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【社労士監修】年収の壁に悩まない経営|中小企業におすすめの対策を解説!

【社労士監修】年収の壁に悩まない経営|中小企業におすすめの対策を解説!

2024.04.23

監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)

「年収の壁」とは、税負担や社会保険料の支払いが発生することにより、手取り収入が減ってしまう年収の境界線のことです。この問題は、労働者の就業調整(働き控え)を招き、中小企業の人材不足にも拍車をかけています。

本記事では、年収の壁が引き起こす問題や、政府の支援策「年収の壁・支援強化パッケージ」の内容を分かりやすく解説します。キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」の活用法や、人手不足解消に効果的な福利厚生など、企業側が行う年収の壁への効果的な対策をまとめて紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

「年収の壁」の概要

一定の収入を超えることにより、税金や社会保険料の負担が増えて手取り収入がかえって減ってしまう境界線を、一般的に「年収の壁」といいます。年収の壁の存在により、企業側・従業員側双方にいくつかの深刻な課題が生じています。まずは、年収の壁の詳細や、年収の壁が引き起こす具体的な問題・政府の対策など、年収の壁の概要について分かりやすく整理していきましょう。

年収の壁とは

「年収の壁」には、税金の壁にあたる「100万円・103万円」・社会保険の壁にあたる「106万円・130万円」・配偶者控除の壁にあたる「150万円・201万円」の6種類があります。それぞれの壁に該当する年収を超えるたび、税金や社会保険料の負担が発生し、手取り額が減少します。

年収 住民税 所得税 社会保険料 配偶者
控除
配偶者
特別控除
100万円以下 かからない 対象
100万円 かかる かからない
103万円 かかる かからない 対象
106万円 かかる場合あり
130万円 かかる
150万円
201万円 対象外

手取り額を維持するため、就業調整(働き控え)を行うパートやアルバイトなどの非正規社員は少なくありません。一方、就業調整によって企業側は必要な労働力の確保が難しくなり、人手不足に悩まされています。年収の壁は、労使双方にとって深刻な問題となっているのです。

中小企業が年収の壁に対処する必然性

年収の壁は、パートタイムやアルバイトのような非正規社員の就業調整の原因となります。就業調整が行われると、企業は本来活用できるはずの労働力を生かせません。これは、昨今の人手不足に拍車をかけるだけでなく、企業の生産性を低下させる深刻な問題です。

さらに、就業調整は、従業員一人ひとりのキャリアにも悪影響を与えます。業務に携わる時間が短くなることでスキルを伸ばしにくくなり、ひいては各自の能力を最大限に発揮できなくなるからです。従業員が能力を発揮できなければ、企業としての生産性は停滞、もしくは低下してしまいます。

これらのポイントは、大企業に比べて従業員数が少なく、かつ企業体力の弱い中小企業にとってより大きなダメージを生じさせます。

つまり、年収の壁について対策をすることは、中小企業にとって直ちに取り組むべき喫緊の課題なのです。

政府の支援策「年収の壁・支援強化パッケージ」

年収の壁がもたらす課題の解決に向けて、政府はさまざまな支援策を打ち出しています。中でも注目されているのが、2023年10月から開始された「年収の壁・支援強化パッケージ」です。

「年収の壁・支援強化パッケージ」は、パートタイム労働者やアルバイトが年収の壁を意識せずに働ける環境の整備を目的とした施策です。

まず、一部の人に社会保険料が発生する106万円の壁への対策としては、保険料の負担増を補填する手当などを支給する企業に対し、労働者一人あたり最大50万円の助成金が支給されます(キャリアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」)。この制度は、小売大手の「イオン」が活用を発表したことでも話題となりました。

また、すべての人が社会保険の対象となる130万円の壁への対策としては、一時的な収入増で130万円を超えた場合でも、事業主の証明により、引き続き被扶養者のままでいられる仕組みが導入されています。ただし、恒常的に130万円を超える場合は、被扶養者から外れることになるため注意が必要です。

年収の壁

出典:厚生労働省|年収の壁・支援強化パッケージ

キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」とは

年収の壁対策の目玉ともいえるのが、年収の壁・強化パッケージの一環として新設された、キャリアアップ助成金の「社会保険適用時処遇改善コース」です。同コースを利用することで、従業員側・企業側双方の社会保険への加入に伴うデメリットを解消できます。以下、コースの詳細を解説します。

「社会保険適用時処遇改善コース」3つのメニュー

キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」は、新たに社会保険へ加入する従業員に対し、保険料の負担分を補填する手当などを支給する企業を対象に、対象従業員1人あたり最大50万円の助成金が支給される制度です。

