さくらレポートとは、日銀の支店長会議に向けて集められた情報をもとに作成されたレポートのことです。2024年10月版では、各地域の経済をどのように判断しているのでしょうか?地域ごとの景気の総括判断や、需要項目別の動向を押さえた上で、今後の賃上げについての予測を見ていきます。
productivity/172/さくらレポートとは
さくらレポートでは、日銀が3カ月ごとに開催している支店長会議に向けて収集している情報を取りまとめています。全国を9ブロックに分けて経済動向は、企業ヒアリングを通して地域経済の現場の声を収集分析しているのが特徴です。
現場から見るリアルな経済動向を知るための資料として、多くのメディアが注目しています。
さくらレポート2024年10月版で地域別景気の総括判断をチェック
さくらレポートは3カ月ごとにまとめられており、最新版が2024年10月7日に発表されました。この中で紹介されている地域別の景気の総括判断を見ていきましょう。
地域 |
2024年10月の景気の総括判断 |
北海道 |
一部に弱めの動きが見られるが、持ち直している |
東北 |
緩やかに持ち直している |
北陸 |
一部に能登半島地震の影響が見られるものの、緩やかに回復しつつある。なお、奥能登豪雨の影響については、被災地に甚大な被害を及ぼしているが、今後、マインド面を含めてどの程度、経済を下押ししていくか注視していく必要がある |
関東甲信越 |
一部に弱めの動きも見られるが、緩やかに回復している |
東海 |
緩やかに回復している |
近畿 |
一部に弱めの動きが見られるものの、緩やかに回復している |
中国 |
緩やかな回復基調にある |
四国 |
緩やかに持ち直している |
九州・沖縄 |
一部に弱めの動きが見られるが、緩やかに回復している |
9つの地域のうち、2024年7月版と比較して景気が改善していると判断したのは北陸・東海の2地域、その他の7地域は横ばいです。
ここでは地域ごとの金融経済概況や需要項目別の動向を見ていきましょう。
参考:日本銀行|地 域 経 済 報 告── さくらレポート ──(2024年10月)
北海道地域は持ち直している
北海道では住宅投資が減少している以外は、横ばいもしくは緩やかに増加している需要項目が多く、全体として持ち直していると考えられます。全体的に持ち直していることから、企業の業況感も少し改善しました。
需要項目 |
動向 |
公共投資 |
高水準で推移している |
輸出 |
回復している |
設備投資 |
緩やかに増加しており、北海道地区の9月短観では前年を上回る |
個人消費 |
物価上昇の影響を受けつつも堅調に推移している |
住宅投資 |
減少している |
生産 |
横ばい圏内で推移している |
雇用・所得動向 |
緩やかに改善している |
物価 |
前年を上回って推移している |
企業倒産 |
増加している |
金融情勢 |
預金残高は個人預金を中心に増加、貸出残高は緩やかに増加している |
東北地域は緩やかに持ち直している
公共投資や住宅投資は停滞気味ですが、それ以外の需要項目は上向いているものが多く、企業の業況感は回復しています。
需要項目 |
動向 |
公共投資 |
弱めの動きとなっている |
輸出 |
- |
設備投資 |
東北地区の9月短観によると中長期的な能力増強投資・省力化投資・新規出店などにより増加している |
個人消費 |
緩やかに回復している |
住宅投資 |
賃貸は底堅く推移しているが、持家・分譲は弱い動きとなっている |
生産 |
持ち直しの動きが足踏みしている |
雇用・所得動向 |
改善しており、雇用者所得はおおむね増加している |
物価 |
前年を上回っている |
企業倒産 |
低水準で前年より増加している |
金融情勢 |
預金動向・貸出動向ともに法人・個人を中心に全体で前年を上回っている |
北陸地域は緩やかに回復しつつある
能登半島地震の影響が一部に見られる状況や、9月にあった奥能登豪雨の影響が心配されるものの、地域全体の景気は緩やかに回復しつつあります。企業の業況感は横ばいです。
需要項目 |
動向 |
公共投資 |
復旧関連工事により増加しており、先行きも増加が見込まれている |
輸出 |
- |
設備投資 |
能力増強・省力化投資・環境対応投資・新規投資の動きに加えて、地震の修繕への投資もあり増加している |
個人消費 |
一部に地震の影響が見られるものの緩やかに持ち直している |
住宅投資 |
復旧需要が見込まれるものの足もとは減少している |
生産 |
一部に地震の影響が見られるものの緩やかに持ち直している |
雇用・所得動向 |
