帝国データバンクが発表した2024年度上半期(4-9月)の「人手不足倒産の動向調査」によると、倒産件数は163件に達し、過去最多を更新しています。特に建設業と物流業では全体の45.4%を占め「2024年問題」の影響が顕著に表れている実態が明らかになりました。本記事では、同調査結果をもとに、人手不足倒産の現状や業界別・企業規模別の実態を分析。人手不足倒産のリスクを回避するために、企業が取るべき具体的な対策についてわかりやすく解説します。
帝国データバンクが発表した人手不足倒産の最新動向
2024年10月4日、帝国データバンクは「人手不足倒産の動向調査(2024年度上半期)」を公開しました。この調査結果から、人手不足が企業経営に深刻なダメージを与えている現状が明らかになっています。まずは、人手不足が引き起こす倒産の実態とリスクについて、同調査結果をもとに詳しく解説します。
参考:株式会社 帝国データバンク[TDB]|人手不足倒産の動向調査(2024年度上半期)|(2024年10月4日)
倒産件数が過去最多を更新
「人手不足倒産の動向調査(2024年度上半期)」によると、2024年度上半期(4-9月)の人手不足倒産件数は163件に達しました。これは年度ベースで過去最多を記録した2023年度(313件)をさらに上回るペースです。
前年同期と比較すると約1.2倍の増加であり、特に中小企業における影響が顕著です。人手不足による売上機会の損失や、人件費高騰による収益構造の悪化・価格転嫁の遅れによる採算性の低下など、複合的な要因が倒産リスクを高めています。
また、経営者の高齢化や後継者不足も重なり、事業継続の見通しが立たずに廃業を選択するケースも増加しています。
業種別でみる人手不足倒産の実態
業種別の分析では、建設業が55件・物流業が19件と、この2業種で全体の45.4%を占めています。
建設業における人手不足は、従来指摘されてきた高齢化や若手入職者の減少に加え、週休二日制の普及や時間外労働の規制強化により一層深刻化しているのが現状です。
また、物流業界では、EC市場の拡大による需要増加に人材確保が追いつかず、配送効率の低下や人件費の上昇が経営を圧迫しています。人材の確保や定着が困難な中、賃上げ要請や最低賃金の引き上げなど、人件費負担が増加していることも事業継続の大きな障壁となっています。
建設・物流業が直面する「2024年問題」
建設業と物流業で人手不足倒産が多発している背景には、2024年4月に完全施行された時間外労働の上限規制適用、いわゆる「2024年問題」があります。
2024年問題では、時間外労働の上限規制が建設・物流業にも完全適用され、労働時間削減が義務化されました。これによって従業員の離職が進み、人手不足が深刻化する企業が少なくありません。
実際に、人手不足を感じている企業の割合を見ると、全体が51.5%なのに対し、物流業は70%・建設業は69.8%と大幅に上回っています。
なお、人手不足を改善するための効果的な施策に賃上げがありますが、物流業・建設業の価格転嫁率は平均を下回っています。人件費を含むコストの価格転嫁が進まないために人件費を増加できず、人手不足ながらも人材を集められないジレンマに陥っているのが現状です。
関連記事:2024年問題で労働時間はどう変わる?解決策をわかりやすく解説
企業規模からみる倒産リスク
企業規模と倒産リスクには明確な相関関係が見られます。帝国データバンクの調査では、2024年度上半期に人手不足倒産した企業163件のうち、82.2%が従業員10人未満の中小企業です。
この背景には、採用市場での競争力不足や待遇面での格差といった構造的な課題があります。多くの中小企業は、大企業と比較して、採用市場での競争力や給与水準等の待遇面で劣るのが実情です。そのため、大企業に比べて新規採用が困難なのはもちろんのこと、既存従業員の離職率も高くなりがちです。
人手不足が進めば進むほど、大手企業の採用市場における競争力は高まり、中小企業の人材確保が難しくなっていく実態があります。
関連記事:「2024年問題」とは?必要な対策と物流業界に及ぼす影響を解説