「社会保険適用時処遇改善コース」には、企業の対応策によって選べる3つのメニューが用意されています。以下、各コースの詳しい内容を紹介します。

(1)手当等支給メニュー

「手当等支給メニュー」は、社会保険加入に伴う従業員の手取り減少分を、手当の支給で補填する事業主向けの助成メニューです。「手当等支給メニュー」で助成金の支給を受けるには、1〜2年目は賃金の15%以上・3年目は18%以上の増額が必要です。

年収106万円の従業員が社会保険に加入した場合、年収の約15%の金額が給与から控除されます。

(1)手当等支給メニュー

出典:厚生労働省|キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)

(2)労働時間延長メニュー

所定労働時間の延長によって従業員を社会保険へ加入させた事業主向けの助成メニューです。週の所定労働時間を4時間以上延長する・または1時間以上4時間未満の延長+基本給の増額という条件があります。

(2)労働時間延長メニュー

出典:厚生労働省|キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)

(3)併用メニュー

「手当等支給メニュー」と「労働時間延長メニュー」を組み合わせ、従業員の社会保険加入を推進した事業主向けの助成メニューです。

1年目に手当等の支給・2年目に労働時間の延長を行うことで、従業員1人あたり最大50万円の助成を受けられます。

(3)併用メニュー

出典:厚生労働省|キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)

「社会保険適用時処遇改善コース」のメリット

「社会保険適用時処遇改善コース」を活用することで、企業側は従業員の社会保険加入を進めつつ、人材の定着と確保を実現できます。大企業に比べ、活用できる資金が限られやすい中小企業にとって、特にうれしい施策です。

一方、従業員側は、年収の壁を意識せずに意欲的に働ける環境を得られます。社会保険に加入できることで、将来の年金額の増加や健康保険の給付なども期待できるでしょう。

キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」の活用は、企業と従業員がWin-Winの関係を築くための、有効な手段といえます。

「社会保険適用時処遇改善コース」の活用法

キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」の活用を検討するにあたっては、助成対象や申請の流れを正しく理解することが大切です。以下、助成対象の詳細や受給までの流れなど、スムーズな活用のためのポイントを解説します。

「社会保険適用時処遇改善コース」の対象となる労働者と事業主

キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」の対象となる労働者と事業主は、以下の通りです。

対象となる労働者

  • 2023年10月以降、新たに社会保険の被保険者の要件を満たした労働者
  • 社会保険加入日の6か月前の日以前から継続して雇用されている労働者
  • 社会保険加入日から過去2年以内に同事業所で社会保険に加入していない労働者

参考:厚生労働省|キャリアアップ助成金 社会保険適用時処遇改善コース パンフレット

対象となる事業主

  • 雇用保険適用事業所の事業主
  • 雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ管理者を置いている事業主
  • 雇用保険適用事業所ごとに、対象労働者に関するキャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の受給資格の認定を受けた事業主
  • 実施するコースの対象労働者の労働条件、勤務状況および賃金の支払い状況等を明らかにする書類を整備し、賃金の算出方法を明らかにすることができる事業主
  • キャリアアップ計画期間中にキャリアアップに取り組んだ事業主

出典:厚生労働省|「年収の壁・支援強化パッケージ」キャリアアップ助成金 社会保険適用時処遇改善コースのご案内~概要編~

「社会保険適用時処遇改善コース」助成金受給までの流れ

「社会保険適用時処遇改善コース」を利用して助成金を受け取るには、コースごとに定められた手順を踏まなければなりません。以下、一般的な受給までの流れを紹介します。

  1. キャリアアップ計画の提出
  2. 労働者の社会保険加入・収入増加ための取り組みを開始
  3. 支給申請書を提出(取り組み開始から6ヶ月経過後)
  4. 助成金の受給

社会保険適用時処遇改善コース 受給の流れ

出典:厚生労働省|キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)

助成金の受給 申請にあたっては、キャリアアップ計画書や支給申請書のほか、取り組み内容を証明する書類の提出が求められます。就業規則や賃金台帳なども、あらかじめ準備しておくとスムーズです。