一部に地震の影響が見られるものの緩やかに持ち直している |
物価 |
上昇している |
企業倒産 |
低水準となっている |
金融情勢 |
預金動向は法人・個人・公金いずれも前年を上回っている、貸出動向は法人向け・地方公共団体向けが減少し前年を下回っている |
関東甲信越地域は緩やかに回復している
住宅投資と生産は弱めの動きが見られるものの、その他の需要項目は改善・増加の動きが見られます。企業の業況感は横ばいです。
需要項目 |
動向 |
公共投資 |
緩やかに増加している |
輸出 |
横ばい圏内の動きとなっている |
設備投資 |
増加している |
個人消費 |
物価上昇の影響は見られるが、インバウンド需要による押し上げ効果で緩やかに増加している |
住宅投資 |
弱めの動きとなっている |
生産 |
弱めの動きとなっている |
雇用・所得動向 |
緩やかに改善している |
物価 |
前年比2%台のプラスとなっている |
企業倒産 |
前年並みとなっている |
金融情勢 |
預金動向は法人預金の伸びが縮小したが全体としてはプラスで推移しており、貸出動向は法人向けを中心に前年比プラスの推移が続いている |
東海地域は緩やかに回復している
住宅投資では弱い動きが見られるものの、他の需要項目では増加・改善していることから、全体的に経済状況が回復している様子が見られます。このような状況を受けて、企業の業況感も改善しているそうです。
需要項目 |
動向 |
公共投資 |
高水準で推移している |
輸出 |
増加基調にある |
設備投資 |
製造業の研究開発投資、非製造業のインフラ関連投資が見込まれており、増加している |
個人消費 |
物価上昇の影響が見られるものの緩やかな増加基調にある |
住宅投資 |
弱い動きとなっている |
生産 |
増加基調にある |
雇用・所得動向 |
緩やかに改善している |
物価 |
前年を上回っている |
企業倒産 |
件数が増加している |
金融情勢 |
預金残高・貸出残高ともに前年を上回っている |
近畿地域は緩やかに回復している
個人消費で一部に弱めの動きが見られるものの、その他の需要項目では増加や改善が見られます。ただし先行きに関しては、海外の経済・金融の動向、地政学的なリスク、原材料価格の動向、消費者物価の動向などに注視していく必要があるでしょう。
需要項目 |
動向 |
公共投資 |
高水準で推移している |
輸出 |
横ばい圏内で推移している |
設備投資 |
増加している |
個人消費 |
インバウンド消費による押し上げもあり緩やかに増加している |
住宅投資 |
横ばい圏内で推移している |
生産 |
横ばい圏内で推移している |
雇用・所得動向 |
緩やかに改善している |
物価 |
前年比3%程度のプラスとなっている |
企業倒産 |
増加している |
金融情勢 |
預金残高は企業収益改善による法人預金の増加や、雇用・所得環境の緩やかな改善による個人預金の増加で前年を上回っている。貸出残高は設備資金需要や各種コスト高に伴う運転資金需要から前年を上回っている |
中国地域は緩やかな回復基調にある
住宅投資は弱めの動きとなっていますが、全体として横ばいもしくは増加しており、緩やかに回復していく動きがベースとなっています。企業の業況感としては横ばいです。
需要項目 |
動向 |
公共投資 |
高水準で推移している |
輸出 |
横ばい圏内の動きとなっている |
設備投資 |
中国地区の9月短観によると2024年の設備投資は前年を上回る計画となっており、増加している |
個人消費 |
緩やかな回復基調にある |
住宅投資 |
弱めの動きとなっている |
生産 |
横ばい圏内の動きとなっている |
雇用・所得動向 |
緩やかに改善している |
物価 |
前年を上回っている |
企業倒産 |
増加している |
金融情勢 |
預金動向・貸出動向ともに前年を上回っている |
四国地域は緩やかに持ち直している
住宅投資に弱めの動きが見られるものの、全体としては緩やかに改善している状況が見て取れ、持ち直してきています。このような状況を受けて、企業の業況感も改善しました。
需要項目 |
動向 |
公共投資 |
持ち直している |
輸出 |
- |
設備投資 |
四国地区の9月短観によると2024年の設備投資は前年を上回る計画となっており、増加している |
個人消費 |
物価上昇の影響を受けつつも底堅く推移している |
住宅投資 |
弱めの動きとなっている |
生産 |
横ばい圏内の動きとなっている |
雇用・所得動向 |
緩やかに改善している |
物価 |
前年比2%台後半のプラスとなっている |
企業倒産 |
