監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)
従業員の早期離職を防ぐには、適切な離職防止ツールの導入が効果的です。本記事では離職防止ツールが必要とされる理由や導入メリット、デメリット、選ぶポイントをそれぞれ詳しく解説します。おすすめの離職防止ツールも紹介しますので、離職防止の策を検討する際の参考にしてください。
離職防止ツールとは?
従業員の早期離職は、企業にとって大きな課題です。優秀な人材を失うだけでなく、新規採用や研修にもコストがかかるため、従業員定着率の向上は重要な経営課題となります。
このような背景から、離職防止ツールが注目を集めています。離職防止ツールは、従業員の満足度やモチベーションを可視化し、分析することで退職の兆候を早期に発見するものです。さらに、退職理由の分析を行うことで、効果的な対策を立てられるものもあります。
従来の人事システムにも一部この機能はありましたが、離職防止に特化したツールが登場したことで、より細かなニーズに応えられるようになりました。企業内でさまざまな取り組みを行ってきたものの、なかなか離職の状況が改善されないのであれば、こうした専門ツールを活用することで、新たな改善の可能性が広がるでしょう。
離職防止ツールが注目される理由|日本は離職率の高さが課題
離職防止ツールが必要とされる背景にあるのは、離職率が高いという日本の状況です。
厚生労働省が公開している「新規学卒者(いわゆる新卒の者)の離職状況」では、「学歴別就職後3年以内離職率の推移」において、2020年(令和2年)3月に大学を卒業した新規学卒者の3年以内(2023年6月時点)の離職率は32.3%でした。
出典:厚生労働省|学歴別就職後3年以内離職率の推移
統計によると、一般的にバブルが崩壊したと言われている1990年代初頭(業種により平成3年〜平成5年とされる)以降に、数十年にわたり30%をほぼ超え続けて推移していることもわかります。つまり、新卒で入社した従業員の約3分の1は3年以内に離職しているのです。
常勤労働者全体についても確認しましょう。厚生労働省「-令和4年雇用動向調査結果の概況-」によると、令和4年度の離職率は15.2%で、平成20年以降において、13.9%〜17.3%の間で推移しています。新卒よりも数値上は低いものの、例年常勤従業員の10人に1、2人が離職しているということであり、企業として離職率が課題となっているのもよくわかります。
出典:厚生労働省|-令和4年雇用動向調査結果の概況-
離職防止ツール導入5つのメリット
離職防止ツールを導入するにあたって、得られるメリットを確認しておきましょう。
1.エンゲージメントの可視化
従業員の満足度や企業への関心度をデータで可視化できます。定期的なアンケートやフィードバックの収集により、エンゲージメントの変化を継続的に把握することが可能です。このデータを活用することで、不満が多いなどの離職リスクの高い従業員を早期に発見し、適切な対策を講じるタイミングがわかります。
2.仕事へのモチベーション向上
離職防止ツールにより、従業員一人ひとりが企業に寄せる期待やキャリアプラン、関心事項などを把握できれば、個々のニーズに合わせたサポートができます。たとえば、報酬制度の見直し、研修機会の提供、人事ローテーションの実施などで、従業員のモチベーションを高い状態に保ちやすくなるでしょう。
3.コミュニケーション活性化
上司と部下はもちろんのこと、人事部門と現場との円滑なコミュニケーションを促進できます。匿名で意見を述べられる機能や、気軽に質問できる場を設けることで、風通しの良い企業風土を醸成することにもつながるでしょう。活発なコミュニケーションは、従業員のストレス軽減にも効果的です。
4.従業員の内面・コンディションの把握
ストレスレベルや私生活での変化、メンタルヘルスの状態などを定期的に確認できます。従業員一人ひとりの心身の不調の早期発見は、適切なケアの提供に不可欠です。このように従業員の内面の変化を把握し、サポートすることで、離職を未然に防げます。
5.離職データの蓄積と分析
離職防止ツールにより従業員データを詳細に分析することで、離職しやすい人材の属性や勤務環境の課題を特定できます。得たデータを活かせば、採用プロセスの改善や、働き方の見直しなど、効果的な定着率向上策を実行できるようになります。
離職防止ツール導入2つのデメリット
離職防止ツール導入を検討する際は、以下のような点にも留意が必要です。
1.コストがかかる
離職防止ツールの導入には、一定の初期導入コストがかかります。ツール自体の購入費用に加え、運用体制の構築やデータ入力、従業員への周知教育などの費用がかさむことが想定されます。中小企業にとっては大きな負担になるかもしれません。継続的にツールを運用するランニングコストも考えた上で選択するようにしましょう。
2.効果が見えにくい
