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【税理士監修】令和6年度税制改正大綱で、企業に関係のある変更をチェック

【税理士監修】令和6年度税制改正大綱で、企業に関係のある変更をチェック

2024.08.16

監修者:舘野義和(税理士・1級ファイナンシャルプランニング技能士 舘野義和税理士事務所)

令和6年度税制改正大綱が2023年12月22日に閣議決定され、その後成立しました。これにより税制はどのように変化するのでしょうか?税制の変化への対応を目指す企業に役立つよう、令和6年度税制改正大綱の概要を把握した上で、企業に関係のある変更を紹介します。

令和6年度税制改正はいつ成立?

2024年3月28日に令和6年度税制改正が成立しました。今回の税制改正大綱のポイントは、物価上昇を超える賃上げの実現です。そのために必要なさまざまな税制改正が盛り込まれています。

加えて生産性の向上や、グローバル化への対応、中小企業の活性化などを目指すことも、令和6年度税制改正のポイントです。

次の項目からは改正された部分を見ていきましょう。

賃上げ促進税制の強化

物価上昇を受けて、2024年の春闘では2023年に続き、賃上げを実施する企業が多くありました。中には平均約7%と大幅な賃上げを実施した企業もあります。

ただし物価上昇に賃上げが追いついておらず、実質賃金はマイナスの状態という調査結果もあるそうです。

ここで企業の賃上げを促し、デフレからの脱却を目指す目的で、令和6年度税制改正に盛り込まれたのが賃上げ促進税制の強化です。

定められている取り組みを要件を満たして実施すると、法人税額の控除を受けられる賃上げ促進税制は、控除の要件を見直し、もともと2年間だった措置の期間を3年間に延ばし、より賃上げが進みやすくなるよう改正されています。

具体的にどのように改正されたのかを見ていきましょう。

関連記事:2024年の賃上げを表明した企業一覧。第3の賃上げについても解説

大企業向け

賃上げを率先して行う大企業が、さらに賃上げを実施することで、全体の動きを促していくことが期待されます。そのような動きを引き出せるよう、大企業にはより高い賃上げ率の要件を設けました。

まずは改正前の要件をチェックしましょう。賃上げ率が3%なら15%、4%なら25%の控除率となっており、さらに教育訓練の要件を満たすと5%の控除率がプラスされます。最大で30%の控除を受けられる制度でした。

賃上げ要件

控除率

教育訓練費+20%

合計控除率

+3%

15%

5%

20%

+4%

25%

30%

改正後の要件は以下の通りです。

継続雇用者給与総額

基本控除率

教育訓練費+10%

女性活躍子育て支援

合計控除率

+3%

10%

+5%

+5%

20%

+4%

15%

25%

+5%

20%

30%

+7%

25%

35%

基本控除率に影響する賃上げ率が増えた他、教育訓練費の要件が緩和され、女性活躍子育て支援の要件が増えたことで、最大35%の控除を受けられる制度となりました。

参考:
財務省|「令和6年度税制改正」(令和6年3月発行)
国税庁|令和6年度法人税関係法令の改正の概要

関連記事:大企業向け賃上げ促進税制を分かりやすく解説!中小企業向けとの違いも

中堅企業向け

これまで大企業に分類されていた企業のうち、従業員数が2,000人以下の企業を中堅企業として対象とする枠が、令和6年度税制改正で新たに設けられています。改正前は大企業と同様の以下の控除率が適用されていました。

賃上げ要件

控除率

教育訓練費+20%

合計控除率

+3%

15%

5%

20%

+4%

25%

30%

改正後の控除率も見ていきましょう。

継続雇用者給与総額

基本控除率

教育訓練費+10%

女性活躍子育て支援

合計控除率

+3%

10%

+5%

+5%

20%

+4%

25%

35%

大企業と同じ+4%の賃上げ率でも、より高い控除率が適用されるよう調整されています。

参考:
財務省|「令和6年度税制改正」(令和6年3月発行)
国税庁|令和6年度法人税関係法令の改正の概要

中小企業向け

中小企業向けの控除率では、より多くの企業で賃上げを実施しやすくなることを目指し、赤字の企業が取り組みやすいよう5年間の繰越控除措置を設けました。これにより本年は赤字で控除を受けられない場合でも、向こう5年間の税額から控除できる可能性があります。

まずは改正前の控除率をチェックしましょう。

賃上げ要件

控除率

教育訓練費+10%

合計控除率

+1.5%

15%

10%

25%

+2.5%

30%

40%

改正後の控除率は、女性活躍子育て支援が加わったことで、最大控除額が大きくなっています。

継続雇用者給与総額

基本控除率

教育訓練費+10%

女性活躍子育て支援

合計控除率

+1.5%

15%

+10%

+5%

30%

+2.5%

30%

45%

参考:
財務省|「令和6年度税制改正」(令和6年3月発行)
国税庁|令和6年度法人税関係法令の改正の概要

関連記事:中小企業向け賃上げ促進税制とは?要件や大企業向けとの違いを解説!

