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【社労士監修】有給休暇の5日義務化はいつから?罰則や中途入社の場合などわかりやすく

2022.05.09

監修者:森田修(社労士事務所 森田・ミカタパートナーズ)

有給休暇は、従業員のリフレッシュを目的とした休暇です。要件を満たした従業員に関しては、正社員や契約社員などの雇用形態を問わず、必ず付与しなければなりません。

また近年では働き方改革によって、企業には取得義務が課せられました。そのため要件を満たした従業員に対しては、対象期間内に5日以上の有給休暇を取得させることが必要です。

なお取得義務には、勤続年数や有給休暇の付与日数など、対象となる要件が定められています。そのため新人社員や中途入社した従業員などで、要件が異なる場合があります。

取得義務を守らないと罰則が課せられることになるため、企業の担当者様などは理解を深めておきましょう。

有給休暇の取得義務はいつから?

有給休暇は、2019年4月より義務化されました。日本では長時間労働をはじめ、さまざまな労働問題を抱えています。なかでも過労死や仕事が原因となる自殺などは、特に深刻な問題です。

厚生労働省の資料によると平成27年度に脳・心疾患、および精神疾患で労災が認定された数は併せて723件でした。(※1 第 5-2 図 脳・心臓疾患に係る支給決定件数と第 5-13 図 精神障害に係る支給決定件数の合計)

また警視庁の自殺統計をもとに内閣府が作成したデータによれば、平成27年度に仕事が原因と見られる自殺は2,159件でした。そのうち約3割にあたる675人は、「仕事の疲れ」によるものだと考えられています。(※1 第 4-5 図)

このような事態を背景に、政府は2015年より働き方改革を進めています。改革の一環として労働基準法の見直しも行われ、有給休暇の取得を含む新しい法律が2018年6月に成立しました。有給休暇の取得義務は、このような経緯を辿り現在に至っています。

5日間の取得が義務付けられている

有給休暇の取得が義務化されたことにより、企業は従業員に年5日以上の有給休暇を必ず取得させる必要があります。対象となるのは、年に10日以上の有給休暇を付与されている従業員です。

そもそも有給休暇とは、賃金の支払いがされる休日のことです。従業員がもつ権利であるため、申請がされると企業は基本的に拒否できません。ただし繁忙期などを理由に、取得時期を変えてもらうことは可能です。これを「時季変更権」といいます。なお現状では有給休暇を積極的に使う従業員がいる一方で、全く取得しない従業員もいます。

しかし法改正によって取得が義務化されたため、このような従業員にも必ず取得させなければなりません。たとえ従業員が難色を示したとしても、対策を講じて有給休暇を取得させる必要があります。だからといって、無理強いして良いというわけではありません。あくまで従業員の権利となるため、理解を得られるように日ごろから周知しておきましょう。

中小企業の義務化は2019年4月から

中小企業であっても、大企業と同じく2019年4月から義務化されました。従来、法律が変わるときなどは、大企業と中小企業で施行の時期が異なることがよくあります。これは、中小企業への配慮によるものです。大企業と中小企業では、事業規模や資金力も違います。資金力に不安の残る中小企業では、変化が急激だと対応できないこともあるでしょう。そのため、猶予期間が設けられることがあります。

一方で有給休暇の取得義務については、大企業と同じ時期に施行されました。適用される内容についても大企業との区別はなく、同じ内容が適用されます。当然ながら、「知らなかった」などの理由は認められません。違反した場合には法律違反となり、ペナルティが課せられるため注意が必要です。

有給休暇5日の取得が義務化された背景

従来、日本人は勤勉なことで世界的にも知られています。その勤勉さを活かして戦後の復興から、現在まで経済や産業を発展させてきました。そのような時期に培われた技術力は、世界的にも一定の評価を受けており、海外進出をした企業も多く存在します。

ただ一定の評価を得ている一方で、海外からみると働き過ぎと評されることもあるのが現状です。政府も労働環境の改善を進めており、ワークライフバランスを掲げています。従業員の仕事と生活のバランスを調整すべく、さまざまな施策が進められており、有給休暇における5日以上の取得義務もそのひとつです。有給休暇の義務化については、おもに以下のものが背景になっています。