関連記事:2024年問題への建設業の対策は?時間外労働の上限規制も解説
中小企業における人手不足の深刻度
出典:東京商工会議所|「人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査」 の集計結果について ~中小企業の約6割が外部シニア人材の受入れに前向き~|調査|調査・ガイドライン
日本商工会議所・東京商工会議所が、全国2,392社の中小企業を対象に行った調査では、全体の63.0%の企業が人手について「不足している」と回答しています。
さらにその深刻度について「非常に深刻(事業運営に深刻な影響があり、廃業のおそれがある)」(4.2%)・「深刻(事業運営に影響があり、今後の事業継続に支障が出るおそれがある)」(61.3%)と、6割以上の企業が事業継続への重大な懸念を示しています。
中小企業の人手不足は、各企業のみならず、日本経済全体においても喫緊の課題といえそうです。
人手不足が企業に与える影響
人手不足が企業にもたらすリスクは、必ずしも倒産だけではありません。ここでは、目には見えにくいながら、企業経営に与える影響が大きい課題を三つピックアップして解説します。
業務効率の低下
人手不足による業務効率の低下は、企業の生産性に直接的な影響を与えます。特に小規模企業では、一人あたりの業務負担が増加し、業務効率が低下する傾向にあります。
業務が滞った結果、納期遅延や品質管理の低下・新規受注の制限など、事業機会の損失につながるケースも少なくありません。また、業務の属人化が進む中で、特定の従業員への業務集中や、不測の事態への対応力低下なども懸念されています。
デジタル化やIT活用による業務効率化を試みる企業も増加していますが、導入コストや人材育成の面で課題を抱える企業が多く、即効性のある解決には至っていないのが現状です。
こうした状況は、新商品開発や市場開拓といった成長戦略の実行にも影響し、結果として中長期的な企業価値の低下を招く原因となります。
従業員のモチベーション低下
人手不足は、従業員の負担を著しく増加させ、深刻なモチベーション低下の原因となるものです。
人手不足によって1人あたりの業務量が増加すると、残業時間の増加や休暇取得の困難さといった課題が発生します。給与が変わらない中で負荷だけが増えると、仕事に対するモチベーションが低下し、パフォーマンスも低下します。パフォーマンスの低下は生産性の低下へつながり、長期的には企業の業績にも悪影響を及ぼすでしょう。
また、従業員一人ひとりが日々の業務で手一杯になると、人材育成の機会が減り、従業員のスキルアップやキャリア形成が滞ります。人材の獲得が困難な中、将来のキャリア形成を考える従業員が離職を検討することで、さらなる人手不足を招くという悪循環に陥るリスクも考えられます。
事業の縮小・停滞リスク
人手不足の長期化は、企業の成長戦略に重大な影響を及ぼしています。特に、一人ひとりの担う役割が大きくなりがちな中小企業では、新規事業の展開や事業拡大の機会を逃す可能性が否定できません。
事業の拡大や成長の機会を得られない企業は、その多くが事業の縮小や停滞を招きます。また、技術や知識の引き継ぎが進まないために、既存の従業員が定年を迎えたり、離職をしたりすることで、業務が回らなくなるのも大きなリスクです。
このような状況下で、事業の選択と集中を余儀なくされる企業も増加しており、市場からの撤退や事業譲渡を検討するケースも出始めています。
人手不足解消に向けた具体策
人手不足問題の解決には、複合的なアプローチが必要不可欠です。ここでは、特に効果が期待できる人手不足解消に向けた施策について解説します。
多様な働き方の推進
働き方改革の推進は、人材確保・定着の重要な鍵です。テレワークや時差出勤・短時間勤務・副業や兼業の容認など、多様な働き方の選択肢を提供することで、シニア層や子育て世代、介護との両立が必要な従業員など、幅広い人材の活用が可能となります。
特に、高度な技術や豊富な経験を持つシニア人材の活用は、技術継承や若手育成の面からも重要です。2025年4月には「65歳までの雇用義務化」が控えていることもあり、シニア人材の役割について再検討することが求められています。
