従業員のロイヤルティを高める施策に注力する企業が増えています。従業員のロイヤルティを高めることで、企業にとって大きなメリットや価値をもたらすからです。本記事では、従業員のロイヤルティを高めるべき理由や、ロイヤルティとロイヤリティの違い、従業員満足度など関連用語も解説します。
従業員の「ロイヤルティ」を高めるとは?
近年、人事戦略の中でも注目されているのが、従業員のロイヤルティです。ロイヤルティとは、所属する企業や組織などへの愛着や忠誠心を意味しています。
「ロイヤリティ」と表記されることもありますが、本来ロイヤリティとは、著作権などの権利使用料を示します。組織への愛情や忠誠心を示すならロイヤリティでも意味は通じますが、「ロイヤルティ」と表記するのが正しいです。
従業員のロイヤルティは、企業に大きな影響を与えます。従業員のロイヤルティが低い企業では、職場の雰囲気が暗く社内全体のモチベーションが低くなるものです。定着率が減少し、離職率が上がるなどして従業員のロイヤルティが低くなるにつれ、生産性や顧客満足度も低下する傾向があるとの指摘もあります。
以前は、ロイヤルティが低い従業員や部署に対し、個人の責任と考える企業もありました。しかし、現在は「企業は従業員のロイヤルティを高める努力をすべき」という風向きに変わってきています。多くの企業が従業員のロイヤルティ=愛社精神を高める施策に奮闘しています。
従業員のロイヤルティを高める施策に注目が集まる背景とは?
数十年前まで、日本のビジネスシーンでは、終身雇用が当たり前とされていました。企業は「従業員は育てるもの」として雇用し、従業員も「定年を迎えるまで企業に奉仕するのが正しい」というのが、日本社会全体の価値観だったともいえます。ところが、現在は終身雇用や勤続年数を重ねるたびに昇給を約束できるほど資本が潤沢ではない企業が多く、従業員側もさまざまな理由から転職に踏み切る人が増えています。
バブル崩壊後の不景気から、従業員より企業に力がある「買い手市場」が続いていましたが、ここ10数年の間に企業と従業員の力バランスが逆転し、現在は多くの企業が人材不足に悩んでいます。日本は深刻な少子高齢化社会を迎えており、労働人口も年々減少中です。今後、多くの企業が人材不足を理由に経営を存続できないという試算もあります。
企業成長や企業の存続をかけて、急務として人事に関わる施策を導入する企業が急増している中、多くの企業が従業員のロイヤルティに着目し、ロイヤルティを高める活動に注力しているのです。
従業員のロイヤルティとESやエンゲージメントの違い
ESとは「Employee Satisfaction」の略語で、日本語では従業員満足度のことです。ESの意味は文字通り、従業員における仕事内容や職場環境などへの満足度を数値化したものです。所属企業に満足している従業員でも、ロイヤルティは持ち合わせていないケースもあります。ESはロイヤルティに比べるとビジネスライクで「この企業で働くことのメリットを数字にしたもの」といった感覚です。
エンゲージメントは、もともと「契約」や「約束」といった意味合いですが、人事領域で使われる場合は「満足度」や「愛情」に関する表現で多用されます。エンゲージメントというキーワードで表現する満足度は、従業員個人の仕事内容や仕事に対する感情、成長を対象としていることが多いでしょう。
従業員のロイヤルティを高めるには?
