナンシャルグループ
- すかいらーくホールディングス
- FOOD & LIFE COMPANIES
- 物語コーポレーション
各企業の賃上げ額や賃上げ率、賃上げの理由などについても紹介します。
サントリーホールディングス
サントリーホールディングスは2024年春闘で、月額ベース約7%の賃上げで妥結しました。ベースアップは月1万3,000円です。2023年にも平均約7%の賃上げを実施しているため、2年連続の賃上げとなりました。
同水準の賃上げを実施するのは、同社が人材を最も重要な経営基盤であると位置づけていることと関係しています。
キリンホールディングス
キリンホールディングスは2024年春闘において、ベースアップと定期昇給を合わせた、約7.5%の平均賃上げ率で妥結しました。ベースアップは平均で月1万3,000円と、労働組合の要求に対して満額回答で応えた形です。
また若手従業員のベースアップは最大2万円と、労働組合の要求を上回る水準となりました。
ビックカメラ
ビックカメラは、係長職以下の正社員4,700人を対象に、2024年12月支給分から6%の賃上げを実施すると発表しました。
賃上げ6%は、基本給を引き上げるベースアップ(ベア)と定期昇給を合わせた数字です。
例年の5月から12月への賃上げ時期の前倒しは、スムーズな人材確保が目的です。
日本生命
日本生命は内勤職員約2万人を対象に、ベースアップと定期昇給を合わせた約5.5%の賃上げを行う方針を示していました。2024年7月から、主任補給以下は月1万円、主任級以上は月5,000円の賃上げが行われています。
第一生命ホールディングス
第一生命ホールディングスでは、中核子会社の第一生命保険に所属する営業職員を含む従業員約5万人を対象に、7%の賃上げを実施する方針を示しました。
7%の賃上げには1人あたり50株の自社株の交付分も含まれています。従業員の「経営に参画している」という意識を高める狙いがある施策です。
明治安田生命
明治安田生命は人材の定着や獲得を目指し、内勤の従業員約1万人に対して、平均7%ほどの賃上げを実施しています。人事制度の変更に加え、年功序列から実績や役職を反映した賃金体制へ移行しました。
また全国転勤のある採用コースでは、給与が月21万円から月24万円へ引き上げられています。
住友生命
住友生命は営業職員3万2,000人ほどを対象に、同社の主力商品である健康増進型保険の契約件数に応じて平均7%の賃上げを実施する方針を示しました。営業職員に対する賃上げは2年連続で5%を超えます。
加えて2024年は内勤の従業員約1万人に対しても、約5%の賃上げ実施で妥結しました。
イオン
グループ従業員の約80%がパート従業員のイオンでは、国内の子会社約150社で働くパート従業員約40万人を対象に、時給を平均約7%上げる賃上げを実施しました。加えて正社員として勤務する従業員の賃上げも、定期昇給やベースアップにより7%前後で妥結しています。
伊藤忠商事
伊藤忠商事はすべての従業員の給与を平均6%賃上げする方針を発表しました。これまでは業績連動型のボーナスで賃上げを実施してきましたが、2024年は給与アップで引き上げる考えを公表しています。
加えて初任給は一律で5万円の引き上げを実施することで、大学卒の総合職を30万5,000円とします。待遇改善により、人材獲得において外資系企業との競争力を備え、採用につなげる計画です。
みずほフィナンシャルグループ
みずほフィナンシャルグループは2023年を上回る7%ほどの賃上げを実施しました。さらに新卒の初任給は13年振りに引き上げられ、20万5,000円から26万円になるそうです。新卒と入社数年の若手従業員の給与が逆転しないよう、若手を対象とした賃上げも検討されています。
すかいらーくホールディングス
2023年春闘において、過去10年で最大の4.38%の賃上げを行ったすかいらーくホールディングスは、2024年春闘において6.22%の賃上げ率で妥結しました。すかいらーくホールディングスとすかいらーくレストランツの正社員が対象となります。
経済の好循環を実現するには、賃上げと適正な価格転換が必要不可欠という考えから実現した賃上げです。
FOOD & LIFE COMPANIES
スシローや京樽などの飲食店を展開するFOOD & LIFE COMPANIESは、2024年10月1日からベースアップと定期昇給を合わせて平均6%の賃上げを実施しました。対象となるのはグループ各社に在籍している正社員約2,900人です。
またこの給与改定により、新卒の給与額は地域手当と合わせて最大で27万円になりました。
物語コーポレーション
「焼肉きんぐ」を運営する外食大手の物語コーポレーションは、正社員約1,600名を対象に、11月支給分から賃上げ11%にあたる一律月5000円のベースアップを実施しています。
この賃上げは、従業員のモチベーションや定着率の向上、人財確保を目的としています。
2025年の賃上げを表明した企業一覧
人手不足解消を目的に、他社より早いタイミングで賃上げを表明する企業が出てきています。2025年の賃上げを表明した企業は以下の通りです。
- サントリーホールディングス
- 星野リゾート
- ノジマ
- ワタミ
- 富国生命保険
各社の賃上げについて見ていきましょう。
