「病院で勤務する医療従事者が喜ぶ福利厚生を充実させたい」と考えたときに、どのような福利厚生を導入するかを吟味することになるでしょう。本記事では、福利厚生の種類、病院で福利厚生を導入するメリット、病院らしい福利厚生やユニークな福利厚生などについて詳しく解説していきます。賃上げ代替として注目されている食の福利厚生も人気です。時代に合う病院の福利厚生を探している総務・人事担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
福利厚生には「法定福利厚生」「法定外福利厚生」の2種類がある
「福利厚生」とは従業員が得る給与以外の利益のことです。福利厚生には、法定福利厚生と法定外福利厚生の2つがあります。まず2つの福利厚生の違いについて、押さえておきましょう。
法定福利厚生
法定福利厚生とは、法律で定められたもので、労働者に対して最低限の福祉を提供するものです。健康保険法・社会保険法などで規定されているものを含み、企業は法定福利厚生を実施する義務があります。具体的な内容については、以下の表を参照してください。
種類 | 内容 | 関係する法律 | 負担割合 |
健康保険料 | 病気・怪我・出産・死亡での医療費や手当金の一部を負担する公的な医療保険料。 | 健康保険法 | 労使折半 |
介護保険料 | 介護が必要になったときに利用できる給付金制度。加入対象は、40歳〜64歳までの健康保険加入者。 | 健康保険法 | 労使折半 |
厚生年金保険料 | 企業に勤める従業員が加入する公的年金制度。加入対象者は70歳未満の従業員・公務員など。 | 厚生年金保険法 | 労使折半 |
雇用保険 | 従業員が失業したときに、失業手当などの給付・就職支援・教育訓練講座を利用できる制度。 | 労働保険の保険料の徴収等に関する法律 | 企業2/3
従業員1/3 |
労災保険 | 勤務中・通勤中・帰宅中に事故で怪我をした場合に受け取れる給付金制度。業務が原因と考えられる病気・障害・死亡も給付対象。 | 労働保険の保険料の徴収等に関する法律 | 企業全額負担 |
子ども・子育て拠出金 | 児童手当や子育て両立事業の支援を目的に、納付が義務づけられている税金の一種。 | 子ども・子育て支援法 | 企業全額負担 |
参照:日本の人事部ホームページ「福利厚生」
法定外福利厚生
法定外福利厚生とは、企業が独自に選び実施できる福利厚生です。法律で規定されていないため、自由度が高くユニークなものもあります。一方、1つも導入していないケースもあるかもしれません。従業員の生活の質を向上させられるものが多いため、働きやすい職場環境作りの一環として導入する企業も多いようです。具体的な内容については、後ほど詳しく解説します。
病院の法定外福利厚生
病院の法定外福利厚生について紹介します。住宅手当・慶弔関連のものなど企業でよくあるものから、医療費補助などの病院ならではのものまでありますので、順を追って見ていきましょう。
◆1.住宅手当・住宅補助制度
家賃補助や住宅ローンの一部を企業が負担したり、社宅や寮などの住宅を相場よりも安く住めるようにしたりするのが住宅手当・住宅補助制度です。引越し費用も含めて負担してくれる病院もあります。
◆2.家族手当・扶養手当
医師・看護師・薬剤師などの従業員が家族を扶養している場合に、給与とは別に支給される手当のことです。病院ごとに、家族の人数や家族構成に応じて支給される条件が定められています。
◆3.慶弔に関する制度
従業員が結婚・出産したときのお祝い金、死亡したときのお見舞い金を支給する制度です。近い制度として、長期勤務した従業員に対する表彰金制度や、災害や事故のときに従業員本人やその家族を支援するための災害関係制度もあります。
◆4.休暇に関する制度
休暇に関する制度とは、病院が独自に定める休暇を取得できる制度のことです。結婚休暇・夏季休暇・冬季休暇などが該当します。プライベートの時間を充実することで、心身の健康を保つ上でもプラスになる制度です。
◆5.通勤手当
通勤手当は、通勤でかかる費用を企業が負担するものです。電車・バスでは運賃、自家用車やバイクの場合は距離に対応したガソリン代が支給されます。上限金額があるなど、病院ごとに支給条件の違いもあるようです。
◆6.短時間勤務
家庭の都合などにより、所定労働時間よりも短く勤務できる制度です。従業員が育児・介護などと仕事を両立するためのサポートができます。
◆育児・介護支援制度
保育料の一部を負担したり、介護のための休暇を取得できるのが育児・介護支援制度です。病院では夜勤にも対応しなければなりません。大規模病院の場合、院内に保育所を併設していたり、病児保育(体調を崩した子どもを預ける)を実施したりすることで、育児中の従業員を支援しています。
◆7.医療費補助(病院ならではの福利厚生)
同じグループ内の医療機関を受診した場合などに、自己負担分の医療費を病院が補助してくれるのが医療費補助です。本人だけでなく、配偶者・子どもなども対象となる場合もあり、手厚い補助を受けられます。病院ならではの福利厚生です。