有給休暇の取得率が低い

まずは有給休暇の取得率が低いことです。以前より政府も有給休暇の取得を促していましたが、思うように推進されていません。実際に厚生労働省がまとめたデータによると、有給休暇の取得率は、平成12年以降50%を下回る水準で推移していました。休日が少ないことは長時間労働につながる恐れがあり、過労死も招きかねないことが義務化された一因と考えられます。(※1)

実際に施行後の取得率を見てみると、令和2年度は56.6%です。取得率は6年連続で上昇しており、緩やかではありますが向上の兆しを見せています。しかしながらフランスをはじめとする欧州諸国と比べると、未だ取得が進んでいない状況です。そのため、今後も有給休暇の取得を促進する動きが予想されます。(※2 第2図)

無くならない長時間労働

義務化された背景には、長時間労働が無くならないことも挙げられます。平均労働時間についても、厚生労働省が調査を行っています。データによれば平成5年から平成27年にかけて、パートタイム労働者の年間労働時間は減少傾向です。一方で正社員などフルタイムの方は、2,000時間前後で高止まりしていることが分かりました。全体的に見ると減少傾向にあるものの、欧州諸国と比べると長時間労働になっている状況です。(※1 第 1-2 図)

長時間労働は過労死などにもつながりやすく、1ヶ月に45時間を超える残業をすると、脳や心疾患のリスクが高まるとされています。実例も多く存在しており、政府も働き過ぎを防ぐべく、ワークライフバランスの充実を図っています。有給休暇の取得義務もそのひとつです。

有休の取得を後押しする働き方改革関連法案

働き方改革では有休の消化を後押しするような、さまざまな関連法案が存在しています。政府は関連法案について、下記にある3つの項目を柱としています。

  1. 雇用の安定および職業生活の充実など
  2. 労働時間の改善、柔軟な働き方の実現
  3. 雇用形態を問わず、公平な待遇

柱2には、おもに働く環境などに関する法案が盛り込まれており、有休の取得義務も含まれています。

具体的な内容としては、時間外労働の上限規制などが挙げられます。これは、残業時間などの規定を厳格化したものです。そもそも従業員に残業をさせるときは「36協定」の届出が必要ですが、これまでは上限が曖昧で違反しても罰則規定がありませんでした。しかし法律の改正によって、現在では上限が明確に規制され違反すると罰則を受けなければなりません。

またインターバル制度の促進では、勤務間の休息時間の確保が目的です。法案の成立により、インターバル制度は企業に対して努力義務化されました。そのため企業は次の勤務までの間に一定の休憩時間を確保し、従業員が体を休められるように考慮しなければなりません。

加えて産業医や産業保険機能の強化も図っています。労働安全衛生法の改正により、定められた要件に該当する企業は、産業医を選任することが必要です。産業医と連携を図ることで、従業員の心身のケアを目的としています。このように関連法案には、有休の消化を後押しするような、さまざまな内容が盛り込まれています。法律に違反すると罰則が課せられる場合もあるため、自社に関係のある項目に関しては把握しておきましょう。

義務化の対象となる従業員は?

有休の取得義務は、休暇を保有する全ての従業員に適用されるわけではありません。義務が課せられるのは、1年間に10日を超える日数を付与された従業員です。なお有休は、法律によって基準が定められています。企業は、法律の基準を下回るような規則で運用することはできません。違反にならないためには、法律の基準を満たしたルールで運用する必要があります。(※3)

有休は基準さえ満たせば、自社ルールで運用も可能ですが、法律の基準に沿って運用を行う企業も多いようです。法律の規定では、勤続年数や働く日数によって、付与される休日が変動します。定められた条件を満たし、年10日を超える日数が与えられた時点で義務化の対象となります。ただし法律で定められた要件に達していなくても、企業が自発的に休日を付与するときは注意が必要です。

企業が自発的に休暇を与えたとしても、与えた日数が年10日以上を超えてしまうと、その時点で義務が発生します。違反すると罰則が科せられるため、きちんと理解しておきましょう。なお義務が課せられるのは、「付与」される日数が年に10日を超えたときです。「保有」する合計が10日を超えたときではないため、間違えないようにしておきましょう。

