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東京商工リサーチの2024年度「賃上げに関するアンケート」調査を解説

東京商工リサーチの2024年度「賃上げに関するアンケート」調査を解説

2024.07.08

東京商工リサーチでは2016年度から「賃上げに関するアンケート」調査を実施しています。今回は2024年2月1~8日にインターネット上で行ったアンケートをもとに、有効回答である4,527社を集計した調査結果について見ていきましょう。

賃上げ予定の企業は過去最高

東京商工リサーチの行った「賃上げに関するアンケート」調査によると、2024年度に賃上げを「実施する」と回答したのは、調査開始から最高の85.6%でした。

ここでは賃上げ実施予定の企業の割合を、企業の規模別・産業別に紹介します。

参考:東京商工リサーチ|2024年度 「賃上げ実施予定率」、過去最高の 85.6% 賃上げ率の最多は 3%で「前年を上回る賃上げ」に届かず

【規模別】賃上げ予定企業の割合

同調査では資本金1億円以上の企業を大企業、1億円未満の企業を中小企業と定義しています。企業規模別に賃上げ予定企業の割合を見ると、大企業と中小企業では差がある結果でした。

企業規模

賃上げを実施する予定

賃上げを実施しない予定

大企業(資本金1億円以上)

93.17%

6.83%

中小企業(資本金1億円未満)

84.95%

15.05%

全企業

85.66%

14.34%

大企業と中小企業では賃上げを「実施する」と回答した割合に8.22ポイントの差が出ています。2023年度の調査ではこの差は5.7ポイントでした。

賃上げの実施を予定している企業の割合は調査開始以降最高となり、全体として賃上げの気運が高まっています。ただし資金の確保が難しい中小企業と大企業との差が広がっているのが現状です。

【産業別】賃上げ予定企業の割合

賃上げ予定企業の割合を産業別にもチェックしましょう。

産業

賃上げを実施する予定

賃上げを実施しない予定

農・林・漁・鉱業

84.00%

16.00%

建設業

87.84%

12.15%

製造業

88.60%

11.39%

卸売業

87.23%

12.76%

小売業

80.51%

19.48%

金融・保険業

85.18%

14.81%

不動産業

76.00%

24.00%

運輸業

87.97%

12.02%

情報通信業

77.44%

22.55%

サービス業他

81.08%

18.91%

全産業

85.65%

14.34%

10産業中8産業で「賃上げする」と回答した企業が80%を超えています。全体の85.65%より高いのは、建設業・製造業・卸売業・運輸業の4産業です。

また産業別に大企業と中小企業で比較すると、全企業で大企業の方が中小企業より「賃上げする」と回答する企業の割合が高い結果でした。特に差が大きいのは、不動産業・運輸業・建設業です。

