監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)
離職率とは、ある期間に離職した従業員数の割合のことです。離職率を知ると何が分かるのでしょうか?離職率の計算方法や、算出した数値の見方などをチェックしましょう。企業の離職率低下に向けてできる取り組みも紹介します。
離職率とは
離職率とは任意で定めた期間にどれだけの従業員が離職したかを示す数値のことです。数値が高いほど従業員数に対して離職した割合が高いことを示します。
離職率の計算の仕方を解説した上で、厚生労働省の資料から分かる業界別離職率と新規学卒者の離職率を見ていきましょう。
離職率の計算式
離職率の計算式は「離職者数÷あるタイミングで働いている従業員数×100」です。この計算式を使い、以下のケースの離職率を計算してみましょう。
- 2023年4月1日時点の従業員数:200人
- 2023年4月1日から2024年3月31日までに離職した従業員数:10人
- 離職率の計算:10人÷200人×100=5%
この企業の2023年度の離職率は5%と分かります。
厚生労働省「令和4年 雇用動向調査結果」から見る業界別離職率
厚生労働省の「令和4年 雇用動向調査結果の概要」を見ると、業界別の離職率が分かります。
順位 |
業界 |
離職率 |
1 |
鉱業、採石業、砂利採取業 |
6.30% |
2 |
金融業、保険業 |
8.30% |
3 |
学術研究、専門・技術サービス業 |
10.00% |
4 |
製造業 |
10.20% |
5 |
建設業 |
10.50% |
6 |
電気・ガス・熱供給・水道業 |
10.70% |
7 |
複合サービス事業 |
11.00% |
8 |
情報通信業 |
11.90% |
9 |
運輸業、郵便業 |
12.30% |
10 |
不動産業、物品賃貸業 |
13.80% |
11 |
卸売業、小売業 |
14.60% |
12 |
教育、学習支援業 |
15.20% |
13 |
医療、福祉 |
15.30% |
14 |
生活関連サービス業、娯楽業 |
18.70% |
15 |
サービス業(他に分類されないもの) |
19.40% |
16 |
宿泊業、飲食サービス業 |
26.80% |
平均 |
- |
15.00% |
全体平均では15.00%ですが、平均より10%以上離職率が高い業界もあります。自社の離職率を計算したとき、業界の平均離職率と比較してどのような数値になったでしょうか。自社の離職率を客観的に把握するために役立ちます。
関連記事:離職率が低い業界は?特徴を把握して自社の離職率低下に役立てよう
厚生労働省「新規学校卒業就職者の在職期間別離職状況」から見る新規学卒者の離職率
厚生労働省の「新規学校卒業就職者の在職期間別離職状況」では、新規学卒者の離職率を確認できます。2020年に新規学卒者として就職した人の1~3年目の離職率と、3年目までの離職率の合計は以下の通りです。
学歴 |
1年目離職率 |
2年目離職率 |
3年目離職率 |
3年目までの離職率 |
中学卒 |
32.1% |
12.0% |
8.8% |
52.9% |
高校卒 |
15.1% |
11.7% |
10.2% |
37.0% |
短大卒 |
16.3% |
13.5% |
12.8% |
42.6% |
大学卒 |
10.6% |
11.3% |
10.4% |
32.3% |
かつては1年目離職率が最も高く、2年目・3年目と低くなっていく傾向がありました。2020年の新規学卒者は、中学卒の1年目離職率が高い他は、1年目離職率が若干高めな程度です。加えて大学卒は3年間を通して同程度の離職率で推移しています。
自社で新卒採用をしている場合には、新規学卒者の離職率を参考にすると、自社の離職率が高いか低いか判断可能です。
離職率を見るときの注意点
離職率の高さは従業員の離職が多いことを示します。ただし離職率が低いから働く環境が整っている企業とは限りません。反対に離職率が高い企業が、必ずしも働きにくいわけでもないでしょう。ここでは離職率を見るときに押さえておくべき注意点を紹介します。
従業員数の違い
離職率は割合のため規模が考慮されません。例えば同じ離職率10%でも、従業員数10人の企業で1人辞めるのと、従業員数1,000人の企業で100人辞めるのでは、意味が変わってきます。
また同じ離職者数1人でも、従業員数2人の企業では離職率50%、従業員数100人の企業では離職率1%です。このように規模による違いがあるため、離職率のみで比較するのは難しいでしょう。
離職率が低い理由
低い離職率は長く働き続ける従業員が多いことを表します。同じ企業で長く働き続けるということは、それだけ働きやすい職場と考えられるでしょう。
ただし中にはブラック企業だからこそ離職率が低く抑えられているケースもあります。長時間労働や休日出勤により、転職したくてもそのための活動ができない状態にある企業です。
決して働きやすくはありませんが、働き続けなければ生活が立ち行かない状況で、仕方なく辞めずにいる従業員ばかりでも、離職率は低くなります。
離職率が高い企業の特徴
離職率の高低のみで企業の働きやすさをはかることはできませんが、目安にはなります。ここでは離職率が高い企業によくある特徴を見ていきましょう。
採用のミスマッチが起こっている
「考えていたイメージと違った」という理由で離職する人や、早期離職する人が多い企業は、採用時にミスマッチが起こっている可能性があります。