離職防止の効果はすぐには現れにくく、ツールの導入効果を実感するまでにある程度時間がかかるものです。従業員のエンゲージメントを高め、離職を防ぐためには、ツールの分析結果を具体的な施策に落とし込み、着実に実行していく必要があります。
大事なのは、継続的な取り組みです。すぐに効果が現れないと焦らずに、嬉しい変化は後からついてくることを念頭に置くことが大切です。
離職防止ツールを選ぶ4つのポイント
離職防止ツールを導入する際は、適切なツールを選ぶことが重要です。選定のポイントとして以下の4点を押さえましょう。
ポイント1.主な機能・サービス
離職防止ツールにはさまざまな機能やサービスがありますが、大きく分けると以下のようになります。自社のニーズに合った機能を持つツールを選ぶことが大切です。
主な機能・サービス | 内容 |
コンディションの見える化、分析に特化 | アンケート調査やパルスサーベイ(心身のコンディション把握が可能なもの)から離職者の属性や離職タイミングを可視化できる。 |
従業員間のコミュニケーション支援 | 気軽な意見交換の場を提供し、風通しを良くするもの。従業員同士で感謝の気持ちを伝え合うツールなどが該当する。 |
仕事に対するモチベーションアップ | 希望やスキル、強みなどの個人データから、適切なキャリアパスを提案したり、データに基づき1on1の機会を設けたりするもの。悩みのサポートやキャリアアップを後押しできる。 |
フォロー代行・研修、カウンセリング | 企業外の専門家によるメンタルケアや研修を実施する支援サービスを提供するもの。 |
ポイント2.料金体系
必要な機能により、ツールごとに料金体系が異なります。初期費用、月額料金、追加オプションの有無など、総合的にコストを検討する必要があります。
ポイント3.使いやすさ
導入した際の操作性や管理のしやすさも重要です。アンケート内容や画面などがわかりやすく、カスタマイズ性も高いものが望ましいでしょう。また、稼働環境に制約がないものが便利です。
ポイント4.従業員数との適合性があるか
大企業向けや中小企業向けのツールがあり、自社の規模に合わせて選ぶ必要があります。導入コストや運用コストなどとともに、適切なものを選択しましょう。
離職防止ツールおすすめ8選
離職防止ツールには多様な種類があり、企業の規模やニーズに合わせて適切なものを選ぶ必要があります。ここでは、おすすめの離職防止ツール8選を紹介します。なお、本記事で紹介する離職防止ツールの情報は、2024年5月時点のものです。
1.株式会社ラフール「ラフールサーベイ」
「ラフールサーベイ」は、組織と働く個人の可視化、行動変容を促すことでウェルビーイング経営を実現していく組織改革サーベイです。企業の「強み」と「課題」が可視化できます。設問は計算され尽くしたものばかりで、組織のパフォーマンス向上につなげる要素を的確に認識できます。
従業員はマイページ上で自身の状態を客観的に見つめることが可能です。自分自身と向きあう機会を増やすことでセルフマネジメント促進にもなるなど、離職防止に活用できる機能が多数搭載されています。
- Webサイト:ラフールサーベイ
- 無料トライアル:オンラインZoomにて実施
2.株式会社リクルート「Geppo(ゲッポウ)」
「Geppo(ゲッポウ)」は、人材事業の優れたノウハウを有するサイバーエージェントとリクルートが提供するHRサーベイです。働き方改善を個人・組織の両サイドからサポートしてくれます。
低負荷、高頻度の定点モニタリングは、小さな人事課題を察知するのに役立ち、離職につながるようなストレスも見逃しません。オンボーディングやテレワーク普及下での従業員コンディションの把握にも効果的です。離職防止を含め、人事業務全般のサポートツールとして活用できます。
- Webサイト:Geppo
- 無料トライアル:無料デモを依頼
3.株式会社ミツカリ「ミツカリ」
「ミツカリ」は、10分でできる適性検査により、離職などの人事課題の解決へ導くサービスです。求職者の人物像を明らかにし、組織との相性を可視化することで、入社後のミスマッチを減らすアプローチが可能になります。採用時の離職防止ならライトプラン、入社後のマネジメントや組織改善ならスタンダードプランなど、企業の課題に合わせてプランを選べます。業務上、コミュニケーションを重視したり、これまでコミュニケーションエラーが原因で離職が発生していたりする企業に効果的なサービスです。
- Webサイト:ミツカリ
- 無料トライアル:あり
4.ミイダス株式会社「ミイダス」
「ミイダス」は、入職前の段階から従業員とのミスマッチを防ぐことで、入社後の早期離職リスクを大幅に低減する優れた離職防止ツールです。
独自の「可能性診断」では、市場価値診断やコンピテンシー診断、バイアス診断ゲームを通じて、求職者一人ひとりの適性を多角的に分析します。これにより、求職者は自分に合ったキャリア選択ができ、ミスマッチによる離職を未然に防ぐことが可能です。さらに、診断結果に基づき、企業から求職者個人へのスカウトもできます。
