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【社労士監修】日本の中小企業が賃上げするには?3つ取り組みを紹介

【社労士監修】日本の中小企業が賃上げするには?3つ取り組みを紹介

2024.02.09

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監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)

春闘2024では、2023年に引き続き高い賃上げが実現すると見込まれています。しかし、実際に賃上げに前向きな意向を示しているのは大企業であり、人手不足が蔓延しているなどにより中小企業は対応が難しい状況です。本記事では、春闘2024の動きとそれを受け中小企業でどのように賃上げを実現するかを詳しく解説していきます。

日本の実質賃金の現状

賃上げするには_01出典:内閣府「一人当たり名目賃金・実質賃金の推移

内閣府によると、日本の一人当たりの実質賃金は過去30年間にわたって横ばいという厳しい状況です。実質賃金とは、労働者が実際に受け取った給与(名目賃金:貨幣額そのもの)から、消費者物価指数に基づく物価変動の影響を差し引いて算出した指数のことです。いくら給与が増えても実質賃金が増加しなければ、購入できる物やサービスは増えないことを意味します。

賃上げするには_02出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和4年分結果速報の解説

実質賃金については、上記の令和2年をベースにしたグラフや、以下の実質賃金の数値の表も参考にしてください。実質賃金は減少傾向、消費者物価指数は上昇傾向であることがわかります。

賃上げするには_03

出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和4年分結果速報の解説

春闘2024の動向|実質賃金を上げることを重視

ポイントになるのは、賃上げでは実質賃金が上がることを重視する点です。春闘2024では、以下の2つの要求が連合から発表されています。どちらも「X%以上」の賃上げを要求するもので、「以上」という語気に、ベースアップや定例昇給分に加えて実質賃金の賃上げに取り組む意志が込められていると解釈できます。

  • ベースアップ相当分として「3%以上」の賃上げ
  • 定期昇給分を含めて「5%以上」の賃上げ

ただし、春闘2024の要求を中小企業で実現することは困難だとされています。日本商工会議所の小林会頭は「連合の目標は理解できるとしながらも、中小企業にとっては達成が難しい」という認識を示しました。

出典・参照:内閣府「一人当たり名目賃金・実質賃金の推移

出典・参照:NHK NEWSWEBホームページ「来年の春闘 連合要求の5%超賃上げ“中小企業は困難”日商会頭

参考記事【春闘2024】要求内容を3つのポイントで解説!企業ができることは?

賃上げできない理由

賃上げする方法を考える上で、賃上げできない理由への理解は大切です。日本の中小企業が賃上げできない理由について、2つのポイントに絞って解説します。

△価格転嫁ができていない

賃上げするには_04

出典:東京商工リサーチ「~2023年度『賃上げに関するアンケート』調査(第2回)~

東京商工リサーチが2023年に実施した賃上げに関するアンケートによると、賃上げできない理由は以下のようになりました。

  • 1位:コスト増加分を価格転嫁できていない(434社)
  • 2位:原材料価格が高騰(403社)
  • 3位:電気代が高騰(347社)
  • 4位:受注の先行きに不安がある(343社)
  • 5位:燃料代が高騰(313社)

回答は大企業・中小企業の合計値ですが、このアンケートに回答しているのは中小企業が大多数です。中小企業では賃上げが難しい状況であり、その理由は「コスト増加分を価格転嫁できていない」ことだと理解できます。

△賃金水準が低い労働者の増加

賃上げするには_05

出典:厚生労働省「『非正規雇用』の現実」|総務省統計局「労働力調査(詳細集計)」をもとに厚生労働省が作成

賃上げを企業だけでなく、社会全体の問題として捉えた場合、賃金水準が低い労働者の増加は賃金が上がらない理由となります。厚生労働省によると、年間給与は正社員と非正規社員では大きく差があり、非正規雇用労働者の賃金は正規雇用労働者の6〜4割程です。2022年では36.9%が非正規労働者として働いています。

また、団塊の世代が退職後、シニア労働者として働いていることも賃金水準が低い労働者が増加した理由です。

出典・参照:日生基礎研究所ホームページ「なぜ日本の賃金は大きく上がらなかっただろうか-名目賃金の増加にもかかわらず、物価上昇により実質賃金は低下-

実質賃金の賃上げのための3つの取り組み

ここからは実質賃金を上げるための取り組み方法を解説していきます。ポイントとなるのが以下3つの取り組みです。

◯価格転嫁
◯労働生産性の向上
◯助成金の活用

1.価格転嫁

賃上げできない理由であったように、価格転嫁は賃上げに向けて不可欠です。適正な価格転嫁を実現するための取り組みを4つ紹介します。

◯毎年3月と9月の「価格交渉促進月間」を活用する

中小企業庁では、毎年3月と9月を中小企業が価格転嫁しやすい時期として「価格交渉促進月刊」に設定しています。3月と9月のタイミングを狙うことで、思い切った価格交渉が行いやすいでしょう。

参照:経済産業省中小企業庁ホームページ「価格交渉促進月間

◯競合他社の値上げのタイミングを狙う

価格転嫁の成功には、交渉するタイミングが重要です。発注側企業が価格改定を行う動きがある、競合他社が値上げする、といったタイミングであれば、交渉を進めやすいでしょう。

◯企業間のコミュニケーションによる相互理解を深める

企業間の円滑なコミュニケーションが交渉の前提となることも見逃してはいけません。事前に打診したり、キーマンを特定したりなどの戦略を立てつつ、企業間の相互理解を深めましょう。

◯新製品に付加価値をつける

既製品は廃盤とし、新製品に付加価値をつけることも、ある意味価格転嫁といえるでしょう。付加価値に対する理解を得られるかがポイントです。

2.労働生産性の向上

賃上げと切り離せないのが労働生産性です。労働生産性向上に役立つ取り組みを紹介します。

◯AIなどデジタル技術活用

AIは、少子高齢化による人手不足を補う・無駄なコストを削減する・品質を一定に保てる、など生産性を高めることに非常に長けています。各種デジタル技術を取り入れ、かつ、定期的にアップデートすることが大切です。

◯従業員の職務内容の転換(リスキリング)

人への投資であるリスキリング(学び直し)により労働力の転換を行うことも、労働生産性を上げるための大事な取り組みです。なお、スキルを習得した者は賃金を引き上げやすい点もメリットです。

3.助成金の活用と福利厚生の充実化

◯助成金の活用

政府は中小企業の賃上げに非常に前向きです。以下のような助成金や支援機関を有効に活用しましょう

・業務改善助成金
・働き方改革推進支援センター
・働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)

出典・参照:厚生労働省ホームページ「賃金 (賃金引上げ、労働生産性向上)

◯福利厚生の充実化

福利厚生を充実させることも、従業員の満足度アップに効果的です。福利厚生には法定福利厚生と法定外福利厚生があります。

  • 法定福利厚生:法律で規定されている福利厚生(健康保険料、介護保険料など)
  • 法定外福利厚生:企業が任意で設定できる福利厚生(食事手当など)

法定外福利厚生が未整備であることも多い中小企業では、法定外福利厚生を充実させることで、給与以外の方法で間接的に従業員の満足度を上げられます。とくに、ユニークな法定外福利厚生は従業員満足度向上・帰属意識の向上・労働生産性の向上など、多方面でよい効果が期待できます。

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  • 勤務地を問わない
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