申請における注意点

「社会保険適用時処遇改善コース」を活用するには、事前に押さえておきたいいくつかの注意点があります。順に確認していきましょう。

助成金の申請期限と
対象期間
助成金の申請には期限があり、助成の対象となる取り組み期間にも開始日と終了日が設定されています。スケジュールに十分な注意が必要です
50万円の助成額は
3年間の合計額
助成額の上限となる50万円は、3年間の合計金額です。月額や年額ではないため、各年の取り組み内容に応じた助成額の計算が必要です
助成金への過度な依存は禁物 助成金は従業員の処遇改善の一助になりますが、それだけですべての問題が解決するわけではありません。長期的な取り組みの一環として考えることが重要です
「社会保険適用促進手当(社保手当)」の扱いに注意 「社会保険適用促進手当」は、社会保険料の計算には含まれませんが、所得税や労働保険料の計算では、通常の手当と同じように扱われます。また、社会保険料の計算には含まれないことにより、傷病手当金や出産手当金、厚生年金の受給額に影響します。従業員に対して、社保手当のメリットとデメリットをしっかり説明しなければなりません
支給額は労働者負担分が目安 助成金の支給額は、労働者が負担する社会保険料の額が目安です。企業の負担分はカバーされないので、注意が必要です。また、助成金を受けるための事務作業により、必要な業務が増える可能性もあります
手当の支給方法に注意 助成金の受給対象となる従業員だけに「社会保険適用促進手当」を支給すると、ほかの従業員との間で不公平感が生まれるかもしれません。従業員間の納得感を得られるような配慮が必要です
助成金終了後の対策を
考えておく
社会保険適用促進手当に関する助成金には期限があり、いつまで続くかは不明です(2024年4月現在)。助成金が終了した後の処遇改善の方法について、早めに労使で話し合っておくことが大切です

中小企業の人手不足解消に効果的な「福利厚生」

企業、特に中小企業にとって、年収の壁にまつわる課題を解消することは重要なミッションです。キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」は、そのための有効な手段ですが、十分ではありません。

そこで、別の視点からの人手不足解消の手段として、近年注目を集めているのが「福利厚生」による対策です。詳しく見ていきましょう。

「第3の賃上げ」としての福利厚生

充実した福利厚生の提供は、企業の魅力を高め、優秀な人材の獲得に役立ちます。特に、食事補助のような日々の生活に直結する福利厚生は、人材に対するアピール度が高いため、新たな人材の獲得だけでなく従業員の離職防止にも寄与するでしょう。

また、福利厚生の充実は、企業の業績向上にもつながる可能性を秘めています。それというのも、充実した福利厚生の提供は「会社は従業員を大切にしている」との無言のメッセージとなり、従業員のエンゲージメントやパフォーマンスの向上につながる効果が期待できるからです。

さらに、福利厚生の導入は、従業員の手取り収入の増加にもつながります。福利厚生費は経費として課税対象外となるため、企業と従業員の双方が税負担の軽減が可能です。つまり、福利厚生として従業員をサポートすることにより、年収の壁に影響することなく実質的な手取りを増やせるのです。

賃上げ_5_04

出典:“福利厚生”で実質手取りアップと高いエンゲージメントの実現を「#第3の賃上げアクション」プロジェクト

この、実質手取りを増やせるメリットによって、福利厚生を通じた賃上げ(サービスの提供)は、定期昇給とベースアップに並ぶ「第3の賃上げ」ともいわれています。

食事補助の福利厚生「チケットレストラン」の概要

食事補助の福利厚生の分野で、高い注目を集めているのが、エデンレッドジャパンが提供する「チケットレストラン」です。

チケットレストラン」は、専用のICカードで支払いをすることにより、全国約25万店舗の加盟店で食事代の半額補助を受けられる福利厚生サービスです。

勤務時間内であれば、利用時間や場所の制約もないため、出張中の従業員やリモートワーク中の従業員も通常通り利用できます。加盟店のジャンルも幅広く、カフェやコンビニ・三大牛丼チェーンなどから好みで選べるため、利用する人の年代や性別・嗜好を選びません。

サービスの充実度から、すでに中小企業を中心に2,000社以上が利用し、利用率98%・継続率99%・満足度93%という高い支持を得ているサービスです。

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中小企業向けの取り組みで「年収の壁」を克服しよう

年収の壁は、労働者の就業調整を招き、中小企業の人材不足に拍車をかける深刻な問題です。この問題に対処すべく、政府は「年収の壁・支援強化パッケージ」を打ち出し、企業の取り組みを支援しています。

特に、「年収の壁・支援強化パッケージ」の一環であるキャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」は、年収の壁を意識せずに働ける環境づくりを後押しする有効な施策です。中小企業は、この助成金を活用しつつ「チケットレストラン」のような魅力的な福利厚生を導入することで、年収の壁に悩む従業員のモチベーション維持と、人材の定着・確保を実現できるでしょう。

年収の壁の克服は、個々の企業の発展のみならず、日本経済全体の課題でもあります。働きやすい環境の整備を通じて、多様な人材の活躍を支援することが、いま中小企業に求められています。

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