なお義務化については、混同されやすい事例があります。想定されるケースについては、把握しておくと自社で取り組むときに対応がしやすくなるでしょう。

フルタイム勤務者で入社後6ヶ月以内の場合

フルタイムの正社員や契約社員であっても、入社して6ヶ月以内であれば義務は課せられません。有休は入社して6ヶ月が経過した時点で、はじめて付与されるものです。入社して6ヶ月以内の従業員には、有休自体が発生しないため、義務化にも該当しません。

例えば4月に入社した新入社員や中途入社の従業員であれば、10月に10日を超える休暇が与えられます。この時点で要件に該当するため、義務化の対象となります。ただし、これはあくまで法律で定められた付与条件で運用した場合です。入社6ヶ月を経過せずとも、企業が独自で10日を超える有休を与えた場合には、与えた日から対象となります。

フルタイム勤務者で入社後6ヶ月が経過した場合

フルタイムで勤務している従業員で、入社して6ヶ月が経過している場合には義務の対象です。正社員やパートタイムなど雇用形態で、区別されることはありません。入社後6ヶ月が経過していれば、雇用形態に関係なくフルタイムで働く全ての従業員が対象です。

なお有給休暇の付与対象となるには、入社6ヶ月に加えて、全労働日に8割以上の出勤が必要となります。全労働日とは、もともと出勤が予定されている日のことです。企業の都合で休みとなった日などは、全労働日の計算からは除外されます。加えて遅刻や早退をした日でも、全労働日として取り扱う必要があるため注意が必要です。

フルタイム勤務で上記の要件を満たした従業員には、有休を与えなければなりません。フルタイム勤務であれば、入社して6ヶ月後に10日分の休暇を与えられるため、その時点で義務の対象となります。

アルバイトやパートで週の勤務する日数が4日の場合

パートやアルバイトなどの場合、フルタイムで働かない方もいるでしょう。このような従業員の有給休暇については、週当たりの出勤日数と勤続年数、勤務時間よって与えられる休暇の日数が変わります。

まずは、週4日勤務かつ勤務時間が30時間未満の場合です。週4日勤務のときは、フルタイムで働くときと比べて休暇の日数が減少します。入社から6ヶ月後の時点では、与えるべき日数は7日です。定められた要件に満たないため、この時点では対象ではありません。

週4日勤務の従業員が対象となるのは、入社から3年6ヶ月が経ってからです。週4日勤務の方は、この時点で10日を超える休暇が発生するため、義務化の対象となります。ただし従業員が10日分の有休を受けとるには、対象となる期間の出勤率が8割を超えていることが必要です。

なおフルタイム以外で勤務する場合には、週当たりの勤務日数が変動することがあります。週当たりの正確な日数を把握できないこともあるため、このような場合には年間の勤務日数も照らし合わせて判断します。年に169~216日に働いた場合には、週4日勤務と同等の規定が適用です。有休の規定は、週4日勤務と同じ規定で運用されます。

アルバイトやパートで週の勤務する日数が3日の場合

週あたりの労働が3日のときには、入社して5年6ヶ月が経った時点で、付与される有休が10日を超えます。そのため従業員が入社後5年6ヶ月を経過したときには、義務化の対象となるため付与が必要です。ただし週3日勤務の場合も、直近1年間の出勤率が80%を超えている必要があります。企業は条件に該当するときにのみ有休を与え、取得の義務化が課せられるようです。

なお週3日勤務の場合にも、週当たりの日数が変動するときには、年間の労働日数と照らし合わせます。週3日勤務と同じ規定が適用されるのは、年間の労働日数が121~161日の場合です。

アルバイトやパートで週の勤務する日数が2日の場合

週あたりの労働が2日しかないときには、企業に有休を取らせる義務が課せられません。週2日勤務の場合、法律の上限となる勤続年数が6年6ヶ月を超えていても、付与される日数は年7日です。法律の要件に達しないため、取得が義務化されることはありません。

なお上記は、法律の規定に沿って運用した場合のケースです。週2日勤務の従業員であっても、企業が独自で10日を超える有休を与えた場合には、取得義務が課せられるため注意しておきましょう。

1年間の起点となる日はいつか?

