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【社労士監修】人材開発支援助成金の条件は?活用事例をチェック

【社労士監修】人材開発支援助成金の条件は?活用事例をチェック

2024.01.30

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監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)

人材開発支援助成金とは、仕事に関する技術やスキルを従業員が身に付けられるよう、計画的に職業訓練を実施している企業に対して、必要な資金や訓練中の賃金をサポートする制度のことです。従業員一人ひとりのスキルや能力を高め、パフォーマンスを向上させる人材開発にはコストがかかります。人材開発をスムーズに進めるために助成金を活用できるよう、申し込み方法や活用事例を見ていきましょう。

人材開発支援助成金は7コース

人材開発支援助成金には以下の7コースがあります。どのコースで申請する場合にも、企業は職業能力開発のキーパーソンとなる「職業能力開発推進者」を選任し、人材開発の基本方針を定める「事業内職業能力開発計画」の策定と周知を行わなければいけません。

  • 人材育成支援コース
  • 教育訓練休暇等付与コース
  • 人への投資促進コース
  • 事業展開等リスキリング支援コース
  • 建設労働者認定訓練コース
  • 建設労働者技能実習コース
  • 障害者職業能力開発コース

ここでは7コースのうち、多くの従業員が対象となる4コースについて概要を解説します。

人材育成支援コース

人材育成支援コースは、対象となる従業員に対して「人材育成訓練」「認定実習併用職業訓練」「有期実習型訓練」を計画に沿って実施したときに、訓練に必要な費用や訓練中の賃金の一部の助成を受けられるコースです。

訓練の種類

要件

対象者

人材育成訓練

・OFF-JTで実施される訓練
・訓練時間は10時間以上

申請した企業における雇用保険の被保険者

認定実習併用職業訓練

・事前に厚生労働大臣の認定を受けること
・OJTと教育訓練機関で行うOFF-JTを組み合わせて実施すること
・訓練実施期間は6カ月以上2年以下
・総訓練時間は1年あたり850時間以上
・総訓練時間のうちOJTは2割以上8割以下
・訓練終了後に職業能力の評価を実施すること

・15歳以上45歳未満の従業員で以下のいずれか
①雇い入れから訓練開始まで3カ月以内の従業員
②大臣の認定前にパートといった短時間等労働者で、正規雇用へ転換した従業員
③既に雇用している被保険者

有期実習型訓練

・OJTとOFF-JTを組み合わせて行うこと
・訓練実施期間が2カ月以上
・総訓練時間が6カ月あたり425時間以上
・総訓練時間のうちOJTは1割以上9割以下
・訓練終了後に職業能力の評価を実施すること

・以下の全てに該当し申請する企業に雇用されている有期契約労働者
「キャリアコンサルティング実施前5年以内におおむね3年以上通算して正規雇用されたことがないか、正規雇用であっても過去の就業状況から見て訓練が必要と認められ、ジョブ・カードを作成した者
②正規雇用の従業員として雇い入れられた者ではないこと
③訓練の終了日か支給申請日に雇用保険の被保険者であること
④企業が行う有期実習型訓練の趣旨や内容を理解していること
⑤他の企業が行った公共職業訓練・求職者支援訓練・実習併用職業訓練・有期実習型訓練の修了後6カ月以内の者ではないこと
⑥雇用されている企業が行った公共職業訓練・求職者支援訓練・実習併用職業訓練・有期実習型訓練を修了した者ではないこと

訓練は対面で行われるものの他、eラーニングや通信制も助成金の対象となります。ただしこの場合には、訓練時間や受講時間などの要件が異なる点に注意が必要です。

参考:厚生労働省|人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内

教育訓練休暇等付与コース

従業員が教育訓練を受けるには休暇が必要な場合があります。このとき労働基準法で定められている年次有給休暇とは別に、有給の休暇を与えるために利用できるのが教育訓練休暇等付与コースです。

コースの対象となるには、以下の要件を満たしている必要があります。

  • 制度や導入適用計画に則って、3年間に5日以上取得できる有給の教育訓練休暇制度を施行日を明記し就業規則もしくは労働協約で定めること
  • 就業規則は施行日までに労働基準監督署へ届け出たもの、労働協約は施行日までに締結したものであること
  • 有給の教育訓練休暇制度を施行日までに全従業員へ周知すること
  • 日単位で取得できること
  • 制度の導入後は適用計画期間の初日から1年ごとに1人以上へ休暇を付与すること
  • 被保険者である従業員が自発的に教育訓練・検定・キャリアコンサルティングのいずれかを受けること

またコースの対象となるには、従業員が受ける教育訓練は、従業員を雇用している企業以外が行うものである必要があります。

参考:厚生労働省|人材開発支援助成金(教育訓練休暇等付与コース・人への投資促進コース)のご案内(詳細版)

人への投資促進コース

人への投資促進コースは、2022~2026年度までの期間限定の助成金です。「高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練」「情報技術分野認定実習併用職業訓練」「定額制訓練」「長期教育訓練休暇等制度」「自発的職業能力開発訓練」の5つの訓練からなります。

助成金を受けるためには、企業・従業員・訓練がそれぞれの要件を満たしていなければいけません。例えば「高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練」の要件は以下の通りです。