従業員のロイヤルティを高めるために、企業はどのようなことに注力するのがよいのでしょうか?従業員のロイヤルティを高めるポイントを紹介します。
給与や福利厚生など待遇の向上
企業が従業員のロイヤルティを求めるなら、企業側が従業員に利益をしっかり還元することが大事です。従業員のロイヤルティを高めたいなら給与や福利厚生などの待遇面の向上は欠かせません。
ただし、賞与やインセンティブの見直しや給与レンジを上げる施策などは、実行までに時間がかかるものです。もちろん、潤沢な資金も必要とされます。働き方改革で掲げられた「同一労働・同一賃金」を担保した施策でないと、非正規雇用従業員から不興を買い、正規雇用の従業員にしわ寄せが行くなどして、従業員のロイヤルティに悪影響を及ぼす可能性もあります。そこで、おすすめなのが手軽に導入できる福利厚生サービスの活用です。
教育や健康支援が受けられる福利厚生パッケージや「チケットレストラン」のような食事補助サービス、マッサージやスポーツジムの利用割引などの福利厚生が人気があります。
評価制度の明確化
従業員のロイヤルティが高い企業には、全従業員に対し明確な評価制度を設けているケースが多いです。評価は、管理職など上司から部下を対象にしたものだけでなく、部下から上司に対する評価も含まれます。結果だけでなくプロセスも評価基準に入れるのが大事です。
また、評価に対し、適切な給与や賞与が支払われているか、についても従業員のロイヤルティを高める施策としては重要な要素です。企業の経営状態によっては、従業員の働きに対して適切な額の給与が支払えないという企業もあるでしょう。代わりに、特別有休休暇を与えるといった福利厚生を設けるケースもあります。
評価制度が明確化により、従業員に求める行動指針が明確になる効果も期待できます。目標設定がしやすくなり、達成できれば働きがいが感じられるでしょう。企業にとってはロイヤルティだけでなく、生産性向上にも直結する部分ですので、評価基準があやふやだったり、分析できていなかったりする場合は急務として取り組みましょう。
社内コミュニケーションを強化
経営層と従業員、管理職と一般社員の間に壁がある企業では、従業員の居心地が悪く企業へのロイヤルティが下がりやすい傾向があります。また、社員同士のコミュニケーションが希薄な場合にも職場内の雰囲気がギスギスしてロイヤルティの低下や離職率の上昇などにつながりかねません。
従業員のロイヤルティを高めるには、企業が率先して立場やポジション、部署間の垣根をなくすような施策を打つのがおすすめです。社員同士や部署内、経営層も含めた企業全体のコミュニケーションが活性化できれば、生産性が上がったり課題提起と解決がスムーズだったりします。
社内コミュニケーションが活発で居心地のよい職場では従業員のロイヤルティだけでなく、定着率や生産性も比例して上がるといわれています。
社員同士のコミュニケーションの重要性とは?活性化のアイデアや成功事例を紹介
MVVの共有
MVVとは、ミッション(使命)、ビジョン(理想像)、バリュー(企業価値)の頭文字を取った造語で、企業価値や存在意義を社内外に示す目標のようなものです。近年はあらゆる企業が自社のMVVを策定し発表しています。MVVは事業内容に沿った内容にするのが一般的で、採用活動や社内イベントなどで多用されます。
MVVは、あくまで目標なので、守っているかどうかは企業の道徳観やMVVに対する価値観によって異なるでしょう。しかし、従業員のロイヤルティが低い企業では、立派なMVVに対して実情が伴っていなかったり、従業員に浸透していなかったりすることが多いです。形式だけの立派なMVVを掲げていても、従業員の気持ちが冷めてしまいがちです。
一方で、MVVを実行し従業員の誰一人取り残さない姿勢で運営している企業の従業員はロイヤルティやワークエンゲージメントが高い傾向があります。「従業員のやる気がない」「離職者が多い」と悩む企業は、MVVの策定や改定に力を注ぐのではなく、掲げたMVVが従業員の共感を得ているか、勤務状況や仕事内容にあっているか今一度見直しましょう。
従業員のロイヤルティを高めるメリット
従業員のロイヤルティを高めると、企業にとってさまざまなメリットがあるものです。代表的なものを順に見ていきましょう。
離職率の改善
従業員のロイヤルティを高める目的でもあり、メリットともいえるのが「離職率の改善」です。従業員のロイヤルティが高まると、転職の機会があっても所属企業への定着を選ぶケースが多いです。一個人の従業員のこうした選択が企業全体に派生し、定着率に関してポジティブな影響を与える可能性もあります。
同一企業で長く働くことを好む従業員が増えると、他の従業員も簡単に離職を選ぶケースが減るでしょう。長く同じ職場で働く人が増えることで、職場の居心地もますますよくなり、多くの従業員が働きやすいと感じられるものになるでしょう。
長期的な人材育成が可能
従業員のロイヤルティが高まると、長期的な人材育成の成功率が上がります。離職率が高い状況や企業へのロイヤルティが低い従業員が多い職場では、人材育成のための施策が無駄になったり、いつまでたってもスキル習得に至らなかったりするものです。
人材育成に投資しても、腰を据えて働いてくれるロイヤルティの高い従業員が多ければ、投資が無駄にはなりません。ロイヤルティの高い従業員はやる気があるため学びを得るのも早い傾向です。何より「企業に学ばせてもらった」と自覚できることで、従業員の自信やプライドにつながり、ワークエンゲージメントにもつながるでしょう。
