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【社労士監修】個人事業主の社会保険加入義務とは?5人以上の従業員がいる場合に必要な対応

【社労士監修】個人事業主の社会保険加入義務とは?5人以上の従業員がいる場合に必要な対応

2024.08.26

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監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)

個人事業主が運営する事業所において、従業員の社会保険加入義務は従業員数や業種によって異なります。常時5人以上の従業員を使用する個人事業所は、多くの業種で社会保険へ強制的に加入しなければなりません。

本記事では、最新の適用基準や手続き方法・従業員へのメリット・事業主の負担軽減策まで詳しく解説します。併せて、社会保険加入を通じた人材確保や従業員満足度向上のヒントも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

個人事業主の社会保険加入義務について

社会保険の加入義務を果たすことは、法令遵守の一環として重要です。

現行の制度では、常時5人以上の従業員を雇用している個人事業所は、一部の業種を除いて社会保険(厚生年金保険・健康保険)の強制適用事業所となります。この基準は近年大きく変わっていませんが、適用範囲は徐々に拡大されてきています。

2024年8月時点で、もっとも新しい改正は、2022年(令和4年)10月に行われました。この改正により、士業(弁護士・公認会計士・税理士など)を営む5人以上の個人事業所が新たに強制適用の対象となりました。

社会保険の適用範囲は、社会の変化に併せて随時見直されています。そのため、個人事業主は、最新の情報を常に把握して自身の事業所が適用対象となるかどうかを確認する必要があります。

参考:日本年金機構|健康保険・厚生年金保険の適用事業所における適用業種(士業)の追加(令和4年10月施行)

社会保険加入義務が発生する個人事業所の条件

個人事業主が運営する事業所が、社会保険へ強制加入となる条件とはどのようなものなのでしょうか。要点ごとに詳しく見ていきましょう。

従業員数による判断基準

社会保険加入義務の発生は、主に従業員数によって判断されます。具体的には、常時5人以上の従業員を雇用している個人事業所が対象です。

ここでいう「常時」とは、臨時的な雇用ではなく、継続的に雇用している状態を指します。季節労働者や短期アルバイトは、この「常時」の定義に当てはまらない場合があるので注意しましょう。

対象となる従業員の定義

社会保険加入義務の対象となる従業員は、70歳未満との条件があるものの、雇用形態は問われません。正社員のほか、契約社員やパートタイマー・アルバイトも対象です。

具体的には、1週間の所定労働時間および1カ月の所定労働日数が、同じ事業所で同様の業務に従事している正社員の4分の3以上である場合、社会保険の適用対象となります。

例えば、正社員の労働時間が週40時間の場合、週30時間以上働くパートタイマーは適用対象です。

参考:日本年金機構|会社に勤めたときは、必ず厚生年金保険に加入するのですか。

特定適用事業所における短時間労働者の基準

パートタイマーやアルバイトなどの短時間労働者も、「特定適用事業所」または「任意特定適用事業所」に該当し、以下の要件を満たす場合、厚生年金の被保険者となります。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上
  • 月額賃金が8.8万円以上(年収106万円以上)
  • 2カ月以上の雇用期間が見込まれる
  • 学生でない

「特定適用事業所」とは、現在(2024年8月)従業員数101人以上の事業所をいいます。2024年10月からは、従業員数51人以上の事業所に拡大される予定です。

また「任意特定適用事業所」は、特定適用事業所の基準に満たないながらも、被保険者の同意によって適用拡大の対象となる事業所です。

参考:日本年金機構|会社に勤めたときは、必ず厚生年金保険に加入するのですか。
参考:日本年金機構|短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大

個人事業主本人の扱いについて

重要な点として、個人事業所の事業主本人は社会保険の被保険者にはなりません。これは、個人事業主が事業の経営者であり、従業員ではないためです。

ただし、事業主の家族従業員については、一定の条件を満たせば被保険者となる場合があります。例えば、事業主の配偶者が従業員として働いており、他の従業員と同様の労働条件である場合は、被保険者となる可能性があります。

参考:日本年金機構|個人事業所の場合、事業主およびその家族は被保険者となるのでしょうか。

適用対象となる業種と非適用業種

社会保険の適用は業種によっても異なります。2022年の法改正により、適用対象となる業種が拡大しました。ここでは、適用対象となる業種と、依然として非適用となっている業種について詳しく解説します。

