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エデンレッドブログ

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【社労士監修】働き方改革はいつから始まる?法案と企業規模で異なるスケジュール

2022.07.01

監修者:森田修(社労士事務所 森田・ミカタパートナーズ)

社会的にも定着してきた「働き方改革」という言葉。働き方改革関連法案は2018年6月に成立し、2019年4月から順次施行されています。
改正の適用時期は一斉ではなく、大企業と中小企業で異なっているもの、業種によって猶予が設けられているものなど様々です。
ここでは、具体的に何がいつから始まるもしくは変更になるのか、わかりやすく解説していきます。

働き方改革関連法はいつから?

2019年4月からすでに始まった働き方改革関連法。全てが2019年4月に変わったわけではなく、改正の適用時期には違いがあります。
大企業と中小企業で同時に適用されているものもあれば、異なるものもあります。
大企業中小企業にかかわらず、業種によって適用時期に猶予が設けられているものもあるのです。

ほとんどの改正は2022年4月までに適用開始されていますが、一部2023年、2024年に予定されているものも残っています。

8つの働き方改革関連法

働き方改革関連法とは、1つの新しい法律ができたのではなく、既存の複数の労働関連の法律に加えられた改正の総称です。
「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(平成30年法律第71号)(※1)を根拠としています。
主に改正が加えられた法律は以下の8つの法律です。

  1. 労働基準法
  2. 労働安全衛生法
  3. 労働時間等の設定の改善に関する特別措置法
  4. じん肺法
  5. 雇用対策法
  6. 労働契約法
  7. 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律
  8. 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

改正の大きなポイントは以下の3つです。

  • 年次有給休暇の時季指定
  • 時間外労働の上限規制
  • 同一労働同一賃金

上記の内容に関して条件が厳しく明確化され、罰則なども設けられる形に変わりました。

働き方改革関連法の施行時期

中小企業庁の働き方改革関連法等についての資料(※2)及び山梨労働局の資料(※3)をもとに、働き方改革関連法の施行に伴う改正の内容や適応時期などを簡単に表にまとめました。

働き方改革関連法内容一覧

中小企業・大企業の定義については以下の通りです。

中小企業とは

(1)資本金の額または出資金の総額が

  • 5,000万円以下の小売業及びサービス業
  • 1億円以下の卸売業
  • 3億円以下の上記以外の業種

(2)常時使用する労働者数が

  • 50人以下の小売業
  • 100人以下のサービス業及び卸売業
  • 300人以下の上記以外の業種

大企業とは

上記の中小企業に当てはまらない企業

2024年に施行される3つの時間外労働の上限規制

時間外労働の上限規制については、2019年4月から大企業が、2020年4月には中小企業が施行開始されています。しかし、医師・建設業・運送業(自動車運転の業務)・鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業・新技術・新商品等の研究開発業務については長期的な環境改善の見通しが必要となるため猶予が与えられました。

ここでは鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業と新技術・新商品等の研究開発業務以外の2024年4月までに改善に取り組まなければならない3つの業種について解説します。
それぞれの業種の現状と時間外労働の上限規制への対応を見ていきましょう。

医師の場合

医師の現状
医師は人々の健康を守るため、昼夜を問わず呼び出されることもあり、勤務時間が不規則です。
時間になったからといって患者を放りだして帰ることなどできません。医師自身の健康は二の次になりがちです。

2024年以降の扱い
暫定措置として水準別に時間外の上限を定め運用し、将来的に暫定特例水準を解消していくことをめざしています。(※4)

具体的には、以下3つの水準の上限時間です。

A水準:診療従事勤務医(すべての勤務医)
〈上限〉年960時間以下/月100時間未満(休日労働含む)
B水準:地域医療確保暫定特例水準(医療機関を指定)
〈上限〉年1,860時間以下/月100時間未満(休日労働含む)
C水準:集中的技能向上水準(医療機関を指定)
〈上限〉年1,860時間以下/月100時間未満(休日労働含む)

連続勤務時間制限28時間・勤務間インターバル9時間の確保・代償休息のセットがそれぞれA水準では努力義務、B・C水準では義務として定められます。

建設業の場合

建設業の現状
天候に左右される作業制限などにより工期が間に合わないなどということがないよう、長時間労働が常態化されています。
建設業における休日の状況アンケートでは約4割が4週4休以下で働いている状況です。
週休2日の割合は2割程度となっています。(※5)

2024年以降の扱い
一般企業と同様の上限規制が適用されます。

時間外労働と休⽇労働の合計は以下のとおり。

  • 月100時間未満
  • 2~6ヶ月平均すべて80時間以内

違反した場合は、6か⽉以下の懲役または30万円以下の罰⾦といった罰則が科せられます。
ただし、災害の復旧・復興の事業に関しては、上記の時間外労働と休日労働の合計の規制は適用されません。

運送業の場合

運送業の現状
厚生労働省が行った「令和2年賃金構造基本統計調査」より作成された資料によると、
トラック運転手の月の超過実労働時間は31~35時間と一般企業の時間外労働の上限360時間を超えています。(※6)

中小企業では、さらに月60時間超の時間外労働の割増賃金引上げが2023年4月より適応され、割増賃金の割合が25%以上から50%以上になります。
人件費の大幅な増加も検討していかなければなりません。

2024年以降の扱い
時間外労働時間の上限の延長は、特別条項を適用する従業員に対して健康及び福祉を確保するための措置について協定(36協定)で定めることにより年960時間までと規制されます。
ただし、以下の規制は自動車運転の業務従事者には適用されません。

  • 時間外労働と休⽇労働の合計が月100時間未満、2~6ヶ月平均すべて80時間以内
  • 時間外労働が⽉45時間を超えることができるのは年6か⽉まで

あくまで自動車運転の業務に従事している従業員のみで、事務員、運⾏管理者などはすでに通常の上限規制が適用されています。

公務員の働き方改革はいつから?

働き方改革は一般企業のみでなく公務員にも適用されます。公務員には人事院という機関が運用する人事院規則があり、働き方改革関連法案が提出されたことを受け2019年2月に改正され2019年4月に施行されています。

たとえば、職員の超過勤務ついては、人事院規則15-14(職員の勤務時間、休日及び休暇)(※7)において、月45時間、年360時間まで。
他律的な業務の比重の高い部署(多忙な部署)に勤務する職員については、月100時間未満、年720時間(2~6ヶ月の平均すべて80時間等の範囲内)までと改正しています。

ただし、大規模災害への対処等の重要な業務や緊急処理を要する業務については上限を超えて超過勤務を命じることが可能です。
災害等により超過勤務の上限を超えた場合は、要因の整理、分析及び検証を行う必要があります。

さいごに

「働き方改革」がいつから始まったもしくは始まるのか、業種や企業の規模による違いを含めて解説しました。

働き方改革関連法はすでに始まっている改正です。
罰則等も設けられ厳しく感じるかもしれませが、正しく運用していくことで職場環境が改善され、魅力的な職場となることで離職率の低下や生産性の向上につなげることができます。
働き方改革を推進し、働くひとりひとりが良い将来の展望を持てるようめざしていきましょう。

参考資料
(※1)
働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律/厚生労働省
(※2)
働き方改革関連法の概要と時間外労働の上限規制/中小企業庁・厚生労働省
(※3)
働き方改革推進関連法の概要と施行日一覧表/山梨労働局
(※4)
医師の働き方改革について/厚生労働省 医政局 医事課 医師等働き方改革推進室
(※5)
建設業の働き方改革の現状と課題/国土交通省
(※6)
自動車運転者の基礎統計/厚生労働省
(※7)
勤務時間・休暇制度/人事院