感染症拡大前の水準となっている |
金融情勢 |
預金動向・貸出動向ともに前年を上回っている |
九州・沖縄地域は緩やかに回復している
住宅投資は今後の後退への懸念が、生産は弱めの動きが見える状況ですが、全体としては増加や堅調な動きが見られます。このような状況を受けて、企業の業況感はわずかに改善しているようです。
需要項目 |
動向 |
公共投資 |
増加している |
輸出 |
横ばい圏内の動きとなっている |
設備投資 |
九州・沖縄地区の9月短観によると2024年の設備投資は前年を上回る計画となっており、高水準で推移している |
個人消費 |
物価上昇などの影響を受けつつも、堅調に推移している |
住宅投資 |
弱含んでいる |
生産 |
弱めの動きとなっている |
雇用・所得動向 |
緩やかに改善している |
物価 |
前年を上回っている |
企業倒産 |
低水準ながらも増加している |
金融情勢 |
預金動向・貸出動向ともに法人・個人を中心に前年を上回っている |
さくらレポートから見る今後の賃上げ
さくらレポートでは、需要項目について、各地域にある企業等へヒアリングしています。ヒアリングの内容から、地域ごとに賃上げに関する動向をチェックしていきましょう。
参考:日本銀行|地 域 経 済 報 告── さくらレポート ──(2024年10月)
関連記事:防衛的賃上げの実態と中小企業の課題|人材確保のための厳しい選択
北海道地域の賃上げ動向
北海道地域では、最低賃金に伴う賃上げが実施されている様子がうかがえます。企業の経常利益が増えているわけではないため、苦しい状況の中で行われている賃上げといえるでしょう。
ただし賃上げによるプラスの効果は見られないケースもあるようです。例えば年収の壁を意識して働くパートなど非正規雇用が、勤務時間を短縮することで人手不足が起こっている事例も見られます。
インバウンド需要が好調で高い給与を提示しているホテルに人材が流れてしまい、賃上げを行っても人材確保が難しい状況もあるようです。
最低賃金の引き上げを踏まえて、昨年に続き、パートを含む社員全体で5%の賃上げを行っていく方針。経常利益が薄い中、人件費の増加は非常に苦しいものの、社員の生活維持のためにも賃上げせざるを得ない(釧路[卸売])。
最低賃金の上昇に伴い時給を引き上げたことで、年収の壁を意識して勤務時間を短くする従業員が増加している。既存従業員一人当たりの労働時間が減少し、人手不足がさらに深刻化しているため、単発の仕事を請負うギグワーカーの活用を試験的に開始する(函館[スーパー])。
本年入り後、パートを中心に賃上げを行ったが、求人への反応は芳しくない。最近では、好調なインバウンド需要を背景に、より高い給与を支払う他地域のホテルに従業員を引き抜かれるなど、人材獲得競争は激化している(釧路[宿泊])。
東北地域の賃上げ動向
東北地域では最低賃金引き上げに合わせて実施した賃上げに伴い、年収の壁を意識してパートなど非正規雇用の従業員が、勤務時間を短縮する動きが見られます。非正規雇用の従業員が多い企業では、人手不足の深刻化につながっているようです。
その一方、価格転嫁が順調に進み、4%・5%といった大幅な賃上げを実施した企業もあります。人材確保を目的として、2025年も賃上げを実施する方向で検討しているそうです。
ここ数年の最低賃金の大幅な上昇に伴い、年収の壁を意識するパート従業員が就労時間を短縮する動きが強まっており、人手不足の深刻化につながっている(福島[飲食])。
新型車向け製品の売上が好調であることに加え、賃上げ原資の確保に向けた価格転嫁も少しずつ進んできたため、2024年度は約4%の賃上げを行うとともに、夏季賞与も前年より増額した(仙台[非鉄金属])。
2024年度は、物価高騰に対する従業員の生活保障や採用競争力の向上を目的に5%の賃上げを実施した。人材確保・係留のためには継続的な賃上げが必要との認識のもと、2025年度も少なくとも3%程度の賃上げを予定(青森[卸売])。
北陸地域の賃上げ動向
北陸地域では人材確保のための賃上げを行う企業が見られます。
ただし企業の収益が大幅に改善した結果ではないため、人件費総額はこれまでと変わらない中で賃上げを実施した企業もあります。業績に連動するボーナスの減額を予定しており、従業員のモチベーション低下を懸念している状況です。
オペレーター要員としての新規高卒者の獲得に向け、最近の物価情勢や産業別組合の動向を参考に 2024 年度は過去最高レベルの賃上げを実施(金沢[化学])。
収益環境が厳しく人件費総額を増やせない中、今年 10 月の最低賃金引き上げに伴い所定内給与が増加する結果、従業員の業績に連動する賞与を減額せざるを得なくなり、働くモチベーションが低下することを懸念(金沢[宿泊])。
