2030年問題に関連し、医療分野では深刻な人材不足が懸念されています。本記事では、医療機関が直面する課題と、2030年問題に対する具体的な人材確保・定着の施策について分かりやすく解説します。福利厚生の充実による効果にも注目し、医療機関の人事戦略に役立つ情報を提供しますので、ぜひ参考にしてください。
2030年問題とは何か?医療分野への影響を解説
2030年問題とは、少子高齢化による人口構造の変化が引き起こす社会的課題の総称です。特に医療分野では、高齢者の増加による医療需要の拡大と、生産年齢人口の減少による人材不足が大きな問題となります。
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高齢化率の上昇と医療需要の増大
内閣府が公開している「令和5年版高齢社会白書」では、日本の高齢化率(65歳以上人口の割合)は、2030年に30.8%に達すると予測されています。
これは約3人に1人が高齢者となる計算です。生産年齢人口(15〜64歳)1.9人で、65歳以上の高齢者1人を支えなければなりません。
また、高齢者は、若年層と比べて医療サービスを必要とする頻度が高いため、医療需要の大幅な増加が見込まれます。例えば、厚生労働省の「令和3(2021)年度 国民医療費の概況」を見ると、人口1人あたりの国民医療費が35万8,800円なのに対し、65歳以上の1人あたりの医療費は75万4,000円、75歳以上の後期高齢者に至っては92万3,400円と、全年齢平均の3倍に迫る数字となっています。
参考:内閣府|令和5年版高齢社会白書(概要版)(PDF版)
参考:厚生労働省|令和3(2021)年度 国民医療費の概況
生産年齢人口の減少と医療人材不足の深刻化
「令和5年版高齢社会白書」は、15〜64歳の生産年齢人口は、2030年に7,076万人まで減少すると予測しています。これは2025年と比べて約200万人の減少となります。
医療分野においても、この人口減少の影響は深刻です。厚生労働省の試算によると、2030年には約3万人の医師が不足すると予測されています。さらに、介護職員の不足も深刻で、2030年には約69万人の不足が見込まれています。この人材不足は、医療サービスの質と量の両面に大きな影響を与える可能性が否定できません。
参考:厚生労働省|医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会(第28回)
参考:厚生労働省|第7期介護保険事業計画に基づく介護人材の必要数について
あわせて知りたい「2025年問題」と「2040年問題」
2030年問題と関連する社会問題として、「2025年問題」と「2040年問題」があります。これらも少子高齢化に起因する課題ですが、それぞれ特徴が異なります。
2025年問題は、団塊世代が75歳以上の後期高齢者となることで引き起こされる社会問題です。社会保険の費用負担増加や企業の人手不足が懸念されており、2030年問題への対策を実施する上でも重要な課題となっています。
一方、2040年問題は団塊ジュニア世代が65歳を超えることで起こる社会問題です。2030年問題よりさらに深刻度が増し、医療・介護・年金などの各種制度の持続性が大きな課題となります。これらの問題は連続性があり、段階的に対策を講じていく必要があります。
関連記事:2025年問題と2040年問題はどう違う?企業に必要な対策も解説!
2030年に向けた医療分野の課題
2030年問題は、医療分野に複数の重要な課題をもたらします。これらの課題に適切に対応することが、将来の医療サービスの質を維持・向上させる上で不可欠です。ここでは、主要な課題について詳しく見ていきましょう。
医療費の急増と財政への影響
高齢化の進行に伴い、医療費の急増が予測されています。厚生労働省の推計によると、2030年の国民医療費は約62兆円に達すると見込まれています。2018年が約45兆円だったことを考えると、大幅な増加です。
この医療費の増大は、国の財政に大きな負担をかけることになります。また、医療保険制度の持続可能性にも影響を与える可能性があり、保険料の引き上げや給付内容の見直しなどが議論されることが予想されます。
このような財政的制約の中で、いかに効率的に質の高い医療サービスを提供していくかが、2030年を間近に控える医療機関の大きな課題です。
地域医療の維持と医療アクセスの格差
人口減少が進む地方では、医療機関の維持が困難になる可能性があります。特に、過疎地域では医療従事者の確保が難しく、病院や診療所の閉鎖が進むかもしれません。これにより、地域間の医療アクセスの格差が拡大する恐れがあります。
例えば、厚生労働省の調査によると、2022年時点で無医地区(医療機関のない地域)は全国に557カ所存在し、約12万人が影響を受けています。2030年に向けて、この数字がさらに増加する可能性もゼロではありません。地域医療の維持と医療アクセスの公平性確保は、重要な課題となっています。
