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【社労士監修】労使協定とは?概要と実務手順をわかりやすく解説!締結までのシミュレーションも

【社労士監修】労使協定とは?概要と実務手順をわかりやすく解説!締結までのシミュレーションも

2025.01.04

監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)

「労使協定」は、法定労働条件の適用除外や変更を可能にする重要な制度です。36協定をはじめ、変形労働時間制・裁量労働制など、企業の柔軟な労務管理に欠かせない仕組みとなっています。本記事では、人事実務に必要な労使協定の種類と締結手順を、具体例を交えて解説します。実際の締結シミュレーションとして、福利厚生導入時に必要な取り組みもわかりやすく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

労使協定とは?基本的な考え方

「労使協定」は、使用者(企業)と従業員の過半数を代表する者とのあいだで締結する協定です。労働条件が労働基準法で定められた原則から外れる場合、労使間の合意のもと、法的にその運用を認めるために締結します。たとえば「1日8時間・週40時間を超える残業」や「休日労働」を行う際、現場の実態に応じた柔軟な運用を可能にする役割を果たします。

「従業員の過半数を代表する者」とは、以下に該当する者です。ただし、過半数代表者を選任する際には、使用者が指名することはできず、従業員による民主的な手続きが必要です。

  • 従業員の過半数で組織する労働組合
  • 従業員の過半数を代表する者(過半数代表者)

労使協定の中でも、特に重要なものが、時間外・休日労働に関する「36協定」です。一部例外を除き、36協定の締結なしに、企業は残業や休日労働を従業員へ命じることができません。

そのほかにも、賃金控除に関する協定や、変形労働時間制に関する協定などは、企業の労務管理において重要な役割を果たします。

使用者による一方的な決定ではなく、労使の合意に基づく点が、労使協定の大きな特徴です。

参考:厚生労働省|労使協定について
参考:e-Gov 法令検索|労働基準法|第24条|第32条|第36条

関連記事:【社労士監修】労使協定とは?基礎知識と福利厚生導入の事例をわかりやすく解説

労使協定と他の制度との違い

労使協定とよく似た企業の取り決めやルールに「就業規則」「労働協約」「労働契約」があります。労使協定への理解を深める一助として、それぞれの詳細を解説します。

「就業規則」

「就業規則」は、企業が労働時間や賃金・服務規律など、職場の基本的なルールを定めた規程です。常時10人以上の従業員がいる事業場では、作成と労働基準監督署への届出が義務付けられています。

労使協定と就業規則は、共に労働条件を定める職場の取り決めやルールですが、その性質は異なります。

主な違いは、作成者と効力です。就業規則は、使用者が単独で作成するものであり(ただし、従業員代表の意見聴取が必要です)、「勤務時間」「休日」「賃金」「懲戒処分」など職場全体のルールを統一的に定めます。一方、労使協定は、使用者と従業員代表の合意に基づいて締結され、労働基準法等の例外措置を認めるための特定事項に関する取り決めです。

また、就業規則は採用から退職までの統一的なルールとして継続的に機能しますが、労使協定は特定事項について必要に応じて締結されます。法的効力の順位は、労働基準法>労働協約>労使協定>就業規則>労働契約となります。

「労働協約」

「労働協約」は、労働組合と使用者が締結する労働条件に関する協定です。賃金や労働時間などの労働条件全般について定めることができ、法的拘束力を持つことが特徴です。労働協約には以下の二つの効力があります。

  • 規範的効力:労働協約の規定が個々の労働契約に自動的に反映される効力
  • 債務的効力:締結当事者が協約内容を誠実に履行する義務

労働協約は就業規則や個別の労働契約に優先して適用され、違反した場合には罰則の対象となる可能性があります。効力が及ぶ対象は、原則として組合員のみです。

ただし、従業員の3/4以上が同一の労働協約の適用を受ける場合には、残りの従業員にもその効力が及びます。これを一般的拘束力と呼び、労働組合員以外にも協約が適用される例外的な仕組みです。

労働協約の有効期間は最長3年とされていますが、当事者間の合意によって更新することが可能です。

参考:厚生労働省|労働協約について
参考:厚生労働省|労働協約の拡張適用について

「労働契約」

「労働契約」は、個々の労働者と使用者の間で結ばれる契約で、具体的な労働条件を個別に定めるものです。賃金・労働時間・休日など、労働基準法や労働契約法に基づく明確な合意が必要です。

労働契約の内容は、労働基準法・就業規則・労働協約の基準を下回ることはできません。また、就業規則が合理的に変更された場合には、その内容が労働契約に反映される場合があります。これには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 就業規則の変更が合理的であること
  • 労働者にその変更内容が周知されていること

労使協定や労働協約が集団的な取り決めであるのに対し、労働契約は、個別の労働者との関係を定める点で異なります。

労働基準法に基づく労使協定

労使協定の多くが、労働基準法に基づいて定められています。これにより、労使の合意のもと、法定基準とは異なる取り決めやルールを定めることが可能です。ここでは、労働基準法に基づく労使協定の内、特に実務で重要な15種類の労使協定を紹介します。