◆8.予防接種費用補助(病院ならではの福利厚生)
病院では、インフルエンザなどの予防接種を福利厚生として受けられる場合があります。予防接種により、従業員の体調管理に役立てられるためです。病院だからこそ提供できる福利厚生といえます。
◆9.メンタルサポート
従業員が日々の業務でメンタルに不調をきたすこともあるでしょう。そのような場合に、専門家に相談できる制度がメンタルサポートです。病院では、緊急性の高い業務が発生すると、長時間労働をせざるを得ません。肉体的にも精神的にも負担がかかるため、メンタルサポートで従業員のケアを行います。
◆10.健康増進制度
従業員の健康増進につながる制度を支援する福利厚生では、法令で定められている健康診断に加えて、人間ドックの補助などを実施します。人間ドックは数万円の費用がかかり、一泊二日の時間を要することもある点から敬遠されがちです。しかし、費用を病院が福利厚生として負担することで、人間ドックの受診を促せ、その結果病気の早期発見により従業員が長期的に働くことをサポートできます。病院によっては、勤務先の病院で受診できたり、家族にも適用される場合もあるようです。
◆11.資格支援制度
資格支援制度とは、病院が推進する資格を取得するための支援を行う制度のことです。たとえば、専門看護師や認定看護師の資格支援などで、奨学金を支給するといったものがあります。資格取得費用を一部負担することにより、スキルアップに励む従業員を増やす効果が期待できます。
◆12.研修制度
勤務年数などにより、勤務内容に対応する研修を受けられるのが研修制度です。病院の研修には、院内研修・看護協会による外部研修などがあります。研修を受けるにあたって、その日を出勤日とみなし欠勤扱いとしない措置があったり、研修の費用を負担してくれたりする制度があれば、積極的な研修への参加につなげられます。
◆13.教育支援制度
看護師の場合、レベルに合わせて必要な知識や技術を身に着けることで、段階的にスキルを向上できます。大規模病院の場合、クリニカルラダーという看護師として必要な知識と技術を身に着ける教育システムを導入し、看護師の教育支援を実施しています。
◆14.食事補助
勤務中の食事について、補助するのが食事補助です。規模の大きい病院では、手頃な価格で食事ができる院内食堂や職員食堂が用意されていることが多いでしょう。規模の小さな病院の場合、アプリで残高を確認でき、全国にあるコンビニなどの加盟店で使用できるICカード型の食事チケットなども導入されています。
◆15.勤労者財産形成促進制度(財形制度)
勤労者財産形成促進制度とは、給与からあらかじめ定めた金額を天引きすることで、計画的で確実な貯蓄を手伝う制度のことです。利子について、税制上の優遇措置が得られます。
参照:厚生労働省「勤労者財産形成促進制度(財形制度)」
◆16.テーマパークなどの特別利用券の配布
人気のテーマパーク・レジャー施設などの特別利用券を配布し、割引価格で利用できる制度もあります。旅行会社などと提携し、スポーツジムや映画館での割引が利用できる場合もあるようです。
◆17.保養施設の利用
従業員の研修や保養のための施設を提供する福利厚生もあります。病院が保有している場合や旅館やホテルの一部を病院が借り上げていることもあるでしょう。保養所は従業員の家族も利用できることが多いです。
◆18.イベント・院内旅行
福利厚生として病院が費用を一部、あるいは全額負担してくれる旅行やイベントを実施する場合もあります。目的は従業員同士の交流やリフレッシュなどです。病院の場合、夜勤で一度に全員が参加することが難しいため、数回に分けて実施することになります。
◆19.バースデー休暇
バースデー休暇とは、従業員自身の誕生日がある月などに休暇を取得できる制度のことです。年ごとに1回限りで有給休暇扱いとなるため、従業員の心身のリフレッシュを促せます。
参照:日本の人事部「福利厚生」
ドクタービジョン「病院・クリニックにはどんな福利厚生がある?」
RELO総務人事タイムズ「病院が用意すべき福利厚生16種類!看護師・医師に向けたポイントも解説」
病院で福利厚生を導入する7つのメリット
ここからは病院で福利厚生を導入するメリットを7つのポイントに絞って解説していきます。
メリット1.従業員の経済的な負担を軽減
福利厚生により、従業員の経済的な負担を軽減できます。たとえば、住宅関係の福利厚生である住宅補助やローンの補助を導入している場合、従業員の自宅にかかる固定費を減らすことが可能です。研修で遠方に赴く機会が多い医師や看護師の場合は、交通費や研修参加費用を企業が負担することで、経済的な負担を減らしつつ知識を習得できるように支援できます。
メリット2.働きやすい職場環境
働きやすい環境作りは、福利厚生の得意とするところです。従業員は、ライフサイクルの中でさまざまな事情を抱えます。保育所や託児所を併設すれば、子育て中の従業員の働きやすさが高まります。介護に専念しなくてはならない場合、時短勤務や介護休暇などの制度があると、長期にわたって働きやすいでしょう。
メリット3.健康管理・健康経営の促進
