シニアの再雇用とは、高年齢者の従業員の希望に基づき、定年後も引き続き雇用する仕組みです。少子高齢化による人手不足が進行する中、シニアの活躍に期待が寄せられています。シニアが働きやすい体制を整え活躍を促そうと考えている企業に役立つよう、シニアの雇用促進に活用できる助成金についても見ていきましょう。
シニアの就業機会確保と再雇用の現状
少子高齢化により、16~64歳の生産年齢人口は今後も減少していく見込みです。そのような中、多様な人材の活用による人手不足の解消を促進する目的で、シニアの再雇用に注目が集まっています。
シニアの再雇用の現状を確認するために、改正高年齢者雇用安定法と同法で定められている高年齢者就業確保措置についてチェックしましょう。
改正高年齢者雇用安定法について
2021年4月から施行されている改正高年齢者雇用安定法について、厚生労働省の「改正高年齢者雇用安定法が令和3年4月から施行されました」で確認していきます。
この改正により、企業には65歳までの雇用確保が義務づけられました。加えて70歳までの就業確保が努力義務となっています。
努力義務として講じるよう努めなければいけないと定められているのは、以下にあげる5つからなる高年齢者就業確保措置です。
- 70歳までの定年引き上げ
- 定年制の廃止
- 70歳までの継続雇用制度の導入
- 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
- 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
このうち1~3が就業確保措置、4・5が創業支援等措置です。
参考:厚生労働省|改正高年齢者雇用安定法が令和3年4月から施行されました
65歳までの高年齢者雇用確保措置の実施状況
厚生労働省の「令和5年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表します」によると、65歳までを対象とする高年齢者雇用確保措置を実施している企業は23万6,815社です。
高年齢者雇用確保措置は「定年制の廃止」「定年の引き上げ」「継続雇用制度の導入」の3つがあります。この3つの内訳を見ていきましょう。
企業規模 |
定年制の廃止 |
定年の引き上げ |
継続雇用制度の導入 |
従業員301人以上 |
0.7% |
17.4% |
81.9% |
従業員21~300人 |
4.2% |
27.7% |
68.2% |
全企業 |
3.9% |
26.9% |
69.2% |
多くの企業が「継続雇用制度(再雇用)」で高年齢者雇用確保措置を講じていることが分かります。
参考:厚生労働省|令和5年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表します
70歳までの高年齢者就業確保措置の実施状況
同じく厚生労働省の「令和5年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表します」によると、改正高年齢者雇用安定法で努力義務となっている、70歳までの高年齢者就業確保措置に取り組んでいる企業は7万443社です。
取り組んでいる高年齢者就業確保措置の内訳も確認します。
企業規模 |
定年制の廃止 |
定年の引き上げ |
継続雇用制度の導入 |
創業支援等措置の導入 |
301人以上 |
0.7% |
0.6% |
21.3% |
0.2% |
21~300人 |
4.2% |
2.4% |
23.7% |
0.1% |
全企業 |
3.9% |
2.3% |
23.5% |
0.1 |
努力義務となっている70歳までの高年齢者就業確保措置も、65歳までの高年齢者雇用確保措置と同じように「継続雇用制度(再雇用)」を実施している企業が主流です。
参考:厚生労働省|令和5年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表します
シニア再雇用の課題
高年齢者の雇用を確保する取り組みとして、多くの企業で再雇用が行われていると分かりました。ただし再雇用には課題もあります。具体的にどのような課題が潜んでいるのか見ていきましょう。
世代交代
シニア人材の再雇用で人手不足を解消する場合、従業員の世代交代が進みにくくなる恐れがあります。企業が成長していくには、若手従業員の雇用・育成が欠かせません。高齢者人材の経験やスキルを生かしつつ、若手の育成につながる人員配置が必要です。
再雇用者の給与
シニア再雇用は多くのケースで非正規雇用となります。正規雇用から非正規雇用となることで、それまでと同じペースで働いても給与が半分近く減ることも少なくありません。
モチベーションの維持
仕事内容も勤務時間も同じであるにもかかわらず、再雇用により非正規雇用になったことで給与が減少すると、モチベーションの低下につながりかねません。
また非正規雇用だからといって仕事の内容を変えると、業務にやりがいを見いだせずモチベーションが下がる恐れもあります。
再雇用者を対象とした待遇改善
シニア再雇用を行う企業の中には、優秀な人材を引き続き雇用し続けられるよう、再雇用者の待遇改善を行うケースが出てきています。実際に再雇用した従業員の給与を現役並みにしたり、引き上げたりしている企業を見ていきましょう。
企業名 |
再雇用者向けの待遇改善 |
日本精工 |
8,000円のベースアップ |
GSユアサ |
1万4,000円のベースアップ |
スズキ |
基本給を現役並みに引き上げ |
カルビー |
高度人材は定年時処遇を引き継ぎ再雇用 |
伊藤忠テクノソリューションズ |
高度専門職の従業員は現役世代と同等の給与 |
シニア人材の活用は企業の人手不足を解消する上で欠かせない取り組みです。ただし給与が下がりモチベーションが低下すれば、期待していた成果が出ない可能性もあります。
物価上昇により生活費の負担が増していることもあり、シニア人材の再雇用には待遇改善が欠かせない状態です。
65歳超雇用推進助成金
シニア再雇用は人手不足対策として注目されています。ただし実施するには、人件費の確保が必要です。再雇用者を現役並みの給与で雇用する場合や、ベースアップを実施する場合には、さらに費用がかかります。
必要な費用の補助に役立つのが65歳超雇用推進助成金です。当助成金の65歳超継続雇用促進コースでは「65歳以上への定年の引き上げ」「希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入」「定年制度の廃止」「他社による継続雇用制度の導入」のいずれかを行うと助成金を受給できます。
再雇用を実施するために「希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入」を行ったときに支給されるのは、60歳以上の雇用保険被保険者数と、実施している措置に応じた以下の金額です。
60歳以上の被保険者数 |
66~69歳への継続雇用の引き上げ |
70歳以上への継続雇用の引き上げ |
1~3人 |
15万円 |
30万円 |
4~6人 |
25万円 |
50万円 |
7~9人 |
40万円 |
80万円 |
10人以上 |
60万円 |
100万円 |
参考:高齢・障害・求職者雇用支援機構|65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)
待遇改善に役立つ福利厚生の充実度アップ
再雇用者の待遇改善には、給与アップの他に福利厚生の充実度アップも役立ちます。例えば食事補助を支給すれば、仕事中の食事にかかる費用負担が少なくなる分、実質的な手取り額アップにつながります。
また食事補助は一定の要件を満たせば、支給しても従業員の税負担が増えません。税額が増えない分、同額の給与アップよりも手取りが上がったことを実感しやすい仕組みです。
食事補助で福利厚生の充実アップを実施するなら、導入するだけで非課税となる一定の要件を満たせる、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」がおすすめです。
シニア再雇用を進めるなら待遇改善を
人手不足が進行している中、シニア再雇用が注目されています。これまで再雇用後の雇用形態は契約社員となることが多く、仕事はそのままに給与が半減したり、これまでの経験やスキルを生かしにくい仕事を任せたりすることがありました。
シニアの活躍を促すには、給与アップによるモチベーション管理が欠かせません。待遇改善には、併せて福利厚生の充実度アップも実施するとよいでしょう。
シニア人材の実質的な手取り額アップにも役立つ、食事補助の福利厚生サービスであるエデンレッドジャパンの「チケットレストラン」を検討してみてはいかがでしょうか。