関東甲信越地域の賃上げ動向
関東甲信越地域では人材確保の観点から賃上げを実施している企業が多く見られます。賃上げに用いる資金は、価格転嫁・業務効率化・コスト削減などにより確保するケースが多いようです。
賃上げは2024年のみの動きではなく、2025年も実施を予定していると回答した企業もあります。大企業を中心に当たり前になってきている賃上げの動きへの対応が求められている状況といえるでしょう。
初任給を他産業に引けを取らない金額に引き上げたほか、地元採用枠を新設したことで、多くの新入社員を確保でき、人手不足が大きく緩和した(甲府[宿泊])。
人材係留の観点から来年度も持続的な賃上げが必要と考えており、価格転嫁や省人化投資等による生産性向上により原資をねん出する方針(松本[輸送用機械])。
今年度はM&Aを通じた商流改善によるコスト削減を原資に、約10%の賃上げを実施。先行きもさらなるM&Aを計画しており、被買収先とのシナジー効果を通じて得た収益を原資に、継続的な賃上げを実施予定(前橋[飲食])。
最低賃金の引き上げを受け、今後も賃上げの継続が必要。利益率の高いプライベートブランド商品の比率を高めるほか、効率化により原資を確保する(本店[スーパー])。
大企業を中心に賃上げが当たり前のものになっていくもとで、人材確保のために、従業員の満足度を測定し、現行の人事制度に関する論点を洗い出したうえで、人事戦略を抜本的に見直す企業が増加している(本店[人材サービス])。
東海地域の賃上げ動向
東海地域では人材確保に向けて、2024年に引き続き2025年も賃上げを実施する意向を示す企業が見られます。
中には来年以降の賃上げは厳しいだろうと考えている企業もあるようです。賃上げを実施する代わりに、業務効率化の推進で人手不足に対応する計画を立てています。
今年の賃上げは人材確保を目的に大企業並みの5%台後半とした。人材の確保は年々難しくなると見込んでおり、来年以降も継続的に賃上げしていく(名古屋[輸送用機械])。
社員のモチベーション向上による労働生産性の上昇を目的として、先行きも積極的に賃上げしていく方針(静岡[輸送用機械])。
人材確保の観点から、他社対比で給与が見劣りしないよう意識して、賃上げの水準を決定している(名古屋[電子部品・デバイス])。
旅行業界は給与水準が低いこともあり、来年以降も人材確保のために賃上げを進めていく予定(名古屋[旅行])。
人材の係留や採用競争力の維持を目的に賃上げは継続する方針(静岡[生産用機械])。
今年度は、人材確保のために賃上げを実施したが、来年度以降も継続的に賃上げするのは難しいため、今後はセルフレジの導入等の省人化投資により、人手不足に対応していく(静岡[小売]<名古屋>)。
近畿地域の賃上げ動向
近畿地域では、人手不足への対応として賃上げを実施し、2025年も予定している企業が見られます。ただし業績が好調とはいえない中で賃上げを実施した企業は、2025年の賃上げは難しいとも考えているようです。
また賃上げによる人件費の増加が収益の悪化につながり、人手不足であるにもかかわらず求人を控えている企業もあります。
建設業や運輸業などでは、人手不足感が強いにもかかわらず、原材料費や人件費の高騰から収益が悪化し、求人を控える企業が見られる(大阪[行政機関])。
給与制度を見直し、今年度は5%程度の賃上げを実現した。外食産業の給与水準は低いことから、来年度以降の賃上げも前向きに考えている(大阪[飲食])。
業績が伸び悩む中でも、人材係留のため、2024 年度の賃上げは定期昇給込みで平均2%強としたほか、一律3万円の特別手当も支給した(神戸[食料品])。
人手不足感が強く賃上げの必要性を感じているが、燃料費や食材費などの各種コストが経験のないペースで上昇し、賃上げ原資の確保が難しいことから、今期の賃上げは見送った(京都[対個人サービス])。
中国地域の賃上げ動向
中国地域は人手不足感が強い企業が多く、賃上げのための資金確保よりも賃上げを優先した企業もあります。人材確保に向けて、2025年も賃上げを実施する方向性を示している企業も見られます。
また賃上げとともに、福利厚生により就業環境を整えている企業もあるようです。
初任給を5%引き上げるなど処遇改善に取り組んでいるが、新卒・経験者採用ともに年々応募自体が少なくなっており、特定技能制度により外国人材を活用することで、人手不足を補う状況が続いている(松江[宿泊])。
価格転嫁が進んでおらず十分な賃上げ原資を確保できていないものの、生産ラインの人手不足が深刻化していることから、人材係留とモチベーション維持のために、賞与支給額を5%引き上げた(松江[食料品])。