要件

要件の内容

企業の要件

次のいずれかであること
①主な事業が情報通信業
②情報通信業以外で以下のいずいれかに該当すること
・産業競争力強化法に基づく事業適応計画の認定を受けている
・情報処理推進機構のDX認定を受けている
・DX推進指標によって経営幹部やIT部門などで自己診断を行い、情報処理推進機構に指標を提出し、自己診断を踏まえた事業内職業能力開発計画を策定する

企業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めるために、事業主において企業経営や人材育成の方向性の検討を行い、この検討を踏まえて「事業内職業能力開発計画」等の計画を策定している

従業員の要件

・次の全てに当てはまること
①助成金を申請する企業で雇用保険の被保険者である
②訓練実施期間中に雇用保険の被保険者である
③職業訓練実施計画時に提出した「訓練別の対象者一覧」に記載されている被保険者である
④訓練の受講時間数が助成金の支給対象となる時間数の8割以上である
・訓練が海外大学院の場合は次の全てに当てはまること
①日本の大学等を卒業し学士以上の学位を取得しているか、海外の高等教育機関で学士以上に相当する学位を取得している
②入学先の大学院で使用する言語の能力が一定水準以上である
③大学学部以降の総在籍期間の成績が累積GPA3.00以上である

訓練の要件

・助成金の支給対象となる時間数が10時間以上である
・OFF-JTである
・職務に関連した専門的な知識や技能を習得するための訓練である

参考:厚生労働省|人材開発支援助成金人への投資促進コースのご案内(詳細版)

事業展開等リスキリング支援コース

企業が新規事業を立ち上げるときには、その分野の知識やスキルを持つ人材が必要です。今いる従業員が、新規事業に必要な知識やスキルを身に付けられるようにするには、訓練を実施しなければいけません。

実施する訓練の費用や、訓練を実施している間の賃金の一部について、助成金を受け取れるコースが「事業展開等リスキリング支援コース」です。訓練の対象となる従業員と、基本要件をチェックしましょう。

要件

要件の内容

訓練の対象となる従業員

申請する企業の被保険者

基本要件

・訓練はOFF-JTで実施されること
・助成金の対象となる訓練時間が10時間以上あること
・新規事業に必要な専門知識や技能を習得するか、DX化やグリーン・カーボンニュートラル化を進める業務に必要な専門知識や技能を習得すること

参考:厚生労働省|人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内(詳細版)

助成金への申し込み方法

人材開発支援助成金への申し込みは以下の手順で進めます。

  1. 職業能力開発推進者の選任と職業能力開発計画の策定
  2. 職業訓練実施計画届を訓練開始日から1カ月前までに提出。「人への投資促進コース」の場合は制度導入・適用計画期間の初日から起算して1カ月前までに制度導入・適用計画届を提出し、制度施行日までに従業員へ周知
  3. 訓練の実施、制度の導入
  4. 支給申請書の提出
  5. 助成金の支給・不支給の決定

申し込みの手間を削減するには「雇用関係助成金ポータル」の利用がおすすめです。電子申請ができるため、いつでも待ち時間なく手続きできます。

参考:厚生労働省|雇用関係助成金を電子申請しませんか?

人材開発支援助成金の活用事例

助成金を活用するときの参考になるよう、実際の活用事例をチェックしましょう。

組織力強化を目的に訓練を実施した事例

インターネット関連事業を展開する従業員数20名の企業では、組織力強化に向けて、デジタル分野の資格を持つ人材開発を必要としていました。活用したのは「人への投資促進コース」の「高度デジタル人材訓練」です。

従業員が専門的な知識を身に付けることで、プロジェクト管理を任せられるようになり、管理職へも登用できました。資格取得者が在籍していることが、企業のアピールポイントにもなっているそうです。

サブスク型で一人ひとりに合う訓練を提供可能になった事例

必要な訓練は従業員ごとに異なります。個々の現時点の能力や、希望のキャリアパスに合う訓練を提供するのは、手間も費用もかかることです。自動車部品製造を手がける従業員数130名の企業では、この手間や費用を抑えるために訓練の機会を減らしており、生産性が落ちていました。

十分な訓練を提供するため、「人への投資促進コース」の「定額制訓練」を活用し、サブスク型の訓練を導入することで、手間と費用を抑えながら従業員一人ひとりに合う訓練を提供できるようになったそうです。

従業員のスキルアップにつながり、全体の生産性向上を実現しています。

人材開発に助成金を活用しよう

人材開発を行うと従業員の知識やスキルが高まり、生産性が向上します。企業全体の業績アップにもつながる取り組みです。

ただし実施するには訓練にかかる費用が発生しますし、訓練期間中は従業員が休暇を取る必要も出てきます。このようなマイナス面をカバーしつつ人材開発を進めるには、人材開発支援助成金が有効です。

要件を満たす訓練を従業員に提供する場合、訓練にかかる費用や訓練期間中の従業員の給与の一部を助成金でカバーできます。従業員の希望するキャリアパスに合う訓練を提供すれば、生産性にも影響を及ぼす従業員満足度の向上にもつながるでしょう。

従業員満足度の向上には働く環境の整備も役立ちます。例えばエデンレッドジャパンの「チケットレストラン」による食事補助の提供で、毎日の食事にかかる負担を軽減可能です。助成金とともに取り入れてみてはいかがでしょうか。

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