  • 時間外・休日労働(36協定)
  • 1ヶ月単位の変形労働時間制
  • 1週間単位の非定型的変形労働時間制
  • 1年単位の変形労働時間制
  • フレックスタイム制
  • 事業場外のみなし労働時間制
  • 専門業務型裁量労働制
  • 休憩の一斉付与の例外
  • 賃金からの控除
  • 任意貯蓄金の管理
  • 年次有給休暇の計画的付与
  • 年次有給休暇の時間単位付与
  • 年次有給休暇の標準報酬日額での支払い
  • 代替休暇
  • デジタルマネーによる賃金支払い

労働基準法以外に基づく労使協定

育児・介護休業法をはじめとする労働関係法令でも、労使協定の締結が認められています。特に育児・介護に関する制度の適用除外など、職場の実情に応じた柔軟な運用を可能にする仕組みが用意されています。

  • 育児休業の適用除外に関する協定
  • 介護休業の適用除外に関する協定
  • 子の看護休暇の適用除外に関する協定
  • 介護休暇の適用除外に関する協定
  • 産後パパ育休の申出期限に関する協定
  • 産後パパ育休中の就業を可能にする協定

参考:厚生労働省|令和3(2021)年法改正のポイント|育児休業特設サイト

労使協定導入のメリット・デメリット

労使協定は、企業と労働者の間で労働条件を調整する重要な手段ですが、その導入にはメリット・デメリットが共に存在します。ここでは、労使協定導入の主なメリットとデメリットについて詳しく解説します。

メリット

労使協定を導入することで、企業と従業員の双方に下記のようなメリットがあります。

  1. 柔軟な労務管理が可能になる
    労使協定を締結することで、労働基準法の例外措置を適用でき、企業の業務に合わせた柔軟な労務管理が可能になります。たとえば、36協定を締結すれば、繁忙期の残業や休日出勤を法的に実施できます。

  2. 労働者の多様な働き方に対応できる
    フレックスタイム制や短時間勤務制度などの協定を導入することで、労働者のライフスタイルやニーズに応じた働き方を実現できます。

  3. 労働トラブルの防止
    労働条件を明確に取り決めることで、従業員との認識のズレを減らし、労働トラブルを未然に防ぐことができます。

  4. 従業員満足度の向上
    労使協定を通じて働きやすい環境を整備することで、従業員のエンゲージメントや職場定着率の向上が期待できます。


デメリット

労使協定の締結には多くのメリットがありますが、一方で、いくつかの課題も存在します。以下、主なデメリットを紹介します。

  1. 締結までに手間がかかる
    労働者代表の選出や協議、書類作成、届出などの手続きが必要で、締結には時間と労力がかかります。特に、人的リソースに限りがある中小企業では、人員不足が課題となる場合があります。

  2. 法的な制約を受ける
    労使協定が労働基準法や関連法令に適合していない場合、無効と判断されるリスクがあります。また、協定内容が複雑な場合、専門家の助言を仰ぐ必要があります。

  3. 一部従業員からの反発の可能性
    協定内容によっては、一部の労働者の不満を招く可能性があります。たとえば、適用除外に関する協定などは慎重な対応が求められます。

  4. 更新や見直しの負担
    有効期間が定められている協定は、定期的に更新が必要です。また、法改正や労働条件の変化に応じて協定内容を見直す必要があるため、運用には継続的な労力が求められます。

労使協定締結の手順と実務ポイント

労使協定の締結には、法令に基づいた適切な手順と実務上の注意点があります。以下、5つのステップに分けて具体的な手順を解説します。

参考:厚生労働省|労使協定について

STEP1:労働者代表の選出

労使協定の締結にあたり、まず行わなければならないのが、労働者の過半数で組織する労働組合、もしくは労働者の過半数代表者との交渉です。労働組合がない企業では、労働者の過半数代表者を選出しなければなりません。

労働者代表の選出は、労使協定の有効性を左右する重要な手続きです。選出要件として、管理監督者以外の労働者から民主的な方法(投票・挙手など)で選ぶ必要があります。

選出時には「労使協定締結のための代表者選出」である旨を明確に周知し、選出日時・参加者数・選出方法・結果を記録として保管します。

不適切な選出事例として挙げられるのが、使用者による一方的な指名や、親睦会代表の自動選出などです。これらは労働基準監督署の調査で無効と判断される可能性があります。

参考:e-Gov 法令検索|労働基準法施行規則|第6条の2

STEP2:協定内容の協議と作成

協定内容の作成では、まず該当する労働基準法の条文を確認し、必要記載事項(対象業務・延長時間・期間など)を明確にします。

労使の協議では、労働者の意見を十分に聴取し、合理的な内容となるよう調整します。特に、労働時間や賃金に関わる事項は慎重な協議が必要です。

協定案には法定の記載事項を漏れなく記載し、表現は明確かつ具体的にします。記載内容に不備がある場合、のちの届出が受理されない可能性があります。

STEP3:協定の締結

協定の締結にあたり、署名・捺印は労使双方の代表者が行い、原本を保管します。記名押印の場合は、代表者の役職名も明記し、有効期間は協定の種類に応じて適切に設定します。36協定の場合、有効期間は原則1年間で、期間満了前に更新が必要です。