取得義務では、有休を取らせる期間の制限についても定められています。対象となる期間内に5日以上の休暇を取らせないと、法律違反となるため注意が必要です。

取得義務で定められた期間は1年間となります。ポイントは、「いつから1年間なのか」という点です。基本的にはこの起点日を始めとする1年間が対象期間となり、期間中に5日以上の休日を取らせる必要があります。

起点となる日については、入社日や企業の規定によって異なります。そのため場合によっては、従業員ごとに取得の進捗を管理しなければなりません。自社で管理をするときイメージがしやすいように、実際のよくあるケースをみてみましょう。

入社日から有給休暇を付与する場合

入社日に10日を超える有給休暇を与えたときには、その入社日が起点となる日です。取得義務は、10日以上の日数を付与された時点で課せられます。そのため入社日から1年以内に、5日以上の有給休暇を取らせなければなりません。

例えば1月1日に入社し、入社時に10日の有休を与えたとします。義務化の扱いを受けるため、同年の12月31日までに5日以上の有休を取らせることが必要です。

入社日から有休を与えるケースとしては、病気やけがなどで急に休暇が必要となる場合が挙げられます。このような突発的な要因に関しては、管理が煩雑になるため、台帳やツールを用いて漏れがないように管理しておきましょう。

入社後6ヶ月経過で有給休暇を付与する場合

法律の規定に沿って有休を与える場合には、入社後6ヶ月が経過したときに有給休暇が付与されます。そのため、入社後6ヶ月経過した日が起点となる日です。

例えば、従業員が4月1日に入社したとします。この従業に有休が付与されるのは、半年後の10月1日です。この10月1日が起点となる日になります。この日から1年間が対象期間となるため、翌年の9月30日までに、5日以上の休暇を取らせなければなりません。

有給休暇の付与日から1年以内に再付与する場合

中途採用などを積極的に行っている企業では、従業員ごとの入社日が異なるケースが発生します。従業員によって入社日が異なると、有給休暇の管理も大変です。このようなときには、基準日を統一する手段がよく用いられます。管理がしやすくなる一方で、取得義務が重複する期間が発生するため注意が必要です。

例えば2021年4月1日に入社し、半年後の2021年10月1日に1回目の有休を付与したとします。従来であれば、1年後の2022年10月1日が2回目の有休を与えます。しかし基準日を統一するために2022年4月1日に与える場合、1回目の取得が終わらないまま新たな取得義務が課せられるため注意です。このようなときの取得には、2つの方法があります。

まずはそれぞれの期間で、5日以上の日数を消化させる方法です。例に当てはめると、以下のようになります。

1回目:2021年10月1日付与分→2021年10月1日~2022年9月30日までに5日以上
2回目:2022年4月1日付与分→2022年4月1日~2023年3月31日までに5日以上

上記のように、それぞれの期間で取らせる必要があります。ただし分かりづらく、管理も煩雑になりがちです。そのため重複期間が発生する場合には、期間按分が認められています。

期間按分とは1回目と2回目を合算し、合計期間内に按分した日数を取らせれば良いという制度です。取らせる日数分の計算は、「月数÷12×5日」で算出します。例に当てはめると、以下のようになります。

18ヶ月(1回目と2回目の通算期間)÷12×5日=7.5日(取得日数)
2021年10月1日~2023年3月31日までに、7.5日以上の取得が必要

上記の方法でも義務化への対応が可能です。計算する必要はありますが、効率的に管理したい場合には期間按分を用いましょう。

有給休暇年5日の取得義務に違反した場合の罰則

規定された休暇を取らせなかった場合には、労働基準法違反となります。違反した企業には、30万円以下の罰金が課されます。ただし、従業員1人あたりの罰金となるため注意がしておきましょう。仮に従業員10人分に違反が認められた場合だと、300万円の罰金が課せられる可能性があります。

