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【社労士監修】定期昇給とベースアップの違いとは?負担少の賃上げ法

【社労士監修】定期昇給とベースアップの違いとは?負担少の賃上げ法

2024.02.02

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監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)

定期昇給とベースアップの違いを知ることは、賃金コストを分析・最適化するための第一歩です。本記事では、定期昇給とベースアップの違いから、近年の賃上げ傾向・企業にとって負担の少ない賃上げの方法など、賃金コストに課題を抱える企業に役立つ情報をまとめて解説しています。

定期昇給やベースアップが難しい企業も取り組みやすい従業員への貢献として、人気の福利厚生:エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」についても紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

定期昇給とは

「定期昇給(定昇)」は、企業が独自に定めた基準に従って行われる定期的な昇給です。定期昇給における昇給額は、勤続年数・年齢・業務上の成果や評価をもとに決まるのが一般的です。

通常、定期昇給は年に1〜2回行われますが、必ず実施されるとは限りません。就業規則にて定期的な昇給を定めている場合を除き、定期昇給制度は、あくまでも昇給の機会があることを示すものであり、定期的な昇給を約束するものではないからです。

しばしば誤解されがちですが、企業に定期昇給を行う法的な義務はありません。定期昇給を行う場合の具体的なタイミングや内容は、企業の判断で独自に定められています。

なお、厚生労働省が発表している「令和5年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」によると、2023年度(令和5年度)において、一般職の定期昇給制度は「あり」が83.4%・「なし」が15.4%でした。また、「あり」と回答した企業のうち、実際に定期昇給を実施したか否かについて見てみると「行った・行う」が79.5%・ 「行わなかった・行わない」が3.7%・「延期した」が0.2%となっています。

日本企業において、定期昇給が一般的な制度となっていることがよく分かる結果といえそうです。

参考:厚生労働省|令和5年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況

ベースアップとは

「ベースアップ」は、全従業員を対象に一律で行われる基本給の底上げです。昇給額は企業の業績や社会情勢を踏まえて決定され、定期昇給のように個人の勤続年数・年齢・業務上の成果や評価は考慮されません。例年、春季闘争(春闘)において争点となっているのがこのベースアップ(ベア)です。

春闘とは、労働組合と経営者との賃上げや労働条件にまつわる交渉のことで、例年大企業を中心に2月〜3月にかけて行われます。春闘を通じて2%のベースアップが実現した場合、全従業員の基本給が一律で2%上がります。

定期昇給とベースアップの違い

定期昇給で昇給の根拠となるのは、勤続年数・年齢・業務上の成果や評価といった個人の貢献度です。一方、ベースアップの根拠となるのは、業績や社会情勢など、企業の業績や状況です。

つまり、定期昇給とベースアップとの大きな違いとは、個人に紐付いて行われる昇給なのか(定期昇給)、企業に紐付いて行われる昇給なのか(ベースアップ)という点になります。

日本企業における賃上げは「定期昇給」が主流

日本企業の賃上げは、定期昇給を利用して行われるのが主流です。その主な理由について、一般的な企業の賃上げにまつわる慣習と現状、日本ならではの背景とともに解説します。

ベースアップが企業に与える負担の大きさ

ベースアップと定期昇給は、ともに従業員の給料を増やす施策です。しかし、企業に与える負担の大きさという点において、両者のあいだには大きな違いがあります。

まず定期昇給の場合、勤続年数が要件に入ることが多いため、基本的に年功序列で昇給が行われます。若い世代を昇給させても、そのぶんベテラン世代が定年退職を迎えるため、企業としての賃金コストに大きな変化はありません。賃金コスト全体の水準は維持したまま、従業員一人ひとりのキャリアに応じた賃上げが可能です。

一方でベースアップの場合、全社員を対象とした一律の基本給の底上げとなるために、企業としての賃金コストが一気に増加します。ある程度の企業体力があり、なおかつ将来的に安定した経営の見通しが立って初めて実施に踏み切れるのがベースアップなのです。

労働契約法における「不利益変更禁止の原則」

日本企業において、賃上げが定期昇給を中心に行われてきた大きな理由のひとつが、労働契約法における「不利益変更禁止の原則」です。

労働契約法では、労働者にとって不利益となる就業規則の変更を、労働者との合意のないままに行うことを禁止しています。これを「不利益変更禁止の原則」といいます。この規則により、企業がいったん定期昇給やベースアップを行うと、もとの賃金に引き下げることは非常に困難です。