締結した協定の内容は、全従業員が確認できるように周知します。周知方法としては、以下のいずれかを選択します。

  • 事業場の見やすい場所への掲示
  • 書面の交付
  • 電子メールの送信やイントラネットへの掲載(各作業場で内容確認が可能な場合)

周知が不十分な場合、協定が無効となる可能性があるため注意が必要です。

STEP4:届出手続き(必要な場合)

届出が必要な労使協定は、実際の運用を始める前に労働基準監督署へ提出します。届出が必要な労使協定のうち、36協定は届出が効力発生要件となります。

協定期間内であっても、届出前の期間については無効となってしまうため、注意しなければなりません。

必要書類として、所定の届出書と協定書の写しを準備します。この際、記載内容に不備がないよう十分確認しましょう。

提出は窓口持参または電子申請で行います。電子申請の場合は事前にIDとパスワード等の取得が必要です。

STEP5:運用と見直し

協定の締結後は、定期的に協定内容の遵守状況を確認し、必要に応じて労働時間の実態把握や従業員の意見聴取を行います。

有効期間が定められている労使協定(36協定・変形労働時間制・裁量労働制など)は、期限切れによって法的効力を失うため、期限内の更新手続きが不可欠です。

法令遵守の観点から、労働基準監督署の調査に備え、協定書や選出記録等の関係書類を適切に保管しなければなりません。また、従業員からの質問や苦情には誠実に対応し、必要に応じて協定内容の見直しを検討します。

【シミュレーション】実際に労使協定を締結するには?

実際に労使協定の締結を行うのはどのようなケースなのでしょうか。ここでは、食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」を導入するケースを一例として、必要な取り組みについて解説します。

労使協定を締結する

1: 労働者代表の選出
労使協定を締結するために、労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)を選出します。この際、民主的な手続き(挙手や投票)を経て選出することが重要です。

2: 協定内容の協議
チケットレストラン」の利用条件や支給額・対象者を具体的に協議します。たとえば、以下のような条件を定めます。

●支給額:月額3,500円
●対象者:直接雇用契約のあるすべての従業員
●利用範囲:加盟店

3: 協定書の作成と締結
労使間で合意した内容を文書化し、双方が署名・押印します。原本は企業で保管し、必要に応じて従業員に内容を周知します。

就業規則を変更する

1: 就業規則の改定案作成
食事補助の導入に伴い、就業規則の福利厚生の項目に新しい内容を追加します。たとえば、以下のような文言を記載します。

「従業員に対し、福利厚生として月額3,500円相当の食事補助を支給する。ただし、支給方法はチケットレストラン(食事券)の利用による。」

2: 労働者代表への意見聴取
変更内容について労働者代表から意見を聴取し、その意見を記録として残します(意見に法的拘束力はありません)。

3: 労働基準監督署への届出
就業規則の改定案を作成し、労働基準監督署に提出します。この際、提出書類として以下を準備します。

●就業規則の変更後の全文
●労働者代表の意見書
●就業規則変更届
●新旧対照表

4: 従業員への周知
変更した就業規則を、全従業員が確認できるように周知します。具体的には、イントラネットへの掲載や紙面での配布が一般的です。

労使協定と就業規則変更のポイント

チケットレストラン」のような福利厚生を導入する際には、労使協定の締結や就業規則の変更が不可欠です。それぞれの手続きにおいて注意すべきポイントは以下の通りです。

労使協定の締結時
●労働者代表の選出は民主的な方法で行い、不備がないよう記録を残す。
●協定内容は具体的かつ現実的な条件に基づき、労働者にとって不利益にならないよう配慮する。

就業規則変更時
●労働者代表の意見を聴取する際、内容を十分説明し合意を得る努力をする。
●労働基準監督署への届出後は、迅速に従業員へ周知する。

これらの手続きをスムーズに進めることで、企業と従業員の双方が納得する福利厚生の導入が実現できます。特に初めて導入する場合は、専門家の助言を受けることも有効です。

日本最大級の食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」

エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、専用のICカードで決済する、食事補助の福利厚生サービスです。

「チケットレストラン」は利用する従業員が、一定の条件下において加盟店で食事をすると、食事代が半額になります。また、勤務時間内であれば、時間も場所も問いません。そのため、ランチだけでなく、おやつや休憩時の軽食などの購入にも利用できます。リモートワークや出張中でも問題ありません。

こうした利便性の高さが広く評価され「チケットレストラン」は、導入企業数3,000社以上・利用率98%・継続率99%・満足度93%を誇る、日本最大級の食事補助の福利厚生サービスとなっています。

法令遵守と効率的な労務管理のために

労使協定は、法定労働条件の例外を認める重要な制度です。36協定をはじめとする各種協定は、企業の柔軟な労務管理を可能にする一方で、適切な締結・運用が求められます。

労働者代表の選出から協定の締結・届出・運用まで、法令に則った手続きを確実に行うとともに、定期的な見直しと更新を怠らないようにしましょう。

経営環境の変化に応じて、労使双方にとって効果的な制度となるよう、適切な運用を心がけることが重要です。

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