ビジネスケアラーとは仕事と介護を両立している人のことです。ワーキングケアラーとよばれることもあります。育児介護休業法により、ビジネスケアラーを支援する制度の整備が進んでいますが、まだ十分とは言い切れません。今後も増えていくと予想されているビジネスケアラーを取り巻く課題への対策について解説します。
ビジネスケアラーとは
ビジネスケアラーとは仕事をしながら介護を担う人のことで、ワーキングケアラーともいいます。
経済産業省の「令和4年就業構造基本調査」によると、ビジネスケアラーは約365万人で、約629万人存在している介護者全体の58.0%です。介護を担う人のうち、半数以上がビジネスケアラーであることが分かります。
ビジネスケアラーの現状を確認
介護者全体の半数を超えているビジネスケアラーは、どのような状況に置かれているのでしょうか。適切な対策を実施するために、まずは現状を確認しましょう。
働き盛りのビジネスケアラーは212万人
経済産業省の「令和4年就業構造基本調査」によると、ビジネスケアラーの年代別人数は以下の通りです。
年代 |
ビジネスケアラーの人数 |
30歳未満 |
13万1,000人 |
30~39歳 |
21万8,000人 |
40~44歳 |
20万人 |
45~49歳 |
39万5,000人 |
50~54歳 |
70万4,000人 |
55~59歳 |
82万2,000人 |
60~64歳 |
62万8,000人 |
65~69歳 |
31万人 |
70歳以上 |
23万9,000人 |
働き盛りの40~50代のビジネスケアラーは212万1,000人で、ビジネスケアラー全体の58.1%と半数を超えているのが分かります。
ビジネスケアラーは少数派とはいえない
「仕事と介護の両立に関する経営者向けガイドライン」によると、要介護者と介護者の続柄は、2004年には配偶者・子・子の配偶者がそれぞれ約20%でした。この20年間ほどで配偶者と子の配偶者が介護を担う割合は減少しており、子が介護を担うケースが増加しています。
要介護者の子世代は、現役世代として働いているケースが多いため、仕事をしながら介護を担うビジネスケアラーの増加を示しているといえるでしょう。
さらに東京商工リサーチの「介護離職に関するアンケート」調査によると、今後「介護離職は増えると思う」と回答した企業が64.5%でした。
ビジネスケアラーが増え、介護離職の増加が予想されている今、ビジネスケアラーは少数派とはいえません。企業が事業を継続していくには、ビジネスケアラーへの支援が必要な状況です。
参考:
経済産業省|仕事と介護の両立に関する経営者向けガイドライン
東京商工リサーチ|「介護離職に関するアンケート」調査
54.5%が介護休暇・介護休業を利用していない
東京商工リサーチの「介護離職に関するアンケート」調査によると、2022年9月~2023年8月に介護離職が発生した企業は10.1%でした。このうち54.5%の企業では、介護離職したビジネスケアラーが介護休暇・介護休業を利用していないことが分かっています。
「代わりの人材がいない」「介護休暇や介護休業を利用した前例がない」「制度が従業員に浸透していない」といった理由から、制度があっても利用できないビジネスケアラーが存在するようです。
ビジネスケアラーを取り巻く課題と企業への影響
ビジネスケアラーの課題は、ビジネスケアラーの働く企業にも影響を及ぼします。具体的にどのような影響があるのかを、経済産業省の「仕事と介護の両立に関する経営者向けガイドライン」を元に見ていきましょう。
参考:経済産業省|仕事と介護の両立に関する経営者向けガイドライン
仕事と介護の両立による物理的・精神的負担
仕事をしながら介護を担うビジネスケアラーには、物理的・精神的な負担がかかります。
日本ケアラー連盟の「ワーキングケアラーの就業継続の実態に関する調査報告書」を参考に、ビジネスケアラーが仕事と介護を両立する上で、不安に感じていることをチェックしましょう。
仕事と介護の両立を続ける上で不安に感じていること |
回答の割合 |
自身の心身の健康を害する |
48.1% |
仕事・介護に時間がとられ、家事育児や趣味など他のことがおろそかになる |
43.2% |
休みの際に仕事を代われる人がおらず職場に迷惑がかかる |
31.1% |
介護支援制度を利用する費用の負担が大きい |
25.7% |
介護休暇・介護休業の日数が不足している |
