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【社労士監修】有給休暇の法律は?労働基準法で定められた法定有給休暇について

2022.03.04

監修者:森田修(社労士事務所 森田・ミカタパートナーズ)

従業員にリフレッシュしてもらうための休暇制度。その休暇制度には労働基準法によって付与の仕方や付与する最低日数などが決められている法定の休暇(年次有給休暇)から自社の裁量で決められる休暇までさまざまなものがあります。

年次有給休暇に代表される法定休暇には、従業員に対して正しく付与し取得させないことによる罰則もあります。有給休暇に関するさまざまなルールや法定休暇の種類について確認していきましょう。

有給休暇の法律とは?

有給休暇とは、取得することにより、労働契約によって労働日として規定されている日の労働を一時的に免除するという法的性質を持っています。その労働義務の免除を有給、つまり賃金の支払いをも会社側に求めている休暇のことを有給休暇と呼びます。

これからその内容について詳しく見ていきましょう。

労働基準法で定められた法定休暇

法定休暇とは、法律によってその利用が保障されている休暇のことを指します。そのため、日本に存在する全ての会社に法定休暇は存在することになります。

労働基準法制定の背景

有給休暇について規定している代表的な法律が労働基準法です。労働基準法は日本で最初の労働保護法である工場法をそのルーツに持ち、日本国憲法第25条(生存権)の要請に基づく戦後の労働者保護法として、人間らしい生活をするために必要な労働条件の最低基準を定める法として1947年に制定されました。

労働基準法は時代に合わせて様々な改定がなされて今日に至っています。最近の例ですと2019年4月に働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(以下「働き方改革関連法」と呼びます)の施行により労働基準法が改定されたことで、年10日以上の年次有給休暇が付与されるすべての従業員に対して、付与日から1年以内に合計5日分の年次有給休暇を付与することが義務化されました。

労働基準法第39条において会社は、雇い入れ日から6カ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した従業員に対して10労働日の有給休暇を与えなければならないと規定されています。この休暇制度のことを労働基準法第39条では、年次有給休暇との見出しがなされており、「有休」または「年休」といった呼び名で馴染みがあるのではないかと思います。

産前産後休業と生理休暇

労働基準法には、年次有給休暇とは以外にも様々な休暇が用意されています。この項では、産前産後休業と生理休暇についてみていきましょう。

労働基準法第65条には「産前産後」との見出しがあり、出産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)は(女性)従業員からの請求があった場合には会社は休暇を与えなければならず、また出産後8週間は原則として休暇としなければならないと規定されています。この法定休暇は産前産後休業と呼ばれます。

「生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置」として労働基準法第68条に見出しが出ている休暇のことを一般的に生理休暇と呼びます。生理休暇は女性従業員が生理により働くことが著しく困難であるとして請求した場合に付与しなければならないものです。

産前産後休業と生理休暇は年次有給休暇と異なり、いずれも有給である必要はありません。年次有給休暇と異なる点はもう一点あります。年次有給休暇には事業の運営が妨げられる場合に従業員に対して、他の時期に振り替えて休暇を与えることができる権利が会社にはありますが、産前産後休業や生理休暇は従業員が請求した日に付与しなければなりません。つまり、どれだけ人手不足に陥ったとしても会社は時期を振り替えることはできないのです。

法定休暇とひとくくりにいえども、休暇の種類によって性質は異なります。このような違いを覚えておくとよいでしょう。

休暇と休業に明確な区別はない

休暇についての法的性質は冒頭でご説明したとおりですが、休業と休暇は法律によって明確に区別されているわけではありません。従業員が意思の主体となって請求する休みのことを「休暇」、会社側が率先して従業員を休ませることを「休業」という主張もあるようですが、実務的には休暇より長めの休みが休業と認識するだけで問題はないでしょう。

法定休暇の種類

ここからは労働基準法以外で規定されている法定休暇について見ていきましょう。

子の看護休暇とは

育児介護休業法では、長期間に及ぶ休業である育児休業や介護休業のみならず、短期間の休暇制度についても規定されています。

子の看護休暇は、小学校入学前のご自身の子を養育している従業員であって、その子が病気やけがした場合等で申し出があった場合に与えなければならない休暇です。この休暇は1年度(特に会社で規定がない場合は4月から翌年の3月まで)に5日まで付与しなければなりません。この5日という日数は、養育する子が2人以上の場合は、10日まで増えます。そのため3人の場合でも10日付与すれば法律上は足りるということです。