サントリーホールディングス
サントリーホールディングスは、2025年も2024年と同程度となる約7%の賃上げを目指すことを表明しています。2024年よりも早い9月時点で、他社に先駆けて賃上げの意向を示すことで、人材確保につなげたいと考えているようです。
星野リゾート
宿泊業はインバウンド需要の回復により、全体的に人手不足感が強く出ている業界です。星野リゾートでは慢性的な人手不足の解消に向けて、2025年1月から平均で5.5%の賃上げを行うことを発表しました。
人材確保に向けて積極的な取り組みを行っている同社は、大学1年生へ内定を出す早期採用でも注目されています。
ノジマ
家電量販店のノジマは、全従業員を対象に2025年1月から月1万円のベースアップ実施を発表しています。加えて現場で勤務する従業員約2,600人には、2025年4月から最大2万5,000円の現場手当の支給を実施するそうです。
今回の賃上げに伴い、2025年度新入社員(大卒)の初任給が業界最高水準の30万円となります。
ワタミ
居酒屋チェーンなどを運営するワタミは、2025年の春闘で、基本給を一律に引き上げるベースアップや定期昇給分などをあわせて平均5%の賃上げを実施する方針です。
グループ企業を含めた国内のおよそ1,200人の社員が対象で、春闘での労働組合との交渉をへて決定することにしており、実施されれば2024年の平均3.7%を上回る水準になります。
富国生命保険
富国生命保険は、2025年度に約2800人いる内勤社員を対象に、給与と賞与を合わせた賃金を平均8.6%引き上げる方針です。2024年度は年収ベースで10.3%賃上げを実施しました。
労働組合との交渉をへて決定することにしており、若手を手厚く処遇し、2〜7年目の社員は25年度に平均15.2%賃上げをする予定です。
これまでは、余剰利益を顧客への配当に優先的に回してきており、今後は従業員への還元にも力を入れていくそうです。
2025年の賃上げの見通し
2023年・2024年に引き続き、2025年も賃上げの動きは続くと予想されています。これまでの賃上げで名目賃金は上がりましたが、物価高により実質賃金が減少しているためです。
エデンレッドジャパンの実施した「ビジネスパーソンのランチ実態調査2024」でも、約8割のビジネスパーソンが「家計が苦しい」と回答しており、賃上げが働く人の生活向上につながっていない現状が分かります。
このような状況を打開するため、連合(日本労働組合総連合会)は「2025 春季生活闘争基本構想」で、生活向上を実感できるよう賃上げに取り組むことを呼びかける方針であることを示しました。
関連記事:歴史的賃上げでも…8割以上が「お小遣いが増えていない」!「ビジネスパーソンのランチ実態調査2024」
格差是正にも取り組む見込み
連合は「2025 春季生活闘争基本構想」内で、企業規模間・雇用形態間・男女間などの格差是正に取り組むための目安を数値として示しました。
上げ幅の指標は、賃上げ分3%です。定期昇給と合わせて5%以上の賃上げ実現を目指しています。33年ぶりに高水準での賃上げを実現した2024年と同等以上の賃上げ実現に向けて取り組む意向です。
併せて中小労組に向けては6%の賃上げを要求していく考えを示しています。賃上げの動きが中小企業へ広がった2024年と比べても、さらに幅広く実施されると期待できるでしょう。
また企業規模間の格差を是正するための最低到達目標水準を下記の通り定めています。
中位数 |
第1四分位 |
|
35歳 |
30万3,000円 |
27万9,000円 |
30歳 |
25万2,000円 |
23万8,000円 |
雇用形態間格差の是正に向けては、正社員と同等の能力を持つ非正規雇用で働く従業員の賃金引き上げを目指します。具体的には経験年数5年以上で時給1,400円以上が目安です。
併せて底支えのために、全従業員を対象として、時給1,250円以上の締結水準を目指す方針を打ち出しています。
手取りアップを実感しやすい第3の賃上げも活用を
定期昇給を第1の賃上げ、ベースアップを第2の賃上げとしたとき、福利厚生を活用した実質的な手取りアップを、エデンレッドジャパンでは第3の賃上げと定義しました。
福利厚生の中には、一定の要件を満たすと、従業員の税負担を増やすことなく支給できるものがあります。例えば食事補助や社宅などです。これらの福利厚生を賃上げと併用することで、従業員が生活向上を実感しやすくなることが期待できます。
関連記事:パート・アルバイト・契約社員 にも「第3の賃上げ」を!ラウンドテーブルを開催~“年収の壁”を抱える非正規雇用にも、福利厚生で実質手取りアップを実現~
2025年の賃上げ企業をチェックして自社の賃上げに活かそう
2025年も賃上げの動きは続くことが予想されます。連合が格差是正に向けた取り組みを行うと表明していることから、賃上げは企業規模にかかわらず実施されるようになるでしょう。
従業員の満足度を重視するなら、福利厚生を活用する第3の賃上げも検討してはいかがでしょうか。エデンレッドジャパンの提供する食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」の導入により、手間と予算を抑えつつ従業員の手取りアップを実現できます。