戦略分野国内生産促進税制の創設

事業として採算性が低いけれど、戦略的に進めていかなければいけない事業があります。戦略分野国内生産促進税制では、戦略分野における生産や販売の量に応じて、以下のように減税を行う制度です。

物資

物資のスペック

単位あたり控除額

EV等・蓄電池

EV

二輪以外の乗用車・商用車

搭載の蓄電池は供給安定性等の要件を検討

40万円/1台

FCV

40万円/1台

軽EV・PHEV

20万円/1台

グリーンスチール

生産プロセスを高炉・転炉から電炉等へ転換し、生産時の二酸化炭素排出量を削減した高鉄製品

2万円/1トン

グリーンケミカル

原料を化石原料ナフサからバイオ原料や廃プラスチックなどのグリーン原料へ転換して生産される化学品

5万円/1トン

SAF

持続可能な航空機燃料

30円/1リットル

半導体

マイコン

28~45nm相当

1万6,000円/1枚

45~65nm相当

1万3,000円/1枚

65~90nm相当

1万1,000円/1枚

90nm以上

7,000円/1枚

パワー半導体を含むアナログ半導体

パワー(Si)

6,000円/1枚

パワー(SiC・GaN)

2万9,000円/1枚

イメージセンサー

1万8,000円/1枚

その他

4,000円/1枚

ただし前年より所得金額が増加しており、継続雇用者給与等支給額の増加率が前年の1%未満で、国内設備投資額が減価償却費の40%以下の場合には、控除は適用されません。

参考:
財務省|「令和6年度税制改正」(令和6年3月発行)
国税庁|令和6年度法人税関係法令の改正の概要

イノベーションボックス税制の創設

研究開発拠点としての優位性を確立する目的で設けられたのが、イノベーションボックス税制です。特許権やAI関連のプログラムの著作権から得る、譲渡所得やライセンス所得に対して、30%の所得控除を7年間実施します。

参考:
財務省|「令和6年度税制改正」(令和6年3月発行)
国税庁|令和6年度法人税関係法令の改正の概要

中小企業事業再編投資損失準備金制度の拡充

中小企業事業再編投資損失準備金制度とは、中小企業や中堅企業が経営力向上計画に基づき株式譲渡によるM&Aを行うときに、株式等の取得価額の70%以下の金額を中小企業事業再編投資損失準備金として積み立てると、損金算入できる制度のことです。

改正後は積立率が1回目70%・2回目90%・3回目以降100%と拡大し、据え置き期間も5年から10年に延長されます。その後の取り崩しは5年間かけて均等に行われる仕組みです。

この制度を活用することで、M&A実施後の資金繰りを行いやすくなります。大企業と比べて資金力の低い中小企業や中堅企業でも、リスクを抑えてM&Aに取り組みやすくするための制度です。

参考:
財務省|「令和6年度税制改正」(令和6年3月発行)
国税庁|令和6年度法人税関係法令の改正の概要

第三者保有の暗号資産の期末時価評価課税の見直し

暗号資産を保有していると、期末に時価評価を行わなければいけません。これにより算出された評価損益は課税対象です。この仕組みは、国内の暗号資産を用いた事業の発展を阻害するものとなっていました。

令和6年度税制改正により、この期末に行う時価評価で、以下の要件を満たす暗号資産は対象外とすることとなります。

  • 譲渡に一定の制限が設けられている暗号資産であること
  • 暗号資産交換業者へ上記の制限が設けられていることを通知していること

参考:
財務省|「令和6年度税制改正」(令和6年3月発行)
国税庁|令和6年度法人税関係法令の改正の概要

交際費から除外される飲食費の見直し

交際費は原則として損金となりません。ただし会議費相当の1人あたり5,000円以下の飲食費は、交際費から除外され損金として扱えます。

令和6年度税制改正により、1人あたり5,000円以下が1万円以下へと引き上げられることとなりました。

また1人あたり1万円を超える飲食費は、資本金が1億円超100億円以下の法人であれば、飲食費の50%までを損金にできます。

中小法人の場合には、飲食費と飲食費以外を含む交際費等を800万円まで損金にするか、飲食費の50%相当を損金にするか選択可能です。

参考:
財務省|「令和6年度税制改正」(令和6年3月発行)
国税庁|令和6年度法人税関係法令の改正の概要

特定税額控除規定の不適用措置の見直し

以下にあげる特定税額控除が適用されないケースについての見直しも行われました。

  • 研究開発税制
  • 地域経済牽引事業の促進区域内における投資促進税制
  • 5G導入促進税制
  • デジタルトランスフォーメーション投資促進税制
  • カーボンニュートラルに向けた投資促進税制

不適用措置の対象となるのは、資本金の額などが10億円以上かつ常時雇用している従業員が2,000人以上で、直前の事業年度の所得が0円を超える企業です。加えて当期の国内設備投資額が当期償却費総額の40%を超えていることも要件として定められました。

また特定税額控除の適用の可否を判断するには「(継続雇用者給与等支給額-継続雇用者比較給与等支給額)/継続雇用者比較給与等支給額」の回答が1%以下か以上かも基準となります。

