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エデンレッドブログ

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【社労士監修】無期転換ルールとは?企業に求められる対応と人材戦略

2024.07.10

監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)

無期転換ルールは、有期雇用労働者の雇用安定を目的とした制度ですが、多くの企業にとっては対応に苦慮する課題でもあります。本記事では、2024年4月の労働条件明示ルール改正も踏まえ、無期転換ルールの基本から実務対応・戦略的活用法まで詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。

無期転換ルールの基本と2024年改正のポイント

無期転換ルールは、2013年4月に施行された改正労働契約法により導入された制度です。有期労働契約が通算5年を超えて更新された場合、労働者の申込みにより無期労働契約に転換できる制度で、有期雇用労働者の雇用の安定と公正な処遇の実現を目的としています。

2024年4月からは、労働条件明示に関する新たなルールが追加されました。主な改正点は以下の通りです。

すべての労働者に対する追加明示事項

  • ・就業場所・業務の変更範囲

 

有期契約労働者に対する追加明示事項

  • ・更新上限の有無と内容
  • ・無期転換申込機会
  • ・無期転換後の労働条件
  • ・均衡を考慮した事項の説明

労働条件明示のルール

出典:厚生労働省|2024年4月から労働条件明示のルールが変わります

これらの改正により、労働者の権利保護と無期転換ルールの適切な運用が促進されることが期待されています。企業は、これらの新たな義務に確実に対応する必要があります。

無期転換ルールの適用対象と条件

無期転換ルールの対象となるのは、契約社員やパート・アルバイトなど、有期労働契約で働くすべての労働者です。有期労働契約労働者であり、以下の条件を満たしていれば、雇用形態や呼称は問わず無期転換ルールの適用対象となります。

  • 同一の使用者との間で、有期労働契約が通算5年を超えて更新されていること
  • 2013年4月1日以降に開始した有期労働契約であること
  • クーリング期間(契約期間のない期間)が一定期間を超えていないこと

特に、通算5年の計算方法には注意が必要です。契約と契約とのあいだに、無形約期間(クーリング期間)が一定以上ある場合、それ以前の契約期間は通算対象から除外されます。例えば、1年間の労働契約の場合、6カ月以上のクーリング期間があれば、それ以前の契約期間はリセットされます。

通算契約期間ごとのクーリング期間は以下の通りです。

無期転換ルール クーリング期間

出典:厚生労働省|無期転換ルールハンドブック

なお、同一の使用者との間で締結された有期労働契約であれば、職種や職務内容が変更されても通算契約期間にカウントされます。例えば、同じ企業内で営業職から事務職に異動した場合、契約期間は通算されます。

無期転換の申込みと成立のプロセス

無期転換の申込みは、通算5年を超える有期労働契約の契約期間中であれば、いつでも行うことができます。労働者から申込みについて、使用者は原則として拒否できません。

労働者からの申込みがあった場合、申込み時の有期労働契約の期間が満了する日の翌日から、自動的に無期労働契約が成立します。ただし、無期転換申込権が発生するタイミングは契約期間によって異なるため、企業側は適切な管理が必要です。

例えば、1年契約の場合、5回目の更新後(6年目)に無期転換申込権が発生します。一方、3年契約の場合には、1度の更新で通算5年以上の有期労働契約が事実上確定するため、1回目の更新後(4年目)に無期転換申込権が発生します。

無期転換ルール 申し込み権発生タイミング

出典:厚生労働省|有期契約労働者の無期転換サイト

このように、契約期間によって無期転換申込権の発生時期が異なることに注意が必要です。

企業が取るべき無期転換ルールへの対応策

無期転換ルールへの対応は、企業にとって重要な経営課題です。適切な対応を行うことで、人材の確保や育成・労使関係の安定化につながります。

一方で、準備不足は労務トラブルのリスクを高めるため、十分な対策が必要です。以下、具体的な課題と対応策を解説します。

無期転換ルールへの対応パターンと課題

企業が選択できる無期転換ルールへの対応パターンには「希望対象者全員の無期雇用化」「無期雇用を見送る選択」「正社員登用制度による選別」という、主に三つのアプローチがあります。それぞれに特徴と課題があるため、自社の状況に応じて最適な選択をすることが重要です。

希望対象者全員の無期雇用化

このアプローチでは、無期転換を希望する対象者全員を無期雇用に転換します。

メリット

  • 人材の長期的確保が容易になる
  • 従業員の雇用不安解消によるモチベーション向上が期待できる
  • 企業への帰属意識が高まり、離職率の低下につながる可能性がある

デメリット

  • 不適格な人材も無期雇用になる可能性がある
  • 人件費の増加が見込まれる
  • 雇用調整の柔軟性が低下する

このアプローチを選択する場合、適切な評価制度や教育訓練制度の導入が重要になります。また、無期雇用化に伴う人件費の増加に対応するため、生産性向上の取り組みも必要です。