福利厚生により、健康管理や健康経営の促進も可能です。定期的な人間ドックなどにより、従業員が整った体調で勤務できるようになります。病院ならではの福利厚生として、予防接種など従業員に加えてその家族の健康をサポートできる福利厚生を導入している場合もあるようです。このような健康管理の促進に努めることは、健康経営を推進する企業として世間的な評価を得ることにもつながります。
メリット4.求人で訴求力
福利厚生には、求人における訴求力を高める効果も期待できます。ほかの病院では見られないユニークな福利厚生があると、求職者の目にとまりやすく、よい人材を確保できる可能性が高まります。
メリット5.従業員満足度の向上
医師・看護師・薬剤師などの従業員満足度を向上できることも福利厚生を導入するメリットです。従業員満足度の高さは、生産性向上につながる要素とされており、企業利益の拡大にもつながる可能性があります。
メリット6.企業イメージの向上
福利厚生により、企業に対してよいイメージを持つ従業員が増えると、笑顔で仕事に前向きな従業員を見た患者からの評価が高まります。企業イメージ向上にもよい効果が期待できるでしょう。
メリット7.節税効果
福利厚生のなかには、条件を満たすことで「福利厚生費」として経費に計上できるものがあります。法人税の算出の際に、課税所得を下げられるという節税効果が得られるのもメリットです。
病院で福利厚生を導入するデメリット
メリットもあれば、デメリットもあります。福利厚生の充実により、避けられないのが費用負担と業務負担が増えることです。実際に導入したいと考えても、費用や業務上の負担の大きさで諦めるケースもあるでしょう。また、従業員満足度を高めるための導入にもかかわらず、公平さを欠く福利厚生であれば、かえって従業員の不満を高める原因になってしまうかもしれません。
食の福利厚生「チケットレストラン」
従業員に喜ばれ、企業としても導入メリットの高い福利厚生として、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」が人気です。どのような魅力があるサービスなのか、詳しく紹介します。
「チケットレストラン」とは?
エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、企業が従業員の食事補助として半額を負担し、従業員負担を半分にできる食の福利厚生サービスです。従業員は、全国25万店舗以上の飲食店・コンビニなどで、支給された専用のICカードでの支払いによりサービスを利用できます。毎日全国の15万人が利用しており、従業員利用率98%・企業の継続率99%・導入実績2,000社以上のサービスです。
費用対効果の高い福利厚生として注目されている
「チケットレストラン」は、限られた予算や要因のなかでも、費用対効果の高い制度・サービスを提供できることを特徴としている食の福利厚生です。2020年ニッセイによる福利厚生アンケート調査報告書によると、企業が福利厚生全般に関して抱いている課題は次のような内容でした。
- 1位:限られた予算・要因の中で、費用対効果の高い制度構築・運用を求められている
- 2位:福利厚生の運用に課題がある(事務負担が大きい、従業員の認知が低い)
- 3位:従業員・職員の多様化に対応できていない(育児・介護・治療支援など)
- 4位:福利厚生の配分が、伝統的な家族類型(夫と専業主婦と子ども等)の従業員・職員に手厚くなっている(社宅・家族手当等)
「チケットレストラン」は、従業員1人に対して、毎月3,500円(税別)を上限として食事代を補助します。企業負担分は、福利厚生費として計上でき、従業員は所得税の課税対象外にすることが可能という、費用対効果の高さが魅力です。
従業員への支給分ICカードを配布した後は月1回のチャージのみで、運用の手間はかかりません。全国の加盟店(コンビニ・カフェ・ファミレス・Uber Eats等)で利用できるのもポイントです。内勤・外勤・リモートワークなど従業員の勤務環境を問わずサービスを利用でき、多様な働き方に寄り添います。全従業員が公平に利用できるのもメリットです。賃上げ代替としても活用できるなど、時代のニーズを満たすサービスとして注目されています。
参照:日本生命保険相互会社「ニッセイ『福利厚生アンケート』調査報告書」
出典:日本生命保険相互会社「ニッセイ『福利厚生アンケート』調査報告書」
福利厚生を充実させ働きやすい病院へ
魅力的な福利厚生は、従業員満足度を向上させ、労働生産性を高めることにつながります。企業への帰属意識を高めたり、社会的な評価を高めたり、求人での訴求力を高めるといった好循環を生みだすきっかけにもなるでしょう。
2024年は医師の働き方改革の新制度が施行される年であり、医師をはじめとする医療関係者は働き方を見直さなければなりません。ぜひ、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」のような従業員にも企業にもメリットがある福利厚生を役立ててください。現在新規導入キャンペーンも実施中です。