2021年1月1日に改正育児介護休業法が施行されたことにより、一定の条件を満たす子の看護休暇は時間単位で付与することが求められるようになりました。

予防接種や健康診断の受検をする場合についても、申し出があった場合には子の看護休暇を付与しなければなりません。つまり子の看護にまつわる申し出であれば、休暇を認める必要がある、ということです。

子の看護休暇は、年次有給休暇のように会社側に時季変更権(簡単に説明すると請求された有休日を別の日に変更することができる会社側の権利のこと)は存在しません。そのため申し出があった場合には必ず取得させるようにしましょう。考えてみれば、子が病気やケガした際の看病が取得目的であるのに、時季を変更するのは休暇の性質に馴染まないですよね。

介護休暇とは

育児介護休業法の介護休暇の章で規定されている休暇のことを、介護休暇と呼びます。介護休暇は要介護状態にある対象家族の介護、その他の世話を行う従業員が会社に申し出をした場合に与えなければならない休暇です。付与日数や付与単位の説明は子の看護休暇と同様(1年度あたり5日、2人以上の場合は10日以上であること、付与単位は時間単位であること)です。

ここでいう「要介護状態」とはどういう状況なのでしょうか。厚生労働省は、以下のように定義しています。

育児・介護休業法に定める「要介護状態」とは、負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態のことをいい、要介護認定を受けていなくても、介護休業の対象となり得ます。 引用(※1)

介護保険法による要介護区分のいずれかに該当する場合は、ここでいう要介護状態に当てはまると考えられています。

家族の介護と仕事の両立は、簡単なものではないと思います。そのため、このような介護休暇制度を柔軟な運用とすることで、従業員は安心して休むことができ、優秀な社員の介護離職防止につながることでしょう。会社にとっても介護休暇を厳しく運用する一時的なメリットをはるかに上回るのでないでしょうか。このように休暇を取得しやすい環境を整えることは、とても大事といえますね。

母性健康管理のための時間確保について

従業員から申し出があった場合に労働から免除する制度の一つとして「母性健康管理のための時間確保」についてご紹介します。

母性健康管理のための時間確保は、男女雇用機会均等法により規定された措置です。女性従業員が妊産婦のための保健指導や健康診査を受診するために必要な時間を確保することが会社には求められています。

あまり馴染のある制度ではありませんが、請求があったときには適切に対応できるように準備しておきましょう。

法定休暇と特別休暇の違い

法定休暇とは法律により定められている休暇です。一方で特別休暇とは、法定休暇とは異なり個々の会社が自由に設けることができる休暇のことです。婚姻したときに付与される結婚休暇は代表的な一例です。

付与する従業員の範囲、付与する日数、付与にあたっての条件などを自由に決められるため、個々の会社の事情に合わせて制度を作っていくとよいでしょう。

法定休暇を取得した場合の賃金

法定休暇を取得した場合の賃金の支払の有無については、以下のとおりです。

休暇の種類 賃金の支払
年次有給休暇 法律上必要(支払方法はいくつか有)
・産前産後休業
・生理休暇
・子の看護休暇
・介護休暇
・母性健康管理の時間確保

法律上不要
(ただし企業の判断で有給とすることも可)

 

このように基本的に賃金の支払いが求められている法定休暇は、年次有給休暇のみであることがわかるかと思います。年次有給休暇以外の上記の法定休暇は、法律では賃金の支払いは求められていませんが、昨今では有給とする会社も多くあります。

従業員が安心して働ける環境づくりの一環として有給への取り組みも考えてみるのはいかがでしょうか。

有給休暇に関するさまざまなルール

年次有給休暇は、発生のタイミングや付与日数、消滅時効の取り扱い等が事細かく法律により決められています。違反による罰則規定もあることから、内容を確認しておきましょう。

有給休暇の発生するタイミング

年次有給休暇は雇い入れ日から6カ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した従業員に対して付与されます。その後、1年おきに一定の日数が加算され、最大で一年あたり20日の付与日数となります。