スマホアプリを使ったスムーズな求職者対応など、効率的な採用プロセスを実現できるツールです。最短1時間〜という短期の業務委託も対応でき、企業の人材採用の負担軽減にもなるでしょう。
- Webサイト:ミイダス
- 無料トライアル:無料で求職者検索、無料で活躍診断の受験が可能
5.株式会社HRBrain「EX Intelligence」
「EX Intelligence」が提供する組織診断サーベイは、離職防止を含め、組織課題を素早く、的確に見つけ出し実行するのに役立つ離職防止ツールです。従業員一人ひとりの満足度や関与度を、パルスサーベイによりリアルタイムに把握できるのが特徴です。不満や離職リスクの高い従業員を早期発見できるため、適切な対処を迅速に実施できます。
組織全体の状態を定量化もできるため、従業員のエンゲージメントや生産性に関する課題も見つけ出せます。この分析結果を活用し、具体的な改善策を実行すれば、従業員のやる気とロイヤリティを高められるでしょう。
さらに、非財務指標(※)を可視化できるため、人的資本の適切な評価とマネジメントにつなげやすく、優秀な人材の確保と定着を後押しできます。クラウド上でのサーベイ実施が可能なので、負荷が少なく運用可能です。
(※)企業の財務的な側面以外の業績や価値を数値化して示す指標のことで、企業の持続可能性、社会的責任、従業員の福利厚生など。
- Webサイト:EX Intelligence
- 無料トライアル:7日間のお試し
6.株式会社リーディングマーク「ミキワメ ウェルビーイングサーベイ」
「ミキワメ ウェルビーイングサーベイ」は、従業員一人ひとりの心理状態や性格特性を多角的に把握し、タイムリーな対話とケアを実現することで、離職や休職を確実に防止するツールです。
最大の特長は、実名制のサーベイにより個々の従業員の状態を可視化できることです。不調サインを示す従業員を早期に発見できれば、適切な対応を講じられます。加えて、従業員の性格特性を考慮に入れられるのもポイントで、より的確な支援方法を導き出せます。
高精度の検査はたった3分で実施可能です。月次など高い頻度でのサーベイ実施がしやすく、離職や休職の予防に効果的です。
- Webサイト:ミキワメ ウェルビーイングサーベイ
- 無料トライアル:あり
7.株式会社Leafea「福利アプリ」
従業員の離職防止に役立つ福利厚生を実現するのが「福利アプリ」です。全国70,000店舗以上において、サービスや施設を割引価格で利用できます。たとえば、コンビニ、カフェ、フィットネスジム、映画館、ホテルなど、従業員の日常生活に密着したさまざまなサービスが割引対象です。
生活費の一部を実質的に補助できるため、従業員が経済的な心配なく生活できる環境を整備でき、離職を防ぐ一助となります。育児や介護と仕事の両立支援にもつながり、さまざまな就労ニーズにも対応できます。
アプリは、使いやすいデザインで操作性も抜群です。スタイリッシュな画面体験と、負担の少ない導入で、従業員満足度を高め離職防止効果も期待できます。
- Webサイト:福利アプリ
- 無料トライアル:なし
8.株式会社エデンレッドジャパン「チケットレストラン」
福利厚生は人材採用で大きな強みとなるため、間接的に離職を予防できるサービスも離職防止ツールとして紹介します。
エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、職場におけるエンゲージメントと定着率を高めるのに役立つ食の福利サービスです。全国25万店舗以上の加盟店で利用でき、専用のICカードでの支払いを通じて従業員の食事代を企業が半額補助します。加盟店は、コンビニやカフェチェーン、ファミレス、3大牛丼チェーンなどバラエティ豊かで、 Uber Eats での利用も可能です。勤務環境を問わないサービスは、全国どこでも手軽に利用可能です。いつもの買い物や外食と同様の手順で支払えるため、シンプルなのも魅力でしょう。
導入企業の従業員の98%が実際に利用しており、利用継続率は99%、従業員満足度は93%と極めて高い評価を得ています。食事の経済的負担が軽減されることで、従業員は生活面での心配が少なくなり、モチベーションの向上にもつながります。規模を問わず事業所に導入が可能な点もメリットです。少人数の小規模事業所から大企業まで、幅広い業種・規模の企業でその効果が期待できます。
- Webサイト:チケットレストラン
- 無料トライアル:なし
適切な離職防止ツール導入で離職率を改善しよう
従業員の離職率改善のために、離職防止ツールを活用する企業が増えています。本記事を参考に、適切な離職防止ツールを導入することが大切です。
従業員の離職率改善のために、とくに「チケットレストラン」は注目すべき食の福利厚生サービスです。導入企業の98%の従業員が利用し、モチベーション向上と離職防止に確かな効果があります。規模を問わず幅広い企業に導入可能であるのも魅力です。紹介したほかのサービスと比較しつつ、「チケットレストラン」の導入を検討してみませんか?