近年、物価高に対する実質賃金減少の補填として、従業員への金銭的なサポートを行う企業が増えていますが、その手段としてベースアップではなく賞与や一時金の支給を選ぶ企業が多いのも、ここに理由があります。

特に定期昇給を行っている企業では、さらなる負担となるベースアップには踏み切りにくいのが実情なのです。

参考:e-Gov法令検索|労働契約法 第9条

リスクを嫌う経営姿勢

いったん上げた賃金を下げるのが難しい日本企業は、将来の業績悪化や社会情勢の変化といったリスクに備えて賃上げを避ける傾向にありました。

どんなに業績が好調で、社会情勢が安定していたとしても「いざというときに備えて利益は内部留保に回し、人件費等には回さない」というのが、日本企業の基本的なスタンスだったのです。

厚生労働省が発表した「令和5年春季賃上げ集計」を見ても、賃上げの妥結額は、1994年(平成6年度)の9,118円以降2022年(令和4年度)まで、約30年にわたり1万円以下に留まっています。

また、賃上げ率も下がり続け、1995年の2.83%以降、2022年まで2%台から1%代を推移しています。これらの数字は、日本企業における賃上げのハードルの高さを如実に表したものといえるでしょう。

参考:厚生労働省|第2表 民間主要企業における春季賃上げ状況の推移

「定期昇給」や「ベースアップ」が話題となっている背景

2022年末、連合が5%の賃上げ要求方針を決定すると、各企業もそれにならいました。厚生労働省が公表した「令和5年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」によると、2023年(令和5年)中に1人平均賃金を引き上げた、もしくは引き上げる企業の割合は実に89.1%にのぼります。

従来、賃上げに慎重な姿勢を見せてきた日本企業が大きな方針転換をしつつある理由とはいったいどのようなものなのか、その背景について解説します。

参考:厚生労働省|令和5年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況

深刻化する人手不足

帝国データバンクは、近年の物価高にともなう政府の賃上げ要請を背景に、2023年度の賃金動向に関する企業の意識調査を行いました。この調査によると、資金を改善する理由として、もっとも多くの71.9%にあたる企業が「労働力の定着・確保」と回答しています。

帝国データバンク|賃金を改善する理由-1

出典:帝国データバンク|『2023年度の賃金動向に関する企業の意識調査』

少子高齢化が進み、生産年齢人口が年々減少していく中、人材の獲得・定着は多くの企業にとって喫緊の課題です。就職は売り手市場となり、求職者にとって魅力的な待遇を提示できない企業は、その多くが深刻な人手不足に陥るようになりました。

その点、高水準の賃金を提示することは、他社との差別化に大きな効果を発揮します。さらには、獲得した人材を長期的に定着させ、企業に対する従業員満足度を高める効果も期待できるでしょう。

自社の未来を担う、より多くのより優れた人材の獲得を目指す上で、一種の先行投資としての役割を担うのが賃上げといえます。

インフレ対策

近年、パンデミックの収束に向けた需要の拡大や、ロシアのウクライナ侵攻による原材料費の高騰により、世界規模でインフレが進みました。さらに、金利差による円安進行の影響も重なる日本では、物価の上昇が急速に進んでいます。

物価が上昇するということは、同じお金で購入できるモノやサービスの量が減るということです。物価が上昇する中で賃金が変わらない場合、実質的な賃金の減少につながります。

こうした事態を踏まえ、従業員の生活を守る手段として、インフレ手当の支給に踏み切る企業が続出しました。多くの企業は将来的な賃金コストのリスクを踏まえて一時金としての支給を選んでいますが、インフレの長期化を予想し、継続的な従業員へのサポートとしてベースアップを選ぶ企業も一部存在しています。

参考:株式会社 帝国データバンク[TDB]|インフレ手当に関する企業の実態アンケート|(2022年11月17日)