無期雇用を実施しない選択

このアプローチでは、有期雇用労働者との契約を最大5年で満了することにより、無期転換申込権を発生させず、無期雇用への移行を防ぎます。

メリット

  • 人件費を抑制できる
  • 雇用の柔軟性を維持できる
  • 業務量の変動に応じた人員調整ができる

デメリット

  • 優秀な人材の流出リスクが高まる
  • 労働者の雇用不安によるモチベーション低下が懸念される
  • 法的リスクが生じる可能性がある

このアプローチは、いわゆる「雇い止め」にあたるため、労働契約法の無期転換ルールの趣旨に反する可能性があります。また「貢献しても無期転換できない」事実から、有期雇用労働者のモチベーションを削いだり、企業イメージが低下したりといったリスクもあります。

無期転換を希望する労働者の権利を不当に制限しないよう、慎重な運用が必要です。

正社員登用制度による選別

このアプローチでは、正社員登用制度を設け、希望者のうち、自社の定めた基準を満たした有期雇用労働者を正社員へ登用します。併せて、基準を満たさない有期雇用労働者は、原則通り無期雇用化します。

メリット

  • 必要な人材の適切な確保と処遇が可能になる
  • 有期契約労働者のキャリアアップ機会を提供できる
  • 企業にとって重要な人材を長期的に確保できる

デメリット:

  • 新制度構築の負担が生じる
  • 選別基準設定の難しさがある
  • 選別されなかった労働者のモチベーション低下が懸念される

このアプローチを選択する場合、公平で透明性の高い選別基準の設定が重要です。また、選別されなかった労働者に対するフォローアップも必要になります。

就業規則の見直しと整備

無期転換ルールに対応するためには、自社の就業規則の見直しと整備が不可欠です。主な注目ポイントは以下の通りです。

無期転換後の労働条件の明確化

  • ・賃金体系の設定
  • ・勤務時間・休日・休暇の取り扱い
  • ・異動・転勤の有無
  • ・昇進・昇格制度の適用

無期転換の申込み手続きの規定作成

  • ・申込み方法(書面・口頭など)
  • ・申込み期限
  • ・申込み窓口

無期転換後の評価・昇給制度の整備

  • ・評価基準の設定
  • ・昇給・昇格の仕組み
  • ・キャリアパスの明確化

定年制度の整備

  • ・無期転換社員への定年制の適用有無
  • ・定年年齢の設定
  • ・定年後の再雇用制度

特に、無期転換後の労働条件については慎重な検討が必要です。

無期転換後の労働条件は、原則として転換前の労働条件と同一です。就業規則等で別段の定めがある場合は条件を変更することもできますが、労働者にとって不合理な変更は、法的問題を引き起こすリスクがあるため注意しましょう。

参考:厚生労働省|無期転換ルールのよくある質問(Q&A)

無期転換後の処遇設計の考え方

無期転換後の処遇設計にあたっては、以下の点を考慮する必要があります。

職務内容や責任の程度に見合った処遇

  • ・業務の難易度や責任の重さに応じた給与設定
  • ・スキルや経験に応じた職能給の導入

キャリアアップの機会や教育訓練の提供

  • ・無期転換社員向けの研修プログラムの設計
  • ・資格取得支援制度の導入

賃金体系の設計

  • ・基本給の設定(職務給・職能給・年齢給など)
  • ・諸手当の設定(役職手当・特殊業務手当など)
  • ・昇給・賞与制度の設計

福利厚生制度の適用範囲

  • ・社会保険の適用
  • ・各種手当(住宅手当・家族手当など)の適用
  • ・福利厚生サービス(社員食堂・保養所など)の利用

評価制度や正社員登用制度の整備

  • ・無期転換社員向けの評価基準の設定
  • ・正社員への登用基準と手続きの明確化

これらの設計に当たっては、同一労働同一賃金の原則に留意し、不合理な待遇差が生じないよう注意が必要です。また、定期的に処遇の見直しを行い、労働者の意見も取り入れながら、より公正で納得性の高い制度づくりを目指すことが大切です。

参考:厚生労働省|同一労働同一賃金特集ページ

関連記事:【社労士監修】同一労働同一賃金とは?企業が知っておくべき基本と取り組み手順

無期雇用と正社員の違い|よくある誤解を解消

無期転換ルールに関して、よくある誤解のひとつに「無期雇用になれば正社員になれる」というものがあります。しかし、実際には無期雇用と正社員は異なる概念です。

この違いを正しく理解することは、企業の人事戦略を立てる上でも、労働者のキャリアプランを考える上でも非常に重要です。詳しく見ていきましょう。

無期雇用と正社員の主な違い

無期雇用と正社員には、さまざまな違いがあります。主な相違点を下記表にまとめました。

  無期雇用 正社員
雇用期間 期間の定めがない 期間の定めがなく、通常は定年までの雇用が前提
職務内容 契約時に定められた特定の業務に限定されることが多い 幅広い業務や責任を担うことが多い
労働条件 給与体系・昇給・昇格制度・福利厚生などが限定的な場合がある 年功的要素を含む給与体系や、充実した福利厚生が適用されることが多い
転勤・異動 転勤や異動が限定的、または無い場合が多い 転勤や異動がある場合が多い
労働時間 フルタイムとは限らず、短時間勤務の場合もある 通常はフルタイム勤務