例えば2022年4月1日に入社した従業員が最初に年次有給休暇を付与される日は、2022年10月1日(付与日数:10日)です。その後、1年おき(次回の付与日は2023年10月1日)に継続勤務の要件と出勤の要件を満たすことで年次有給休暇が付与されることとなります。

しかし新卒入社しかいないような会社や、従業員数が少ない会社は上記のような付与で問題ないかもしれませんが、従業員数の多い会社は一人ひとりの付与タイミングを管理するのは煩雑ではないでしょうか。

その解決策のひとつとして、年次有給休暇の付与日を揃える方法をご紹介します。例えば2022年5月1日入社した従業員の初回の年次有給休暇の付与日は2022年11月1日です。その後1年おきに付与することとなりますが、2回目以降の付与日を4月1日に統一するというものです。こうすることで初回の付与日さえ把握すれば、あとは全従業員の年次有給休暇の付与日を一律で管理することができます。

なお、この方法は法律で定める日数より多く付与しなければならないという会社側にとってはどちらかというとデメリットよりの側面もあるので、慎重に検討することをお勧めします。

有給休暇の取得日数

正社員と呼ばれるようなフルタイムの従業員の年次有給休暇の付与日数は、以下の表のとおりです。

フルタイムの従業員の年次有給休暇付与日数
勤続
年数
6カ月 1年
6カ月
2年
6カ月
3年
6カ月
4年
6カ月
5年
6カ月
6年
6カ月
付与
日数
10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

なお勤続年数6年6カ月以降も付与日数は20日です。

法律改正で年間5日の取得が義務化

2018年7月6日に働き方改革関連法が公布され、翌年4月1日より順次施行されました。働き方改革関連法は、8本の労働法の改正を行うために制定された法律です。労働に関する最低基準を定めた労働基準法も働き方改革関連法の施行に伴い一部改正がなされました。それが年次有給休暇の5日取得の義務化です。年次有給休暇の5日取得の義務化により、年10日以上の年次有給休暇が付与される従業員に対して、年次有給休暇のうち年5日について従業員が取得していない場合、会社が時季を指定して取得させることが義務付けられました。この従業員の範囲には管理監督者も含みますのでご注意ください。

実務的には、年次有給休暇が10日以上付与される従業員の洗い出し、年次有給休暇の取得状況の把握、把握時点で5日未満の従業員に対して取得勧奨するとよいでしょう。その後、取得勧奨しても取得しない従業員に対して時季指定を実施するような流れになるものと思います。

時季指定をするにあたっては、従業員の意見を聴き、できる限り従業員の希望に沿った時季になるように努めなければなりません。

アルバイトやパートの有給休暇

ひと昔前は、アルバイトやパートに「うちはアルバイトには有給を与えてないよ!」といった発言をする会社もありましたが、今はそのような取り扱いが不当であることを従業員も理解しています。

フルタイムの従業員に比べて所定労働日数が少ないアルバイトやパートの従業員に対しても労働基準法は会社に対して所定労働日数に応じた年次有給休暇の付与を求めています。ただし、労働基準法もフルタイムの従業員と同様の年次有給休暇の付与までは求めていません。所定労働日数がフルタイムの従業員に比べて少ないのだから、それに応じた日数の年次有給休暇を付与しましょう、といっているのです。このような付与制度のことを「比例付与」といいます。比例付与の日数については、以下の表をご覧ください。

※2:「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」

ただし、比例付与となるのは、週所定労働日数が4日(年間所定労働日数216日)以下と併せて、週の所定労働時間が30時間未満であることも必要です。例えば雇用契約で週所定労働日数が4日、1日の労働時間が8時間の従業員がいる場合、週の所定労働時間が32時間(4日×8時間)になるため比例付与の対象とならずにフルタイムの従業員と同様の年次有給休暇を付与する必要があります。

先ほど年次有給休暇の5日取得の義務化についてお話しました。これは、フルタイムの従業員のみならずアルバイトやパートの従業員にも適用される場合があります。上記の表の太枠、太字の年次有給休暇を付与される従業員に対しては5日取得の促し等の対応が必要になりますので忘れないようにしましょう。