なお故意に違反するケースは少ないと思いますが、年末休暇などを取り入れているときは注意が必要です。夏季休暇や年末休暇は、就業規則で定められていれば 特別休暇として扱われます。そのため、有給休暇に含むことはできません。有給休暇は、特別休暇と別途に取らせることが必要です。勘違いしてしまうと、規定された5日分に足りなくなる恐れがあるため、注意しておきましょう。

円滑に取得を促すための対策

政府も有休の取得を推進していますが、思うように進んでおらず、取得を促進するには企業でも対策が必要です。有休については、コストや人手不足をイメージする方もいます。しかし、有休の取得を促すことには、さまざまなメリットがあります。

まずは生産性の向上です。どれだけ優秀な従業員でも疲れが溜まった状態では、ベストのパフォーマンスを発揮できません。業務効率も悪くなるでしょう。このようなときは、有休を取らせて、しっかり休養してもらうことが大切です。疲労が回復すればパフォーマンスも改善され、業務効率も向上します。結果的には、生産性の向上にも期待できるでしょう。

また有休の取得は、企業イメージにも影響を与えます。労働者にとって有休などの待遇は、関心が高い要素のひとつです。待遇が悪い企業のイメージは、あまり良くありません。近年では、ブラック企業という言葉も誕生したほどです。そのような企業に勤めたいと思う方は、少ないでしょう。採用活動でも、優秀な人材の確保が難しくなってしまいます。

このような事態に陥らないためには、有休などの待遇を充実させることが有効です。企業のイメージアップにもつながり、採用活動でも優秀な人材の確保に期待できます。このように有休を充実させると、企業にもさまざまなメリットがあります。なお有休の取得を促進するには、従業員が円滑に取れる環境が必要です。おもな対策としては、以下のようなものが挙げられます。

有給休暇の取得を促進する仕組みづくり

従業員に円滑な取得を促すには、休暇を取得しやすい仕組みづくりが大切です。有給休暇については、企業が取得を拒むケースだけでなく、取得しない従業員がいることも問題となっています。

特に繁忙期などでは、周囲の同僚への配慮から取得しにくいと考える方も多いようです。企業が行ったアンケートなどでは、「迷惑をかけるため取得しにくい」というような、回答をした方もいます。このような状況では休暇取得の推進は難しいため、休暇を取得しやすい仕組みをつくることが必要です。実際に休暇取得の促進に向けて、企業によってはさまざまな取り組みがされています。

インセンティブの支給

連続で休暇を取得した従業員に対して、ポイントなどのインセンティブを支給するシステムです。近年ではインセンティブをポイントとして、付与できるサービスが提供されています。付与されたポイントは、サービスごとに用意された商品などと交換が可能です。うまく活用することで、有給休暇を5日以上取得したら1,000ポイント付与するなどのように、休暇の取得を促す施策を実施できます。

半日単位での取得

企業によっては、有給休暇を半日単位で付与しているようです。自由度が高く従業員のニーズに対応しやすいため、休暇取得の促進に期待できます。実際に取り入れた企業では、導入前と比べて取得率が向上したケースもあります。

ユニークな休暇の導入

ユニークな休暇の導入も効果的です。有給休暇という名称だと、取得しにくいと感じる従業員の方もいます。名称やルールを変更することで、従業員が休暇を取得しやすくなります。実際に独自の休暇を設ける企業もあり、なかにはユニークな休暇もあるようです。

例えば企業によっては、アニバーサリー休暇を取り入れています。従業員の誕生日や記念日などに、休暇を付与する制度です。誕生日は誰しも年1回必ず訪れるため、取得する従業員も罪悪感などを抱かずに済みます。

また勤続年数が一定の基準に達すると、連続して有給休暇を付与する制度を設ける企業もあるようです。なかには勤続5年以上になると、1ヶ月の有給休暇を与える制度もみられます。ユニークな休暇については、他にもさまざまなものがあります。自社の取得を促進した場合には、従業員が取得しやすいルールを検討してみましょう。