関連記事:【社労士監修】定年延長とは?2025年の法改正と企業の準備・助成金を詳しく解説
外部人材の活用
外部人材の活用は、即効性のある人手不足対策として注目を集めています。
人材を一から育てるには時間とコストが必要ですが、一定のスキルを持つフリーランスや副業人材などを雇用することで即戦力の確保が可能です。
特に、IT関連などの専門性の高い業種では、外部からの人材調達が有効な選択肢のひとつになるでしょう。
ただし、外部人材の活用には、受入体制の整備や教育訓練の実施、コミュニケーション面での配慮など、適切なマネジメントが求められます。成功している企業では、明確な業務範囲の設定や、社内人材とのスムーズな連携体制の構築、キャリアパスの提示などが効果を上げています。
リスキリング支援
「リスキリング」は、職業能力の再開発・再教育のことで、経済産業省は次のように定義しています。
新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること
デジタル化が進む中、企業に必要な人材も変化しています。従業員のリスキリングのサポートは、企業の人的資本価値を高めるだけでなく、従業員のモチベーション向上にもつながる重要な施策です。
関連記事:経済産業省が補助金を交付するリスキリングとは?定義やメリットも
福利厚生の充実
人材の採用・定着において、福利厚生の充実は重要な差別化要因です。
福利厚生には、健康保険や厚生年金保険のように、提供が義務付けられている「法定福利厚生」と、企業が独自で提供する「法定外福利厚生」の2種類があります。このうち「法定外福利厚生」は、提供が義務ではないだけに、充実させることで「従業員を大切にする企業」としての強力なアピールになります。
企業から大切にされていると感じられる従業員は、そうでない従業員に比べ、満足度やエンゲージメントが向上し、積極的に取り組むのが一般的です。働きやすい環境が整うことにより、人手不足の解消も期待できます。
なお、具体的な法定外福利厚生としては、社宅の提供や食事補助・慶弔見舞金・メンタルヘルスサポートなどが挙げられます。
日本一の実績を持つ食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」
法定外福利厚生の中でも、従業員の暮らしを直接サポートできる施策として人気を集めているのが「食事補助」です。
たとえば、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、一定の条件下で食事代が半額になる食事補助の福利厚生サービスです。コンビニやファミレス・三大牛丼チェーン店など、全国25万店舗以上の加盟店で利用可能で、勤務時間内であれば、場所や時間の制限もありません。
支払いは専用のICカードで行えるほか、アプリの利用で残高の確認や近隣の加盟店検索も可能です。条件を満たすことで経費として計上できるため、コストを抑えた運用ができるのも魅力です。
これらの利便性が高く評価され「チケットレストラン」は食事補助の福利厚生として日本一の実績を持つサービスとなっています。
関連記事:「チケットレストラン」の仕組みを分かりやすく解説!選ばれる理由も
まとめ
人手不足倒産は過去最多のペースで増加しており、特に中小企業において深刻な経営課題となっています。この状況に対応するためには、多様な働き方の推進や外部人材の活用、効果的な福利厚生の整備など、複合的なアプローチが必要不可欠です。
特に「チケットレストラン」のような福利厚生の充実は、限られた予算で高い効果を得られる施策として注目されており、人手不足問題の解決に向けた一歩として効果的です。
人手不足問題を克服し、企業としての成長を進める中長期的な経営戦略の一環として、ぜひ導入を検討されてはいかがでしょうか。
参考|画像出典元:株式会社 帝国データバンク[TDB]|人手不足倒産の動向調査(2024年度上半期)|(2024年10月4日)