消化できない有給休暇は繰越できる

労働基準法第115条は、賃金やその他の請求権の時効について規定されています。しかし年次有給休暇は、その他の請求権として認識されうるものかについて労働基準法には規定されていませんでした。その点、年次有給休暇はその他の請求権に該当するかについての問いに対して行政は以下のように回答しています。

(質問)有給休暇をその年度内に全部をとらなかった場合、残りの休暇日数は権利放棄(筆者編集:元は抛棄)とみて差支えないか、又は次年度に繰越してとり得るものであるか。

(回答)法(筆者加筆:法とは労働基準法のこと)第115条の規定により2年の消滅時効が認められる。 昭和22.12.15基発第501号 引用

このように年次有給休暇は、2年間の保有が従業員の権利として認められることとなり当年に取得できなかった未消化の年次有給休暇は翌年に限って繰り越しができることが確定しました。

今では当たり前のように未消化の年次有給休暇は翌年に繰り越せることが知られていますが、当時はそうではなかったということですね。

退職時に残っている有給休暇の取り扱い

従業員が退職した時点で余った年次有給休暇の取り扱いについて、法律にはなんらの定めがありません。会社によっては、余った年次有給休暇を買い上げることで引き継ぎを円滑に図るケースもあるようです。

ただし注意すべきは年次有給休暇の買い上げはあくまで余った年次有給休暇について可能であって、権利行使ができる状態の年次有給休暇を買い取ることは違法です。また従業員が年次有給休暇を退職前に一括で請求したことに対して拒否することもできません。年次有給休暇は原則として年度内に消化し、会社もそれに即応した体制を確立することこそが本来の姿であることを忘れてはいけません。

有給休暇に関する罰則

労働基準法には違反した会社(使用者)に対する罰則が第117条から第121条にかけて規定されています。年次有給休暇を従業員が請求する時季に与えなかったり、従業員に対して年次有給休暇を一年度あたり5日取得させなかったりすると30万円以下の罰金に処せられることがあります。

年間5日の有給休暇を取得させなかった場合

年次有給休暇の5日取得の義務化に反して従業員に5日年次有給休暇を取得させなかった場合、労働基準法第120条の規定により30万円以下の罰金に処せられることがあります。これは対象となる従業員1人につき1罪と取り扱われるため、例えば10人に対して取得をさせていなかった場合、300万円の罰金刑ということになります。

ただし、違反すると即罰金というよりは、労働基準監督署の監督指導により原則として是正に向けての改善指導がなされます。(※2)

もちろん法違反が判明している場合には放置せず、速やかに是正のために動いていきましょう。

就業規則に記載せず時季指定した場合

就業規則は、常時10人以上の従業員を雇用する場合に作成、届け出しなければならない規程です。就業規則は、服務規律やそれに違反したときの制裁制度、賃金、労働時間や休日といった労働条件について記載するものです。就業規則の記載事項は、労働基準法上必ず定めなければならない「必要的(絶対的)記載事項」と会社に定めがある場合は記載しなければならない「相対的必要記載事項」のほか、就業規則への記載は任意である「任意的記載事項」の3つがあります。

会社による年次有給休暇の時季指定をする場合は、事前に就業規則にその旨を記載しなければなりません。これが「必要的(絶対的)記載事項」であり、就業規則に定めずに時季指定することは労働基準法違反です。

就業規則に必要な事項を定めないことは、労働基準法第120条に違反することとなり5日義務違反と同様に30万円以下の罰金に処せられることがあります。

従業員が求める時期に取得させなかった場合

最後に、従業員が請求する時期に所定の年次有給休暇を取得させなかった場合の罰則についてご説明します。年次有給休暇関係の罰則のなかでこの罰則規定が最も重く、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。

従業員が年次有給休暇の請求をした際に会社ができるのは、請求どおりに年次有給休暇を取得させるか、取得日を変更させることができる「時季変更権」の行使だけになります。従業員からの年次有給休暇の請求を拒むことはできません。この考え方を忘れないようにしましょう。

不利益取扱いの禁止

労働基準法第136条には、年次有給休暇を取得した従業員に対して、賃金の減額その他不利益な取り扱いをしないようにしなければならないと規定されています。例えば年次有給休暇を取得した従業員に対して、賞与を減額したり、精・皆勤手当(一定期間の所定労働日数について欠勤がなかった場合に支給する手当)をカットするなど賃金を減額したり、昇進、昇格または配置転換など人事管理上で不利益な取り扱いをしたりとったことがないよう「配慮」が求められています。