22.4% |
長期的なキャリアの展望が描けない |
19.7% |
「このままでは心身の健康を崩してしまいそうだ」と感じながらも、人材不足や日数が不十分なことから介護休暇・介護休業を思うように取得できず、仕事と介護で手一杯の状況が見て取れます。
参考:日本ケアラー連盟|ワーキングケアラーの就業継続の実態に関する調査報告書
生産性低下による経済的な損失
物理的・精神的に負担がかかるビジネスケアラーは、労働生産性が低下したり、介護離職につながったりする可能性があります。
「仕事と介護の両立に関する経営者向けガイドライン」によると、ビジネスケアラーがこれまで通りに働き続けられなくなることで発生する経済的な損失は、2030年には9兆1,792億円に達するそうです。
企業ごとの損失額は、年間に大企業6億2,415万円・中小企業773万円と計算されています。
介護離職による人材不足
業種を問わず人材不足が深刻化している中、従業員がビジネスケアラーになることで労働時間が減ったり、介護離職したりすれば、人材不足はますます進行しかねません。
東京商工リサーチの「介護離職に関するアンケート」調査によると、自社で行っているビジネスケアラーの支援への取り組みが「十分とは思わない」と回答した企業は約38%でした。
仕事と介護の両立支援が十分にできていない理由は、62.4%の企業が「代替要員を確保しにくい」ためと回答しています。介護離職が今よりも増加して人材不足が進めば、ビジネスケアラーの仕事と介護の両立支援は、さらに困難になっていくことも考えられるでしょう。
関連記事:人手不足が深刻化する日本の現状|統計データのわかりやすい解説と企業の対応策
ビジネスケアラーの両立支援に向けて企業が取り組む3ステップ
ビジネスケアラーが仕事と介護を無理なく両立して、企業の経済的損失や介護離職による人材不足を回避するには、以下の3ステップで両立支援に取り組む必要があると経済産業省が紹介しています。
- ビジネスケアラーの支援を表明する
- 自社の実態を把握する
- 制度や相談先について周知する
それぞれの詳細を確認しましょう。
参考:経済産業省|仕事と介護の両立に関する経営者向けガイドライン
1 ビジネスケアラーの支援を表明する
まずは経営者がビジネスケアラーの現状を知ることから始めましょう。両立支援の制度を整えなかったときに、どのような影響があるのかを把握します。
その上で、仕事と介護の両立のために、何をどのように行うのかを従業員に分かりやすく伝えることも必要です。支援を具体的に進めていくためには、担当役員や担当者も置きます。
2 自社の実態を把握する
次に行うのは、自社の実態を把握することです。自社にどのくらいのビジネスケアラーが在籍しており、現時点でどのような点に困っているのかを知りましょう。
自社の実態を把握したら、ビジネスケアラーが働きやすくなるよう、制度を整えたり人材戦略を設計したりします。このとき効果測定ができるよう、指標を定めて取り組むこともポイントです。
3 制度や相談先について周知する
ビジネスケアラーが仕事と介護を両立しやすいよう制度を整えたら、制度の内容や利用方法について周知しましょう。介護休暇や介護休業に関する情報はもちろん、介護保険制度についても情報提供します。
制度を利用するときに、まずはどこへ相談すればよいかも明確にしておくと、ビジネスケアラーが必要に応じて相談しやすい体制を構築可能です。
併せて仕事と介護の両立支援に関する、従業員全体のリテラシー向上に向けた研修も実施すると制度の運用にプラスに働きやすくなります。
ビジネスケアラーを取り巻く課題への対策
ビジネスケアラーを取り巻く課題に対して、企業はどのような対策ができるのでしょうか。介護と仕事を両立しやすい環境づくりに向けて、企業ができることを紹介します。
介護休暇・介護休業など制度について伝える
「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を担う労働者の福祉に関する法律(育児介護休業法)」が施行されたことで、介護休暇・介護休業を制度として設ける企業が増えました。
厚生労働省の「令和4年度雇用均等基本調査」によると、従業員数100人以上の事業所では、介護休暇・介護休業共に制度を設けている企業の割合が90%を超えています。