採用活動に好影響
ロイヤルティが高い従業員が多い企業は一般的に活気があるものです。ロイヤルティを高めるには、働きがいや風通しのよさ、待遇面などの整備も欠かせないため、従業員のロイヤルティの高い企業は求職者に対して「従業員の待遇や働き方に関して努力をする企業」だとアピールできます。優秀な人材が集まりやすくなり、ますます企業成長や生産性向上につながるといった好循環を生むこともあります。
また、従業員のロイヤルティが高い企業ではリファラル採用も活発です。リファラル採用の従業員は即戦力となる人材が多い傾向があります。リファラル採用が活発化することで、採用活動にかかるコストの削減や企業と求職者のミスマッチを未然に防ぐこともできます。
企業イメージの向上
「自分の好きなものを知ってもらいたい」「一緒に応援してもらいたい」といった気持ちで熱く語った経験がある人もいるでしょう。企業へのロイヤルティが高い従業員は、自社の商品・サービスに対して、同じ行動をとれます。消極的なタイプでも企業にロイヤルティがあれば、自信をもってアピールできるため、取引先や顧客の企業イメージを向上させる可能性も高まります。
また、従業員のロイヤルティの副産物ともいえる、離職率の低さや成長率は、企業のブランドイメージ向上に大きな役割を果たすでしょう。
従業員のロイヤルティを高める具体的な施策例
従業員のロイヤルティに直接アプローチできる施策とは、どのようなものでしょうか?おすすめの施策例を具体的に紹介します。
定期的な1on1の実施
1on1は、コミュニケーション機会の創出やMVVの共有、目標設定や評価をまとめてできる取り組みです。部署の管理職だけでなく、経営層や同じチームの同僚など、さまざまな人材と1on1をする企業もあるようです。業務への不安や不満、悩みの共有や情報交換など幅広い話ができる機会なので多くの企業が1on1を活発化させています。
特に経営層などトップに近い人材に話を聞いてもらったり相談に乗ってもらったりすることで「自分は配慮されている」「信頼されている」と感じられる従業員もいるでしょう。企業内の風通しがよくなり、ますます働きやすさを実感する従業員もいることから、1on1はロイヤルティを高める施策としてかなり有効です。
表彰制度の設置
企業に評価制度だけでなく、表彰制度を設ける企業も従業員のロイヤルティが高い傾向があります。特に、全従業員が自由に投票できる窓口やサンクス制度などがあると、社員同士のコミュニケーションや関係性作りにも一役買います。
目立つ動きはしていなくても、縁の下の力持ちとして尽力してくれる従業員を見つけることにもつながります。普段は、黒子として力を発揮する従業員を企業をあげて評価することで、「経営層は全ての従業員を見てくれている」と従業員の感動につながり、ロイヤルティが向上することもあるようです。
ほかにも、表彰制度を設けることで、会社が従業員に目標としてほしい人物や行動が具体化できるのもメリットでしょう。しかし、企業側が率先して策定した表彰基準だと、やる気をなくす従業員も出てくるでしょう。純粋に「従業員間で評価の高い従業員を見つけて評価する」という取り組みにするのが、ほかの従業員のロイヤルティも向上させる効果を発揮します。
福利厚生サービスの充実
株式会社エデンレッドジャパンが2020年に行った、ビジネスパーソンと企業を比較した「働き方・待遇に関する意識調査」では「今後、待遇・働き方について自社に望むこと」という質問に対し、全国の中小企業に勤める30~50代の正社員男女600名の回答者が「基本給のアップ」「賞与額のアップ」「手当の充実」といった金銭面の次に「福利厚生の充実」を望んでいるという結果が出ました。
また、少し古いデータになりますが、2015年にマンパワーグループが行った福利厚生についての調査では「実際にあってよかった会社の福利厚生」の第一位が「食堂・昼食補助」という結果でした。食事補助の福利厚生サービスが従業員に喜ばれ、従業員のロイヤルティにも影響を与えることは明白です。
なかでも、電子カード配布型の食事補助サービス「チケットレストラン」はおすすめです。全国25万店以上の大手飲食店・コンビニエンスストアで利用でき、仕事に関係する食事であれば利用時間帯に制限がないため、さまざまな働き方、契約内容で働く従業員が平等に恩恵を感じられます。
「チケットレストラン」は2023年3月より UberEats とも提携しサービスが開始され、ますます便利に利用できるようになりました。導入にコストがかからず、手続きや運用方法も簡単なため、従業員にも企業にもメリットが高い福利厚生サービスです。資料請求はこちらから
福利厚生で昼食の食事補助をするには?条件や主な導入方法を紹介!
従業員のロイヤルティを高めるには具体的な施策が必須
従業員のロイヤルティは、一長一短に高められるものではありません。企業や業界の特性や従業員1人1人の個性によってもロイヤルティを高める方法は異なるものです。
経営層や管理職が従業員のロイヤルティの重要性を理解し、自社の従業員に最も効果的な施策を熟考するところから、ロイヤルティ強化施策が始まっています。従業員に自社への愛着心や忠誠心を望むなら「従業員のためになる施策」をよく考えましょう。
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