賃上げ実施予定の企業の賃上げ率

賃上げを「実施する」と回答した企業の賃上げ率は、3%以上4%未満とするケースが最多です。月給25万円であれば、7,500~1万円の賃上げとなります。

企業規模や産業別の賃上げ率も、東京商工リサーチの行った「賃上げに関するアンケート」調査をもとに見ていきましょう。

参考:東京商工リサーチ|2024年度 「賃上げ実施予定率」、過去最高の 85.6% 賃上げ率の最多は 3%で「前年を上回る賃上げ」に届かず

【規模別】賃上げ予定企業の賃上げ率

予定している賃上げ率は、大企業も中小企業も似た傾向です。賃上げ率の中央値も、規模によらず3%となっています。賃上げ率の分布は以下の通りです。

賃上げ率

全企業

大企業

中小企業

1%未満

2.74%

2.29%

2.78%

1%以上2%未満

9.70%

12.21%

9.50%

2%以上3%未満

19.47%

16.03%

19.74%

3%以上4%未満

32.71%

29.00%

33.01%

4%以上5%未満

9.42%

15.26%

8.96%

5%以上6%未満

19.64%

21.37%

19.50%

6%以上7%未満

1.85%

2.29%

1.81%

7%以上8%未満

1.06%

0%

1.15%

8%以上9%未満

0.95%

0%

1.02%

9%以上10%未満

0.05%

0%

0.06%

10%以上20%未満

1.85%

0.76%

1.93%

20%以上30%未満

0.22%

0.76%

0.18%

30%以上40%未満

0.05%

0%

0.06%

40%以上50%未満

0%

0%

0%

50%以上

0.22%

0%

0.24%

【産業別】賃上げ予定企業の賃上げ率

産業別にも予定している賃上げ率をチェックしましょう。賃上げ率が5%未満・5%以上の企業の割合は以下の通りです。

産業

賃上げ率5%未満

賃上げ率5%以上

農・林・漁・鉱業

76.92%

23.07%

建設業

73.16%

26.83%

製造業

82.51%

17.48%

卸売業

66.42%

33.57%

小売業

79.36%

20.63%

金融・保険業

72.72%

27.27%

不動産業

68.42%

31.57%

運輸業

78.94%

21.05%

情報通信業

75.89%

24.10%

サービス業他

66.79%

33.20%

全産業

74.07%

25.92%

賃上げ率5%以上を予定している企業が30%を超えているのは、卸売業・不動産業・サービス業他の3産業のみです。賃上げ率は産業によって二極化しているといえます。

また賃上げ率の中央値を産業別に見ると、2024年度の調査結果は2023年度の調査結果を下回りました。

産業

2024年度賃上げ率の中央値

2023年度賃上げ率の中央値

農・林・漁・鉱業

3.00%

4.00%

建設業

3.00%

4.00%

製造業

3.00%

3.40%

卸売業

3.00%

3.80%

小売業

3.00%

3.50%

金融・保険業

2.00%

5.00%

不動産業

3.15%

4.00%

運輸業

3.00%

3.00%

情報通信業

3.00%

4.50%

サービス業他

3.00%

3.00%

全産業

3.00%

3.50%

賃上げの種類

賃上げの方法には種類があります。それぞれの特徴をチェックしましょう。

定期昇給

定期昇給とは企業が独自の基準で行う定期的な昇給のことです。勤続年数・年齢・業務内容などで定期昇給実施の有無や昇給額が決まります。

厚生労働省の「令和5年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」によると、定期昇給の制度がある企業は83.4%、うち定期昇給を実施した企業は79.5%です。定期昇給は賃上げの方法として、多くの企業で採用されていることが分かります。

ただし定期昇給の制度を定めているからといって、必ずしも賃上げする必要はありません。定期昇給は賃上げの機会を設ける制度のため、タイミングによっては実施しない企業もあります。

参考:厚生労働省|令和5年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況|定期昇給制度、ベースアップ等の実施状況

関連記事:【社労士監修】定期昇給とベースアップの違いとは?負担少の賃上げ法

ベースアップ

ベースアップとは基本給を底上げすることで、ベアともよばれます。勤続年数・年齢・業務内容などを考慮することなく、定められた割合や金額で一律に基本給が上がる賃上げの方法です。

基本給は1度上げると簡単には下げられません。時間外手当・ボーナス・退職金などの金額にも影響します。ベースアップを行うときには、毎月の人件費が上がることに加え、その他の支給額が上がることも考慮しなければいけません。

関連記事:【社労士監修】ベア(ベースアップ)とは?定期昇給との違いや実施状況を解説

賞与の増額や一時金の支給

賞与の金額を上げたり、インフレ手当といった名目で一時金を支給したりすることで、賃上げを実施するケースもあります。一時的な支給のため、企業の経営状況によってはその後の支給を取りやめるといったことも可能です。

企業にとって自由度の高い方法ですが、長期的な人材確保にはつながりにくい点はデメリットといえます。

関連記事:インフレ手当で注目されるチケットレストランの魅力とは?お得なキャンペーン情報も

新卒者の初任給の増額

ベースアップと関連して行われる賃上げに、新卒者の初任給の増額があります。若手人材の確保を目的として初任給を増やすときには、今いる従業員の給与と逆転しないよう、ベースアップによる調整が基本となるためです。