県内の人手不足感が強いもとで、2024 年度は親会社を上回る過去最高額のベアを実施。先行き、同程度の引き上げ幅を維持するのは難しいが、人手確保に向けて継続的な賃上げに引き続き取り組んでいく方針(下関[鉄鋼])。
人材確保に向けては、就業環境と給与処遇の改善が必須になっていると感じる。このため、希望しない異動を廃止したほか、社宅等の福利厚生の整備を進めている。また、賞与増額やベアにもグループ全体で取り組んでいる(岡山[宿泊])。
四国地域の賃上げ動向
四国地域では業績が好調であることから、5%を超える賃上げを実施している企業もあります。高い給与で従業員を雇用している企業の中には、人手不足の課題を感じていないケースもあるようです。
その一方で、人件費の上昇による収益減少や、年収の壁を意識した労働時間の短縮への懸念の声も見られます。
好調な業績を背景に6%と高めの賃上げを行っているもとで、人材の確保・係留に成功しており、人手不足感を感じていない(高知[食料品])。
従業員のモチベーション向上と物価高対応を目的に、今年度は5%を超える賃上げを実施。離職率の高い若年層に厚めの賃上げを行っており、中には定期昇給分を含めた賃上げ率が 20%を超えるケースもある(松山[対個人サービス])。
今年度は昨年度を上回る平均5%の賃上げを実施。売上や生産性向上への貢献度に応じて賃上げ幅に濃淡を付けており、賃上げを通じた社員のモチベーション向上を図ることで業績伸長にもつなげていきたいと考えている(松山[金属製品])。
徳島県では、最低賃金の前年からの引き上げ幅が84円と、全国の中でも突出して大幅な引き上げが行われることとなったが、行政による支援策が併せて講じられており、積極的に支援策を活用して賃上げ対応を図る方針(高松[食料品])。
今年度の最低賃金の大幅な引き上げに伴う人件費の上昇により、収益が圧迫される見込み。また、賃金の上昇により、年収の壁を意識して年末時期にかけて労働時間を短縮する動きが加速することを懸念している(高松[小売])。
九州・沖縄地域の賃上げ動向
慢性的な人手不足の解消に向けて、収益が増えていない状況でも賃上げを実施せざるを得ないという声が出ています。2025年も引き続き、人材確保のための賃上げが必要という意向です。
中には賃上げによる人件費上昇分の価格転嫁がスムーズに進んでいない企業もあります。このような中で賃上げのための資金を確保するために、高年齢層の従業員の給与を徐々に減額し若手従業員の給与に充てる企業や、買収による生産性アップを目指す企業などがあるようです。
収益環境は芳しくない状況にあるが、慢性的な人手不足の解消のため、ベア・賞与を含めて大きめの賃上げを行った 2024 年度に続き、2025 年度も同様の賃上げを実施せざるを得ないと考えている(北九州[小売])。
総人件費を増やしにくい中、若手社員の獲得に向け、高年齢層社員の給与を徐々に減額し、初任給アップなど若手世代の待遇改善に充てる方針(大分[飲食])。
料金を引き上げた結果、九州域内からの集客が悪化。こうしたもとでさらなる値上げには踏み切りづらく、来年度の賃上げは難しい(長崎[対個人サービス])。
継続的な賃上げの原資確保のためには、生産性の向上が必要不可欠と認識。こうしたもとで、シナジー効果によるグループ全体の生産性向上等を目的に、仕入先企業などの買収を行っている(鹿児島[卸売])。
賃上げ以外の待遇改善方法として福利厚生も検討を
日銀のさくらレポートによると「賃上げは人材確保のために必要」と考える企業が見られます。今後も賃上げの動きは続くでしょう。
ただし実際に賃上げを行っている企業の中には「収益は増えていない」「人件費が増えて経営状況が悪い」といった状況に置かれているケースが少なくありません。
このような状況で従業員の待遇改善を行うには、賃上げに加えて福利厚生を活用するとよいでしょう。福利厚生の中には、一定の要件を満たすと従業員の税負担を増やすことなく支給できるものがあります。
例えば食事補助や社宅などです。これらの福利厚生を活用すれば、実質的な手取り額アップを実現できます。
対象となる従業員が平等に利用できる福利厚生を導入するなら、エデンレッドジャパンが提供している食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」がおすすめです。手間とコストを抑えつつ、従業員の暮らしをサポートできるサービスを検討してみませんか。
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