政府による賃上げ支援「賃上げ促進税制」

実質賃金の低下が続く国内の状況を踏まえ、政府も「賃金引き上げ特設ページ」を開設するなど、企業の賃上げを積極的に推進しています。

なかでも、2022年4月1日に施行された賃上げ促進政策「賃上げ促進税制」は、企業が賃上げに踏み切る大きな要因のひとつとなりました。

「賃上げ促進税制」では、企業規模によって異なる税制支援が用意されています。以下、大企業向け・中小企業向けそれぞれのおおまかな内容を紹介します。

まず、大企業向け賃上げ促進税制では、継続雇用者給与等支給額が前事業年度より3%以上増えている場合、控除対象雇用者給与等支給増加額の15%が、法人税額もしくは所得税額から控除されます。加えて、継続雇用者給与等支給額が、前事業年度より4%以上増えている場合、税額控除率が10%上乗せされます。さらに、教育訓練費の額が前事業年度より20%以上増えている場合、税額控除率が5%上乗せされる仕組みです。

中小企業向け賃上げ促進税制では、雇用者給与等支給額が前年度と比べて1.5%以上増加している場合、増加額の15%が法人税から控除されます。2.5%増加させた場合、さらに15%が上乗せで控除されます。さらに、教育訓練費を前年より10%以上増額した場合には、最大40%の控除を受けることが可能です。

大企業向け・中小企業向け、それぞれ2022年4月1日~2024年3月31日までの期間内に開始する事業年度が対象です。

参考:厚生労働省|賃金引き上げ特設ページ
参考:経済産業省|大企業向け「賃上げ促進税制」ご利用ガイドブック
参考:経済産業省|中小企業向け「賃上げ促進税制」ご利用ガイドブック
参考:経済産業省|賃上げ税制について(METI/経済産業省)
参考:経済産業省|令和6年度税制改正「賃上げ促進税制」パンフレット(2023年12月時点版)

【2024年】賃上げの見通しは?

高まる賃上げ機運を受け、2024年の賃上げはどのように進んでいくのでしょうか。2024年の賃上げ・賃上げ率の見通しについて、春闘にまつわる連合・経団連それぞれの動きから解説します。

2024年春闘に向けた連合の動き

2023年10月19日、連合は2024年春闘において「賃上げ分3%以上、定昇相当分(賃金カーブ維持相当分)を含め5%以上の賃上げを目安とする」方針をプレスリリースにて明らかにしました。

一方、前年となる2023年春闘での方針は「賃上げ分を3%程度、定昇相当分(賃金カーブ維持相当分)を含む賃上げを5%程度」でした。2023年から2024年にかけての変化に注目してみると、具体的な数字こそ変わらないものの、より強い表現が選ばれていることが分かります。賃上げを求める連合の強い意志の表れといえそうです。

2024年春闘に向けた経団連の動き

2023年10月、経団連(一般社団法人 日本経済団体連合会)の2024年春闘に向けた基本方針原案が明らかになりました。この方針原案では、各企業に対して賃上げの検討・実施を積極的に求めていく姿勢が明らかにされています。

また、内閣官房が公開している「政労使の意見交換(2023年年11月15日開催)」を見てみると、経団連十倉会長の言葉として以下のように記されています。

物価上昇が続く2024年以降も、「社会性の視座」に立って、賃金引上げのモメンタムを維持・強化し、「構造的な賃金引上げ」の実現に貢献していくことが経団連・企業の社会的責務と考えています。2024年の春季労使交渉に向けて、今年以上の意気込みと決意を持って対応してまいります。

出典:内閣官房ホームページ|政労使の意見交換

労使間の共通認識として「賃上げが喫緊の課題」ととらえられていることが分かります。

参考:内閣官房ホームページ|新しい資本主義実現本部/新しい資本主義実現会議

「定期昇給」や「ベースアップ」が難しければ福利厚生の選択も

定期昇給やベースアップのような基本給の底上げは、企業にとって直接的な賃金コストはもちろんのこと、健康保険料や厚生年金保険料の負担をも増やします。企業の経営状況によっては、賃上げの実施に前向きながら、資金の問題で実施に至らないケースもあるでしょう。

そんなときの選択肢として、近年注目度を高めているのが、福利厚生を利用した従業員の生活サポートです。

例えば、日本一の実績を持つ食の福利厚生:エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、従業員の食事代を企業が半額負担することで従業員の日々の生活をサポートできるサービスです。福利厚生費として損金計上できるサービスのため、コストも最小限に抑えられます。

定期昇給やベースアップと並ぶ施策として、ぜひ「チケットレストラン」を検討されてはいかがでしょうか。

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