再雇用者の賃金の増額

定年退職を迎えたシニア人材を再雇用するときには、雇用形態をパートや契約社員とすることが一般的です。雇用形態が変わることで、これまでと同じ仕事をしていても給与が下がるケースが多く、モチベーションの低下につながっていました。

人手不足の解消を目的としたシニア人材の活用のために、再雇用者の賃金を増やす賃上げにも注目が集まっています。

関連記事:シニア再雇用の現状と課題。シニアの雇用を促す助成金についても解説

賃上げ実施予定の企業が採用する賃上げの方法

東京商工リサーチの行った「賃上げに関するアンケート」調査にて、賃上げを「実施する」と回答した企業では、どのような方法で賃上げを行う予定なのでしょうか?企業規模別に賃上げ方法の割合を見ていきましょう。

賃上げ方法

全企業

大企業

中小企業

定期昇給

81.52%

85.10%

81.15%

ベースアップ

62.50%

67.47%

61.98%

賞与(一時金)の増額

43.36%

38.60%

43.86%

新卒者の初任給の増額

26.24%

40.42%

24.76%

再雇用者の賃金の増額

12.05%

18.23%

11.41%

定期昇給やベースアップ・新卒者の初任給の増額といった中長期的な賃上げ方法は大企業が、賞与(一時金)の増額といった一時的な賃上げ方法は中小企業の方が、「実施する」と回答した企業の割合が高くなっています。