参考:厚生労働省|令和4年度無医地区等及び無歯科医地区等調査の結果を公表します
介護需要の増加と医療との連携
高齢化の進行に伴い、介護需要も大幅に増加すると予測されています。
経済産業省の資料によると、2000年に約256万人だった要介護(要支援)認定者数が、2030年には約900万人に達すると見込まれています。
この介護需要の増加に対応するためには、医療と介護の連携強化が不可欠です。特に、在宅医療と介護サービスの一体的な提供や、多職種連携による包括的なケアの実現が求められています。
参考:経済産業省|将来の介護需給に対する高齢者ケアシステムに関する研究会
医療機関における人材確保・定着のための施策
2030年問題に対応するためには、積極的に人材確保・定着のための施策を実施することが重要です。ここでは、具体的な施策について、多角的な視点から詳しく解説します。
働き方改革の推進
医療現場における働き方改革の推進は、人材確保・定着のために不可欠です。
2024年4月には、働き方改革の一環として医師にも時間外・休日労働時間の上限規制が適用され、年間の上限が原則960時間となりました。
さらなる具体的な施策としては、医師の業務の一部を薬剤師や看護師などに移管する「タスクシフティング」や、勤務間インターバル制度の導入、ICTを活用した業務効率化などが挙げられます。
参考:医師の働き方改革手続きガイド
参考:厚生労働省|勤務間インターバル制度について
キャリア支援と継続教育の充実
医療従事者のキャリア支援と継続教育の充実は、人材の定着と質の向上に重要な役割を果たします。特に、医療技術の進歩が急速な現代において、継続的な学習機会の提供は不可欠です。
主な施策として挙げられるのが、院内研修プログラムの充実・学会参加の支援・オンライン学習システムの導入などです。例えば、専門看護師や認定看護師の資格取得支援制度を設けることで、キャリアアップの機会を提供できます。また、多職種連携研修の実施により、チーム医療の質を向上させることができます。
さらに、キャリアコンサルティング体制を整備し、個々の医療従事者のキャリアプランに応じた支援を行うことも効果的です。これらの取り組みにより、医療従事者のモチベーション向上と長期的な定着を促進することができます。
職場環境の改善とワークライフバランスの実現
職場環境の改善とワークライフバランスの実現は、医療従事者の満足度向上と定着率の向上に直結します。
具体的な施策としては、柔軟な勤務体系の導入・有給休暇取得の促進・職場のハラスメント対策・保育施設の整備などが挙げられます。働き方の自由度を高めることで、育児・介護と仕事の両立支援が可能です。また、院内保育所や病児保育の整備は、子育て中の医療従事者のモチベーションやパフォーマンスの向上が期待できます。
これらの取り組みにより、医療従事者が長期的に働きやすい環境が整備され、人材の確保・定着も期待できます。
シニア人材の活用と技術継承
高齢化が進む中、シニア医療人材の活用も、人材確保の効果的な取り組みです。
豊富な経験と高度なスキルを持つシニア人材は、若手の育成や技術継承において重要な役割を果たします。しかし、定年制度や働き方の柔軟性不足により、多くのシニア人材が早期に現場を離れてしまう現状があります
シニア人材を活用するには、短時間勤務制度の導入や、若手指導役としての活用・技術指導専門職の設置などが効果的です。また、デジタル技術を活用した技術継承の仕組みづくりも重要です。
シニア人材の知識や経験をデジタル化し、若手が随時学習できる環境を整備することで、スムーズな技術継承が可能になります。
福利厚生の充実による人材確保・定着の効果
福利厚生の充実は、医療機関における人材確保・定着に大きな効果をもたらします。適切な福利厚生制度は、従業員の満足度向上や帰属意識の醸成につながり、結果として優秀な人材の確保と長期的な定着を促進するからです。
以下、福利厚生の充実による具体的な効果、特に注目される食事補助の福利厚生サービスについて詳しく解説します。
福利厚生が人材の確保・定着に効果的な理由
福利厚生の充実は、医療機関における人材の確保・定着に大きな効果をもたらします。その理由は主に以下の三つです。
まず、福利厚生は従業員の生活の質を直接的に向上させる役割を果たします。例えば、住宅手当や保育支援などは、生活の基盤を支える重要な要素です。特に医療従事者のように不規則な勤務体系が多い職種では、このような支援が仕事と生活の両立に大きく貢献します。
次に、福利厚生は従業員のエンゲージメントを高める効果があります。組織が従業員の健康や生活を真剣に考えているという姿勢は、従業員の組織に対する信頼感や愛着を深めるからです。これにより、企業は従業員の離職を防ぎ、長期的な人材定着を実現できます。
最後に、充実した福利厚生は組織の魅力を高め、優秀な人材を引きつける効果があります。就職活動中の学生や転職を考えている医療従事者にとって、福利厚生の内容は重要な判断材料のひとつです。業界標準を上回る福利厚生を提供することで、人材獲得競争において優位に立つことができます。