これらの違いを理解した上で、企業は適切な人材活用戦略を立て、労働者は自身のキャリアプランを考える必要があります。

無期転換ルールに関するよくある質問

無期転換ルールについて、分かっているようで分からないと感じている担当者は少なくありません。ここでは、無期転換ルールにまつわるよくある質問と回答を紹介します。

無期転換の申込みは拒否できますか?

原則として、使用者は労働者からの無期転換の申込みを拒否できません。労働契約法第18条では「労働者が申込みをしたときは、使用者が申込みを承諾したものとみなす」と規定されています。

ただし、例外的に拒否が認められる可能性がある場合もあります。例えば、労働者の能力不足や勤務態度の問題が明らかで、無期雇用に適さないと客観的に判断される場合などです。しかし、このような場合でも、単に使用者の主観的な判断だけでは拒否の正当性は認められません。客観的かつ合理的な理由が必要です。

また、無期転換を避けるために意図的に雇止めを行うことは、労働契約法の趣旨に反するため、適切ではありません。むしろ、無期転換を前提とした人材育成や評価制度の整備など、積極的な対応を検討することが望ましいといえます。

参考:e-Gov法令検索|労働契約法 第18条

無期転換後の労働条件はどうなりますか?

無期転換後の労働条件は、原則として転換前の有期労働契約と同一です。ただし、就業規則などで別段の定めがある場合は、その定めに従うことになります。

例えば、就業規則に「無期転換後は○○の条件を適用する」といった規定がある場合、その内容が適用されます。ここで注意が必要なのは、別段の定めによって労働条件を不利益に変更する場合、その変更に合理性があり、労働者の同意を得ているかどうかが重要になるということです。不合理な労働条件の変更は、無効とされる可能性があります。

一方で、職務内容や責任が変わる場合には、それに見合った労働条件の変更が推奨されます。例えば、正社員と同様の業務を担当するようになる場合、給与や福利厚生を正社員に近づけるといった対応です。

また、2024年4月からは、無期転換後の労働条件を決定する際に、他の労働者との均衡を考慮した事項について説明するよう努めることが求められています。

このように、無期転換後の労働条件設定には慎重な検討が必要であり、労使双方の納得性を高めることが重要です。

無期転換の申込みはいつまでに行う必要がありますか?

無期転換の申込みには、特定の期限は設けられていません。労働契約法第18条に基づき、労働者は通算5年を超える有期労働契約の契約期間中であれば、いつでも無期転換の申込みを行うことができ、企業側には対応する義務があります。

ただし、実務上の観点からは、契約更新のタイミングで手続きを行うとスムーズです。また、無期転換後の労働条件について話し合う時間的余裕を考慮すると、契約期間満了の1〜2カ月前までに申込みを受け付けることが望ましいといえます。

労使双方が計画的に無期転換手続きを進められるよう、企業側としては、対象となる労働者に対して無期転換の権利を適切に周知し、申込みのプロセスを明確にしておくとよいでしょう。

なお、通算5年を超えた後に申込みをせずに有期労働契約を更新しても、労働者の無期転換の権利が失われることはありません。通算5年を超えて有期労働契約を更新している限り、労働者には好きなタイミングで無期転換の申込みを行う権利があります。

有期雇用から無期雇用へ|福利厚生を活用した人材戦略

労働法改正に伴う無期雇用への転換は、企業にとって単なる法的義務の履行以上の意味があります。これは、組織の人材マネジメントを根本から見直し、最適化する絶好のチャンスです。

人材マネジメントの中でも、特に注目・実践したいのが、福利厚生制度の抜本的な再構築です。住居サポート・健康増進プログラム・育児や介護支援・レジャー活動の促進などの充実した福利厚生は、従業員の企業に対する帰属意識の向上や、優秀な人材の獲得・定着に寄与します。結果として、企業の業績の向上も期待できるでしょう。

なお、近年多くの先進企業が、福利厚生の一環として「食事補助」に注目しています。日々の食事をサポートすることで、企業へのロイヤリティやエンゲージメントを効果的に高められるからです。

食事補助の福利厚生サービスの具体例として、全国25万店舗以上で使える エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」があります。人気のファミレスやカフェなどを社員食堂のように利用できる利便性が高く評価され、すでに2,000社を超える企業で採用されています。

新しい時代の人材戦略の要として、食事補助の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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