参考:東京商工リサーチ|2024年度 「賃上げ実施予定率」、過去最高の 85.6% 賃上げ率の最多は 3%で「前年を上回る賃上げ」に届かず

実施予定の定期昇給率

定期昇給を「実施する」と回答した企業で予定している、定期昇給率は以下の通りです。

定期昇給率

全企業

大企業

中小企業

1%未満

4.68%

5.64%

4.60%

1%以上2%未満

20.56%

23.38%

20.32%

2%以上3%未満

36.83%

42.74%

36.33%

3%以上4%未満

22.72%

21.77%

22.80%

4%以上5%未満

4.11%

2.41%

4.25%

5%以上6%未満

8.41%

3.22%

8.85%

6%以上7%未満

0.31%

0%

0.34%

7%以上8%未満

0.18%

0%

0.20%

8%以上9%未満

0.37%

0%

0.41%

9%以上10%未満

0.12%

0%

0.13%

10%以上20%未満

1.26%

0.80%

1.30%

20%以上

0.37%

0%

0.41%

最も多いのは大企業も中小企業も定期昇給率2%以上3%未満となっています。

参考:日経新聞|東京商工リサーチ、2024年度「賃上げに関するアンケート」調査の結果を発表|関連資料

実施予定のベースアップ率

ベースアップを「実施する」と回答した企業が予定している、ベースアップ率もチェックしましょう。

ベースアップ率

全企業

大企業

中小企業

1%未満

4.75%

2.27%

4.93%

1%以上2%未満

18.69%

15.90%

18.89%

2%以上3%未満

36.01%

44.31%

35.41%

3%以上4%未満

23.37%

22.72%

23.41%

4%以上5%未満

3.98%

5.68%

3.86%

5%以上6%未満

9.88%

4.54%

10.27%

6%以上7%未満

0.61%

1.13%

0.57%

7%以上8%未満

0.38%

0%

0.41%

8%以上9%未満

0.45%

0%

0.49%

9%以上10%未満

0%

0%

0%

10%以上20%未満

1.45%

2.27%

1.39%

20%以上

0.38%

1.13%

0.32%

2024年春闘に向けて日本労働組合総連合会が掲げた3%以上の賃上げを達成する見込みの企業は40.5%です。

産業別のベースアップ率もチェックしましょう。ベースアップ率3%未満・3%以上の企業の割合を紹介します。

産業

ベースアップ率3%未満

ベースアップ率3%以上

農・林・漁・鉱業

62.50%

37.50%

建設業

56.50%

43.50%

製造業

63.40%

36.59%

卸売業

54.24%

45.75%

小売業

47.05%

52.94%

金融・保険業

77.77%

22.22%

不動産業

42.85%

57.14%

運輸業

65.51%

34.48%

情報通信業

61.19%

38.80%

サービス業他

65.26%

34.73%

全産業

59.46%

40.53%

ベースアップ率が3%以上の企業の割合が高いのは、不動産業・小売業・卸売業・建設業です。

参考:日経新聞|東京商工リサーチ、2024年度「賃上げに関するアンケート」調査の結果を発表|関連資料

賃上げ予定の企業が考える賃上げのために必要なこと

予定通り賃上げを実施するには資金が必要です。企業は賃上げに充てる資金を確保するために、何が必要だと考えているのでしょうか。企業規模別にチェックしましょう。

賃上げのために必要なこと

全企業

大企業

中小企業

製品・サービス単価の値上げ

67.08%

67.11%

67.08%

製品・サービスの受注拡大

58.73%

60.36%

58.55%

設備投資による生産性向上

25.53%

33.78%

24.63%

従業員教育による生産性向上

51.62%

57.65%

50.96%

エネルギー価格の低減

21.86%

24.09%

21.62%

仕入・外注単価の低減

28.12%

29.50%

27.96%

補助・助成制度の拡充

18.99%

10.36%

19.93%

税制優遇の拡充

21.07%

15.09%

21.72%

従業員削減

4.66%

5.40%

4.57%

その他

2.62%

2.47%

2.64%

企業規模によらず、値上げや受注拡大により賃上げの資金を獲得したいと考えている企業が多い傾向にあります。一方、設備投資や従業員教育などの長期的な取り組みは、大企業ほど必要と判断する割合が高い傾向です。

参考:東京商工リサーチ|2024年度 「賃上げ実施予定率」、過去最高の 85.6% 賃上げ率の最多は 3%で「前年を上回る賃上げ」に届かず

賃上げの実施予定がない企業の理由

東京商工リサーチの行った「賃上げに関するアンケート」調査では、賃上げを「実施しない」と回答した企業に対して、回答の理由をたずねています。

これによると、賃上げにより上がったコストを価格転嫁できないことや、今後の受注に対する不安などが、賃上げを実施しない理由です。特に中小企業ではこの傾向が高くなっています。

従業員の求めに従うよう賃上げを実施しても、その分利益が上がらなければ、資金繰りの悪化につながりかねません。先行きの不安感から、賃上げを決断できない企業もあります。

参考:東京商工リサーチ|2024年度 「賃上げ実施予定率」、過去最高の 85.6% 賃上げ率の最多は 3%で「前年を上回る賃上げ」に届かず

少ないコストで実質的な手取り額を上げる方法

待遇改善には、一定の要件を満たすと従業員の税負担が増えない、食事補助や社宅といった福利厚生の活用がおすすめです。同額の賃上げを実施すると従業員の税額が増える可能性があり、手取り額で賃上げを実感しにくい可能性があります。

一方、一定の要件を満たすと非課税になる福利厚生であれば、税負担が増えない分手取り額アップを実感しやすいでしょう。

コストを抑えつつ、このような福利厚生を導入するには、エデンレッドジャパンが提供する食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」がおすすめです。

関連記事:“福利厚生”で実質手取りアップと高いエンゲージメントの実現を「#第3の賃上げアクション」プロジェクト

東京商工リサーチの調査から分かる賃上げの概要

2024年度の「賃上げに関するアンケート」調査では、賃上げを「実施する」と回答した企業が過去最高の85.6%でした。多くの企業が賃上げを行う予定としていますが、大企業と中小企業や、産業別に二極化が進んでいる部分もあります。

特に中小企業では賃上げの資金確保が難しい企業もあるでしょう。このような中でも従業員の待遇改善に取り組みたいと考えているなら「チケットレストラン」の利用を検討してみませんか。実質的な手取り額アップにつながる食事補助の福利厚生サービスです。

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