適用対象となる業種

2022年の法改正により、特に士業(専門サービス業)が新たに適用対象となりました。具体的には、以下の職種です。

  • 弁護士(沖縄弁護士、外国法事務弁護士を含む)
  • 公認会計士
  • 税理士
  • 社会保険労務士
  • 弁理士
  • 司法書士
  • 行政書士
  • 土地家屋調査士
  • 海事代理士
  • 公証人

従来から適用対象であった製造業・建設業・運輸業・卸売業・小売業なども引き続き適用対象です。また、医療・福祉分野や教育・学習支援業も適用対象となっています。

適用業種・非適用業種の分類

出典:厚生労働省|個人事業所に係る適用範囲の在り方について(5P)

参考:日本年金機構|健康保険・厚生年金保険の適用事業所における適用業種(士業)の追加(令和4年10月施行)

非適用業種について

中には、依然として社会保険の適用対象外となっている業種もあります。具体的には、農業・林業・漁業などです。

これらの第一次産業は、事業の特性や従業員の雇用形態の特殊性から、現時点では適用除外となっています。また、宿泊業や飲食サービス業、生活関連サービス業(美容室など)も、多くの場合非適用業種に分類されています。

ただし、これらの業種でも、法人化している場合や一定規模以上の事業所では適用対象となる可能性があるため、個別に確認が必要です。

社会保険加入による従業員のメリット

社会保険に加入することで、従業員には多くのメリットがあります。ここでは、年金制度と医療保険の面から、具体的なメリットをご紹介します。

年金制度の充実

社会保険に加入するメリットとして、まず挙げられるのが、従業員の年金制度が大きく充実することです。国民年金(基礎年金)に加え、厚生年金に加入できるため、将来受け取る年金額が増加します。

これにより、長期的に見て老後の生活がより安定します。また、障害年金や遺族年金の給付水準も向上するため、不測の事態に対する備えとしても有効です。

医療保険の拡充

健康保険に加入することで、医療サービスの面でも大きなメリットがあります。例えば、病気やけがで働けなくなった際に受けられる傷病手当金や、出産時の出産手当金など、さまざまな保障を受けることが可能です。

また、健康保険組合に加入できる場合は、人間ドックや各種健康診断の補助など、独自の付加給付を受けられる可能性もあります。これらの充実した医療保障は、従業員の健康維持や生活の安定に大きく貢献します。

社会保険加入手続きの流れ

社会保険への加入手続きは、正確かつ迅速に行うことが重要です。ここでは、必要な書類や提出先、さらに届出期限と注意点について詳しく解説します。手続きを円滑に進めるためのポイントをしっかり押さえておきましょう。

必要な書類と提出先

社会保険加入の手続きには、主に以下の書類が必要です。

  • 新規適用届
  • 被保険者資格取得届
  • 被扶養者(異動)届(該当者がいる場合)

これらの書類は、事業所の所在地を管轄する年金事務所に提出します。よりスムーズに手続きを行うのなら、e-Gov(電子政府の総合窓口)などの電子申請システムの利用や、社会保険労務士への依頼がおすすめです。

参考:日本年金機構|新規適用の手続き
参考:日本年金機構|健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届/厚生年金保険 70歳以上被用者該当届
参考:日本年金機構|健康保険被扶養者(異動)届
参考:厚生労働省|電子申請(申請・届出等の手続案内)

届出期限と注意点

社会保険の加入手続きには、厳格な期限が設けられています。

例えば新規適用届やの場合、該当事由の発生日(常時5人以上の従業員を使用するようになった日)から5日以内に提出する必要があります。被扶養者(異動)届も、同じく該当事由の発生日から5日以内での提出が定められています。被保険者資格取得届は、従業員を雇い入れた日から5日以内です。

これらの期限を過ぎると、遡って保険料を納付する必要が生じたり、加算金が課されたりする可能性があります。また、届出を怠ると罰則の対象となる場合もあるため、期限遵守は非常に重要です。