人材確保に有効な福利厚生
マイナビキャリアリサーチLabが、2024年春に卒業予定の全国の大学生、大学院生を対象に実施した「マイナビ 2025年卒大学生活動実態調査 (4月)」によると、2025年卒の大学生が企業の福利厚生として「あったら嬉しいもの・求めるもの」は以下の通りです。
在宅勤務制度(テレワーク・リモートワークの実施も含む) |
46.6% |
時短勤務 |
29.8% |
フレックスタイム制(時差出勤・オフピーク通勤も含む) |
54.7% |
健康増進(人間ドック受診補助、インフルエンザ予防接種補助、企業内診療所など) |
32.0% |
育児支援(社内託児所や育児休業など) |
33.0% |
休暇制度(特別休暇、リフレッシュ休暇、介護・看護休暇など) |
58.2% |
慶弔関連(結婚・出産祝い、傷病見舞金など) |
23.8% |
資産形成に関する制度(財形貯蓄や自社株、優待制度など) |
19.1% |
キャリアアップ制度(資格取得の補助や社内研修など) |
40.6% |
社員寮・社宅 |
36.1% |
保養所 |
7.0% |
レクリエーション(社員旅行、懇親会、部活動、レジャー施設等の利用補助など) |
15.7% |
諸手当(住宅手当、子ども手当、食事手当など) |
55.3% |
各種補助(通勤費、通信費など) |
50.8% |
その他 |
0.7% |
これらの福利厚生を積極的に導入することで、他社との差別化が図れるとともに、「従業員を大切にする企業」としてのブランディングが実現できます。
参考:マイナビキャリアリサーチLab|2025年卒大学生活動実態調査 (4月)
注目度を高める食事補助の福利厚生
数ある福利厚生の中でも、近年特に注目を集めているのが食事補助です。
不規則な勤務体系や長時間労働が多い医療現場において、食事補助は従業員の健康維持と満足度向上に大きく貢献します。以下、食事補助の福利厚生を導入する主なメリットを解説します。
まず挙げられるのが「従業員を経済面で直接的にサポートできる」点です。食事代の補助は、実質的な収入増加と同等の効果があり、特に若手医療従事者にとっては魅力的です。
次に、「従業員の健康管理の支援」という側面があります。医療従事者は不規則な勤務のため、十分な食事時間を確保できないことも少なくありません。食事補助により、栄養バランスの取れた食事を取りやすくなり、従業員の健康維持につながります。
また「社内コミュニケーションの活性化」も、忘れてはならない食事補助の福利厚生によるメリットです。食事補助が福利厚生として提供されている企業では、従業員同士で食事を取る機会が増え、コミュニケーションの機会が自然と増えます。これにより、組織としての風通しが良くなり、より魅力的な企業風土を育むことができます。
日本一の実績を持つ食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」
エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、食事補助の福利厚生として日本一の実績を持つサービスです。
「チケットレストラン」が導入された企業の従業員は、専用のICカードで支払いをすることで、加盟店舗での食事代が半額になります。加盟店は全国に25万店舗以上あり、ジャンルもファミレス・カフェ・コンビニ・三大牛丼チェーンなど幅広く、年代や性別・嗜好を問わず利用できます。
また、一般的な社員食堂のような食事補助とは異なり、勤務時間内であれば、利用する場所や時間を選ばないのも「チケットレストラン」ならではの特徴です。これにより、ランチはもちろんのこと、お弁当に一品追加したり、おやつを購入したりといった利用の仕方もできます。勤務時間や休憩時間が不規則になりがちな医療従事者も安心して利用できるサービスです。
これらのメリットにより、「チケットレストラン」はすでに2,000社以上の企業に導入され、利用率98%・継続率99%・従業員満足度93%との高い評価を得ています。
関連記事:「チケットレストラン」の仕組みを分かりやすく解説!選ばれる理由も
2030年問題を乗り越える|医療機関の未来を支える人材戦略
2030年問題は、少子高齢化を背景とした人手不足が引き起こす諸問題を指します。
2030年問題は医療機関にとって大きな課題をもたらしますが、同時に変革の機会でもあります。本記事で解説してきた人材確保・定着のための施策、特に「チケットレストラン」のような福利厚生の充実は、この課題を乗り越えるための重要な鍵となるでしょう。
迫る2030年に向けて適切な対策を講じることで、組織の強化と医療サービスの質の向上を実現し、企業として成長することも不可能ではありません。ぜひこの機会を生かし、未来を見据えた人材戦略の構築に取り組んでいきましょう。