参考:国税庁|令和6年度法人税関係法令の改正の概要

研究開発税制の見直し

令和6年度税制改正により、研究開発税制の税額控除割合が見直され、以下のようになりました。

事業年度開始の日

増減試験研究費割合

設立事業年度である場合もしくは比較試験研究費の額が0である場合

0以上である場合

0に満たない場合

2026年4月1日~2029年3月31日

11.5%-{(12%-増減試験研究費割合)×0.25}

8.5%-0に満たない部分の割合×8.5/30

8.5%

2029年4月1日~2031年3月31日

8.5%-0に満たない部分の割合×8.5/27.5

2031年4月1日~

8.5%-0に満たない部分の割合×8.5/25

また国外事業所で行う事業の費用は、試験研究費から除くこととなりました。

参考:国税庁|令和6年度法人税関係法令の改正の概要

適格現物出資の見直し

2024年10月1日以降に行われる現物出資から、工業所有権・技術に関する権利・特別な技術による生産方式・著作権といった無形資産等を外国法人へ移転する場合、適格現物出資の対象外となります。

また適格現物出資の対象となる現物出資にあたるかを判定するときの基準は、国内事業所を通じて行う事業に関するものか、国外事業所を通じて行う事業に関するものかです。

移転する資産が国外資産でも、国内の本店を通じて行う事業に関する資産であれば、国内資産にあたるため適格現物出資とはなりません。

参考:国税庁|令和6年度法人税関係法令の改正の概要

生産方式革新事業活動用資産等の特別償却制度の創設

農林水産大臣の認定を受けた認定生産方式革新事業者が、スマート農業法で定める生産方式革新事業活動用の資産等を取得・製作・建設し、実際に事業に用いると、特別償却の対象となります。

適用を受けるときには、生産方式革新事業活動用資産等の償却限度額の計算に関する明細書を添えて青色申告書による確定申告を行わなければいけません。

国際最低課税額に対する法人税等の見直し

国際的な法人税引き下げ競争を避ける目的で、2021年10月にOECD加盟国等で合意された、最低15%以上課税するグローバル・ミニマム課税に基づいて行われた見直しです。

特定の多国籍企業企業グループや導管会社・無国籍構成会社に、以下の特例や控除などが適用されます。

  • 個別計算所得等の金額や調整後対象租税額の計算の特例
  • 無国籍構成会社等に自国内最低課税額が課されているときに行われる自国内最低課税額の控除

また自国内最低課税額に課される税の適用免除基準が設けられました。要件を満たすと、グループ国際最低課税額を0にできるルールです。

加えて特定多国籍企業グループ等報告事項等の提供制度についても、提供する情報の種類に関する見直しが行われました。

中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の見直し

中小企業者等が30万円未満の減価償却資産を取得し事業に用いると、要件を満たすことで資産の取得価額を損金にできます。この損金算入の特例の対象となる企業から、電子申告義務化対象法人で常に雇用している従業員が300人を超える企業が対象外となりました。

その上で適用期限は2024年3月31日から2026年3月31日まで延長されています。

特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例の見直し

中小企業倒産防止共済法の共済契約(倒産防止共済、経営セーフティ共済)の掛金は、特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例の対象となり損金算入できます。ただし1度中小企業倒産防止共済法の共済契約を解除すると、その後再加入しても、解除から2年間は掛金を損金にできなくなりました。

実質的な手取り額アップに福利厚生を活用しよう

令和6年度の税制改正の目的の1つに、物価上昇を超える賃上げの実施があります。企業の賃上げにつながる税制が整備されたことで、今後の賃上げの促進が期待できるでしょう。

企業が活用できるのは、改正された税制だけではありません。福利厚生を活用することで、実質的な手取り額アップにつなげることも可能です。

例えば要件を満たすと従業員の税負担を増やさずに提供できる食事補助を導入すれば、食事代の一部を企業が負担する分、従業員が自由に使える給与が増えます。このときかかった費用は福利厚生費として計上するため、損金算入できるのもポイントです。

食事補助であれば、導入するだけで必要な要件を満たせる食の福利厚生サービス「チケットレストラン」を検討してみてはいかがでしょうか。利用率98%・継続率99%・従業員満足度93%の、従業員に喜ばれる福利厚生を導入できます。

関連記事:“福利厚生”で実質手取りアップと高いエンゲージメントの実現を「#第3の賃上げアクション」プロジェクト

令和6年度税制改正の内容を押さえて適切な対応を

令和6年度税制改正では、物価上昇を超える賃上げの実施を目指して、賃上げ促進税制の強化といった複数の税制が見直されました。新たに創設された税制もあります。内容を把握した上で、適切に対応しましょう。

加えて賃上げに取り組むには、従業員の実質的な手取り額アップにつながる、福利厚生の導入も検討してみませんか。例えばエデンレッドジャパンが提供している食の福利厚生サービス「チケットレストラン」なら、少ない手間で満足度の高い制度を導入できます。

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