上記であえて配慮にカギかっこを付けたのには理由があります。先ほどの説明だけでは賃金を減額することはすべてにおいて不利益取り扱いになると認識されると思いますが、今までの判例から必ずしもそうではない判断を下されたケースもあるのです。

ここで詳述することはしませんが、従業員が年次有給休暇の取得をためらうほどの大きな賃金減額をさせなかったり、人事管理上の不利益の幅が少ない場合等はすぐに違法と判断されるわけではありません。仮に年次有給休暇を取得することで精・皆勤手当を出さない方向にしたとしても、賃金に占める精・皆勤手当の額が高くないように制度設計をしたり、出さないことによる合理的理由をあらかじめしっかり考えておくことで配慮されていると判断してもらえることもあるでしょう。

従業員に有給休暇の取得を促す方法

いくら会社が休暇取得の促しをしても、従業員によっては「いつ休んだらいいかわからない」「周りが忙しいので有給休暇を使える雰囲気ではない」といった声があることも事実でしょう。ここからは従業員が年次有給休暇を取りやすくする方法をいくつか紹介していきたいと思いますので参考にしてみてください。

年次有給休暇の計画的付与制度を導入する

年次有給休暇の計画的付与制度とは、年次有給休暇の付与日のうち5日を除いた残りの日数について、会社と従業員の話し合いに基づいて計画的に年次有給休暇を割り当てることができる制度です。割り当て方法は、①一斉付与方式②交代制付与方式③個人別付与方式の3つがあります。

一斉付与方式について

全従業員に対して同一日に年次有給休暇を付与する方法です。全員を一斉に休ませることが経営効率上なじみやすい工場現場等で活用されていることが多いです。

 交代制付与方式について

全従業員への付与が難しい会社等で導入されている方法です。お客さんが夏季休暇なことが多いお盆の時期は営業部が、決算期が終わった時期の経理部が一斉に休むといった一斉付与方式に比べて柔軟に付与することができます。

 個人別付与方式について

上記いずれにも当てはまらない会社においては、個人単位で計画的付与制度を導入することも可能です。この場合、例えば年次有給休暇付与計画表を用いて従業員ごとに有給休暇取得日を提出させます。従業員目線で見れば自身の誕生日に年次有給休暇を取得しようなど、休暇取得日を自由度高く選べることができるというメリットがあります。

なお年次有給休暇の計画的付与制度を導入するためには就業規則にその旨定める必要があり、会社と従業員の計画的付与制度についての協議の結果(例えば何日付与するのか、どういった方式を導入するのか等)を書面で残しておく必要があります。この書面のことを労使協定といいます。労使協定は労働関係の様々な場面で取り交わすことがありますので初めて聞いたという方は是非覚えておくとよいでしょう。

有給取得奨励日を設定してみる

年次有給休暇の計画的付与制度と似て非なるものとして「有給取得奨励日」を設けるのはいかがでしょうか。有給取得奨励日とは、年次有給休暇の取得を奨励する日のことです。

祝日が火曜日や木曜日にある場合に、月曜日や金曜日に有給取得奨励日を設定し、連休にする会社も多いようです。

ただし、有給取得奨励日は計画的付与とは性質が異なります。年次有給休暇の奨励は積極的にしつつも、それが強制にならないように注意しましょう。

さいごに:有給化の法律を理解し円滑な取得を

年次有給休暇をはじめ様々な休暇制度は、従業員を労働から解放し心身ともにリフレッシュしてもらうことで、モチベーション高く労働してもらえる効果もあります。また休暇の取得を推進しているという会社のイメージは採用にとっても大きなプラスであり、よりよい従業員の採用にもつながることでしょう。

労働基準法をはじめとした法律違反にならないように対策することはもちろんではありますが、従業員が数日いないことによる目先のマイナスだけにとらわれず、積極的に休暇がとれる会社を目指していきましょう。

参考文献
※1:厚生労働省「よくあるお問い合わせ(事業主の方へ)」
※2:厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得わかりやすい解説」