このような状況にもかかわらず、日本ケアラー連盟の「ワーキングケアラーの就業継続の実態に関する調査報告書」によると、ビジネスケアラーの19.7%が「職場に介護のための支援制度は特になし」と回答しています。
利用できる制度があっても、従業員が制度の存在を知らなければ活用できません。制度の整備とともに制度の周知が必要です。
参考:
日本ケアラー連盟|ワーキングケアラーの就業継続の実態に関する調査報告書
厚生労働省|令和4年度雇用均等基本調査
実情に合わせた独自の介護支援制度を導入する
育児介護休業法の基準に合わせて介護休暇や介護休業を設けるだけでは、仕事と介護を両立しにくいケースもあるでしょう。このような場合には、自社の状況に合わせて独自の介護支援制度を設けるのが有効です。
ここでは例として、JTが導入した「リモートキャリア制度」について紹介します。介護や育児などを理由に本社の通勤圏外に住んでいても、定められた条件を満たせばリモートワークで本社勤務が可能となる制度です。
リモートキャリア制度を利用すれば、本社勤務の従業員が遠方にある実家での介護のために転居したとしても、本社勤務を継続できます。また地方在住で介護を理由に本社勤務が難しい従業員も、本社勤務のキャリアにチャレンジ可能です。
企業ごとに業務の性質に合う制度を設けることで、従業員がビジネスケアラーになっても働き続けやすくなることが期待できます。
参考:JT|働き方を進化させる「リモートキャリア制度」を新たに導入~多様な人財の更なる活躍推進~
関連記事:【社労士監修】リモートワークにおすすめの福利厚生|働き方に合わせた制度の整備を
状況に合わせた働き方ができる勤務制度づくり
介護離職を防ぐには、働き方を柔軟に変えられる勤務制度を整備するのも有効です。例えば自由な時間に勤務できるフレックスタイム制や、自宅で働けるリモートワークなどを導入するとよいでしょう。
フレックスタイム制を活用すれば、通院や通所などの用事を終わらせてから出社できますし、リモートワークを活用すれば自宅で介護をしているビジネスケアラーも仕事を続けやすくなります。
気兼ねなく制度を使える環境づくり
日本ケアラー連盟の「ワーキングケアラーの就業継続の実態に関する調査報告書」によると、ビジネスケアラーの31.1%が「休みの際に仕事を代われる人がおらず職場に迷惑がかかる」ことを不安に感じています。
このような気持ちから制度があっても活用できず、仕事と介護の両立が困難になるといった事態を避けるには、制度を活用しやすい環境づくりがポイントです。
ビジネスケアラーはもちろん、全ての従業員が日ごろから必要に応じて制度を活用できるよう、有給休暇の取得を促す声掛けや、上司が率先して休暇を取得するなどの働きかけを行いましょう。
改正された育児介護休業法への対応も必要
改正された育児介護休業法が2025年4月から施行されます。この改正により介護休暇がより取得しやすくなりました。加えて企業には、介護離職防止に向けた雇用環境整備の措置や、利用できる制度に関する個別の周知が義務化されます。
加えてビジネスケアラーがリモートワークで働けるよう、措置を講じることが努力義務となることも盛り込まれました。
施行のタイミングに合わせて、自社の制度を見直しアップデートしていきましょう。
関連記事:【社労士監修】育児介護休業法の改正をわかりやすく解説。2025年から何が変わる?
損失や人材不足の回避にビジネスケアラーの支援を
ビジネスケアラーを取り巻く課題には、仕事と介護の両立による物理的・精神的負担があげられます。この負担や、両立が困難なことによる介護離職によって、企業は経済的な損失を被るかもしれません。また介護離職による人材不足も課題の1つです。
このような課題への対策として、企業ではビジネスケアラーが仕事と介護を両立できるよう支援するとよいでしょう。支援のための制度を整えることに加えて、制度を周知し気兼ねなく活用できるよう環境づくりに取り組むことも重要です。
働きやすい環境づくりはビジネスケアラーを含む全ての従業員にとって欠かせません。対象となる従業員が公平に利用できる制度の導入には、エデンレッドジャパンの提供している食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」がおすすめです。
従業員の実質的な給与アップにもつながる福利厚生サービスの導入を検討してみませんか。
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