社会保険加入に伴う事業主の負担と対策

社会保険に加入することで、事業主には一定の経済的負担が生じます。ここでは、その負担の具体的な内容と計算方法、さらには負担を軽減するための施策について解説します。

事業主負担の計算方法

社会保険料の事業主負担は、原則として従業員負担分と同額(労使折半)です。具体的な計算方法は以下の通りです。※保険料率は2024年8月現在

  • 厚生年金保険料:標準報酬月額 × 保険料率(18.3%) ÷ 2
  • 健康保険料:標準報酬月額 × 保険料率(協会けんぽの場合:全国平均10%程度) ÷ 2
  • 介護保険料(40歳以上65歳未満の従業員の場合):標準報酬月額 × 介護保険料率(協会けんぽの場合:1.60%) ÷ 2

例えば、標準報酬月額が30万円の従業員の場合、事業主・従業員の双方が月額約45,000円程度を社会保険料として負担することになります。従業員数が増えれば、事業主の負担はそのぶん増加します。

参考:日本年金機構|保険料額表(令和2年9月分~)(厚生年金保険と協会けんぽ管掌の健康保険)
参考:協会けんぽ|全国健康保険協会|令和6年度保険料額表(令和6年3月分から)
参考:協会けんぽ|全国健康保険協会協会|けんぽの介護保険料率について

負担軽減のための施策

個人事業主の社会保険料の負担を軽減する施策には、次のようなものが挙げられます。

  • 経費削減:不要な支出の見直しや業務効率化による経費削減
  • 価格戦略の見直し:必要に応じた価格改定
  • 生産性向上:業務プロセスの改善や、技術導入による生産性向上
  • 資金計画の見直し:増加する支出に備えた資金計画の作成

また、「中小企業経営強化税制」のような、政府が提供している設備投資支援を利用するのもひとつの方法です。

参考:中小企業庁|中小企業経営強化税制

関連記事:【税理士監修】中小企業経営強化税制とは?制度の概要から手続きまで分かりやすく解説

従業員の福利厚生充実による人材確保・定着策

社会保険へ加入すると、従業員の手取りは減少します。これを敬遠した従業員が、離職を検討するケースも少なくありません。

そうした事態への対応策として、近年注目を集めているのが、新たな福利厚生の提供による負担額の補填です。ここでは、特に注目されている食の福利厚生サービスについて解説します。

食事補助サービスの導入

食の福利厚生サービスは、従業員の食費負担のサポートとともに、健康維持や満足度向上にも効果的な福利厚生です。導入により、以下のようなメリットが期待できます。

  • 従業員の健康増進:バランスの取れた食事による従業員の健康維持・増進
  • 生産性の向上:昼食時間の有効活用や食事の質の向上によるパフォーマンス向上
  • コミュニケーションの活性化:共に食事をする機会が増えることによる従業員間の交流促進
  • 経済的負担の軽減:従業員の食費負担を軽減

食事補助サービスの導入は、従業員の社会保険加入にともなう負担額の補填・満足度向上・健康管理と、さまざまな面で効果的な施策といえます。

導入企業数3,000社以上!「チケットレストラン」

エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、近年、特に人気を高めている食の福利厚生サービスです。

チケットレストラン」では、事業所と従業員が半額ずつチャージしたICカードで支払いを行うことで、カフェやコンビニ・ファミレスなど全国25万店舗を超える加盟店での食事を半額で利用できます。勤務時間内であれば、場所やタイミングの制限もありません。

このサービスは、正規雇用の従業員のみならず、契約社員やアルバイトなど、雇用形態を問わず平等に提供できます。また、月に1度のチャージだけで運用でき、バックオフィスの負担も軽減されるため、規模の小さい個人事業所でも導入しやすいことも大きな魅力です。

これら多くのメリットが評価され、導入企業での継続率99%を誇る人気の食の福利厚生サービスです。

関連記事:「チケットレストラン」の仕組みを分かりやすく解説!選ばれる理由も

社会保険加入は企業と従業員の未来への投資

個人事業主にとって、社会保険料の負担は大きな課題です。しかし、適切な対策を講じることで、その負担を最小限に抑えられます。さらに、食事補助サービスなどの追加的な福利厚生施策を導入することで、従業員満足度を大きく向上させることも不可能ではありません。

社会保険への加入は、自社の基盤をより強固なものとし、安定した組織にするためのチャンスでもあります。ぜひこれを機に、自社の状況に最適な社会保険加入と福利厚生の在り方を検討してみてはいかがでしょうか。

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