有給休暇の取得を計画表で示す

休暇の取得を促すには、計画表を作成し見える場所に掲示することも有効です。部署ごとの繁忙期などを視覚化することで、取得時季の調整がしやすくなります。また予定取得率を併せて掲載すれば、休暇取得の意識づけにもなります。なお取得率が低い従業員に対しては、個別面談を実施しましょう。従業員には取得できない理由があることも考えられるため、個別面談を行うことで課題を把握できる可能性があります。課題を解決できれば、休暇の取得にもつながるでしょう。

このように現在では、企業ごとにさまざまな取り組みが行われています。取り組む施策は、自社に合った内容であることが大切です。自社の現状を振り返り、より効果が得られそうな取り組みを行いましょう。

計画付与制度の導入

企業独自の取り組みだけで促進が難しい場合には、計画的付与制度の導入も検討してみましょう。

有給休暇の計画的付与とは、従業員が付与された休暇日数を計画的に割り振る制度です。従業員との労使協定を結ぶことで、企業は雇用する従業員の有給休暇を割り振ることができます。ただし、従業員が付与された全ての日数を割り振れるわけではありません。

割り振ることができる有給休暇は、付与日数のうち5日を除いた残りの分が対象です。全ての日数を企業が割り振ってしまうと、従業員が病気やけがのときに使える休暇がなくなってしまいます。従業員に不利益が生じてしまうため、5日分は必ず残しておかなければなりません。また本制度には、3つの方法が存在しています。(※4)

一斉付与方式

企業全体で同じ日に休暇を取得する方法です。指定した日は、全ての従業員が有給休暇となります。休暇日は業務がストップすることになるため、一斉に休みにした方が効率的な業種などで導入される手法です。一斉に休暇を付与するため、個別に付与するケースと比べ日数の管理がしやすくなります。ただし、休暇に指定する日時の設定には注意が必要です。顧客に迷惑がかからないように、取得日は慎重に検討しましょう。

班・グループ付与方式

班やグループ、部署ごとに交替で休暇を取得させる方法です。一斉に休暇を取得させないため、業務がストップすることがありません。そのため流通やサービス業などのように、業務をストップさせることが困難な業種で導入されています。

個人別付与方式

従業員それぞれに休暇日を設定する方法です。従業員ごとに付与計画表を作成して、計画に沿って休暇を取得してもらいます。個人別に日時を設定するため、従業員のニーズに幅広く対応が可能です。ただし管理が煩雑になりがちなため、取得漏れなどが発生しないように、管理ツールなどを使用してきちんと管理しておきましょう。

導入方法としては、おもに上記の3つが挙げられます。

厚生労働省の「令和3年就労条件総合調査の概況 」(※2 第6表)によると、計画的付与制度を導入した企業は調査対象の全企業中46.2%と半数近くあります。自社の取り組みだけで休暇取得の促進が難しい場合は、計画的付与制度の導入を検討してみましょう。

なお付与制度は、自社に合った方法を取り入れることが大切です。自社に適さない方法を選択しても従業員のニーズに応えることができず、思うような成果にも期待できません。自社の現状を振り返り、環境に適した方式を選択しましょう。

さいごに:有給休暇の取得義務を守り働きやすい環境作りを

働き方改革により、今後も労働環境は大きく変化すると予測されます。変化や制度に適応していくためには、職場環境を見直す必要があります。有給休暇における年5日の取得義務も、そのひとつです。

一方で有給休暇の取得を促進することには、さまざまなメリットがあります。従業員のモチベーションアップや生産性の向上、および企業のイメージにも期待できます。結果的には、優秀な人材の確保にもつながるでしょう。

なかには有給休暇の取得を促進したことにより、業績がアップした企業も存在します。このように有給休暇の取得促進は、法律への対応だけでなく企業に有用なものです。取得を促進させるためには、有給休暇の取得義務を守り、働きやすい環境作りを心掛けましょう。

【参考資料URL】

(※1)「第1章 過労死等の現状 第 1-2 図,第 1-13 図,第 4-3 図,第 5-2 図,第 5-13 図/厚生労働省

(※2)「令和3年就労条件総合調査の概況/厚生労働省

(※3)「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説/厚生労働省

(※4)「年次有給休暇の計画的付与制度/厚生労働省