ミスマッチが起こるのは、採用情報や企業ホームページ・パンフレットなどで発信しているイメージと、実際の業務・人間関係・組織文化などに差が生じているときです。
魅力をアピールすることに加えて、現状を率直に伝えられる内容を心がけましょう。
教育制度が整っていない
必要な教育制度が整っていない企業も離職率は高くなりがちです。人材を採用しても現場で働く従業員に任せきりで、その後のフォローをしていないようでは、新しく入社した従業員が不安を抱えているかもしれません。
教育制度が整っていないために業務を覚えるのに時間がかかっているにもかかわらず、職場で「役に立っていない」と悩み、離職につながる恐れがあります。
またマネジメント層の教育が不十分で、時代に合わない指導を行っていることが、離職の原因になっていることもあるでしょう。
評価制度が整っていない
評価制度が整っておらず、適切な評価が行われているか分からない点も、高い離職率の理由になります。何が評価されるか分からなければ、従業員はどのように仕事を進めればよいかはっきりしません。
従業員自身は精一杯努力して結果を出したと感じていても、評価につながらないといったことが続けば、仕事に対するモチベーションは下がっていきます。不満から離職を選ぶ従業員も出てくるでしょう。
人間関係がよくない
人間関係の悪さも離職率が高い理由の1つです。仕事について相談したいことがあっても、人間関係の悪さから気軽に話しかけられないという場合、仕事の進行が滞ることもあるでしょう。
常に周りに気を遣わなければならず、ストレスから離職を選ぶ従業員が出てくる可能性もあります。
給与や福利厚生などの待遇が悪い
待遇の悪さから離職して、より待遇のよい他社へ転職する従業員もいるでしょう。2024年の春闘では、続く物価高を受けて労働組合の要求に満額回答する企業が続出しました。賃上げの動きは中小企業にも広がっています。
自社の給与は変わっていなくても、他社が賃上げしていれば相対的に給与が低く感じられるでしょう。
福利厚生の充実度が低い場合も同様です。例えばフレックスタイム制や時短勤務制度・テレワーク・育児休暇などが整っていない場合、従業員は育児が始まると仕事を続けられないかもしれません。働く意思があっても離職せざるを得ないケースもあります。
離職率を下げるために役立つ取り組み
離職率が低く、従業員が長く働き続けやすい企業を目指すときには、どのような取り組みを行うとよいのでしょうか。代表的な取り組みを紹介します。
魅力とともに大変な点も紹介する
採用時のミスマッチを減らすには、自社の魅力とともに仕事の大変な部分も発信するのがポイントです。やりがいがあって成長を感じられる仕事は、その半面、勉強し続けて身につけたスキルで成果を出さなければいけない仕事でもあります。
また実際の職場を見学する機会を設けて、社風や職場の雰囲気を正確に伝えることも重要です。
各段階に合う研修を整える
入社直後の従業員が受ける入社時研修や、業務に必要な新しいスキルを身につけるために行う研修、リーダーを対象に行うマネジメント研修など、働く上で必要な研修は複数あります。
適切なタイミングで必要な研修を受けられるよう、制度を整えましょう。企業がキャリアに役立つ研修を実施することで、従業員のモチベーションが上がり離職率の低下につながることが期待できます。
評価制度を整えて周知する
離職率を下げるには、適切な評価制度が必要です。誰が評価者でも結果が変わらない公平な評価制度を作りましょう。
併せて評価制度を従業員に周知することも重要です。何がどのように評価されるかを伝えることで、従業員は評価につながる努力ができます。
職場のコミュニケーションを改善する
良好なコミュニケーションを取れるよう職場環境を整えることも、離職率の低下につながります。コミュニケーションを改善するには、交流会や食事会を企画するとよいでしょう。
オフィスにコーヒーメーカーやフリードリンクのある休憩スペースを設置するのもおすすめです。従業員が集まるスペースがあることで、挨拶や会話のきっかけになります。
待遇を改善する
賃上げの実施や福利厚生の充実度アップによる待遇改善も、離職率低下に役立つ取り組みです。適切な給与と働きやすさにつながる福利厚生が整っていれば、離職せずに働き続けようと考える従業員を増やせるでしょう。
離職率低下に役立つ「チケットレストラン」
福利厚生の充実度アップを離職率低下につなげるなら、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」がおすすめです。全国にある25万店舗以上の加盟店で利用できる食事補助サービスは、全ての従業員に公平に提供できる点で好評を得ています。
従業員の昼食代を企業がサポートすることで、実質的な手取り額アップにもつながります。実際に導入した企業で、離職率低下につながっている企業もあるサービスです。
関連記事:M's ファーマ株式会社
自社の離職率を計算してみましょう
任意の期間に離職した従業員の割合を離職率といいます。離職率の計算式「離職者数÷あるタイミングで働いている従業員数×100」を利用すれば、簡単に自社の離職率を算出可能です。
同業他社と比べて離職率が高いなら、研修制度の整備・評価制度の整備と周知・待遇改善などに取り組むと下がる可能性があります。
福利厚生の充実度アップで待遇改善を目指すなら、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」を検討してみませんか。全従業員に公平に提供できる食事補助サービスで、離職率低下が期待できます。